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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術34巻6号

2006年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

子宮癌

著者: 板持広明 ,   寺川直樹

ページ範囲:P.504 - P.509

サマリー

 子宮癌は性質の異なる子宮頸癌(頸癌)と子宮体癌(体癌)とに二分される.頸癌はHPV(human papillomavirus,ヒトパピローマウイルス)感染が発症原因であり,子宮がん検診の普及や近年の生活習慣の変化により症例の若年化とともに早期癌症例が増加している.一方,体癌の発生にはエストロゲンが関与している.食生活の欧米化や高齢化により近年増加傾向にあり,2003年には浸潤子宮癌の45%を占めるほどになった.両疾患とも初発症状は不正性器出血であり,早期癌であれば完治する可能性が高い.スクリーニング検査としては細胞診が有効である.腫瘍マーカーは治療効果の判定や再発の診断に有用である.また,PETを含む近年の画像診断の進歩は著しく,診断精度の向上や治療の補助として役立っている.

結核

著者: 佐々木結花

ページ範囲:P.510 - P.514

サマリー

 肺結核は,再興感染症として注目を浴びており,世界的にみてもわが国の結核罹患率は中蔓延状態を呈している.結核菌は空気感染形式をとり,周囲に感染が拡大する要因として,喀痰塗抹陽性者が早期診断なされないことが挙げられる.確定診断は菌の検出であり,現在,均等化後遠心集菌材料を用い,塗抹・培養検査を行う.治療はINH(イソニコチン酸サリチル酸),RFP(リファンピシン)を中心とした複数の抗結核薬を組み合わせて投与する.一定期間確実な服薬を行わなければ薬剤耐性菌の出現も生じるため,服薬支援としてDOTSが世界的に行われている.本邦における菌陽性肺結核患者の死亡率は10.1%と不良である.公衆衛生学的見地から結核を封じ込める対策を今後も継続する必要がある.

技術講座 生理

終夜睡眠記録の導出・記録のポイント

著者: 川名ふさ江

ページ範囲:P.515 - P.523

新しい知見

 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome,SAS)に対する認識が高まり,臨床データが蓄積されてSASと他疾患との関連性が注目されている.特にSASの代表的な合併症である高血圧に始まる狭心症,心筋梗塞などの心血管疾患や心不全では,中枢型無呼吸(central apnea,CSA)やチェーンストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration,CSR)の存在が明らかとなって,その治療法が論議されている.また消化器疾患の胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease,GERD)のSAS合併が報告されている.以前は成人病といわれた病態が生活習慣病となり,今はメタボリックシンドロームとして新たな診断基準が打ち出されているが,そのメタボリックシンドロームとSASとの関係も注目されている.

病理

迅速蛍光免疫法による乳癌センチネルリンパ節検索法

著者: 棟方哲

ページ範囲:P.525 - P.529

新しい知見

 乳癌手術時のセンチネルリンパ節生検は術後にリンパ浮腫,精神的苦痛など副作用の多い腋窩リンパ節郭清の要否を決めるため,乳癌手術時に行われている.術中という限られた時間に感度の高い転移巣の検索をするために捺印細胞標本を用いた迅速蛍光免疫法が開発された.この方法は染色時間10分と術中に十分応用可能であるのみならず,この方法による転移巣検出感度は凍結組織検査,永久組織検査,パパニコロウ染色(Papanicolaou stain)による捺印細胞診検査より高いことがわかった.スクリーニングも比較的容易であるため,感度の高い術中検査としての応用が期待される.

疾患と検査値の推移

マイコプラズマ肺炎

著者: 稲見由紀子 ,   石和田稔彦

ページ範囲:P.531 - P.535

疫学

 Mycoplasma pneumoniae(以下,Mp)は年齢を問わず呼吸器感染症の主要な起因病原体である.マイコプラズマ肺炎は,成人の市中肺炎の5~9%を占め,肺炎球菌,インフルエンザ菌に次いでMpは市中肺炎の主要な病原体として知られる1).小児市中肺炎では10~20%がマイコプラズマ肺炎で,特に6歳以上では6割を超すことが中村によって報告されている2)

 感染源はヒトのみであると考えられている.飛沫感染で伝播し,潜伏期間は1~3週間である3).かつて4年ごとに流行が記録されていた疾患だが,現在ではこの傾向は崩れ,小流行を繰り返している.また季節を問わず流行がみられる.学童から若年者に好発するといわれてきた疾患だが,乳幼児4,5),高齢者にも感染を起こすことが明らかとなっている.

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第52回臨床検査技師国家試験 解答と解説

ページ範囲:P.579 - P.615

オピニオン

検査部を飛び出し,病院のチーム医療に積極的に参加しよう

著者: 益田順一

ページ範囲:P.530 - P.530

 国立大学附属病院検査部は,この10年間の激動の時代にあって,変革の嵐のなかでいばらの道を歩んできた.とりわけ,ミレニアムを迎えた2000年(平成12年)以後は,法律の改正や文部科学省の提言といった形で,自分たちの力が及ばないところからの外圧によって押し付けられるように,変革を迫られてきた.そのため,自分の大学で懸命に努力をしても報われないといった感触が強く,ストレスの多い時代が続いてきた.

 もともと国立大学検査部は,私立大学や一般の病院の検査部とは異なり,文部科学省の下で財政的に一定の配慮がなされ,新しい部署の設置や機器の導入を護送船団方式で次々に概算要求を続け,実現してきた.国立大学検査部会議や輸血部会議はそんな情報交換の場であり,ある意味では有効に機能していた.21世紀が近づき,右肩上がりの成長を続けている時代が過ぎた頃から大学間の競争の時代になり,会議の雰囲気も変わってきた.

ワンポイントアドバイス

髄液細胞分類のためのペルオキシダーゼ迅速染色法

著者: 池亀彰茂

ページ範囲:P.552 - P.553

 髄液の細胞分類検査は,各種中枢神経系疾患における病態スクリーニング検査法として臨床的有用性が高い緊急検査の一つです.

 従来から,サムソン液(Samson solution)を用いて染色した後,フックスローゼンタール計算盤(Fuchs-Rosenthal hemocytometer)上で鏡検する視算法が広く用いられています.しかし,視算法は単染色,低倍率で鏡検するため細胞形態の詳細観察に限界があり,しばしば確認手法としてギムザ染色(Giemsa stain)や各種特殊染色が追加されることがあります.これらの方法は遠心操作などにより細胞収集を行ったうえで塗抹乾燥標本を作製するために多量の髄液検体が必要であり,煩雑な操作と長時間とを要するなどの問題点がありました.

今月の表紙

急性骨髄性白血病 FAB分類M4Eo

著者: 寺島道子 ,   東克巳

ページ範囲:P.524 - P.524

 今回は,FAB分類のM4Eo(myelomonocytic leukemia with eosinophilia)を取り上げた.FAB分類(French-American-British classification)のM4EoはWHO分類ではacute myeloid leukemiasのなかの染色体異常を伴うacute myeloid leukemia with recurrent cytogenetic abnormalitiesのAMLwith inv(16)(p13q22)or t(16;16)(p13;q22),(CBFβ/MYH11)となる.

 FAB分類のM4Eoは,骨髄中の芽球〔typeⅠおよびtypeⅡ:少数のアズール顆粒やアウエル小体(Auer body)を認める〕が全骨髄有核細胞から非造血細胞(リンパ球,形質細胞,肥満細胞,マクロファージ)および赤芽球を除外したNEC(nonerythroid cell:bone marrow cells excluding erythblasts)の30%以上で,顆粒球系および単球系細胞が20%以上,赤芽球系細胞が50%未満とされている.さらに芽球のPOD(peroxidase,ペルオキシダーゼ)反応もしくはSBB(sudan black B,ズダン黒B)染色の陽性率が3%以上とされている.M4に類似しているが,骨髄にて異常顆粒を有する好酸球がNECの5%以上認められるとされている.また染色体検査では,inv(16)(p13q22)の核型異常が認められる.

ラボクイズ

髄液細胞 1

著者: 大田喜孝

ページ範囲:P.536 - P.536

 症例1:4歳,男児.

 3日ほど前より咳,鼻水などの風邪様症状があり,やや不機嫌であったが熱はなく,そのまま様子をみていた.当日の夕食はあまり食べず,いつもより早く就寝した.深夜2時ごろ38.5℃の急な発熱,嘔吐を認め,意識不明瞭で名前を呼んでもはっきりと返事をしないため,当院の夜間救急外来を受診した.

 患児は傾眠状態にあり,項部硬直を認めたため,腰椎穿刺による髄液検査を施行した.

5月号の解答と解説

著者: 喜舎場智之

ページ範囲:P.537 - P.537

【問題1】 解答:③ALP63IU/l

解説:まず,血液検査の結果には胆道系酵素,T-BIL,AMY,炎症マーカーの上昇がみられる.このことから黄疸,急性肝炎,急性膵炎などが考えられる.次に既往歴の総胆管結石を含めて考えると,「総胆管結石による閉塞性黄疸で胆管炎を合併しているのでは?」と考えることができる.さらに,CRPが10mg/dlと高値を示し,ここ数日の間に発症していることから,急性閉塞性化膿性胆管炎を疑うことができる.腹部超音波検査で拡張した総胆管とその内部に結石を認めたことから,上記疾患を強く疑う.

 さて,検査データの入力間違いは何か?

復習のページ

pH色素の蛋白質誤差

著者: 鈴木優治

ページ範囲:P.554 - P.555

[蛋白質誤差とは何か]

 pH指示薬(色素)はpHにより連続的に変色(色調変化)するため溶液pHの測定に用いられる.しかし,蛋白質の存在下においては,“蛋白質誤差”と呼ばれる溶液のpH変化とは全く関係のない変色を起こす.蛋白質誤差とは,溶液pHが一定に保持されているにもかかわらず,蛋白質があたかも溶液pHが変化したかの如くpH指示薬を著しく変色させる現象である.例えば,pH2.4の緩衝溶液に溶解したブロムフェノールブルー(bromphenol blue,BPB)溶液は黄色であるが,この溶液にヒト血清アルブミンを加えると,BPB溶液はただちに緑色~青色に変色する(図).

 蛋白質の非存在下では,BPBの黄色から緑色~青色への変色はpHの上昇を意味するが,蛋白質添加後にもBPB溶液のpHは蛋白質添加前のpHと同じであるので,蛋白質添加による変色は蛋白質と色素の相互作用によりもたらされたことになる.このようにpH変化ではなく蛋白質により引き起こされる変色がpH指示薬の“蛋白質誤差”である.

どうする?パニック値 生化学

9.アンモニア濃度高値

著者: 真治紀之 ,   小出典男

ページ範囲:P.550 - P.551

当院の基準

 血中アンモニアの測定法には,酵素法,微量拡散法,イオン交換法,直接比色法などがあり,それぞれ基準値が異なる.血球中のアンモニアのため検体が全血の場合,基準値が高目である.ただしドライケミストリーでは同様な値を示す.近年では,酵素法が一般的である.表1に血中アンモニアの基準値を示す.当院は酵素法を採用しており,基準値は7~39μmol/l(当院の単位はμmol/l)である.

 当院では臨床アンケートによってパニック値を設定しているが,アンモニア窒素に関してはそれによる設定はされていない.ただし300μmol/l以上をパニック値として報告している.

連載 失敗から学び磨く検査技術 病理標本作製法

細胞診のアーティファクト―検体採取,塗抹,固定に由来するアーティファクト―核線

著者: 阿部仁

ページ範囲:P.542 - P.544

 標本に見られる,この線のようなものは何だろうか.混じり込んだものなのか,それとも標本に由来するものなのか.

 図1は喀痰のパパニコロウ染色(Papanicolaou stain)である.ヘマトキシリンに染色された線維状の物質が観察される.図2はリンパ節捺印材料のギムザ染色(Giemsa stain)である.パパニコロウ染色と同じような線維状の紫色の物質が観察され,核との移行像も見られる.これらは,核が壊れて線維状になったもので,核線といわれる.

臨床医からの質問に答える

インフルエンザウイルスの抗原検査について質問された

著者: 木下承晧

ページ範囲:P.545 - P.549

 はじめに

 インフルエンザは,ヒトからヒトに伝播する感染症であり毎年流行がある.わが国では感染症法のインフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)は五類感染症定点把握疾患に定められており,インフルエンザ定点医療機関の報告が義務づけられている1).流行は空気が乾燥する冬季の11月から4月にかけて起こるが,夏季にも発症例がある.感染は,ウイルス粒子を含んだ咳やくしゃみによる分泌物が気道粘膜に付着する飛沫感染や鼻汁などによる接触感染である.

 発症は24~48時間の潜伏期間を経て,急激な発熱,悪寒,関節痛などを伴う急性型であり,通常は1週間で自然に治癒し,風邪症候群とは異なる.表1に示すとおり突然の発症があり,38℃以上の発熱の持続,上気道症状を伴う全身倦怠感がある場合は,臨床的にインフルエンザと診断される2)

 従来,インフルエンザの診断は医師による臨床診断を中心に行われていたが,近年,インフルエンザ抗原の迅速測定キットが用いられるようになり,早期診断と治療とが急速に普及するようになった3~7)

Laboratory Practice 血液:末梢血血液像における鑑別困難な血球・6

血小板

著者: 小池由佳子 ,   東克巳

ページ範囲:P.538 - P.541

 はじめに

 末梢血液中には赤血球,白血球,血小板の三系統の血球が存在し,それぞれ組織への酸素の運搬,貪食・殺菌作用や免疫反応の制御,止血機構に重要な役割を果たしている.末梢血液検査は全血検査(complete blood count,CBC)とも呼ばれ,血球数(白血球:white blood cell,WBC.赤血球:red blood cell,RBC.血小板:platelet,Plt),へモグロビン(血色素:hemoglobin,Hb),ヘマトクリット(hematocrit,Ht),赤血球指数(平均赤血球容積:mean corpuscular volume,MCV.平均赤血球ヘモグロビン量:mean corpuscular hemoglobin,MCH.平均赤血球ヘモグロビン濃度:mean corpuscular hemoglobin concentration,MCHC)の基本8項目と白血球分画の異常や形態の異常,網赤血球の増減,赤血球形態,血小板形態観察などを行う.

 ここまで末梢血血液像における鑑別困難な血球と題して,シリーズで判断に迷う細胞の鑑別のポイントを概説してきたが,今回は血小板とその異常とを取り上げ解説する.

検査じょうほう室 生理 心電図の読みかた・6

不整脈の読みかた その2―上室性頻脈

著者: 岸良示

ページ範囲:P.556 - P.560

 正常な心臓では毎分50~100回,洞結節で電気的興奮が発生し,その興奮が心房,心室に伝わり心拍数50/分以上100/分未満となる.頻拍は心拍数100/分以上となるもので上室性頻脈はその原因が上室,すなわち心房あるいは房室結節にあるものをいう.正常な心臓でも運動や精神的興奮により,洞結節の電気的興奮の頻度が増し心拍数100/分以上となる.いわゆる洞性頻拍で上室性頻脈の一つといえる.安静時にこれがみられる場合,原因が何かを検索する必要がある.検査による緊張が原因であれば問題ないが,貧血,心不全,低酸素血症,甲状腺機能亢進症などが原因であることがある.

 その他の上室性頻脈として心房細動,心房粗動,発作性上室頻拍,促進性房室接合部調律が挙げられ,いずれも上室に頻回の興奮発生の起源やリエントリの回路があるか,リエントリの回路に上室が含まれる.上室性頻拍は上室に頻拍の成因があり,心室興奮は房室結節,ヒス束(His bundle)を通って拡がることが多いため原則的にQRS幅は狭くなる.QRS幅が広くなるのはもともと,あるいは心拍依存性に脚伝導に異常がある場合と,頻拍の際の心室の興奮に副伝導路の順行伝導がかかわる場合とである.

生化学 腫瘍マーカー・4

膵癌・胆道系腫瘍マーカー―CA19-9を中心に

著者: 多田稔 ,   川邊隆夫 ,   小俣政男

ページ範囲:P.561 - P.563

膵癌・胆道癌における腫瘍マーカー

 解剖的な位置関係のため消化器癌のうちで最も組織採取が難しく病理学的な確定診断の得にくい膵癌・胆道(胆管・胆嚢)癌では,癌の補助的診断として,または画像的に捉えにくい癌治療効果判定を補う意義として腫瘍マーカーの重要性は高い.CA(carbohydrate antigen,糖鎖抗原)19-9,CEA(carcinoembryonic antigen,癌胎児性抗原)を中心にSpan-1,DUPAN-2,SLX(sialyl Lewis X-i antigen)などが代表的であり,さらに膵癌独自の腫瘍マーカーとして随伴性膵炎を反映したエラスターゼ1も使用される.古典的な腫瘍マーカーではないが遺伝子異常が解明されてきており,特に膵癌のK-ras遺伝子変異は有名である.疑わしい細胞や組織の遺伝子を調べる方法であり血清で測定する通常の腫瘍マーカーとは異なるが,得られた細胞や組織の病理学的診断が難しい場合にK-ras遺伝子変異解析は癌の指標として使用可能で,これも広義の腫瘍マーカーといえよう1)

 最も古典的な腫瘍マーカーであるCEAの出現後,抗原性の弱い糖鎖に対する抗体を測定する手法が開発され,モノクローナル抗体として1979年にCA19-9,これに続き1980年代にSpan-1,DUPAN-2などが出現した.CEAは膵癌のほか多種の癌で上昇し,かつ陽性率は50%程度に留まる,Span-1,DUPAN-2などはCA19-9と比べると慢性肝疾患などで疑陽性率が高いなどの理由で,現在でも膵癌・胆道癌の腫瘍マーカーはCA19-9が中心である.ただし,ルイス抗原(Lewis antigen)系の影響によりCA19-9が偽陰性となる場合はこれらのマーカーが代用される.また,DUPAN-2はその他の腫瘍マーカーとの相関が低いとされ,組み合わせにより診断率が向上する.CA19-9,Span-1,DUPAN-2などはⅠ型糖鎖に分類されるのに対して,SLXはⅡ型糖鎖に分類され,陽性率は50%程度と若干低くなるが,ルイス抗原系の影響は受けない利点がある.

微生物 感染症検査の迅速化・2

炎症反応

著者: 三木誠 ,   渡辺彰

ページ範囲:P.564 - P.566

 はじめに

 炎症反応検査には,赤血球沈降速度(赤沈),CRP(C-reactive protein,C反応性蛋白質),シアル酸,アミロイドA,プロカルシトニンなどがある.赤沈は安価で簡便であるが判定が難しく,古典的な検査となっている.現在,信頼性・迅速性などの点からCRPが最も普及し,炎症反応の診断・フォローアップに用いられている.シアル酸は,赤沈とCRPとの長所を越えず,使用の機会が失われている.アミロイドAとプロカルシトニンは,CRPの弱点を補う検査法として有用である.

 以下,各検査法の特徴と迅速性について言及する(表1).

けんさ質問箱Q&A

白血球数が高値の場合,視算法での確認を要するのはどれくらいの数値からか

著者: 常名政弘

ページ範囲:P.567 - P.568

血算で白血球数が高値の場合,視算法での確認を要するのはどれくらいの数値からでしょうか.当院では3万個/μl以上の場合に視算しています.ご教示ください.(東京都M.A.生)

 はじめに

 自動血球計数装置の進歩は目覚しく,溶血剤の改良,フローサイトメトリーの導入などのさまざまな技術開発により,血算や白血球5分類のほかに今では各芽球や幼若白血球および異型リンパ球などのスクリーニングにも応用可能となっている.また,有核赤血球や破砕赤血球の定量化も一部の測定機器では可能となるなど,今後も技術開発により臨床上有用な情報の提供が期待されている.一方,自動血球計数装置は精密性に優れているが,正確性ではやや劣ると思われ,測定原理を理解して機器を使いこなすことが非常に重要である1~2)

血清NTX測定でクレアチニン補正をする理由は?

著者: 三浦雅一

ページ範囲:P.569 - P.571

血清NTXを測定するとき,クレアチニン補正が必要な場合とそうでない場合とがあります.どういうときに,なぜ必要となるのか,その理由を教えてください.(東京都 M.K.生)

 Ⅰ型コラーゲン架橋ペプチドとは

 Ⅰ型コラーゲンは生体内では最も多いタイプのコラーゲンで,骨では有機基質の90%以上を占める主要な蛋白質である.このコラーゲン線維の構造を保持しているのが,コラーゲン線維内の三価のハイドロキシピリジウム架橋〔ピリジノリン(PYD)およびデオキシピリジノリン(DPD)〕で,これらは人体の多くのコラーゲン線維中に存在し,骨,皮膚,腱などに広く分布している.Ⅰ型コラーゲンは2本のα1鎖と1本のα2鎖とが3本らせん状にねじれ合ったヘリックス構造を形成しており,N末端部分(NTX)とC末端部分(CTX)に非らせんのテロペプチドを持っている.コラーゲンが成熟架橋であるピリジニウム架橋は,このN末端テロペプチド2本とヘリックス部分との間およびC末端テロペプチド2本とヘリックス部分との間には三価の架橋として形成される.これらの架橋成分は骨吸収によりⅠ型コラーゲンが分解されると,血中に放出され尿中に排泄されることから骨吸収マーカーとして注目されている(図1)1)

トピックス

認定一般検査技師制度

著者: 今村文章

ページ範囲:P.572 - P.573

 はじめに

 (社)日本臨床衛生検査技師会(以下,日臨技)は臨床検査技師(以下,技師)および臨床検査の質の向上に向けて検査室運営の改善,身分制度の改善,会員個々のスキルアップ,キャリアアップを目指しさまざまな計画を立て事業を進めている.

 特にスキルアップ,キャリアアップ支援として一般教育研修課程と専門教育研修課程とから成る日臨技生涯教育制度,認定検査技師制度,技師に関する資格制度への参画を柱としている.近年,技師の業務内容については拡大をみせており,なかには専門学会などの学術的母体のない業務もあり,そのような業務にかかわる会員の認定に対する要望も強いことから今回,一事業として認定制度を開始することになった.

 本制度の構築に当たり,最も重要視したことは技師が各種要件を満たす技術と知識とを有していればなんらかの認定試験を受けられるという認定の公平性と広く第三者から評価される質とを担保することから,その認定を外部組織に委ねることにし“認定センター”を第三者機関として設置することとした.今後は私的な認定の乱立を避け,信頼性が高く公に認められる認定の構築を目指し,その傘下に各種の認定を組み入れていくことになる.その第一弾として認定一般検査技師制度を挙げ進めてきたので,その内容や進捗状況などについて紹介する.

急性期DIC診断基準

著者: 松野一彦

ページ範囲:P.573 - P.578

 DICとは

 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)とは,悪性腫瘍,白血病,重症感染症,常位胎盤早期剝離などの産科疾患,重症の熱傷などの基礎疾患に起因して血液凝固亢進状態が起こり,血管内に微小血栓が形成され循環不全から各種の臓器症状が現れるとともに,血栓形成によって血小板や凝固因子が消費されるために減少し,血栓の溶解に働く線溶の亢進とともに激しい出血傾向をきたす病態である.DICが完成するとその治療は困難となり,原疾患の悪性度とも関連して予後は不良となる.したがって,DICの治療では何よりもまず早期の診断が重要となる.

 DICは,病態ならびに検査所見によって凝固優位型DICと線溶優位型DICとの二つに大別される.凝固優位型DICでは,臓器症状が主となり,検査所見ではトロンビン・アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin III complex,TAT)や可溶性フィブリン(soluble fibrin,SF)などの高値が特徴的で,基礎疾患としては敗血症などの重症感染症のほか,重症の外傷や熱傷などもこの範疇に入る.一方,線溶優位型DICは出血症状が主であり,検査所見ではフィブリノゲン/フィブリン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation product,FDP)やプラスミン・プラスミンインヒビター複合体(plasmin inhibitor complex,PIC)の高値およびα2-プラスミンインヒビター(α2-plasmin inhibitor,α2-PI)の低値が特徴的で,基礎疾患としては急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia,APL)などの急性白血病や一部の悪性腫瘍が挙げられる.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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