輸血副作用の現状
著者:
田山達也
ページ範囲:P.778 - P.779
2003年,医療機関から血液センターに報告された輸血副作用(疑いを含む)の症例数は,非溶血性副作用1,307件(81.4%),輸血感染症256件(15.9%),溶血性副作用25件(1.6%),輸血関連移植片対宿主病(transfusion associated-graft versus host disease,TA-GVHD)およびその他3件の計1,606件であった(図,仮集計).報告数は年々増加しており,特に2003年は輸血感染症報告が対前年比1.8倍に増加したことが特記される.
非溶血性副作用では,例年,蕁麻疹や発熱などの軽微な副作用が70%程度を占める一方で,アナフィラキシー(様)反応および血圧低下を伴ったアナフィラキシー(様)ショック,血圧低下や呼吸困難などの重篤な副作用が20%程度報告されている.血液センターは,これらの症例について抗HLA抗体,抗血小板抗体,抗顆粒球抗体,抗IgA抗体など約15種類の血漿蛋白質抗体および血漿蛋白質欠損を調査している.血漿蛋白質欠損症例は,重篤な副作用として報告されることが多く,1997年から2003年までにIgA欠損4例,ハプトグロビン欠損13例,C9欠損3例が確認されている.IgA欠損者が数百人に1人とされる欧米に比べて,日本人のIgA欠損者は数万人に1人と少ない.一方,日本ではハプトグロビン欠損者は4,000~9,000人に1人と欧米より多く,輸血副作用の原因となっている.これらの症例の再発防止には,次回以降の輸血で洗浄した血液製剤を用いるか,ステロイド剤の前投与などの処置を行うことが有効である.