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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術31巻1号

2003年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

子宮体癌

著者: 安水洸彦

ページ範囲:P.6 - P.10

新しい知見

 子宮体癌は子宮内膜を母組織として発生する癌で,女性ホルモン(エストロゲン)依存性と考えられている.子宮体癌は子宮頸癌とともに子宮癌として総称されるが,この2つの癌は発生原因や生物学的性格がまったく異なっている.以前のわが国では子宮癌の大多数は子宮頸癌であったため,がん検診や治療面で子宮体癌はやや軽視されていたが,人口の高齢化と生活様式の欧米化とともにわが国でも子宮体癌の増加が顕著となり,近年の統計では子宮体癌の治療例数が子宮頸癌(上皮内癌を除く)のそれを凌駕している医療機関も少なくない.したがって,婦人科診療における子宮体癌の重要性は上昇の一途にあると言えよう.

技術講座 生化学

グリコアルブミンの測定

著者: 永峰康孝

ページ範囲:P.11 - P.15

新しい知見

 糖尿病患者のコントロールの指標としては,過去1~2か月間の中・長期的な血糖状態を反映するグリコヘモグロビン(glycohemoglobin;GHb)が広く用いられている.これに対して,より短期の指標としてはグリコアルブミン(glycated albmin;GA)が知られており,治療効果の確認や,GHbの値が異常になる場合に有用といわれている.GAは,従来,HPLC(high-performance liquid chromatography,高速液体クロマトグラフィ)法で測定されていたが,専用装置と長い測定時間を要するため,汎用機器で測定可能な測定法が望まれていた.今回,GAに特異的に反応するプロテアーゼおよびケトアミンオキシダーゼを用いた,汎用機器で測定可能な酵素法が開発され,糖尿病診療前検査としての運用に期待が高まっている.

免疫

HCV関連検査―抗体

著者: 水落利明

ページ範囲:P.17 - P.21

新しい知見

 C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus;HCV)抗体検査キットは,HCVの発見から10数年ほどしか経っていないことからも予想されるように,原理/手法としては比較的新しく,また自動機器を用いて迅速にしかも大量の検体を処理できるものが多い.最近,国立感染症研究所では,厚生労働省審査管理課の指導のもとに,現在国内で販売されているすべてのHCV抗体検査キットについて,それらの性能再点検を実施した.その結果,各キットの特性を理解して使用することを前提にすれば,現在のところ各製品において特段の問題点はなかった.今後もこのような血清学的検査は,遺伝子検出以前のHCV感染スクリーニング法として重要な役割を持つことから,各キットの特徴を十分に理解して適正な使用をすることが望まれる.

HCVコア抗原の検査とその意義

著者: 飯野四郎

ページ範囲:P.23 - P.28

新しい知見

 C型肝炎の診療において,血中のC型肝炎ウイルス(HCV)の存在と量を知ることは非常に重要である.従来,この目的のためには,HCV RNAの定性あるいは定量検査が用いられてきた.しかし,HCV RNAは保存上,安定性に欠け,また,測定上にさまざまな課題と注意点がある.そこで,B型肝炎のようにC型肝炎についても抗原測定が望まれてきた.これに応えて,最近,PCR法によるHCV RNA定量検査に匹敵するHCVコア抗原検査が登場してきた.

オピニオン

病態解析の分離分析手法をどのように伝達するか

著者: 金光房江

ページ範囲:P.16 - P.16

 2002年4月から診療報酬が大幅に減額されました.薬価,医療材料と合わせて2.7%のダウンで,初めてのマイナス改定です.検体検査実施料は10~12%の引き下げで,前回の2000年の改定から引き続いての大きな下げ幅です. 生化学検査は 10%, 免疫化学的検査は 15%, 生理検査は 1%減点されました. まさに ”聖域なき切り下げ” です. このような現状に立って, 分離分析の意義と将来像はいかなるものなのでしょうか.

 さて,分離分析の主な手法としてはクロマトグラフィー法と電気泳動法があります.クロマトグラフィー法のうちイオン交換クロマトグラフィーは物質の表面荷電の違いにより蛋白質や酵素を分離します.ゲル濾過法はセファデックスなどの分子効果を利用して分子サイズの大きさから目的物質を分離します.HPLC(高速液体クロマトグラフィ)法はクレアチニンや尿酸のJSCC(日本臨床化学会)勧告実用標準法として,二次標準血清の標定や日常一般法の正確さの評価に用いられています.

けんさアラカルト

カナダの臨床検査事情

著者: 近藤弘

ページ範囲:P.22 - P.22

はじめに

 私は2001年9月にカナダのオンタリオ州トロントにあるマウント・サイナイ病院で研修する機会を得た.研修目的はカナダの臨床検査技師の資格・教育制度,および臨床検査外部精度管理についての調査であった.ただし,カナダは連邦国家であり,州政府も権限を持つため諸制度が州により若干異なる場合がある.そこで,本稿では訪問したオンタリオ州の現状を中心に記述する.

絵で見る免疫学 基礎編 37

リンパ球の表面マーカー(その4)―抑制T細胞(CD25+CD4+T細胞)

著者: 高木淳 ,   玉井一

ページ範囲:P.40 - P.41

 免疫学の主たるテーマは自己と非自己の識別システムの解明にある.すなわち,外から侵入する非自己の抗原に対して免疫応答をいかに惹起し生体から排除するか,また正常な個体において自己抗原に対する免疫応答をいかに阻止し,自己免疫疾患やアレルギーの発症を阻止するかである.したがって,生体は免疫応答を惹起するシステムと,これを阻止するシステムがバランスを保ち恒常性を維持しているといえる.これらシステムの解明は,自己免疫疾患やアレルギーの阻止のみならず,癌細胞に対する免疫反応の惹起や,臓器移植における拒否反応を抑制することにつながる(図1).

TH1とTH2 のバランス

 CD4+ T 細胞は TH1 と TH2 に分けられる.TH1 はIL(interleukin)-2やIFN(interferon)-γなどを産生し,細胞性免疫系を活性化し,細胞内の病原体を殺すための反応や遅延型過敏反応やマクロファージを活性化し,さらに,臓器移植における拒絶反応や自己免疫疾患の病態形成に関与している.TH2はLI-4,5,6,10,13などを産生し,体液性免疫系を活性化し,B細胞の反応を亢進させる一方,IgE産生,好中球,マスト細胞の活性化などアレルギー反応を増強させ,さらにマクロファージの不活性化などを通じて遅延型過敏反応を抑制する.したがって,TH1とTH2は2つの重要な免疫系を支配している.

ラボクイズ

尿沈渣 1

著者: 伊瀬恵子

ページ範囲:P.42 - P.42

症 例:69歳,男性.C型肝炎で外来受診.膵臓癌と診断されていたが,黄疸症状が出てきたので入院.ほかの基礎疾患として糖尿病,高血圧症がある.表に入院時の検査所見を示した.

 問題1 図1a,bの矢印で示した尿中成分で正しいのはどれか.

 ① チロシン結晶

 ② ビリルビン結晶

 ③ ヘモジデリン顆粒

 ④ リン酸カルシウム結晶

 ⑤ 薬剤結晶

12月号の解答と解説

著者: 平泻洋一

ページ範囲:P.43 - P.43

【問題1】 解答:③

解説:抗酸染色によって直径5μm程度でほぼ均一な大きさの赤色で類円形のオーシストが観察され,クリプトスポリジウム症と診断された.クリプトスポリジウム症は通常Cryptosporidium parvumの感染によって生じる激しい水様性下痢と腹痛を来す原虫感染症である.感染症新法では4類感染症に属し全数把握の対象となっている.HIV(human immunodeficiency virus,ヒト免疫不全ウイルス)感染者における日和見感染症としても知られているが,健常人においても集団発生を起こす場合がある.発展途上国への旅行中の感染が多いが,先進諸国においても水道水やプールの汚染による感染が発生しており,国内では1996年に水道水を介した大規模な集団感染が発生し注目された.

 感染経路はオーシストの経口摂取で,汚染された水,生野菜などが原因となる.潜伏期は通常4~5日であるが極めて感染力が強く,オーシスト数個の摂取で発症する.健常人では数日~2週間程度で自然治癒するが,AIDS(acquired immunodeficiency syndrome,後天性免疫不全症候群)患者などの免疫不全患者では下痢が長期間におよび体重減少と衰弱が著しく,胆囊・胆管,膵管,呼吸器などの腸管外感染を伴い,しばしば致命的になる.クリプトスポリジウムのオーシストは乾燥や70°C以上の加熱で死滅するが,浄水場における塩素消毒や病院などで使用される消毒剤には抵抗性である.

私の必要な検査/要らない検査

肝機能検査

著者: 野村文夫 ,   清水史郎

ページ範囲:P.59 - P.62

はじめに

 いわゆる肝機能検査は,肝臓の機能を直接反映せず,むしろ肝障害時に異常値を示す肝障害マーカーとしてとらえるべきものが多いが,本稿ではさらに広く,肝疾患の検体検査として扱う.必要な検査・要らない検査という表題であるが,肝疾患の検体検査のうち必要な検査は数多く,少数を特定することは困難である.そこで,①現時点では保険収載されていないが,診療上有用で保険収載が望まれる検査,②保険収載されていて日常汎用されているが,近年新たな改良がなされた検査項目例をまず取り上げ,さらに,③保険収載されているが,日常診療上,他の検査項目で代用できるもの,について述べる.

肝機能検査

著者: 加藤眞三

ページ範囲:P.62 - P.64

はじめに

 検査項目で必要,不必要と考えるものを挙げることが本連載のテーマであるが,個々の症例においてある検査はこの時点で不要とか必要ということは可能であっても,一般論としてこの検査が必要とか不要とかいうことは難しい.ここでは一般に肝機能検査として行われている臨床検査の中で,どのような条件下でその検査を必要あるいは不必要と考えるかについて述べたい.

 肝機能検査では,既に生化学的測定項目は健康保険上ある項目以上は点数として加算されなくなる,いわゆるまるめ規制が行われており,さらに2003年からは大学病院をはじめとする特定機能病院の入院患者は疾患別に入院費用全体の包括化が実施されようとしている.そのため臨床の現場では,いかに検査項目をしぼりこむか,そしてどのように効率のよい検査を組み合わせるかが一大問題となっている.肝疾患の患者の外来では生化学的な血液検査が主体であり,10項目以内に抑えることは至難の業である.むしろ見落としなど危険性が危惧される状況にあり,不要と考える検査は近い将来に淘汰されていくであろう.

 以下,私が必要・不必要と考えている検査を逸脱酵素,胆道系酵素など項目別に述べたい.

検査データを考える

膵癌

著者: 北川元二 ,   石黒洋 ,   成瀬達

ページ範囲:P.65 - P.69

はじめに

 膵癌は年々患者数が増加しており,悪性腫瘍による死亡では男性では第5位,女性では第7位となっている.膵癌は消化器の悪性腫瘍のうちでも最も予後不良な癌の1つであるが,早期診断が困難であり,発見されたときには既に手術不能であることが多い.本稿では,膵癌発見における血中マーカーの有用性と効率的な診断法について概説する.

けんさ質問箱Q&A

野口分類とは

著者: 原啓

ページ範囲:P.70 - P.72

Q 野口分類とは

肺癌の分類で野口の分類が使われているようですがこれはどういうものですか,教えてください.(横須賀市 M. K. 生)

A 背 景

  1 . 末梢性腺癌の増加

 肺癌は組織型,発生部位により多様な臨床像を示す癌である.肺癌の主要な組織型には腺癌,扁平上皮癌,小細胞癌,大細胞癌があるが,近年,腺癌の比率が高くなってきている.また,肺癌は発生部位により,気管,中枢の気管支に発生する中枢性の癌と末梢の気管支,肺に発生する末梢性の癌とに二分されるが,こちらも近年,末梢性癌がほとんどを占めている.

悪性症候群とは

著者: 山脇成人 ,   岩本泰行

ページ範囲:P.72 - P.74

Q 悪性症候群とは

悪性症候群とはどのようなものですか.また,早期発見のためにはどうすればよいのか,検査室ではどのようなことができるのかについても教えてください.(宗像市 K. K. 生)

A はじめに

 悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome;NMS)は抗精神病薬の導入から8年後に初めて報告され,抗精神病薬の副作用の中で最も重篤な疾患として,現在では一般科においても広く認知されています.その結果,当初20%前後といわれていた死亡率も最近では10%前後まで低下していますが,依然として精神科領域では死亡率の高い疾患であり,早期発見・治療が予後良好の第一歩です.本稿ではNMSの臨床的特徴・検査所見を中心に解説します.

姿勢を変えると出現するエコーフリースペース

著者: 岩崎信広

ページ範囲:P.74 - P.75

Q 姿勢を変えると出現するエコーフリースペース

腹部エコー検査中にモリソン窩(Mollison pouch),ダグラス窩(Douglas pouch)にエコーフリースペースを認めず仰臥して,肝臓と横隔膜との間にエコーフリースペースを描出する場合があります.フリーエアは(-)です.これはどのように理解すればよいでしょうか,教えてください.(下館市 S. K. 生)

A エコーフリーについて

 音響的に均一な組織で構成されている部位には音響インピーダンスの差がなく,エコーの反射や散乱が生じない.このため,こうした部位はエコーフリー(無エコー)として捉えられる.例えば胆嚢内腔(図1)や嚢胞,脈管内腔などがエコーフリーとなる.すなわち,液状成分などでエコーフリーを示す場合が多い.

Laboratory Practice 血液:骨髄塗抹標本の見かた

FAB分類 [1] WHO分類とFAB分類の比較

著者: 栗山一孝 ,   朝長万左男

ページ範囲:P.30 - P.35

はじめに

 骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)と急性白血病の分類は,French American British(FAB)分類1~5) が世界共通に使用されてきた.FAB分類は,細胞形態学を基本とした臨床的分類法であるが,染色体・遺伝子変異の臨床的重要性が明らかになってくるにつれ,これらも組み込んだ分類法の必要性も高まってきた.世界保健機構(World Health Organization;WHO)は,1999年MDSを含む造血器・リンパ組織悪性腫瘍の分類法を発表した6,7).このWHO分類では,FAB分類に含まれない病型や特定の染色体・遺伝子変異を有する病型を取り上げた新たな包括的な分類法と位置づけられる.

病理:細胞像からここまでわかる

体腔液(2) 悪性中皮腫

著者: 堀内啓 ,   伊藤光洋 ,   松谷章司

ページ範囲:P.36 - P.39

臨床的特徴(図1,2)

 悪性中皮腫は胸腔,腹腔,心嚢の表面を覆う中皮から発生する悪性腫瘍である.アスベストを扱う職業の人に多く発生し,アスベストへの曝露と悪性中皮腫の発生が関連していると考えられている.アスベストへの曝露から発症まで平均35年を要す.好発年齢は50~70歳で,男性が女性より数倍多い.症状は緩徐で,初発症状は胸痛と呼吸困難が最も多い.90%くらいの症例で,病初期に体腔液の貯留を伴い,診断における細胞診の役割が重要となる.予後は非常に悪く,平均生存期間は発症から12~15か月である.悪性中皮腫は,漿膜に多発性の結節として発生し,進行すると漿膜全体に腫瘍が浸潤して肥厚し,体腔内の臓器を取り囲むようになる.組織学的には,悪性中皮腫は多彩な組織像を示し,鑑別すべき腫瘍も多く,診断が難しい腫瘍の1つである.


細胞像(図3~9)―細胞学的特徴

( 1 )豊富な細胞集塊の出現

トピックス

椎骨動脈の超音波検査

著者: 斎藤こずえ ,   長束一行

ページ範囲:P.77 - P.79

はじめに

 近年,脳梗塞急性期における超音波検査の有用性が唱えられているが,特に椎骨動脈系に関しては,頭部CTなどのスクリーニング検査では評価困難であることが多く,超音波検査は簡便で有用であるといえる.適応としては急性期脳梗塞のみならず,めまいやふらつきなどの自覚症状の精査や鎖骨下動脈盗血症候群の診断などにも有用である.

今後の臨床検査技師の就業者状況の推定

著者: 松下誠 ,   鈴木優治

ページ範囲:P.79 - P.80

はじめに

 臨床検査技師は,1970年に臨床検査技師,衛生検査技師等に関する法律が公布されたのを機に誕生した.この間,医療の中における臨床検査は急激な発展を遂げ,現在ではその役割はほぼ確立されつつある.そのため,臨床検査技師就業者の伸びは,以前のような右肩上がり需要ではなく,ほぼ安定期に達したものと推測できる.以下に,これらのことを踏まえた今後の臨床検査技師就業状況の見通しについてのわれわれの調査結果1) を説明する.

高脂血症診療新ガイドライン

著者: 馬渕宏

ページ範囲:P.80 - P.83

はじめに

 高脂血症の臨床的意義は,ほとんど唯一,動脈硬化とくに冠動脈疾患の原因として重要である.動脈硬化の危険因子は高脂血症,高血圧,糖尿病,喫煙など多数知られている.個々の患者のすべての危険因子を総合的に評価するグローバル・リスクを算出して,適切に対応できるテーラーメイド医療を目指したガイドラインが求められている.

ミニ移植

著者: 和田尚 ,   中山睿一

ページ範囲:P.83 - P.85

はじめに

 従来,悪性リンパ系腫瘍に対する治療法として,化学療法や全身放射線照射が用いられてきた.これらの治療では,結果として骨髄が破壊されるため,ヒトからヒト(同種)への造血幹細胞移植(骨髄細胞移植を含む)を行い対処してきた.ところが,移植した造血幹細胞に抗腫瘍効果が認められたことから,逆に造血幹細胞移植のために免疫抑制剤を使うようになったのである.この場合に,移植した造血幹細胞の生着に必要な前処置としての免疫抑制には,宿主の骨髄機能を徹底的に根絶する必要がないこともわかった.このような前処置を,従来の骨髄破壊的(myeloablative)前処置に対して,骨髄非破壊的(non-myeloablative)前処置と呼んでいる.骨髄非破壊的前処置を用いて移植した同種造血幹細胞により抗腫瘍効果を期待する治療法を総括的に“ミニ移植”と呼んでいる.

二級臨床病理技術士実技試験のポイント

循環生理学

著者: 立石修

ページ範囲:P.44 - P.45

はじめに

 循環生理学二級臨床病理技術資格認定試験は例年7月末の土曜(筆記試験),日曜(実技,口頭試験)に行われる.この試験の目的は実地臨床の即戦力となる技能が習得されているかを判定することであり,試験範囲は二級臨床病理技術士資格認定試験範囲に記載されている.しかし,近年のME機器の進歩に伴い試験合格のために要求される技能は以前と比べ格段に増えてきており,試験合格のため,どこまで押えておくべきか迷う受験生もいると考えられる.ここでは筆者が主任試験官であった2002年度の試験を中心に実地試験および口頭試験のポイントについて概説する.

ワンポイントアドバイス

コスト指数による検査室評価(3)―何ができるか

著者: 関根敏治

ページ範囲:P.46 - P.47

 前回は代表20項目平均コスト指数について算出結果を紹介しました.今回はコスト指数を用いた応用事例(何ができるか)と指数計算プログラムを紹介します.

  コスト指数を用いた応用事例

  1 . 検査室評価の判断指標 検査室コストにつき相対的な数値評価が行われるため,客観的な判断の指標となります.また施設内での項目別年度支出推移や,他施設との相対的評価などの指標となります.

検査じょうほう室 一般:一般検査のミステリー

尿沈渣中にシスチン結晶を認めないシスチン尿症

著者: 久保俊美 ,   山本慶和 ,   松尾収二

ページ範囲:P.48 - P.49

はじめに

 同一患者において尿中のシスチン結晶が,検出されたり,されなかったりするとしたらあなたはどう考えますか.私たちは,尿沈でシスチン結晶の出現の仕方が異なる2症例に遭遇しました.シスチン結晶が検出された患者尿にはいつも結晶が検出されるものだと思っていた私たちは戸惑ってしまいました.何故だろうと思い,シスチン結晶の出現の仕かたについて検討しました.結果は単純でしたが,不思議だなと思ったことを突き詰めることの大切さを学んだ症例でした.

免疫:レベルアップに役立つ免疫検査の知識

蛋白質の電気泳動パターンの臨床解釈を教えるコンピュータプログラム―電気泳動 Tutor

著者: 劉澤軍 ,   前川真人

ページ範囲:P.50 - P.51

はじめに

 血清,尿および脳脊髄液の蛋白電気泳動は,多発性骨髄腫,アミロイドーシス,マクログロブリン血症,多発性硬化症およびそのほかの疾病の診断を支援することができる. 本 電気泳動 Tutorは150のデジタル画像に基づいたパソコンプログラムであり,アガロースゲル電気泳動パターンの臨床解釈を教授できる.

生化学:おさえておきたい生化学の知識

二価の金属イオンを用いないHDL-C測定法の測定原理

著者: 木村正弘

ページ範囲:P.52 - P.54

はじめに

 脂質の運搬を司どるリポ蛋白は,超遠心法によって,高比重リポ蛋白(high density lipoprotein;HDL),低比重リポ蛋白(low density lipoprotein;LDL),超低比重リポ蛋白(very low density lipoprotein;VLDL),カイロミクロン(chylomicron;CM)などに分けられます.リポ蛋白の構造は,表層部に蛋白質(アポリポ蛋白),リン脂質(極性基+脂肪酸残基),遊離型コレステロール(free cholesterol;FC)が存在し,中心部に中性脂肪(トリグリセリド)とエステル型コレステロール(cholesterol ester;CE)が存在する球状と考えられています1).リポ蛋白のうちでもHDLは抗動脈硬化作用を有することから,このリポ蛋白中に含まれるコレステロール,すなわちHDL-コレステロール(FC+CE)を定量することは臨床的に重要な意味を持ちます.その測定方法は“超遠心法”が基準法ですが,特殊な機器を必要とし,測定操作も煩雑であることから,一般の検査室では数々のポリアニオン(ヘパリン,デキストラン硫酸,リンタングステン酸など)と二価の金属イオン(Mg2+,Ca2+ など)を組み合わせたHDLのみを分離するための“沈澱分画法”が広く用いられていました.現在では自動分析器を使って,化学的な手法でHDLのみに含まれるコレステロールを定量するホモジニアスアッセイ(homogeneous assay,直接測定法:直接法)が開発され, いまでは HDL-コレステロール(HDL-C)測定法の主流となっています.

管理運営:よりよい管理運営を目指して

検査情報室を運営して

著者: 山口賀久

ページ範囲:P.56 - P.57

はじめに

 十数年前,それはまだ,オーダリング,レポーティングが用紙で運用されていたころである.突然に検査情報室の業務を言い渡され,データ管理検体管理室の一角で,その業務をスタートした.どのような必要性から発生したのか定かでないが,各科からの問い合わせがタライ回しされる場合がよくあることや,外注検査関係に対応できる部屋がなかったことが大きな理由であったように思う.

 実際業務がスタートすると,検体の容器から運用面の細部にわたり認識されていないことの多さに驚かされることばかりだった.臨床の現場に立つ人々が検体容器のすべてを認識することの困難さ,それは検体が容器違いで返却されるという結果をもたらすのであるが,検査室単位で仕事をしていたときには思いもつかなかったことである.外注検査の検体の保存方法1つ取ってみてもガイドマニュアルがあれば簡単に判断できることであるが,当時は臨床検査部のマニュアルや運用マニュアルすら作成する予算もなく,研修医のオリエンテーション本で毎年紹介していたのと,薬剤部の薬剤一覧の最後に正常値一覧を便乗させてもらっていたのがただ1つの救いであった.

 1994年,病院の移転に伴い,他病院では既に行われつつあったコンピュータシステムを検査部にも導入することになった.大型ラベラーを有する検査部は,登録されたオーダーの容器作製を入院外来患者分すべて準備した.時間に間に合わなかった通常検査オーダーや緊急検査オーダーに関しては,各科でラベルを容器に貼り作製を担当している.

 検査情報室もシステムの導入によってその業務も大きく変化して行くことは予想されたことではあったけれど,検査オーダーの方法,特に予約検査の場合,運用面での各科からの問い合わせが増えたことは容易に理解できた.オープン当初,発生する情報量の多さにコンピュータはスローダウンして業務に支障を来し,プログラムの見直しがなされた.さらに5年後,システムはWin 3.1からWinuNTに移行し,運用ソフトの改善,追加,ハードの強化も行われたが,障害発生ごとにその改良もなされ現在に至っている.

今月の表紙

膵臓超音波像

著者: 永江学

ページ範囲:P.85 - P.85

 【解説】 図1は62歳女性の膵臓超音波像である.食欲不振で上腹部超音波検査を施行したところ,膵臓頭部に囊胞性病変を認めた.その後ほかの画像診断などを行い膵囊胞であることが確認された.膵囊胞の超音波像はほかの囊胞像と同様に内部無エコー,辺縁明瞭,後方エコーの増強である.本症例では後方エコーの増強は明瞭ではなかった.囊胞性病変を認めたときには腫瘍性かどうかが問題となるが,超音波像のみから鑑別することは困難な場合が多い.また,仮性動脈瘤も念頭に置いてできればカラードプラ法を併用すると鑑別診断は容易である.

 図2は73歳男性の膵臓超音波像である.悪心,嘔吐および心窩部痛を認め受診した.血液・尿検査でアミラーゼの上昇を認め急性膵炎の疑いで超音波検査を施行した.膵臓全体は不明瞭な像を呈し,周囲に低エコー領域(fluid collection)を認め炎症による滲出液貯留が観察された.一般的に超音波では急性膵炎の診断として直接所見の膵腫大,膵実質低エコーまたは不均一に点在する点状エコーと間接所見の膵周囲の低エコー域がある.本疾患では超音波検査がfirst choiceとなるが,病期によって超音波像が異なる.また,消化管ガスの影響で膵自体が描出不能で超音波所見が得られないものが約20%あるとの報告もある.本例はムンプスウイルス感染による急性膵炎の症例である.

検査センター悲話・秘話・疲話

■第9話■結果報告にまつわる問題点―続編

著者: ラボ検査研究会

ページ範囲:P.55 - P.55

■第9話■ 結果報告にまつわる問題点―続編

 今回は報告形態にまつわるエラーについて,最近の事例を紹介します.特に重要なのは,報告書の配達を待てないような緊急データの報告です.検査センターとオンライン接続されていても,緊急検査は電話やFAXでの報告を求められることが多いのです.

【電話での口頭報告時の間違い】

 相手の確認はFAXに比べ容易ですが,検査センター側のデータ読み上げミス,聞き取りミス,さらに担当医の耳に入るまでの間に伝達ミスが生じることもあります.医療機関と電話を受ける担当者など電話報告に関してあらかじめ打ち合わせ,できれば確認書をとっておくことが望ましいでしょう.検査センターとしては確認の難しい問題であり,正式な報告書が届くまで気付かれないこともあります.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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