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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術30巻11号

2002年10月発行

雑誌目次

病気のはなし

Q熱

著者: 安部崇 ,   山木健市 ,   下方薫

ページ範囲:P.1194 - P.1199

新しい知見
 Q熱は,いままでわが国ではほとんど関心がはらわれてこなかったが,最近わが国でもQ熱の症例が蓄積されるようになり1),諸外国と同様に広く蔓延していることが示唆されている.最近われわれは大規模な疫学調査を行い,日本人の抗体保有率について血清学的に検討した2).健康供血者では抗体価陽性率は3.6%であり,それに比べて職業上伴侶動物と接触する小動物臨床獣医師では13.5%と有意に高率であった(表1).この結果からもわが国に諸外国と同様にCoxiella burnetiiが広く存在していることが示唆され,今後わが国でも熱性疾患の鑑別診断の1つに挙げる必要があると考えられる.

技術講座 免疫

CRP高感度測定法とその基準範囲

著者: 亀子光明 ,   青木義政 ,   阿藤泉

ページ範囲:P.1201 - P.1206

新しい知見
 従来の生化学自動分析装置を利用した免疫比濁法によるC反応性蛋白(C-reactive protein;CRP)の測定精度は,0.2〜0.3mg/dl付近と考えられ,低濃度域での測定には不向きであった.しかし,BNシステムを用いた高感度CRP(high-sensitivity CRP;hs-CRP)測定法は,検出限界が0.02mg/dl,0.1mg/dlでの再現性がCV3.0%以下の精度を有しており,この方法を利用して,冠動脈疾患の予知因子としてCRPを測定することが有用であることが最近示された.このことにより多くの検査室でCRP高感度測定が実施されるようになり,これからの臨床応用に期待される測定法となっている.

微生物

疥癬の検査

著者: 山本康生

ページ範囲:P.1207 - P.1209

新しい知見
 疥癬の診断には虫体・虫卵の証明が必要である.そのためにKOH鏡検法を実施する.最も重要な点は適切な皮疹からの試料採取である.

一般

尿沈渣に必要な不明物質の鑑別法

著者: 中島辰朗

ページ範囲:P.1211 - P.1217

新しい知見
 尿中の細胞分類の歴史のなかで尿細管上皮細胞は比較的新しい時代に確立された.現在でも不明細胞は(小)円形細胞などという形態学的分類で報告している施設もあると思われる.細胞鑑別のポイントを押さえれば,ほとんどの(小)円形細胞も組織学的分類で報告できると思われる.
 鑑別のポイントは1個の細胞からは鑑別できないことを知ることである.外観は同じように見える細胞でも検体により異なる物質になりうる(図3).鏡検に際しては定性の結果,背景,目的の細胞の流れをよく観察し全体からみて最も考えられる細胞に分類する.また必要に応じて特殊染色をこまめに行うことを心掛ける.

生化学

脂溶性ビタミンの測定法

著者: 松本貴行 ,   渭原博 ,   橋詰直孝

ページ範囲:P.1219 - P.1223

新しい知見
 脂溶性ビタミンには,ビタミンD,ビタミンK,ビタミンA,ビタミンEがある.ビタミンDには25(OH)ビタミンDと1α,25(OH)2ビタミンDがあり,1α.25(OH)2ビタミンDがRIA(radio immunoassay)で測定されている.ビタミンKにはK1とK2とがあり,HPLC(high-performance liquid chromatography,高速液体クロマトグラフィ)法で測定される.ビタミンAはレチノールとして,ビタミンEはα-トコフェロールとしてHPLC法を用いた同時測定法がある.

オピニオン

これからの臨床検査と検査技師

著者: 森下芳孝

ページ範囲:P.1200 - P.1200

 近年,低迷する経済のあおりを受けて,医療を取り巻く環境は大きく変化しつつある.さらに,高齢化により医療費は30兆円以上にも膨れ上がり,そのため政府による医療費抑制策が打ち出され,医療といえども経済を無視できない状況にある.こうした中で医療再編成の動きが急速に活発化している.
 病院の検査部として,今,何をなすべきかについて,真剣に考えてみる必要がある.

けんさアラカルト

ミャンマー国・ハンセン病対策基礎保健サービス改善プロジェクト—その3

著者: 鈴木慶治

ページ範囲:P.1218 - P.1218

アマラプラ・タウンシップ病院訪問
 アマラプラ市は,古都マンダレイの南約11kmに位置する.人口149,613人の織物工業が盛んな地域で,狭い道路を通り抜けた先に病院がある.医師が1名勤務し,肺炎の子ども,AIDSを疑う男性,闇で受けた中絶に失敗し運び込まれた女性などさまざまな疾病の患者さん20数人が入院していた.
 アマラプラ・タウンシップ病院でいただいたハンセン(Hansen)病に関するパンフレット(2000年)には,有病率3.0/10,000,新患者発見率27.4/100,000,治療終了者146人,累積治療終了者1,193人,新患者の15歳以下の割合26.8%とある.ミャンマー国全体と較べ,新患者発見率のやや高い地域である.

ラボクイズ

問題:細胞診【4】

ページ範囲:P.1224 - P.1224

9月号の解答と解説

ページ範囲:P.1225 - P.1225

見開き講座 分子細胞遺伝学への道しるべ・22

染色体14.染色体異常の発生頻度

著者: 田村高志

ページ範囲:P.1226 - P.1227

新生児集団における頻度
 1960年代に世界各地で大規模な新生児集団における染色体異常の調査が行われた.欧米の7つの調査を集計したものとわが国の前田らと黒木らの2つの報告を表1に示した.表から新生児集団における染色体異常の発生頻度は約0.6%で,人種による差や地域による差も認められなかった.0.6%の頻度とは170人に1人の割合であり,わが国の年間の出生数を120万人とすると7,200人の染色体異常児が生まれていることになる.
 それぞれの発生頻度についてみると,21番染色体トリソミー〔ダウン(Down)症候群〕が最も高く,次いで47,XXY〔クラインフェルター(Klinefelter)症候群〕と47,XYYの性染色体異常がみられた.また,構造異常では均衡型転座が多くみられた.染色体異常の発生要因として,トリソミーでは出産時の母年齢が高いこと,構造異常では親の染色体異常(均衡型転座保因者)が挙げられている.

絵で見る免疫学 基礎編・34

T細胞の表面マーカー(その1)

著者: 高木淳 ,   玉井一

ページ範囲:P.1228 - P.1229

ナイーブT細胞を再教育する 抗原提示細胞
 骨髄で誕生したばかりのT細胞は,まだ抗原と一度も接触したことがないのでナイーブT細胞という.ナイーブT細胞は胸腺で自己MHC拘束性と自己寛容性を獲得したとはいえ,抗原と遭遇してもまだ病原体を排除する能力は持っていない.したがって,ナイーブT細胞は己と同じ特異性の抗原を提示しているマクロファージや樹状細胞と接触し,感染防御能を持ったT細胞(エフェクターT細胞)に分化成熟し,かつ数を増して病原体に対応する必要がある.この一連の抗原提示細胞によるナイーブT細胞の再教育の場が末梢リンパ節である.しかし,ある特異性を持った1個のナイーブT細胞が己に特異的な抗原に遭遇する確率は極めて小さいので多くのリンパ節をかけ巡らなければならない.ナイーブT細胞はマクロファージや樹状細胞から特異抗原の提示を受けるとエフェクターT細胞に分化しかつ増殖を始める.エフェクターT細胞とはTH1,TH2,そして細胞傷害性T細胞(cytotoxic Tlymphocyte;CTL)である.分化増殖を終えたエフェクターT細胞はリンパ組織から血流を通って感染局所に移行する(図1).

検査データを考える

血中ジゴキシン濃度測定での異常高値

著者: 安本龍馬 ,   赤星透 ,   鳥井晋造

ページ範囲:P.1243 - P.1249

はじめに
 ジゴキシンは心疾患に用いられる薬剤の1つである.その有効治療域は,0.8〜2.0ng/mlと狭く,また中毒発現域と有効治療域が一部重なっており,患者によっては上記有効治療域内であったとしても中毒症状を呈する場合がある.このことから,ジゴキシンはTDM(therapeutic drugmonitoring,治療薬物濃度モニタリング)が必要な薬剤であるといえる.
 *薬物濃度を測定し,その濃度を基に最も適した薬剤の用法・用量(使用量,使用間隔)などを決定して,適正な薬物治療を実施すること.

けんさ質問箱

Q 窒息患者の血液ガスデータでのPaco2200mmHgの理由

著者: 相原弼徳 ,  

ページ範囲:P.1261 - P.1263

 窒息死患者の血液ガスデータがpH6.7,Pao25mmHg,Paco>2200mmHgという値でした.このPaco2200mmHgの値を生じたメカニズムを教えてください.

Q 片麻痺患者にも可能な負荷心電図

著者: 杉田秀和 ,  

ページ範囲:P.1263 - P.1264

 心電図の運動負荷試験で,片麻痺などでスムースな歩行ができない患者さんに対してはどのような負荷をかければよいでしょうか.

Laboratory Practice 病理 細胞像からここまでわかる

乳腺(3) 浸潤性乳管癌:乳頭腺管癌

著者: 都竹正文 ,   秋山太

ページ範囲:P.1231 - P.1233

浸潤性乳管癌:乳頭腺管癌
 乳癌取扱い規約(改定第14版,2000年9月)では,乳腺腫瘍の組織学的分類(表,7月号参照)では,I.上皮性腫瘍はA.良性腫瘍,B.悪性腫瘍に分類され,さらにII.結合織性および上皮性混合腫瘍,III.非上皮性腫瘍,IV.分類不能腫瘍,V.乳腺症,VI.腫瘍様病変に分類されている.悪性腫瘍は1.非浸潤癌,2.浸潤癌,3.Paget病に分類されている.1.非浸潤癌はa.非浸潤性乳管癌とb.非浸潤性小葉癌に細分類されている.2.浸潤癌はa.浸潤性乳管癌とb.特殊型に分類され,浸潤性乳管癌は,さらにa1.乳頭腺管癌,a2.充実腺管癌,a3.硬癌に亜分類されている.b.特殊型はb1.粘液癌,b2.髄様癌,b3.浸潤性小葉癌,b4.腺様嚢胞癌,b5.扁平上皮癌,b6.紡錘細胞癌,b7.アポクリン癌,b8.骨・軟骨化生を伴う癌,b9.管状癌,b10.分泌癌,b11.その他に亜分類されている.悪性腫瘍のうち,非浸潤癌,浸潤癌の発生頻度は非浸潤癌約10%,浸潤癌90%の割合である.浸潤癌のうち,浸潤性乳管癌の発生頻度は乳癌全体の約80%で,乳頭腺管癌約20%,充実腺管癌約20%,硬癌約40%で1:1:2の関係である.特殊型は乳癌全体の約10%で,粘液癌約4%,浸潤性小葉癌約4%,その他全部合わせて約2%と極めて少数である.
 今回は乳腺の悪性腫瘍のうち充実腺管癌と並んで頻度の高い乳頭腺管癌を取り上げ解説する.

血液 骨髄塗抹標本の見かた 異常細胞の見かた・5 2系統以上の細胞の異常

1.数の異常 増加(3)

著者: 大畑雅彦

ページ範囲:P.1234 - P.1241

臨床像と形態学的所見
 (症例1:図1-a,b,症例2:図1-c,d)
 症例11):CML(chronic myelocytic leukemia,慢性骨髄性白血病)と診断後,脾摘と化学療法が施行された.経過観察中に一見裸核に見える異常細胞(矢印)が出現し,以後血小板の増多とともに大型の芽球も漸次増加していった(図1-a).末梢血に増多した血小板は,大小不同,巨大血小板のほかに,血小板特殊顆粒の減少や空胞変化なども見られた.その後発熱および関節痛と体重減少が増強し,腹部には3〜4cmのゴム様硬の腫瘤を多数認め,また鼠径部リンパ節も腫大していた.骨髄穿刺では,至る所に図1-bのような細胞の集塊が観察された.
 症例22):CMLの慢性期を約14年間,安定して経過していたが,鼠径部の腫瘤を自覚するようになってから白血球数が増加し,急性転化を疑い骨髄穿刺を施行した(図1-c).N/C比が大きく,一部の芽球には核の弯入や切れ込み,立体構造が観察され,POX(peroxidase,ペルオキシダーゼ)染色陰性,Td-T(terminal deoxynucleotidyltransferase)染色陽性,抗MPO(myeloperoxidase)染色陰性より,リンパ性急性転化と診断したが,一部に細胞形態上問題を残すものも見られた.VP(ビンクリスチン+プレドニゾロン)療法を3コース施行後には,CMLの慢性期の骨髄に戻った.

トピックス

結核症の診断における抗TBGL(tuberculous glycolipids)抗体測定の意義—結核の血清診断法の現状と問題点

著者: 高倉俊二 ,   千田一嘉 ,   一山智

ページ範囲:P.1265 - P.1268

■結核症の診断
 結核症の診断は結核菌を臨床検体から検出することで確定する.検体の種類にかかわらずたとえ1コロニーでも結核菌が検出されれば結核症といえる.PCR(polymerase chain reaction,ポリメラーゼ連鎖反応)法は培養検査に比較すると感度が若干劣るが,その迅速性と特異性から,陽性の場合は特殊なケースを除いて結核の診断を早期に確定できる.ただし,実際に結核症と診断された患者で結核菌が証明されているのは全体の45%前後であり,多くは胸部X線所見,臨床所見などで診断されているのみである1).結核発病患者を確実かつ早期に診断するために,臨床検体から結核菌が認められない患者においても指標となりうる検査が望まれている.結核菌検出に依存しない診断法としては結核菌に対する細胞性免疫反応を指標とするツベルクリン皮内反応(ツ反)がある.ツ反陰性であれば結核症はほぼ否定的といえるが,陽性の場合はどちらともいえない.結核に感染していれば発病していなくても陽性となるし,BCG(bacillus CalmetteGuérin)ワクチン接種による陽性と結核感染による陽性を判別できないためである.ツ反の判定に関する注意点を表1に示す.

硝子体可溶性蛋白

著者: 中西豊文

ページ範囲:P.1268 - P.1271

はじめに
 眼球機能を維持するための最も重要な組織構築はその透明性である.光が通過する角膜,前房,水晶体および硝子体には通常,血管が存在しないが,糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性などの増殖性血管病変では,種々の箇所より新生血管が生じその結果,透明性が損なわれ失明する.近年,網膜血管増殖を促進あるいは抑制する可溶性蛋白群が硝子体中に存在することが報告され,糖尿病性網膜症などの網膜血管増殖性病変の病態解明や治療面から注目されている1〜5).硝子体中の高分子物質としては,コラーゲン,ヒアルロン酸および可溶性蛋白の存在が知られているが,可溶性蛋白についてはまだ十分に解析されていない.
 われわれの教室では,ゲル電気泳動あるいは多次元HPLC(high-performance liquide chromatography,高速液体クロマトグラフィー)-イオントラップ型タンデム質量分析(ITMSMS)法による糖尿病性網膜症患者の硝子体可溶画分中に発現した蛋白のカタログ作成と同時に硝子体特有蛋白および血管新生制御因子の検出・同定を試みている6)

血漿FDP

著者: 雨宮憲彦

ページ範囲:P.1271 - P.1274

はじめに
 生体内の線維素溶解現象(線溶)を反映するフィブリノゲン・フィブリン分解産物(fibrinogen/fibrin degradation products;FDP)の検査法は,大別するとすべてのFDP亜分画を捉える総FDP測定法(t-FDP),FDP-E部位を捉えるFDP-E測定法(FDP-E),フィブリン分解産物のみを捉えるDダイマー測定法がある.
 現在検査室で最も使用されている測定法は,プラスミンによって分解されたFDPを抗ヒトフィブリノゲンポリクローナル抗体感作ラテックスと凝集反応させて定量する免疫学的測定法である.この試薬に用いられているポリクローナル抗体は当然フィブリノゲンとも反応するため血清化処理した検体を用いる必要があった.しかし,血清化処理で完全に除去できなかった残存フィブリノゲンや可溶性フィブリンによって生じる偽高値や,凝固の過程でFDPがフィブリン内に取り込まれることによる偽低値の問題などが指摘されていた.1990年ごろからフィブリノゲンと反応しない抗FDPモノクローナル抗体が開発され,測定キットとして市販された.これらのキットは血漿で測定可能な利点を有していたが,用手法による半定量法やEIA法のため煩雑で簡便性に欠けるなど,検査室のルーチン検査としてさほど普及しなかった.

二級臨床病理技術士実技試験のポイント

緊急臨床検査士

著者: 三宅一徳

ページ範囲:P.1250 - P.1252

I.「緊急臨床検査士」実地試験の特徴
 「緊急臨床検査士」認定試験(以下,緊急試験)の試験範囲は,迅速な診断・治療に直接かかわる緊急検査全般である.実地試験でも,一般,血液学,生化学,輸血・血清学,生理機能の各分野が出題される.ある年度の実地試験の概略を表1に示した.緊急試験は,このように広範な分野の検査技術についての習熟が問われるのが特徴である.
 さらに,緊急試験では,実地試験を通じてもう1つ重要な点が評価される.それは,患者さんの生命に直接かかわる検査結果の異常をみたとき,それを的確に指摘し,適切な情報を依頼医師に提供できるか,という点である.したがって,緊急検査の各項目がどのような目的,意義で測定されているのか,という点についても知識を十分整理しておく必要がある.

今月の表紙

肝臓超音波:脂肪肝

著者: 永江学

ページ範囲:P.1252 - P.1252

【解説】
 図1は健常人のパワードプラ法による立体画像である.門脈の枝や肝静脈の枝が重なって立体的に観察することができる.臨床的には肝臓内腫瘍血管分布を立体的に描出することが可能であり,CTAに匹敵するともいわれている.
 図2は56歳男性の超音波像である.肝臓全体は高輝度を示している.肝臓に接している右腎臓との間に輝度差が認められる.これらは肝臓内に蓄積された脂肪滴が音響学的な反射体となるために起こる現象である.脂肪肝の例である.

検査センター悲話・秘話・疲話

番外編 公正取引委員会(公取委)の立ち入り

ページ範囲:P.1253 - P.1253

 今年3月,マスコミでも報道されましたが,公取委が大手検査センターに立ち入りました.報道によると,「国公立病院が発注する臨床検査業務の競争入札の際,談合で受注会社を決めて高値で落札を繰り返していた」(読売新聞)疑いで「検査業務の委託料金は医療保険から支払われるが,その金額は実勢価格を参考に決まることになっており,公取委は,各社が実勢価格の値崩れを防ぐねらいで談合を行ったと見ている」(同)とされています.初めて検査センターや,検査の保険点数や受注価格のことが取り上げられました.検体検査は実際に検査データの生まれる背景を知らない人たちによって,単なる「もの」として扱われています.大きな病院では,資材課などの事務部門が物品入札と同様に扱い,検査項目ひとつひとつの単価で受託業者を決めているのが現状です.このことを検査をする側の立場で考えてみましょう.

検査じょうほう室 生理:脳波検査のスキルアップ

アナログ脳波計とデジタル脳波計

著者: 石田哲浩

ページ範囲:P.1254 - P.1257

 デジタル脳波計が臨床脳波室に登場してから10数年になる.筆者もデジタル脳波計に切り替えた当初は,アナログ脳波計と勝手が違い,だいぶ戸惑ったものである.最近,脳波記録保存の電子ファイル化が認められ,デジタル脳波計の普及に拍車を掛けている.現在では,アナログ脳波計はほとんど生産されておらず,若い技師諸君は,逆に“アナログ脳波計って何?”と戸惑うであろう.
 デジタル脳波計は,数社が発売しているが,その仕様は統一されていない.今回は,筆者が使用している日本光電製品の仕様を参考にしながら,一般的な特徴と測定上の注意点について述べる.

生化学:おさえておきたい生化学の知識

健康集団で認められる高HDL血症

著者: 三井田孝

ページ範囲:P.1258 - P.1260

はじめに
 高比重リポ蛋白(high density lipoprotein;HDL)は,末梢組織のコレステロールを肝へ運ぶコレステロール逆転送系で中心的役割を果たす.低HDL血症では,冠動脈疾患発症の危険が有意に高まる.低HDL血症は,日米ともHDL-C(highdensity lipoprotein-cholesterol)が40mg/dl未満と定義される1,2).一方,高HDL血症の臨床的意義や診断基準については,コンセンサスが得られていない.本稿ではHDL代謝について概説し,高HDL血症の原因と臨床的意義について述べる.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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