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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術30巻7号

2002年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

細菌性髄膜炎

著者: 中村明

ページ範囲:P.620 - P.624

新しい知見
 ペニシリンおよび多剤耐性肺炎球菌,そして耐性肺炎球菌と同様にPBP(penicillin binding proteins,ペニシリン結合蛋白)の変異に基づくインフルエンザ菌のβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌(β-lactamase negative ampicillin resistant;BLNAR)の増加が大きな問題である.ペニシリン系のみならず,髄膜炎に頻用されるセフェム系に対しても耐性化が進行しているからである。髄膜炎のように抗菌薬の移行に問題のある感染症では,わずかなMIC(minimum inhibitory concentration,最小発育阻止濃度)の増加であってもその予後に対する影響は大きい.将来的には,耐性肺炎球菌に対しては塩酸バンコマイシンを,高度のBLNARに対してはクロラムフェニコールの再登場も視野に入れる必要があろう.

技術講座 病理

免疫染色における抗原賦活法

著者: 濱川真治 ,   清水誠一郎

ページ範囲:P.625 - P.632

新しい知見
 免疫染色の標準化:免疫染色は,免疫抗体法という名称で保険収載され,300点(3,000円)が病理組織学的検査に加算される.用いる一次抗体や染色キットなどは原則として医薬品として承認されたものであることを要するとされている.2001年6月,免疫抗体法とは別にHER2/neu蛋白検査(現在では950点)が保険収載され,現在はHercep Test(DAKO社)などがそれに当たる.Hercep Testはホルマリンの固定時間,抗原賦活方法や一次抗体,染色システム,判定基準に至るまですべて標準化された乳癌組織のHER2遺伝子産物量を半定量する検査である.またエストロゲンレセプター検査においても標準化された免疫染色法(Ventana社,MBL社,DAKO社)によってEIA(enzyme immunoassay)法に取って代わる方法として保険請求(950点)が可能となった.今後さらに診断・治療に直結した免疫染色の応用範囲がますます拡がり,抗原賦活や染色法,固定法を含めた標準化が進められていくものと考える.

輸血

血液型の検査(ABO,Rh式)

著者: 村上純子

ページ範囲:P.633 - P.638

新しい知見
 従来,通常の抗D血清では凝集を認めず,間接抗グロブリン試験(間接クームス試験)で凝集が認められる弱いD抗原をDu(Dが未発達undevelopedを意味する)と分類してきた.しかし,モノクローナル抗D血清が用いられるようになり,Duには,単にD抗原量が少ないweak Dと,一部のD抗原エピトープを欠損しているために,その抗原エピトープを認識する抗D血清で凝集を生じない(あるいは極めて弱い)partial Dとが含まれていることが明らかになった.
 今のところ,D抗原エピトープは少なくとも30種類以上あると考えられている.したがって,partlal Dが疑われた際には,ポリクローナル抗D血清や認識するエピトープが異なる複数のモノクローナル抗D血清を用いて検査を行う必要がある.

微生物

白血球中サイトメガロウイルスpp65抗原の検出

著者: 峰松俊夫 ,   南嶋洋一

ページ範囲:P.639 - P.644

新しい知見
 抗原血症検出か定量的PCRか?:近年,定量的PCRが普及してきており,cytomegalovirus(CMV)感染症診断への応用が研究されている.CMV感染症診断において,抗原血症の検出と定量的PCRとで有用性が比較されているが,それぞれに長所と短所が認められる.概して,結果が陽転する先行性は定量的PCRがすぐれ,治療開始と終了時期の決定には抗原血症の結果が参考にしやすいとされる.保険診療となっている点で,医療現場では抗原血症検査が受け入れやすいかもしれない.将来的に,それぞれの欠点を補い合う二本柱の検査法として,双方が発展することに期待したい.

座談会 21世紀の検査を考える・5

21世紀の血液検査の展望

著者: 奈良信雄 ,   川合陽子 ,   東克巳 ,   丸茂美幸 ,   島津千里 ,   渡辺清明

ページ範囲:P.671 - P.683

 項目が多彩でありかつ診断特異性が高い検査を扱う血液検査は臨床的にも重要であり,20世紀には血液学,特に臨床血液学の進歩とともに順調に発展してきた.しかし昨今の臨床検査領域における経済的な基盤への圧迫が背景にあり,必ずしも臨床検査技師が安心して検査に専念できないケースがまま出てきている.本座談会では21世紀の展望をテーマとして,現状での暗い話から,日進月歩の医学検査の世界での明るい未来を模索していただく.

オピニオン

糖尿病患者の自己管理に携わって

著者: 川崎哲子

ページ範囲:P.645 - P.645

はじめに
 今日も,採血中に,①食事も運動も指示どおりにしているのに,FPGが高いがどうしたら下がるのか.②インスリンは,使い始めたら生涯続けなければならないのか.③インスリンを使うのは重症なの?④お酒は何と交換できるか.⑤血糖値と尿糖の出方とは関係ないのか.など質問され,採血室は質問の館になる.質問者は糖尿病教育入院の経験者が多い.患者様は,日々さまざまな不安や疑問を抱え,努力をされているのである.
 臨床検査技師が患者様の自己管理のサポート役になるという現実に直面する現場である.

ラボクイズ

問題:血液検査【2】

ページ範囲:P.646 - P.646

6月号の解答と解説

ページ範囲:P.647 - P.647

絵で見る免疫学 基礎編・31

補体(2)

著者: 高木淳 ,   玉井一

ページ範囲:P.648 - P.649

4.膜強襲複合体の形成(前号よりの続き)
 C4b-C2b複合体とC3b-Bb複合体はC3転換酵素であるが(第30巻6号本欄),これら複合体にC3bを結合したC4b-C2b-C3bおよびC3b-Bb-C3b複合体はC5転換酵素で,C5をC5aとC5bに分解する.C5bはC6およびC7を結合し,C7は細菌膜の脂質二重層に挿入する.さらにこの複合体にC8が結合して膜内に埋め込まれる.この複合体にC9が次々に結合して筒状の膜強襲複合体(membrane-attack complex;MAC)を形成して細菌膜に孔(内径約10nm)を開ける.この孔から水や塩類や酵素類が細菌内に侵入し細菌は破壊される(図1).この細菌の傷害機構は細胞傷害性T細胞が標的細胞を傷害するときに細胞に孔をあけてパーフォリンを放出して破壊する機構に似ており,C9はパーフォリンと構造的に類似した分子である(第29巻1号本欄).この細菌の破壊現象は劇的であるが,一連の補体系の宿主防衛反応においてさほど頻繁に起こるものでないことがわかってきた.したがって,感染防御にかかわる補体系の主な働きは,C3bが中心的な役割を果たすオプソニン化とC5a,C3aおよびC4aによって誘導される炎症反応である.

見開き講座 分子細胞遺伝学への道しるべ・19

染色体11.性染色質

著者: 田村高志

ページ範囲:P.650 - P.651

性染色質とは
 1949年,BarrとBertramは雄ネコの神経細胞休止核には見られないが,雌ネコの細胞核周辺部に塩基性色素に濃染する小体を発見した1).また,ヒト女性口腔粘膜細胞などにもこの小体がみられ,これを性染色質(sex chromatin)あるいは発見者の名にちなんでバー小体(Barr body)とも呼んでいる.性染色質は,後に蛍光色素による男性休止核にみられるYクロマチンが発見されたため,Xクロマチンと呼ぶように改められ,XクロマチンとYクロマチンとを総称したものになった.性染色質検査は性染色体異常のスクリーニング検査として行われている.
 現在,性別の確認はSRY遺伝子やXとY染色体上に座位するアメロゲニン遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)法によって検出することで正確な鑑別が可能である.これらは法医学領域,異性間骨髄移植後の生着の確認やオリンピックなどのスポーツ大会でのセックスチェックに応用されている.

けんさアラカルト

インフルエンザの迅速診断キット

著者: 武内可尚

ページ範囲:P.663 - P.663

 インフルエンザを巡っては,この数年間に大きな発見や実用的な進歩がなされた.インフルエンザの迅速診断キットの普及もその1つである.外来に受診する急性感染症の大半は「かぜ」である.かぜの病原因子は90%がウイルスである.かぜに関与するウイルスは亜型も含めれば200種類にも上る.しかし,これらのありふれた急性ウイルス感染症には,特異的な治療薬も存在しなかったので,病原診断することには長い間ほとんど無関心であった.
 ところが,抗原の精製と特異的モノクローナル抗体の作製技術の発展により,蛍光抗体法による迅速診断の時期を経て,ラテックス凝集反応や酵素免疫法(enzyme immunoassay;EIA)による簡便な迅速診断キットが登場してきた.そして,わが国ではそれらに次々と保険が適用されるようになって,急性ウイルス感染症が日常的に臨床現場で病原診断できるようになってきた.それまで臓器別あるいは器官別の診断名を付けて事足れりとしていたのが,何々ウイルス性急性胃腸炎とか,何々ウイルスによる細気管支炎といった具合に病原因子を付けて考えられるようになった.大変な進歩である.

検査データを考える

動脈血ガスデータの解析—特にHCO3-とPaCO2に関して

著者: 幸山正 ,   滝沢始

ページ範囲:P.689 - P.692

はじめに
 われわれの身体は呼吸を通して体内へ酸素を取り入れ,体外へ二酸化炭素を排出しています(ガス交換).この働きが低下してしまうと血液中の酸素が減り二酸化炭素が蓄積していきます.その状態が続くと各臓器の障害が出現するため,治療が必要となるわけです.そのときのガス交換の状況を客観的に把握するために動脈血液ガスデータを検査することになります.血液は肺で得た酸素を各組織を循環しながら供給し,末梢組織での代謝を助けます.代謝の過程で得た二酸化炭素をのせた血液は静脈血として右心房へと戻り,肺胞で二酸化炭素を捨て,大気中の酸素を受け取り,再び体循環へと戻っていきます.よって動脈血酸素ガスデータから患者さんの呼吸や代謝の状態を把握することができるのです.

Laboratory Practice 病理 細胞像からここまでわかる

乳腺(1)浸潤性乳管癌:硬癌

著者: 都竹正文 ,   秋山太

ページ範囲:P.652 - P.654

 乳癌取扱い規約(改定第14版,2000年9月)では,乳腺腫瘍の組織学的分類(表)では,Ⅰ.上皮性腫瘍はA.良性腫瘍,B.悪性腫瘍に分類され,さらにⅡ.結合織性および上皮性混合腫瘍,Ⅲ.非上皮性腫瘍,Ⅳ.分類不能腫瘍,Ⅴ.乳腺症,Ⅵ.腫瘍様病変に分類されている.悪性腫瘍は1.非浸潤癌,2.浸潤癌,3.Paget病に分類されている.1非浸潤癌はa.非浸潤性乳管癌とb.非浸潤性小葉癌に細分類されている.2.浸潤癌はa.浸潤性乳管癌とb.特殊型に分類され,浸潤性乳管癌は,さらにa1.乳頭腺管癌,a2.充実腺管癌,a3.硬癌に亜分類されている.b.特殊型はb1.粘液癌,b2.髄様癌,b3.浸潤性小葉癌,b4.腺様嚢胞癌,b5.扁平上皮癌,b6.紡錘細胞癌,b7.アポクリン癌,b8.骨・軟骨化生を伴う癌,b9.管状癌,b10.分泌癌,b11.その他に亜分類されている.悪性腫瘍のうち,非浸潤癌,浸潤癌の発生頻度は非浸潤癌約10%,浸潤癌90%の割合である.浸潤癌のうち,浸潤性乳管癌の発生頻度は乳癌全体の約80%で,乳頭腺管癌約20%,充実腺管癌約20%,硬癌約40%で1:1:2の関係である.特殊型は乳癌全体の約10%で,粘液癌約4%,浸潤性小葉癌約4%,その他全部合わせて約2%と極めて少数である.
 今回は乳腺の悪性腫瘍のなかで最も発生頻度の高い硬癌を取り上げ解説する.

血液 骨髄塗抹標本の見かた 異常細胞の見かた・4 巨核球系の異常

形態異常

著者: 大畑雅彦

ページ範囲:P.656 - P.662

形態学的所見(図1-a,b)
 他院にて特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura;ITP)と診断され脾摘を受けるが無効であった17歳の男性.小学校ごろより聴力障害(感音性難聴)があった.
 末梢血には赤血球と同等サイズ以上のいわゆる巨大血小板がみられ,成熟好中球にはDöhle様封入体が認められた.骨髄像では顆粒球系細胞(図1-a)に,末梢血と同様の封入体が存在している.封入体の位置は細胞の辺縁に位置することが多く,形状や明瞭性はさまざまであった.図1-bには巨核球を示した.しかし,通常一般的に見る巨核球に比し,細胞質の顆粒の分布状態から顆粒産生巨核球まで成熟しているのにもかかわらず,“好塩基性の斑(マダラ)”が存在する.筆者はこの模様を“トラ斑模様”と呼んでいる1).このように顆粒球系細胞と巨核球に形態学的異常が観察された症例が今回のテーマである.

トピックス

血小板産生に関与するサイトカイン

著者: 玉川優奈 ,   長澤俊郎

ページ範囲:P.699 - P.701

はじめに
 生体内において,血小板数はある調節機構のもと,常に一定に保たれている.この調節機構が破綻した時,血小板減少症,あるいは増多症としての臨床像を示す(表1).血小板産生に影響するサイトカインは多数知られている(表2).本稿では,血小板産生にかかわる主なサイトカインをいくつか紹介したい.

血小板の新標準測定法

著者: 田中千晶 ,   藤本敬二

ページ範囲:P.701 - P.703

はじめに
 血球計数は現在そのほとんどが自動化され,わずか数分以内に赤血球数,白血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット,各種赤血球恒数〔MCV(mean corpuscular volume,平均赤血球容積),MCH(mean corpuscular hemoglobin,平均赤血球ヘモグロビン量),MCHC(mean corpuscular hemoglobin concentration,平均赤血球ヘモグロビン濃度)〕や血小板数のみならず白血球分類までも可能な装置が血液検査室で使用されている.
 ある1台の血球計数装置で患者検体を測定した場合,その測定結果はいったいどのような根拠に基づいているのだろうか? このきわめて素朴な質問に対して過去多大な労力が世界的な規模でかけられてきた.本稿では血小板数を例にとり,その最新測定方法について述べる.

海外渡航と狂犬病

著者: 髙山直秀

ページ範囲:P.703 - P.705

■海外咬傷受傷例
 日本人女性が8月10日インドのデリー市郊外にある古城を見学していたところ,城内に数頭いた野良イヌの1頭が近づき,突然左下肢をズボンの上から咬んだ.出血はあったが,傷は大きくなかったので,病院に行く気はなかった.しかし,この様子を目撃した現地の人がタクシーを呼んで病院に連れて行った.インドで組織培養狂犬病ワクチンを8月10日,13日,17日と3回接種し,8月10日には破傷風トキソイドも注射した後,帰国し,曝露後発病予防を続けるため当院を受診した.

検査じょうほう室 微生物:ステップアップにいかす微生物の知識

疥癬の院内感染

著者: 鈴木恭子

ページ範囲:P.664 - P.665

はじめに
 疥癬は第二次世界大戦中,戦後大流行がみられましたが,公衆衛生の発達や殺虫剤などにより激減しました.しかし,近年わが国では,病院,老人ホーム,養護施設などで集団発生の事例が増加し1),疥癬は医療および介護関係者の間で深刻な問題となっています.当院においても1998年3月より5月にかけて感染力の強いノルウェー疥癬患者が原因と考えられる集団発生がみられました.

生化学:おさえておきたい生化学の知識

ChE異常低値への臨床対応

著者: 坂本芳美

ページ範囲:P.666 - P.667

コリン活性かゼロ
 ある月曜日のこと.休日中に提出された検体の未検査分を測定していたら,ある患者さんでコリンエステラーゼ(ChE)が0 U/lと出た(表1).手術をしていたら大変と,病棟に問い合わせてみると既に手術は終わっていた.筋弛緩薬の塩化スキサメトニウム(Succin®:サクシン®)による遷延性無呼吸状態は生じなかったのであろうか?

輸血:白血球検査あれこれ

肩のこらないHLA(5)

著者: 皆森久美子 ,   秋田真哉 ,   荒木延夫

ページ範囲:P.668 - P.670

プロローグ
 ―「いったいどこへ消えてしまったんだー?」このフレーズが私の頭の中で渦巻きながら,目の前で起こったことが信じられず,しばらくの間呆然とその場に立ち尽くしてしまいました.
 「白血球検査について」シリーズ第5回は,第4回でご紹介した血清学的検査の落とし穴に引き続き,遺伝子学的検査の落とし穴についてお話します.

二級臨床病理技術士実技試験のポイント

臨床化学

著者: 高木康

ページ範囲:P.684 - P.685

Ⅰ.ある年度の問題と評価表
 ある年度の課題は「血糖測定」であり,評価は「A.基本操作」と「B.定量操作」,そして血糖測定に関する「C.基本的知識」について行われた.「A.基本操作」の評価項目と評価基準を表1に示した.「1.実験計画と準備」はいかなる実験あるいは日常の検査においても重要であり,実験器具・試薬の確認や時間を含めた手順を明確にしておくことは臨床化学ばかりでなく,他の科目においても必要である.
 試験時間は課題の「血糖測定」を行うには十分であり,まず10分程度を費やして,配布の試薬や器具類をチェックして,実験計画を立てる.この時には反応時間を利用して行える事項なども十分に考察して計画を立てることが大切である.「2.ピペットの取り扱い」,あるいは「3.分光光度計の取り扱い」は臨床化学検査を行ううえでの基本である.ピペットの先端を拭き取ったり,垂直に立てての操作,あるいはメニスカスの合わせかたなどは基本中の基本であり,必ず習得していなければならない手技である.また,分光光度計操作における測定波長の設定,セルブランクチェックなどは自動分析装置によりボタンを押せばよい現実からすると手慣れていないが,分光光度計の操作は臨床化学定量検査の基本であり,これらのチェックポイントに対する正確な実技操作を身に付けることが正確な定量操作を行ううえでは極めて重要となる.

検査センター悲話・秘話・疲話

第4話 検査に適さない検体—血液検体

著者: ラボ検査研究会

ページ範囲:P.693 - P.693

 検査センターが受け付ける検体の中には,検査に適さない検体があります.今回は検体の中で最も多い血液検体のうち,どんなものが検査に適さないにかについてまとめてみました.血液検体以外の検体については次回以降で取り上げる予定です.また,患者属性をはじめとした臨床情報の不足のために検査に適さない検体が含まれますが,検査センターの検体に必要な臨床情報についてもご紹介しましょう.

けんさ質問箱

Q 交差適合試験と不規則抗体スクリーニング

著者: 佐藤千秋 ,   渋谷温 ,  

ページ範囲:P.695 - P.696

 文献には“クロスマッチと不規則抗体スクリーニングは異なった方法で検査を行う”とありますが,具体的にはどのように変えればいいのでしょうか.生理食塩液法とブロメリン法,アルブミン法とクームス(Coombs)法の2系列内のどこかで変えるべきなのでしょうか.

Q P/S比の基準範囲と臨床的意義

著者: 牧瀬淳子 ,  

ページ範囲:P.696 - P.698

 アミラーゼアイソザイムによって泳動分離されたP分画とS分画との比〔P/S比〕はP優位,S優位のよい指標ですが,この〔P/S比〕の一般的な基準範囲と,臨床的意義について教えてください.

今月の表紙

乳腺超音波[2]

著者: 永江学

ページ範囲:P.698 - P.698

 【解説】図1は71歳女性の乳腺超音波像である.やや幅広な辺縁不整な腫瘍が認められる.内部エコーは不整で一部輝度の強い石灰化を思わせる像も認められる.後方エコーは不変である.本症例は組織学的に乳頭腺管癌であった.乳頭腺管癌は他の乳癌に比して石灰化を認めることが比較的多いことと,後方エコーは腫瘍の細胞成分が多ければ増強し,線維成分が多ければ減衰する.乳管に沿って拡がることが多いので,横に拡がる傾向があり縦横比が小さいことが多い.
 図2は63歳女性の乳腺超音波像である.腫瘍辺縁は不整で内エコーの減弱が強く後方エコーの減衰も認められる.また,腫瘍境界部に高エコー像を認め,腫瘍の浸潤性発育が認められる.本症例は組織学的に硬癌であった.硬癌は浸潤性に発育し,線維増生を伴って周囲組織を引き込むような形で発育していく.そのために,超音波像では内部エコーの吸収減衰が大きく,低エコーとして描出され後方エコーの減衰ないしは欠損像として認められることが多い.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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