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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術36巻1号

2008年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

自己免疫性溶血性貧血

著者: 亀崎豊実 ,   梶井英治

ページ範囲:P.6 - P.11

サマリー

 自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia,AIHA)は稀な病態であるが,臨床症状と検査所見による溶血性貧血を想定し,自己赤血球に対する自己抗体を証明できれば診断は可能である.自己抗体の性状により病型診断を行い,各病型に応じて治療を行う.頻度の高い温式AIHAでは,ステロイド薬により80~90%の症例でコントロールは可能である.AIHAの数パーセントに直接抗グロブリン試験(direct antiglobulin test,DAT)陰性AIHAが存在しており,ステロイドへの反応性はDAT陽性AIHAと同程度であることから,DAT陰性溶血性貧血においては,赤血球結合IgG定量などの検査を行い,積極的な診断が望ましい.

流行性耳下腺炎

著者: 有馬聖永 ,   星野直 ,   石和田稔彦

ページ範囲:P.12 - P.15

サマリー

 ムンプスウイルス(mumps virus)による感染症で,いわゆる「おたふくかぜ」として知られている疾患である.最も特徴的な症状として唾液腺,特に耳下腺の有痛性腫脹を認め,合併症として無菌性髄膜炎,精巣炎,膵炎などを伴うことがある.一般に自然軽快し,予後も良好であるが,難聴や不妊などの後遺症も稀ながら報告されている.耳下腺炎を認めず,無菌性髄膜炎などの合併症が症状の主体となることもあるが,本稿ではこれらをまとめてムンプスウイルス感染症として解説する.

技術講座 病理

胆汁の検体処理

著者: 青木裕志 ,   浅見志帆 ,   江口正信

ページ範囲:P.17 - P.21

新しい知見

 胆汁細胞診は胆道系腫瘍の検索には欠かすことのできない検査法である.しかし,検体処理に際し,細胞回収率の悪さと細胞変性が強いことによる診断への影響が指摘されてきた.近年,これら諸問題を改善すべく添加剤の使用が推奨されるようになった.今後多くの施設で添加剤が導入されていくと思われるが,それぞれ細胞の保存性,細胞形態への影響は異なることにも留意する必要がある.

免疫血清

温式不規則抗体検出法

著者: 遠藤輝夫 ,   渡辺直樹

ページ範囲:P.23 - P.28

新しい知見

 輸血検査では,ABO式およびRh(D)の型判定に加え,溶血性輸血副作用や新生児溶血性疾患の原因となる温式不規則抗体の検出が重要である.不規則抗体の解析には,間接抗グロブリン試験が用いられる.そのため,厚生労働省の輸血療法実施に関する指針や輸血管理料算定の施設基準においても,間接抗グロブリン試験の院内施行が必須となっている.これまで,間接抗グロブリン試験は試験管法で行われてきた.しかし,臨床検査技師による輸血検査の24時間体制が普及している現在,検査者の熟練度に影響を受けない自動判定装置の必要性が高まり,カラム凝集法や赤血球膜固相法の日常検査への導入が進みつつある.

疾患と検査値の推移

家族性地中海熱

著者: 山下浩平 ,   三好隆史

ページ範囲:P.29 - P.34

疾患の概説

 家族性地中海熱(familial Mediterranean fever,FMF)は,遺伝性周期性発熱症候群(hereditary periodic fever syndrome)の一つとして知られ,典型的には,小児期から青年期にかけて,数日間しばしば腹痛や単関節炎症状などを伴った発熱発作を周期的に繰り返すという常染色体劣性遺伝の疾患である.1945年にbenign paroxysmal peritonitisとして第1例が報告されて以来,その名が示すとおり,ユダヤ人やトルコ人など地中海沿岸地方の民族を中心に数多く報告され,日本人には極めて稀な疾患と考えられてきた.発作時には,多くの症例で血液検査において好中球増加とC反応性蛋白(C-reactive protein,CRP)上昇などの異常を認め,炎症部位が存在する場合には多核白血球の浸潤が認められることから,その病態形成に食細胞,特に好中球が深く関与すると考えられてきた.しかしながら,その炎症病態の詳細な機序はいまだ明らかではない.

 1997年,16番染色体の短腕に存在するMEFV遺伝子が同定され,この遺伝子変異がFMFの発症および病態形成に深く関与することが報告された1).MEFV遺伝子は10個のエクソンから構成され,現在までに60近くの変異が報告されている.変異はエクソン2および10に集中し,そのなかでもエクソン2に存在するE148Q,エクソン10に存在するM694V,M694I,M680I,V726Aの遺伝子変異が多く報告されている(図1)2)

オピニオン

これからの大学病院検査部

著者: 南木融

ページ範囲:P.16 - P.16

 われわれ検査部の役割は,筑波大学附属病院の使命である診療・教育・研究を追求するとともに,臨床検査を通じて,個々の患者様に最適な医療の提供,加えて地域への貢献とされております.しかし,国立か私立か,また施設の規模などによって取り組み方は大きく変わってくると思います.特に国立大学においては民営化に伴い,今後は各大学による特色ある取り組みが不可欠となっております.このようなことを踏まえ,大学病院検査部のこれからについて,当院検査部の今後の取り組みを紹介いたします.

 はじめに大学病院の使命の一つである診療ですが,これは日常のルーチン検査に当たります.最近では,どこの職場でも共通して言えることと思いますが,仕事量は増えるものの,人員の増加は望めないのが現状です.そして限られた時間のなかで,ルーチン検査に加え教育・研究を実現していくためには,これまで以上に仕事の効率化とともに医療安全について考えていかなければならないと思います.仕事の効率化を行うためには,新しい機器の導入やシステム化などいろいろな方法が考えられますが,一番大切なことは何よりも「職員の仕事に対する意識を高めること」だと考えております.職員1人ひとりが大学病院の検査技師だという自覚をもち,仕事に対して高いモチベーションをもって仕事に取り組むことが最も大切との認識を共有することが重要です.

ワンポイントアドバイス

地震対策―微生物検査室の検査ライン

著者: 木下承晧

ページ範囲:P.38 - P.38

 わが国では毎年どこかで大きな地震が起こっている.2007年10月1日から気象庁が緊急地震速報を国内一般向けに開始した.実際には被害に遭ってみないとわからないが,地震が起こってから考えたのでは遅すぎる.大規模地震から学ぶことは多く,都市・町村機能(ライフライン:水,電気,ガス,交通)の被害状況をよく理解して,どのように対処するべきかシミュレーションをしておくことが必要になる.

私の一推し免疫染色

EMA染色で微細構造を検出する!―上衣腫の診断への応用

著者: 平戸純子

ページ範囲:P.40 - P.41

 上皮性膜抗原(epithelial membrane antigen,EMA)は上皮性マーカーとして広く病理診断に応用されている.さらに形質細胞腫や一部の悪性リンパ腫,上皮細胞様の形態を示す特殊な骨軟部腫瘍の診断にも利用されている.神経系腫瘍では,髄膜腫や神経周膜腫で高率に陽性となり,組織像の特徴が不明瞭で他の腫瘍型との鑑別が必要な場合によく使われる.グリオーマ(glioma)のマーカーとしては,もっぱらグリア細線維性酸性蛋白(glial fibrillary acidic protein,GFAP)が使われており,中枢神経系腫瘍のマーカーとしてよく知られているが,グリオーマの代表的な腫瘍型の一つである上衣腫の診断に上皮系マーカーのEMAが非常に有用であることは,一般的には知られていないように思う.

 上衣細胞は脳室の内腔面を覆っており,表面には多数の微絨毛が派生し,線毛も認められる.隣接する細胞との間には接着帯zonula adherentesなどの結合装置があり,上皮細胞に類似している.ただし,上皮細胞のように基底膜はなく底面はアストロサイトの突起と接している.特殊な上衣細胞である伸長細胞tanycyteは,底部で脳実質内に突起を伸ばし,血管壁まで達する.EMAは微絨毛が生えている遊離縁に発現する.

一般検査室から私の一枚

何だと思います? 答えは解説に!

著者: 八木靖二

ページ範囲:P.39 - P.39

 これは23年前,当院検査室で初めて検出された赤痢アメーバの写真です.シャーレ山盛りに提出された便検体はまさにイチゴゼリー状.あっという間に検査室は異様な雰囲気に包まれ,ただごとではないことを誰しもが直感した様子でした.直接法で顕微鏡をのぞいた瞬間,その直感は見事に的中.多数の赤痢アメーバがウヨウヨと活発に動いているのが観察されました.初目撃の嬉しさと恐怖心が錯綜し,体中震えが駆け巡ったことを今でも鮮明に覚えています.当時,筆者は尿沈渣成分の長期保存法についても興味を持ち,種々の固定液を用いて検討を行っていました.その一つであった電顕用前固定液オスミウム酸で固定し,ステルンハイマー染色を行ったのがこの写真です.直接法では赤血球を貪食し生々しく無気味に見えた赤痢アメーバも,ステルンハイマー染色では綺麗に見え,なぜか神秘的に感じたのを覚えています.筆者のお気に入りの一枚ですが発表の機会を逃し,今回が初公開となってしまいました.

今月の表紙

急性心膜炎

著者: 信岡祐彦

ページ範囲:P.35 - P.35

 今回は急性心膜炎を取り上げた.


【症例の概要】

 症例は50歳の女性.5月下旬,山登りへ2日間行った後より感冒症状,疲労感がとれないなどの症状が出現した.数日前からは胸痛も出現してきたため6月14日外来を受診した.身体所見では,胸骨左縁第3,4肋間を中心に収縮期心雑音を聴取した.血液検査所見では,WBC7,700/μl,CRP20.3mg/ml,CK24IU/l,AST25IU/l,ALT39IU/l,LDH407IU/lとCRPの高度の上昇とLDHの軽度の上昇を認めた.CKは正常範囲であった.

ラボクイズ

細胞診

著者: 高平雅和 ,   手島伸一

ページ範囲:P.36 - P.36

2007年12月号の解答と解説

著者: 山下美香

ページ範囲:P.37 - P.37

臨床検査フロンティア 検査技術を生かせる新しい職種

マス・スクリーニング認定技師

著者: 沼田公介

ページ範囲:P.76 - P.77

はじめに

 マス・スクリーニングとは,早期発見・早期治療を行う目的で集団の中からその対象となる病気の人を選び出すことです.まず,一定の「ふるい」にかけたあと,疑いのある人に精密検査を段階的に受けてもらい,最終的に病気か否かの判断がなされます.

 今回,紹介しますのは,わが国で行われているマス・スクリーニングに携わる人のための日本マス・スクリーニング学会技術認定制度についてです.わが国で実施されているマス・スクリーニングの対象は新生児,小児,妊婦などの幅広い世代にわたり,その対象疾患についても多岐にわたっています.

失敗から学び磨く検査技術―臨床化学編

血清鉄と検査時において留意すべきポイント―血清鉄検査の検体は日内変動を考慮して採血

著者: 刈米和子

ページ範囲:P.42 - P.46

体内鉄の分布と動態

 体内の鉄の総量は約4,000mgといわれており,図1に示すように約2/3は赤血球中にヘモグロビンとして,1/3は肝細胞内や肝・脾の網内系細胞内に貯蔵鉄(フェリチンとヘモジデリン)として,約4%が筋肉内にミオグロビンとして存在する.いわゆる血清鉄は体内の鉄の0.1%にすぎず,血漿フェリチンとして存在する鉄の量はさらに少ない.

 血清鉄はβ1グロブリン分画に属するトランスフェリン(transferrin,Tf)と結合した状態で存在している.

 貯蔵鉄プールから動員された鉄はTfと結合して血清鉄となり,血清中を流れて骨髄の赤芽球に摂られる.赤芽球は鉄を一つの材料として血色素を合成し,成熟して脱核して核のない赤血球となり,平均120日の寿命で崩壊する.崩壊した赤血球は細網細胞で結合して血清鉄として再び造血に用いられるか,貯蔵鉄プールへ入る.つまり,図2に示すように,血清鉄→骨髄→赤血球→貯蔵部→血清鉄の一方向に絶えず動いている1,2)

臨床医からの質問に答える

ヘモグロビン異常症患者のHbA1c検査:HPLC法と免疫法とでの挙動

著者: 宮下徹夫

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに

 日常検査におけるHbA1C測定には高速液体クロマトグラフ(high performance liquid chromatgraph,HPLC)法や免疫学的測定法がある.従来のHPLC法では検体である血液に含まれる不安定型HbA1Cやカルバミル化ヘモグロビンなど,HbA1C以外の修飾ヘモグロビンが測定を妨害することが指摘されてきたが,最近ではこの問題が解決され1検体当たり1~1.5分で測定可能な装置が開発されている.しかし,異常ヘモグロビンまたは変異ヘモグロビン(以下,異常Hb)を含む血液ではHbA1C測定に著しい誤差を与え,免疫学的測定法でも正しく測定できない場合があることから,糖尿病の診断やコントロールの指標としてHbA1Cを利用する場合は異常Hbの有無を一度はチェックする必要があるといわれている1)

 異常Hbとは遺伝性ヘモグロビン異常症に見られるグロビン鎖の構造異常を有するヘモグロビンであり,変異の違いにより700種類以上が知られている2).わが国における出現頻度は2,000~3,000人に1人3)と,決して稀な症例ではなくHPLC法によるHbA1C測定で数多く発見されてきた3,4)が最近の日常検査用HPLCでは検出できない異常Hb症例5)があるのも事実である.異常Hbの確実な検出や同定には質量分析法やDNA解析法が用いられるが1,3,6,7),日常検査室で実施するのは困難である.

 われわれはHbA1C測定用HPLCである東ソー製HLC-723G7型(以下,G7)やその後継機種であるHLC-723G8型(以下,G8)の高分解モードを利用して,現在に至るまでの7年間に37例の異常Hbを検出してきた.本稿ではこの経験をもとに異常Hb症例のHbA1C測定について,HPLC法における測定値の挙動や考慮すべき点について述べ,免疫学的測定法に関しても文献的な考察を加える.

Laboratory Practice 〈臨床生理●脳波検査のステップアップ・2〉

脳波検査に必要な医用工学の知識(Ⅰ)―一般的な雑音対策と差動増幅器の原理

著者: 石山陽事

ページ範囲:P.47 - P.51

はじめに

 脳細胞の活動に伴う電気現象である脳波は生体の電気現象のなかでも最も微弱な電位である.そのためいろいろな雑音が脳波記録に混入する.脳波検査は雑音との戦いといっても過言ではない.したがって,脳波検査の雑音対策そのものが医用工学の理解につながるものである.図1に従来のアナログ脳波計と最近のディジタル脳波計のブロック図および雑音混入脳波から雑音除去を行う各ブロックの機能を示す1).ここでは,これらの雑音対策のための医用工学について2回に分けて解説する.第1回目は脳波検査に関する一般的な雑音対策と差動増幅器の原理について解説する.

〈血液〉

先天性血栓性素因が疑われたときに行う検査

著者: 森下英理子

ページ範囲:P.52 - P.55

血栓性素因の診断の流れ(図)

 血栓症患者の原因検索をする際に,臨床所見として①40歳代以前に静脈血栓症を発症したり,②再発性であったり,③稀な場所に発症したり(脳静脈洞血栓,門脈血栓,腸間膜静脈血栓など),④家族性に血栓症の発現がみられたりする場合には,先天性血栓性素因があることを予測して検査する必要がある.現在,先天性の血栓性素因としては凝固制御系因子であるアンチトロンビン(antithrombin,AT),プロテインC(protein C,PC),プロテインS(protein S,PS)の三つの因子の欠乏症,凝固第V因子(factor V,FV)Leiden変異(506番アルギニン→グルタミン), プロトロンビンG20210A変異などが知られている.

 血栓関連遺伝子に関しては,人種差が注目されており,既にFactor V Leiden変異やプロトロンビンG20210A変異は欧米人における血栓症発症の危険因子であるが,日本人には見られないことが明らかになっている.一方,近年報告された日本人一般住民を対象としたAT,PC,PS欠乏症の発症頻度は,PC欠乏症0.13%,AT欠乏症0.15%と欧米人と差はないが,興味深いことにPS欠乏症は1.12%と欧米人(0.16~0.21%)に比べて明らかに高いことが判明した.特に,PS分子異常の頻度が高く(欧米人の5~10倍)1),なかでもPS Tokushima変異(155番リシン→グルタミン酸)は日本人の遺伝子多型と考えられ,血栓症の重要な危険因子である2)ことが明らかになった点は注目に値する.

〈生化学〉

日臨技の臨床検査データ共有化への取り組みについて

著者: 森下芳孝

ページ範囲:P.56 - P.58

はじめに

 近年,糖尿病や高脂血症といった生活習慣病,また心筋梗塞や脳卒中のような動脈硬化性疾患などがマスコミなどで大きく報道され,健康や疾病予防,そして,指標である臨床検査値に対する国民の関心は高まりつつある.大学病院のような特定機能病院で得られた検査値も,小さな診療所で得られた検査値も,同じ患者の検体であればいかなる成分も同じ値になるものと国民は考えている.至極当然といえばそうかもしれない.真値は一つであるが,腫瘍マーカーや内分泌物質のように,測定法や測定条件によってどうしても測定値が異なるものもある.しかし,血糖,尿酸,コレステロール,ALT(alanine aminotransferase)のように正確さのトレーサビリティー連鎖体系が確保された項目では,それに従った標準物質や標準化対応法を各検査室が用いれば,不確かさを含む範囲内でデータの共有化は可能になるはずである.データの共有化が進めば,従来のように病院を変わるたびに行われていた無駄な重複検査はなくなり,医療費の削減にもつながる.

〈病理●内部精度管理・1〉

病理検査室のインシデントの現状とその対策

著者: 畠榮

ページ範囲:P.59 - P.61

はじめに

 病理検査はほかの分野の検査と異なり,その成績は単なる数値として表せるデータではなく最終診断的要素をもち,臨床において診断や治療方針の決定に重要な役割を担っている.病理形態検査がからむインシデントならびに医療過誤のなかで,頻度が高く,しかも重大な事件に発展しかねないのは検体の取り違えやラベルの貼り間違いなどが考えられる(図).本稿では病理・細胞診検査のインシデントに関して,その要因と当院で行っている防止対策の現状を報告する.

〈診療支援〉

ISO15189標準作業手順書

著者: 常名政弘 ,   大久保滋夫 ,   横田浩充 ,   矢冨裕

ページ範囲:P.62 - P.67

はじめに

 近年,われわれを取り巻く医療環境は厳しさを増し,経済効率を重視しながら検査部を運営する必要性が高まっている.さらに経済効率が重視されるあまりコスト削減のターゲットになりやすい臨床検査,特に検体検査が厳しい状況におかれていることは周知のとおりである.一方で,臨床側からは診断の根拠になる確かな臨床検査結果の提供,診療に有用な付加価値のある臨床検査結果の提供,さらに結果の迅速化などさまざまな診療支援を強く求められ,利用者側の満足度を優先させる運営方針が必要となっている.

けんさ質問箱

透析をされている方の副甲状腺の超音波所見

著者: 鈴木留美 ,   飯原雅季 ,   小原孝男

ページ範囲:P.78 - P.81

Q.透析をされている方の副甲状腺の超音波所見

透析をされている方で副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone,PTH)やCaなどの値に異常があり,投薬しても効果がない場合は副甲状腺の状態を超音波検査で診ることがあります.そこでこのような状況で考えられる副甲状腺の画像所見やポイントを教えてください.(長野市 H.T.生)


A.鈴木留美・飯原雅季・小原孝男

はじめに

 ご質問のように,慢性腎不全透析患者では続発性副甲状腺機能亢進症は必発で,内科的治療ではコントロールが次第に難しくなることがしばしばあります.そうした場合,頸部超音波検査により副甲状腺の腫大の有無を検索する必要性が高くなってきます.ここでは副甲状腺の解剖や発生の知識をまず整理して,透析患者における続発性副甲状腺機能亢進症(腎性副甲状腺機能亢進症)の発生機序や内科治療の限界を述べます.さらに,透析患者で副甲状腺手術適応を決めたり,副甲状腺の全部位をあらかじめ確認しておくための,副甲状腺超音波検査のポイントを示しましょう.

トピックス

3Dによる尿沈渣アトラス

著者: 久代真也 ,   伊瀬恵子

ページ範囲:P.82 - P.84

はじめに

 現在,尿沈渣の形態学的特徴を把握するために,「尿沈渣検査法2000」1)をはじめとする数多くのアトラスが利用されている.しかし,従来の尿沈渣アトラスでは,細胞の写真を1枚の平面画像で表現しているために,鏡検法で見られるような立体的な細胞を詳細に表現することは困難であった.実際の尿沈渣鏡検法では,微動機構を動かしながら細胞の上面から下面までを観察し,鏡検者が立体的に頭の中で構成している.

 筆者らは,一般的な市販のソフトとデジタルカメラを用いて,尿沈渣成分を立体的に表現できる3D(3 dimension:3次元)を利用した方法を考案した2).教育用としての尿沈渣3Dアトラスの作製方法や,これを用いた精度管理調査活用例について述べる.

血小板由来マイクロパーティクル

著者: 野村昌作

ページ範囲:P.84 - P.87

はじめに

 血小板が刺激を受けると,活性化反応に伴って微小な膜小胞体が遊離されてくることが知られている.この膜小胞体は,細胞の内部顆粒や膜性微粒子,および機械的破壊によって生成された膜のフラグメントを含み,血小板由来マイクロパーティクル(platelet-derived microparticles,PDMP)と呼ばれている1).PDMPは主に凝固を促進する物質として働いているが,最近はそれ以外にもいくつかの機能を持っていることが判明しており,特に白血球と血管内皮細胞の接着を亢進させる働きが重要である2).またPDMPは糖尿病,急性心筋梗塞,尿毒症,播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation,DIC)などの血栓性疾患において検出され1),血管病変のメカニズムを考えるうえで最も注目されている物質の一つである.本稿では,PDMPについて最近の文献を紹介しながら解説したい.

コーヒーブレイク

整理収納をちょこっと科学する―第1回:整理収納のプロセスは医療に通じる?

著者: 本多弘美

ページ範囲:P.68 - P.68

 収納アドバイザーがコーヒーブレイクに一筆?勝手に付けた肩書きですが,収納アドバイザーを名乗って十数年になります.これまで仕事を通してこんなことを言われたことがありました.「収納の進め方が定量的ですね」「理系的な考え方ですね」「収納ではあまり使わない言葉を使われますね」など.それはかつて臨床検査技師として検査業務に携わっていたことが影響しているのではないかと思っています.すなわち臨床検査技師として仕事をしていたことが,物事の捉え方,考え方,アプローチなどに大きく影響したのではないかと.

 今回の連載では,これまで収納アドバイザーとして蓄積してきたノウハウに,検査技師的な視点を盛り込みながら,整理収納をちょこっと科学的にとらえて紹介させていただきます.

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あとがき

著者: 永江学

ページ範囲:P.88 - P.88

 読者の皆様,昨年は本誌をお読みいただきありがとうございました.皆様のステップアップの一助となりましたでしょうか.本年も編集委員一同皆様のステップアップ・スキルアップの助けとなるように頑張ります.

 今回もいろいろな領域を網羅したものを掲載しておりますので,正月ボケの脳トレにぜひご活用ください.若い読者の方々には検査領域のなかの専門分野を持続していただき,将来その道の専門家として育っていただきたいと思います.しかし,見方を変えるとこの若いときに検査領域全体の勉強をしておくことは将来の指導者として必要なことです.二本の道は決して別なものではなく目的地は一緒ですので行ったり来たりしながら歩いていってください.そのためにも本誌を活用していただければ幸いです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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