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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術36巻10号

2008年09月発行

雑誌目次

増刊号 これから広がる生理検査・新たにはじまる生理検査

著者: 永江学

ページ範囲:P.883 - P.883

 現在,臨床の現場において臨床検査の情報は病態把握を行ううえで不可欠なものとなっています.また,検査を行う者にとって検査の意義や操作法などを十分に理解しておくことが重要であり,日々進歩し続けている検査法の知識の習得も検査を行う者に課せられた義務といえます.

 近代医療の現場では,その時代の先端的工業技術を取り入れて診断や治療を行っています.その最たる例として心電図やX 線写真が挙げられます.現在ではMR や超音波断層像に代表される形態診断と,心電図や脳磁図に代表される機能診断とに大きく分類することができます.臨床検査技師が関与する形態診断検査としては,内視鏡,MRI,MRA,超音波検査などがあり,機能診断検査としては,心電図,脳波,脳磁図,ファンクショナルMRI,脈波,ドプラ,サーモグラフィなどがあります.

A 心エコー法

1. 組織ドプラ法の原理

著者: 山崎延夫

ページ範囲:P.886 - P.894

はじめに

 カラードプラ法がこの世に生まれて,間もなく25年が過ぎようとしている.この間にこの手法は,心腔内の異常血流を検出・評価するのに不可欠なものとして心エコー検査で確固たる地位を築き上げてきた.

 カラードプラ法においては,心臓の壁や弁の動きに由来するドプラ信号は,血流観測の妨げとなる“クラッタ”と忌み嫌われる存在であり,このクラッタをいかに効率よく除去できるかがカラードプラ装置の性能を測る指標にもなっている.この心臓の壁や弁の動きに由来するドプラ信号を積極的に抽出して映像化し,さらには定量化に利用したのが組織ドプラ法であり,いわば“逆転の発想”の産物である.本稿では,この組織ドプラ法のこれまでの発展の過程を,この手法を世に送り出した筆者が時間経過に沿って概説したい.

2. 組織ドプラ法の臨床

著者: 瀬尾由広

ページ範囲:P.895 - P.903

はじめに

 心エコードプラ法は心臓構造の評価,壁運動,心腔内血流異常,そして血行動態評価について循環器疾患の臨床では欠かせない手法である.これら従来の方法に加えて組織ドプラ法は,局所収縮機能評価,心筋虚血の検出,血行動態指標と組み合わせた拡張機能評価や心不全の予後の推定,そして時相分析による左室同期不全の評価と心室再同期療法(cardiac resynchronization therapy,CRT)への応用など,心エコー法をさらに懐の深い臨床診断ツールとして発展させた.

 本稿では,主に拡張機能評価法や最近注目されている左室同期不全評価法についてレビューし,その有用性と留意すべき点について概説する.

3. スペックルトラッキング法の原理

著者: 阿部康彦

ページ範囲:P.904 - P.913

はじめに

 心エコーは虚血性心疾患,同期不全,心筋症をはじめとする心疾患診断のための簡便かつ正確な心機能評価の担い手として期待されている.とりわけ局所的な壁運動を解析することで,これらの診断に役立てようとする研究が盛んに行われてきている.これまでは主に組織ドプラ法(tissue Doppler imaging,TDI)を応用した壁運動解析が行われてきた.しかし,ドプラ法には角度依存性があるため,計算されるパラメータや解析できる領域などに制限が存在した.われわれはTDIに代わる次世代の壁運動解析技術として,超音波画像特有のスペックルパターンに着目したスペックルトラッキング手法を研究開発し,臨床での評価を繰り返してきた.そして,これまでの研究結果と臨床からのフィードバックを基に,新しい超音波診断装置AplioTMArtidaTM(以降,Artidaと称する)上に“Wall Motion Tracking(WMT)”アプリケーションとして搭載した.

 本稿ではスペックルトラッキングの基本原理と特徴,および種々の壁運動パラメータがトラッキングの結果から,どのようにして求められるかを説明する.また,数値モデルによる検証と,これまでのバリデーション評価結果について報告し,臨床適応例についても紹介する.最後に,世界初の3次元トラッキングによる壁運動解析技術についても解説する.

4. スペックルトラッキング法の臨床

著者: 天木誠

ページ範囲:P.914 - P.921

はじめに

 近年,従来から用いられてきた心機能計測値,例えば左室内径短縮率(percent fractional shortening, %FS)や左室駆出率,TEI indexなどのグローバルな心機能に加えて,局所心筋の運動評価が注目されている.これは超音波診断装置の進歩により,これまで侵襲的手法でのみ計測可能であった心機能指標が臨床現場で非侵襲的手法により計測可能となってきていることに起因する.

 特に組織ドプラ(tissue Doppler)法による評価は近年発達した計測である.拡張早期僧帽弁輪部速度波形E′は拡張期左室圧下行脚時定数τと相関すること1),拡張早期左室流入血流速(E)との比E/E′が安静時,運動時ともに左室充満圧や左室拡張末期圧を推定するのに有用である1,2)こと(図1)などから,組織ドプラ法は拡張能の評価には欠かせない指標の一つとなってきている.

 しかし,組織ドプラ法には角度依存性という限界が常に付きまとう.このため,局所心筋機能評価において評価が不可能な部位が出てきてしまう.このことは,臨床現場において虚血部位や同期不全(dyssynchrony)の部位を同定する制限となっていた.

 近年,グレースケール画像から得られた情報からパターンマッチング理論に基づく2次元スペックルトラッキング法(two dimensional speckle tracking echocardiography,2DST法)が開発されて脚光を浴びている.2DST法はあくまでもグレースケール画像を元に解析をするため,角度に依存しない計測法であり,組織ドプラ法の弱点を克服する手法として研究が行われている.

 本稿では,2DST法の原理について説明し,その後2DST法の研究成果がどこまで発表され,また臨床応用にどこまで近づいているかをまとめる.

5. 3次元表示法の原理

著者: 荻原克史

ページ範囲:P.922 - P.928

はじめに

 心臓用超音波診断装置は,近年著しい技術開発により臨床・研究上で有益な多数の機能が,市販装置に搭載されるようになってきている.画像診断の目指すポイントは臓器(心臓)の形態および病理形態の完全な描出と包括的な評価であると言える.その点で,3次元表示法は今後の発展が最も期待される手法の一つであるといえる.

 3次元心臓超音波診断技術は1990年代に第1世代が登場した.初期の3次元心エコーは心電図および呼吸(アーチファクトを除去するため)の同期をかけた複数の1心拍の2次元断層画像を部分データとして収集し,PCおよびワークステーションで3次元画像を再構築するものであった.しかし,断面設定や画像調整がリアルタイムで行えないため,最適な1心拍の3次元動画像を得るまでに多くの時間(約20~30分間)を要するという問題点があった(図1).この方式による問題点は2000年代前半に登場した,リアルタイム3次元機能の実現により解決された.

 本稿においては3次元表示の基本要素についての紹介と,最新のリアルタイム3次元表示について解説する.

6. 3次元表示法の臨床

著者: 瀧聞淨宏

ページ範囲:P.929 - P.937

はじめに

 超音波装置やプローブの技術開発は急速に進み,3次元表示法,つまり3Dエコー法は2次元(2D)画像を3次元的に再構築する方法からリアルタイムにボリュームデータを収集して画像を構築するという方法に変わった.1990年代に開発され注目を浴びたTomTec社製3Dワークステーションエコースキャンは,心電図同期をかけて多断面の断層像を収集,統合してボリュームデータを作成し,それを任意の平面でカットすることで心内構造を観察する方法であった.しかし,呼吸性変動による断面のズレ,画質不良,画像収集と解析に時間を要することなどの問題から実際の臨床の場で用いられることは少なかった.

 近年開発されたリアルタイム3Dエコーは,任意方向のボリュームデータをプローブの操作一つで短時間に収集することができるもので,画質も飛躍的に向上した.本稿では現在最新のリアルタイム3D心エコーが,どのように臨床に活用されているか述べてみたい.

B 腹部・体表エコー法

1. transient elastographyの基礎と臨床

著者: 杉岡陽介 ,   増崎亮太 ,   池田均

ページ範囲:P.940 - P.947

はじめに

 わが国の原発性肝癌による死亡者数はこの30年間で約3倍に増加し,現在3万5千人に達しようとしている.そのうち,B型およびC型の慢性肝炎・肝硬変患者は全体の約90%を占めており,ウイルス性肝炎患者の定期的な検査は肝癌の早期発見のためにも必須となっている.

 慢性肝疾患における病期ステージの終末像は肝硬変であり,その過程で肝臓は線維化が進み,発癌のリスクが上がっていく.すなわち慢性肝疾患患者の肝線維化の程度を知ることは発癌リスクを予測するうえで非常に重要であり,インターフェロンの可否など今後の治療方針にも影響する.また,経時的な肝線維化の程度を知ることは,病期ステージの進行度合いや治療効果判定上でも必要である.

 肝細胞癌の発症の段階で大事な検査には腫瘍マーカーを筆頭とした血液検査や超音波,CT(computed tomography),MRI(magnetic resonance imaging)などの画像診断が挙げられるが,一長一短があり,肝癌発症のリスクの算定は不可能である.肝細胞癌の診断において画像診断の重要性は既知の事実であるが,慢性肝炎の腹部超音波検査では,肝縁の鈍化,肝表面の不整,肝内エコーレベルの変化,肝腫大,腹腔内リンパ節腫大などは認識できるが,これらは正常肝との鑑別にはなっても,現在の慢性肝炎のステージを診断することは困難である.

 図1には1999年にYoshidaら2)が発表した,新犬山分類によるC型慢性肝炎の各線維化ステージにおける発癌率を示した.吉田らはF0,1では160例中3例で発癌し,年間発癌率は0.45%,F2で1.99%,F3で5.34%,F4で7.88%と報告しており,現在の線維化ステージを診断することにより,発癌リスクの算定が可能ということを示唆している.

 現在,肝線維化の程度を知るためには肝生検を行わなければならず,線維化の経時的変化を捉えるためには何回も肝生検を繰り返さなければならないのが現状である.しかし,侵襲のある検査であり施行に際しては入院が必要な点,痛みを伴う点,出血のリスク(肝硬変が進行すると肝の合成能低下と脾機能が亢進し,血小板数の減少と凝固因子などの産生低下がある),稀に死亡例の報告もある点などから,繰り返し行うことは困難である.

 また,肝生検による組織所見には部位や採取組織の大きさによる診断の違いが指摘されている.さらに病理診断では,肝線維化のステージは半定量的に診断されるために,病理医間の診断の違い,あるいは同じ病理医でも時間による診断の違いがあるといわれている.

 線維化評価の指標として血小板数が線維化との相関が良好とされおり,一般的に新犬山分類におけるF1で17×104/μl,F2で15×104/μl,F3で13×104/μl,F4で10×104/μl以下とされているが,高度な肝硬変になると血小板数はほぼ横ばいとなってしまい,より広いダイナミックレンジをもった検査法の開発が必要とされていた.

2. elastographyの基礎と臨床(体表)

著者: 植野映

ページ範囲:P.948 - P.954

開発の背景

 乳房の超音波診断は主にBモード画像にて行われ,補助的にカラードプラが利用されてきた.リアルタイム超音波診断の開発とともに組織の硬さの評価方法として1985年に動的検査として筆者ら1)により考案され,超音波医学会の腫瘤像形成性病変の診断基準の1評価項目とされてきた.しかしながら,動的検査では静的な画像を提供することは難しく,その再現性に問題があった.これに対してエラストグラフィ(elastography)は,体内組織の硬さ(弾性)の分布を,客観的に画像化して提供する方法として開発された.

 癌腫の多くは圧迫では変形しにくく,“しこり”として硬く触知される.Krouskopら2)はin vitroで,脂肪,乳腺,癌腫などの各組織の弾性係数を測定し,各組織による硬さを数値化して報告した.その報告のなかでは,浸潤性乳管癌(invasive ductal carcinoma,IDC)の弾性係数は,正常乳腺の3倍以上を示し,非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ,DCIS)でも若干硬い傾向を示すとした(図1).

 このことからエラストグラフィの開発に拍車がかかり,さまざまな手法が開発されてきている.現在,実用化されているのは複合自己相関法を利用したリアルタイム組織弾性映像法である3)

3. 産科領域における3次元超音波

著者: 馬場一憲

ページ範囲:P.955 - P.962

はじめに

 わが国の産婦人科における超音波(断層)診断装置の普及率は,ほぼ100%であり,もはや超音波診断装置なしでは産婦人科診療が成り立たないと言っても過言ではない.特に,産科領域においては超音波による胎児スクリーニングが一般化しつつあり1),胎児のさまざまな異常が出生前診断され,児の救命や予後改善に役立っている.しかしながら,超音波断層法では胎児の立体的な構造の把握が困難であったり,診断に必要な断面が得られなかったりと,診断に苦慮するケースも少なくない.

 その欠点を補うため,現在,3次元超音波が産婦人科に急速に浸透しつつある.婦人科領域でも3次元超音波は有用であるが,本稿では特に有用性が高い胎児診断に限って3次元超音波の基礎と臨床的有用性について概説する.

4. コントラストエコー法の基礎と臨床

著者: 畑中絹世 ,   工藤正俊 ,   土師誠二 ,   前川清

ページ範囲:P.963 - P.973

はじめに

 ソナゾイド(R)(Sonazoid(R))を用いた造影超音波検査を行うことで血流イメージ(vessel image)と肝実質染影(クッパーイメージ,Kupffer image)を得ることができ,血流イメージと肝実質染影を総合的に評価することで,各種肝腫瘍の質的診断が可能となる.また,ソナゾイド(R)の追加投与によって,同一画面上に異なる時相を重ねたイメージ(クッパーイメージと血流イメージ)が得られる(Defect Re-Perfusion Image).このDefect Re-Perfusion Imageの技法によってBモードで不明瞭な悪性肝腫瘍の局在診断,stagingが可能となった.また,ラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation,RFA),肝動脈塞栓術(transcatheter arterial chemoembolization,TACE)の治療効果判定や治療支援にも用いられ,広く一般に普及している.

C 血管エコー法

1. 経頭蓋超音波法の基礎と臨床

著者: 藤代健太郎 ,   吉川浩一 ,   宮坂匠

ページ範囲:P.976 - P.980

検査の原理

 超音波は水と同じ密度の物質で良好に伝播するが,骨に当たるとインピーダンスの違いからほとんどの信号が反射してしまう.しかし,2MHz程度の低い周波数の超音波を用いて,出力を上げると薄い骨を通して超音波が伝播することがわかり,その応用で頭蓋内の血流計測が行われている.

 頭蓋骨の薄い部分は側頭骨にあり,目的とする中大脳動脈の血管走行と超音波ビームのなす角度が,ほぼ60°より小さな角度になるので,強い超音波ドプラ信号を得ることができる.

 経頭蓋超音波法には経頭蓋超音波ドプラ法(transcranial Doppler ultrasonography,TCD),経頭蓋カラードプラ法(transcranial color flow imaging,TC-CFI)などがある.TCDでは2MHzの直径10mmの振動子を有するシングルプローブを用い頭蓋内動脈の血流速度を計測できる(図1).TC-CFIでは2~2.5MHzのセクタプローブを用い頭蓋内の血管の走行を確認できる(図2).

2. 経頭蓋超音波検査の実際

著者: 榛沢和彦

ページ範囲:P.981 - P.985

二つの経頭蓋超音波法

 経頭蓋超音波検査には二つある.一つは汎用の心エコー装置を使う方法で,カラードプラが使用できることから経頭蓋カラードプラ法(transcranial color coded Doppler,TCCD)と呼ばれたり,TCCFI(transcranial color coded flow imaging)と呼ばれたりする.日本脳神経超音波学会ではTCCFIの呼称を推奨している.もう一つは経頭蓋超音波専用装置〔単にTCD(transcranial Doppler)と呼ばれる〕を使う方法である.歴史的にはTCDのほうが古い.ただし,TCDはドプラ法による流速波形しか検出できない.TCCFIはBモード画像により脳の形態がわかり,さらにカラードプラ画像で脳血管の走行がわかるため,流速測定の際に角度補正も可能で脳血流速度の絶対値が計測可能である.しかし,プローブが大きくて重いため長時間のモニタリングには適していない.一方,TCDのプローブは小さく軽いことから長時間モニタリングに適している.さらに最近のTCDは後述する脳血流内の微小血栓などを反映する微小栓子シグナル検出に特化しているものが多い.TCCFIとTCDは使う装置とプローブが異なるだけで基本的なやり方は同じであるが,初心者はTCCFIで脳血管の走行を見ておくとTCDがやりやすい.

3. 椎骨動脈超音波法の基礎と臨床

著者: 臼杵乃理子 ,   下出淳子

ページ範囲:P.986 - P.993

はじめに

 頸動脈超音波検査は,全身の動脈硬化を反映するため動脈硬化リスク症例のスクリーニング検査としても広く普及しており,急性期脳血管障害患者の頸動脈狭窄の有無や脳循環状態の推定に有用である.多くは総頸動脈系のみが評価されているが,椎骨動脈も観察可能であり,内頸動脈系と同時に検査することにより前部脳循環を含めたすべての脳循環を把握することができる.

 椎骨動脈は頸動脈より深部にあり,径も細いため,頸動脈のように内膜中膜複合体(intima-media thickness,IMT)などの詳細な評価はできない場合が多い.しかし,血管径と血流速度測定により椎骨動脈の閉塞性病変の推測が可能であり,脳幹部,小脳,後頭葉など後部脳循環を司る椎骨動脈の狭窄診断を無侵襲かつ簡便に把握することは臨床的に重要である.

 本稿では,椎骨動脈超音波法について,基本事項および実際の手順,評価,ミニマムエッセンスを述べる.

4. 椎骨・脳底動脈系超音波検査

著者: 石川清子 ,   田中理 ,   菅原和章 ,   宮地美貴子 ,   中山愛子 ,   栗田竜子

ページ範囲:P.994 - P.1005

はじめに

 最近では脳血管障害の診断や病因検索目的に頸動脈超音波検査が一般的に行われている.総頸動脈や内頸動脈超音波検査では血流計測・maxIMT〔内膜中膜複合体厚(intima media thickness,IMT)の最大値〕・プラークやプラークの性状・狭窄・閉塞病変などを評価するが,椎骨動脈(vertebral artery,VA)では血流計測の評価が中心となる.血流計測だけでは得られる情報が少ないのではと思われがちだが,椎骨・脳底動脈系病変では後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery,PICA)前閉塞,PICA後閉塞などの評価や,椎骨動脈起始部病変・鎖骨下動脈(subclavian artery,Subc. A)病変・解離病変なども評価することができる.椎骨動脈超音波検査では第6頸椎横突起はもとより,遠位の第4頸椎横突起や時として第3頸椎横突起までの椎骨動脈が観察可能である(図1).また近位(proximal)へプローブ走査することで鎖骨下動脈から分岐する椎骨動脈も描出可能である.このように血流計測評価を習得することで多くの重要な情報を臨床へ提供することができる.

5. 内胸動脈グラフト検査法

著者: 岡庭裕貴 ,   戸出浩之

ページ範囲:P.1006 - P.1010

はじめに

 冠動脈バイパス手術(coronary artery bypass graft,CABG)におけるグラフトは,耐久性に優れ長期開存率が良好であることから内胸動脈(internal thoracic artery,ITA)や胃大網動脈が広く用いられている.なかでも内胸動脈は血流量も多く心臓からの距離が近いことから,グラフト使用の第1選択肢として用いられることが多い.通常内胸動脈の評価は心カテーテル検査による侵襲的な検査が一般的であるが,近年,超音波装置の進歩により,高周波プローブを用いれば内胸動脈の走行や血流速波形を容易に検出できるようになった.しかし,超音波検査で内胸動脈のグラフトの適正や開存性を評価することは,決して統一化され確立されているものではなく,必ずしも多くの施設で実施されている検査ではない.本稿では,当センターで行っている内胸動脈の術前後の評価方法1)を中心に解説する.

6. 血管内皮機能の基礎と臨床

著者: 高谷具史 ,   川嶋成乃亮

ページ範囲:P.1011 - P.1018

はじめに

 突然,「血管内皮細胞の機能が…」と言われても,いま一つピンとこない方が多いかもしれない.では,「動脈硬化の進展は血管内皮細胞の機能障害から始まる」と説明されたら,多少はイメージしやすくなるのではないだろうか.本稿では,次項の血管エコー法を用いた血管内皮機能の具体的な検査についての解説(血管内皮機能検査法)が理解しやすくなるように,基礎的な血管の構造や血管内皮細胞の機能から話を始め,血管内皮障害と動脈硬化の関係,さらには臨床的に血管内皮機能を評価することの意義や治療効果の判定および予後評価への応用などについて概説したい.

7. 血管内皮機能検査法

著者: 宮本宣友 ,   岩井愛雄 ,   橋本正良

ページ範囲:P.1019 - P.1022

はじめに

 血管内皮は血管壁の内張りをしている一層の血管内皮細胞群で構成され,血液成分の血管壁への侵入を防ぐバリア機能,血小板凝集抑制,細胞接着抑制に加えて,ずり応力などの物理的刺激や種々の血管作動物質による化学的刺激に反応して,NO(一酸化窒素)を代表とするさまざまな血管作動物質を産生,放出し血管のトーヌスの調節を行っている.

 それらの血管内皮の機能が障害されることが,動脈硬化が進展するプロセスの初期から深くかかわっていると考えられ1),血管内皮の機能評価を通じて,動脈硬化度を早期から評価するとともに,動脈硬化性疾患の治療に対する評価や予後を予測する因子としても応用されるようになっている.本稿では,いくつかある血管内皮機能の評価法のなかから血管エコーを用いた評価法を紹介する.

8. 腎動脈超音波検査法

著者: 金田智

ページ範囲:P.1023 - P.1029

はじめに

 わが国における動脈硬化症例の増加とともに,腎動脈狭窄症のスクリーニングのための超音波検査を依頼される機会が増えている.本稿では腎動脈狭窄症の超音波診断を中心に述べる.

D 循環器検査

1. 心臓リハビリテーションに関連した循環機能検査

著者: 大宮一人

ページ範囲:P.1032 - P.1038

はじめに

 心臓リハビリテーション(以下,心リハ)は,最近では心疾患治療のなかに占める位置が徐々に大きくなってきており,重要な治療法となっている.運動耐容能や自律神経機能,QOL(quality of life)や生命予後などの多くの指標を改善する効果があることが知られている.

 わが国における心リハの保険適用としては,長い間急性心筋梗塞,狭心症,開心術後に限られていたが,2006年4月から慢性心不全(chronic heart failure,CHF),大血管疾患および末梢動脈疾患が加わり,多くの心・血管疾患の病態を網羅できるようになった(表1).適応疾患が広がったことからも心リハ施行前や施行中にその病態や循環動態の的確な評価を行うことが重要となっている.

 循環動態を評価する生理検査としても最近では心臓超音波検査による評価法が飛躍的に発達したことをはじめ,多くの検査が行われるようになっている.心リハの適応の決定,運動処方の作成などに対しては,理学的所見や患者の症状などをきちんと評価することは当然であるが,心電図,胸部X線,核医学検査や冠動脈CT(computed tomography)などの画像診断検査,運動負荷試験などによる多角的な評価を行うことが必要となる.

 心リハに関連した循環機能の検査としては,リハビリテーション参加者の心機能などを評価する機器と,心リハに直接関与する運動負荷装置や呼気ガス分析装置などの二つに分けて考える必要がある.前者の検査としては心リハ参加者の心機能や残存虚血の有無,運動に関連した不整脈の評価が非常に重要である.実際には心臓超音波検査による各種心機能の精査が非侵襲的であり精度も高くなってきていることから,近年その重要性が増している.心臓超音波検査に関しては本号の別項に詳細な記載があるのでそちらを参照していただきたい.最近ではマルチスライスCTによる冠動脈狭窄度やプラーク性状の精査,心臓MRI(magnetic resonance imaging)検査による心筋の精密な検査などが可能になり,診断および治療に対して威力を発揮している.

 本稿で取り上げるのは後者の検査のうちでも心リハに直接関係する運動負荷試験であり,なかでも呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷試験(cardiopulmonary exercise testing,CPX)に的を絞って解説する.

2. ABPIの基礎と臨床

著者: 会沢彰 ,   高沢謙二

ページ範囲:P.1039 - P.1045

はじめに

 末梢動脈疾患(peripheral arterial disease,PAD)は,アテローム性動脈硬化により末梢動脈の狭窄や閉塞が起こり,これにより血流障害が生じる.また,PAD患者は複数の動脈硬化の危険因子および全身の動脈硬化性疾患をもっており,心血管イベントのリスクが著しく増大する.

 PADに対する最初の臨床評価は病歴聴取と検査である.PADの臨床所見の分類としてフォンテイン(Fontaine)分類やラザフォード(Rutherford)分類が用いられる.TASC(Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease)では,間歇性跛行の病歴でPADを疑うことはできるが,PADの有病率を過少評価する,と指摘している.これはPAD患者の2/3以上は無症候か,非定型的な下肢症状を有するためである.触診による動脈拍動の触知においては,足部動脈拍動が触知可能であれば,90%以上でPAD陰性であり,PADの除外診断が可能である.しかし,動脈拍動減弱や消失の拍動異常は,PADの有病率を過大評価させることも指摘されており,PADが疑われる患者すべてに対し客観的検査の必要性を訴えている.この検査法として非侵襲的血管検査である足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index,ABPIもしくはankle-brachial index,ABI)の測定を推奨している1)

E 呼吸機能検査

1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の基礎と臨床

著者: 山城義広

ページ範囲:P.1048 - P.1053

はじめに

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome,OSAS)はよくみられる疾患であり,社会的にも認知されつつある.日中の眠気を起こすことはよく知られているが,大部分が睡眠不足である社会において本人の自覚症状は乏しい.しかしながら,潜在する患者に対して診断,治療を行う必要性は高い.あまりにもよくみられるため他の身体疾患,精神疾患に併発して存在することがあり,それらの増悪因子となっていることもある.

2. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群検査法

著者: 八木朝子

ページ範囲:P.1054 - P.1065

はじめに

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome,OSAS)はアメリカ睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine,AASM)の睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing,SDB)分類1)では,①閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(obstructive sleep apnea hypopnea syndrome,OSAHS)と同義語であるが,その他として,②中枢性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(cen-tral sleep apnea hypopnea syndrome,CSAHS),③チェーンストークス呼吸症候群(Cheyne-Stokes breathing syndrome,CSBS),④睡眠低換気症候群(sleep hypoventilation syndrome,SHVS)がある.

 OSAHSでは閉塞型無呼吸,閉塞型低呼吸,混合型無呼吸,呼吸努力関連覚醒反応(respiratory effort-related arousal,RERA)イベント,CSAHSでは中枢性無呼吸,中枢性低呼吸,CSBSではチェーンストークス呼吸,そしてSHVSでは低換気が主たる呼吸イベントである.呼吸イベントを正しく判別しなくては診断を誤ってしまうことから,この解析は重要な業務である.また,複数の病因が存在し病態が混在することもあり,主たる呼吸障害が何であるか判断することも大切である.

 臨床現場で慢性心不全患者に多いのはOSAHSとCSBSの混在である.閉塞型無呼吸は心不全に至る原因として,また,チェーンストークス呼吸は心不全の帰結として生じていると考えられるが,心不全の病状,年齢,基礎疾患,治療などにより閉塞型無呼吸とチェーンストークス呼吸の発生の優位性が変化する.どちらに優位性があるかを判別することは,治療法の選択に影響を与えるためその責務は重い.閉塞型無呼吸とチェーンストークス呼吸の鑑別は,混在病態が複雑であり,技術が不十分な面もあるため難しく,臨床検査技師の技量が問われる場面でもある.

 わが国ではOSAS診断のために簡易検査と終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnography,PSG)が保険適用されている.簡易検査は測定項目が少なく,取り扱いが簡便でかつ安価のため使用施設が多い.一方,PSGはゴールデンスタンダードな検査であるものの,その施行や解析の技術習得に時間を要すること,臨床検査技師の勤務体制の整備が必要なこと,機器が高価であることから,いまだ十分な検査ベッド数に達していない.本稿では,OSAS診断用としての簡易検査とPSGの施行法,解析法について述べる.

3. 鼻腔通気度検査の基礎と臨床

著者: 中田誠一

ページ範囲:P.1066 - P.1072

はじめに

 鼻腔通気度測定法は,嗅覚検査法と並んで鼻科学領域では二つしかない重要な機能検査法の一つである.本法は鼻呼吸状態を客観的に評価でき,保険診療点数も定められている1).しかるに,その普及度は耳鼻咽喉科領域においてさえ十分とは言いがたい.

 最近,睡眠時無呼吸症候群においての鼻閉がその病態および治療へ重要な鍵を握っていることが明らかになってきた.これらの際の指標となるのもこの鼻腔通気度である.

4. 呼気NO濃度測定の基礎と臨床

著者: 松永和人 ,   一ノ瀬正和

ページ範囲:P.1073 - P.1079

はじめに

 呼気中に検出される一酸化窒素(nitric oxide,NO)は気道内の上皮細胞やマクロファージにより産生されたNOに由来すると考えられており,健常人においても定常的にNOが呼気中に検出される1,2).NOは一酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase,NOS)によって産生されるが,気管支喘息などの炎症性肺疾患では炎症性サイトカインなどによりNOSが誘導され,多量のNOが産生されるため,呼気中のNOが健常者に比較し高濃度で検出される.このため呼気NOは喘息の診断や治療効果の判定において有用な指標となる3).呼気NO濃度測定は鋭敏に気道炎症をモニターできるだけでなく,簡便かつ非侵襲的であるため小児や高齢者においても繰り返し施行が可能である.そのため今後,呼気NO測定の重要性はますます高くなっていくと考えられる.ここでは呼気NO濃度測定について,原理と具体的な測定方法や臨床上の意義について述べる.

5. 経皮血液ガス分圧検査

著者: 福永壽晴

ページ範囲:P.1080 - P.1082

測定原理

 皮膚の局所を42~43°Cに加温すると皮膚温の上昇を防ぐために局所の血管が拡張し血流量が上昇する.この血流量の増加は毛細血管の酸素分圧の上昇と炭酸ガス分圧の低下を招き,結果として毛細管血は動脈化する.また,皮膚温の上昇は表皮の死細胞の脂質構造を溶解することにより,局所的に皮膚のガス透過性を高める.したがって,加温された皮膚表面にガスセンサー(電極)を設置し,毛細血管から拡散してきたガス分圧を計測することによって,経皮的に,かつ連続的に血液ガス分圧を測定することができる.

F 脳神経系検査

1. 脳磁図の基礎と臨床

著者: 湯本真人

ページ範囲:P.1084 - P.1092

はじめに

 脳磁図(magnetoencephalography,MEG)検査法は2004年4月に“神経磁気診断”として保険収載(D236-3)され,以来各地で保険診療としてのMEG検査が開始されている.この保険収載上の適応症例の制約や検査機器が高価なことなどから,実施施設も全国に20ほどと限られているため,あまりなじみのない読者も多いと思われる.そこで本稿は,MEGの原理と特性を概説するとともに臨床応用例を示すことで,本検査法になじみのない読者への理解の一助となることを目指したい.

2. マイクロニューログラムの基礎と臨床

著者: 國本雅也

ページ範囲:P.1093 - P.1100

検査の原理

 ヒトの末梢神経に電極を刺し,そこから神経1本1本の電気活動を記録できたら,というのは多くの神経生理学者の夢であった.神経線維1本ずつの電気活動を得ようとすると電極は非常に小さくなるため,その電気抵抗は大きくなる.それを観察するためには増幅率の大きい高性能のアンプを必要とする.実際の単一神経線維の電気的発火は振幅が数十から百数十μVの電位で,これは脳波とほぼ同じくらいの電位に相当する.当初はその記録が可能になるまでに相当な苦労があった1~3)

3. 長時間脳波検査法の基礎と臨床

著者: 久保田英幹

ページ範囲:P.1101 - P.1110

長時間脳波とは

 睡眠時無呼吸などの診断を目的とした終夜ポリグラフも長時間脳波と言えなくもないが,通常,長時間脳波検査とは,てんかん発作を記録する目的に実施されるものを指し,記録時間は1~3日から2週間と記録の目的や患者の発作頻度によって異なる.てんかん発作の診断のためには,発作症状とそれに伴う発作時脳波の解析が非常に重要である.そのため長時間脳波記録では脳波のみならず,ビデオも同時に記録するビデオ・脳波同時記録が基本となる.したがって,本稿では,“長時間脳波検査”はてんかんの長時間ビデオ・脳波モニタリングを指す.

 かつて脳波は紙にペンで書き出し,1台のカメラが脳波計を上から映し,もう1台がシールドルーム(外部からの電気的雑音を遮断した部屋)内の患者を映し,両者の映像をミキサーで合成し,ビデオテープに記録していたため,記録紙の巻き取り機の追加,定期的なテープの交換や解析時のテープの頭出しなど手間のかかる検査だったが,現在ではデジタル脳波計が普及し,映像もデジタルで記録するため,記録の実施およびデータ管理・解析は極めて容易となった.

4. 術中モニタリング,マッピング

著者: 長尾建樹 ,   杉山邦男

ページ範囲:P.1111 - P.1118

はじめに

 近年脳神経外科手術に際し,正常脳神経組織に侵襲が及ぶことなく病巣を的確に処理し,機能障害を未然に防ぐため,手術中に直接脳や神経からその電気活動を記録評価する方法が発達してきた.これらは術中モニタリング,マッピングと呼ばれ,手術をより安全で正確に遂行するために,現在では必須な検査手技となってきている.

 モニタリングは術中経時的に神経生理学的機能をモニターし,手術侵襲が正常脳神経組織に及ばずに手術が遂行されているかを監視するものである.マッピングは術中の脳神経組織から直接得られた神経生理機能のデータから機能解剖学的構造を把握するために行う.どちらも脳波や誘発電位など従来行われてきた神経生理学的検査が基本となっており,本稿ではわれわれの経験をもとに実際の手技を中心に解説する.

G 磁気共鳴画像検査

1. 磁気共鳴画像検査の基礎と臨床

著者: 堀正明 ,   寺田一志 ,   白神伸之 ,   嶋田守男 ,   山口晶

ページ範囲:P.1120 - P.1126

はじめに

 磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging,MRI)検査は,従来の基本的なT2強調像やT1強調像といった撮像方法に加え,近年のMRI装置ソフトウエアおよびハードウエア双方の進歩によって,さまざまな撮像方法が臨床の場に登場している.本稿では,それらのうち比較的多数の施設で行われ,かつ今後もその普及が予想される検査を選択して解説する.したがって,MRI検査の極めて基本的な部分,すなわち静磁場中における原子核のスピンとラジオ波の照射などについては既に多数の成書があるので割愛する.

 なお本稿中の臨床画像は,あえていわゆるチャンピオン画像は可能な限り提示せず,実際の臨床現場において,この程度であるというものを選択した.

2. 磁気共鳴画像検査法

著者: 難波静子 ,   亀田賢治 ,   多田麗子 ,   堀豊

ページ範囲:P.1127 - P.1140

はじめに

 磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging,MRI)を臨床検査技師が行う施設は増えているが,苦労している方も多いのではないだろうか.臨床検査技師にとって画像診断はまだまだ未知の分野であり,その理解には努力が必要である.今回は紙幅の都合上すべてを網羅することはできないが,当院での検査方法を中心に基本的撮影方法および他の画像診断方法との違いやポイントについて述べたい.

3. 脳のfunctional MRIの基礎と臨床

著者: 涌澤圭介 ,   杉浦元亮 ,   土屋滋 ,   川島隆太

ページ範囲:P.1141 - P.1147

fMRIの原理

 機能的磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging,fMRI)を単純に述べるとすると,なんらかの課題や刺激提示を行ったときの脳の神経活動部位を血流変化の信号から捉える方法であるといえる.脳の機能的(functional)な評価をするMRIともいえる.

 原理についてもう少し細かく説明する.なんらかの課題や刺激提示を行った際,脳のある部位で神経活動が起こる.その部位では神経細胞や星状細胞などで作られたネットワークで酸素と糖が消費され,デオキシヘモグロビンが若干増加する.デオキシヘモグロビンは常磁性体であり,磁場の不均一を引き起こし,磁的信号を低下させる.少し遅れて動脈側からオキシヘモロビン(反磁性体)がそこに流入するが,酸素の需要必要量以上の血流量が供給される.結果,その部位の近傍の静脈側では血管内容積が増え,デオキシヘモグロビンは希釈され,相対的に減少し,磁的信号が増強する.

 このような局所血流容積増加とデオキシヘモグロビン濃度変化による信号(blood oxygenation level dependent,BOLD信号)を捉えるのがfMRIである.BOLD信号を鋭敏に捉えるため,通常のMRIとは違い,fMRIではEPI(echo planar imaging)という連続高速撮像法が用いられている.さらに詳しい原理については成書1,2)を参照されたい.

H 患者接遇

さらなる患者接遇

著者: 石蔵文信

ページ範囲:P.1150 - P.1155

はじめに

 最近は医療の現場にもサービスという概念が定着し始め,従来の関係から患者さんを顧客として考えるようになってきている.その最たるものが,“患者さま”という呼び方である.いつの間にか,この“患者さま”という呼び方は定着し,多くの病院で取り入れられるようになってきた.筆者自身はこの“患者さま”という呼び方には違和感がある.そこまでわれわれ医療従事者がへりくだる必要があるのだろうか? 筆者自身は“患者さん”くらいでよいのではないかと思っている.また,“患者さま”という呼び方には,“患者=収益”という気持ちが見え隠れするのではないだろうか? いくら言葉遣いが丁寧でも,患者さんを本当に丁寧に扱っているのであろうか? 重要なことは呼び方ではなく,われわれの日頃の接し方であろう.

 医療の景気がよかった一昔前までは,確かにわれわれ医療関係者の患者さんに対する接し方はややもすれば横柄であったかもしれない.今では逆にクレームを恐れるがあまり,へりくだり,慇懃無礼な態度になってしまった.それがモンスターペイシェントの出現にもつながっていると思うのは筆者の思い過ごしであろうか?

 どこの世界でも大切なことは“目線”を合わせることである.地位や立場に関係なく平行な目線をもつことが相手を敬い,また,相手から信頼感を得る方法であろう.相手を下に見ることで威圧的になったり,相手を上に見ることで卑屈になったりすることは容易に経験することだろう.そして,患者接遇において最も大切なことは,医療従事者としての自信と誇りをもって患者さんに接することではないかと思う.われわれはよい医療を提供することが使命で,患者さんも愛想はよいが知識や技術が劣った医療従事者を欲しているわけはない.患者接遇を優先するあまり,自らの医療知識や技術の研鑽が滞るようでは本末転倒である.

 本稿では社団法人日本超音波医学会に設置されている「検査業務の安全管理のためのワーキンググループ」で行ったアンケートの結果などを踏まえて患者接遇について考えていきたい.

 このアンケートは日本超音波医学会の研修施設430施設に送付し,その52%の222施設から回答を得ている1)

I 今後の生理検査に望むこと

検査部:今後の生理検査と臨床検査技師に望むこと

著者: 伊東紘一

ページ範囲:P.1158 - P.1159

 臨床検査部(科・室)は当然のことながら,検体検査と生理(生体)検査に分けられている.病院の規模によっては,病理,輸血などを検査部に包含している場合もあり,生理を検体から分けているところもある.血液,尿,糞便などの身体から採り出される試料を分析解析する検体検査に対して,生理検査は生体内部において発生している微細な物理的現象(情報)を捕捉増幅し,診断や治療効果判定に提供するものである.

 本稿では,生理検査とそれに携わる臨床検査技師らに望むことを述べる.

検査部:よりよい生理検査(室)の発展を願って

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.1160 - P.1161

はじめに

 現代医療における臨床検査の重要性は改めていうまでもなく,病気の診断,治療効果の判定などを目的に施行される臨床検査の質・量ともに増加の一途をたどっている.病院においては臨床検査を中央化し,熟練技術者の手により,大量かつ高度の検査を効率的かつ精確に行うことが求められるようになった.総合病院としての医療水準を向上させるために,中央診療施設としての臨床検査部門が開設されているゆえんである.わが国の場合,これは臨床検査の大きな柱である検体検査,生理検査ともに当てはまることである.

 今回,今後の生理検査に関して意見させていただく貴重な機会をいただき,よりよい生理検査(室)の発展を願ってまとめさせていただく.筆者自身は大学病院の検査部に身を置くことにより検査に携わってきているが,専門が検体検査であるため,限られた角度からしか見ることができていない危惧があり,この点ご容赦いただきたい.

循環器科:心電図の記録と保存・保管を中心に

著者: 三宅良彦

ページ範囲:P.1162 - P.1163

 生理検査では循環器関連のものが多くを占めるが,そのなかでも件数が多い心電図を中心に述べてみたい.心電図検査にまず求められるものは,①正確な記録,②適切な記録保存,であろう.本稿においては,この二つについて希望,願望を述べ,さらにこれから要求されることになるであろう新しい業務について述べる.

呼吸器科:呼気凝集検査

著者: 坂本晋 ,   本間栄

ページ範囲:P.1164 - P.1166

呼気凝集液検査

 従来,気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease,COPD)をはじめとする炎症性呼吸器疾患の病態の機序解明やモニタリングには,胸腔鏡下肺生検,気管支鏡下肺生検,気管支肺胞洗浄(broncho-alveolar lavage fluid,BALF)などを用いた検討が行われてきた.しかし,これらの検査は侵襲が強く繰り返しの施行が困難であるため,呼吸器疾患のモニタリングには適さない.

 このような検査に代わり,最近ではより低侵襲的な誘発喀痰を用いた気道炎症の評価が行われている.しかし,この手法では,唾液が含まれるため,測定する物質によっては評価が困難な場合がある.一方で,より簡便で侵襲がなく,繰り返しての施行が可能な呼気ガス分析も行われるものの,測定値は呼気流速や肺気量位などの条件によって左右される.

 近年ではこのような問題を踏まえ,呼気凝縮液(exhaled breath condensate,EBC)採取という新しい手法を用いた検討が行われるようになり,気道,肺の炎症病態を評価する方法として注目されている1,2)

耳鼻咽喉科:耳鼻咽喉科生理機能検査の発展と将来

著者: 山本昌彦 ,   吉田友英

ページ範囲:P.1167 - P.1170

はじめに

 耳鼻咽喉科における生理機能検査には多くの種類がある.他科と共通する超音波検査や筋電図検査などもあるが,耳鼻咽喉科に特化した専門色の強い検査として聴覚検査や平衡機能検査1)がある.これら耳鼻咽喉科に特化した検査は,最近まで臨床検査学の範疇に入らず,耳鼻咽喉科独自の研修・教育で養成されてきた経緯がある.そのために,検査が現在なお耳鼻咽喉科外来検査室で行われている施設もあるが,15年くらい前から中央施設内での生理機能検査として実施される施設が多くなった.

 耳鼻咽喉科関係の生理機能検査は他科と共通する検査を含めて内容が非常に豊富であるとともに,一般病院や大学付属病院の耳鼻咽喉科が何を専門にしているのかで検査内容やその精度の要求が変わってくることがあり,検査をする側にとってその熟練度や対応姿勢も変わってくる.本稿では耳鼻咽喉科領域での生理検査の現状と将来について示したい.

神経内科:神経内科における脱中央化

著者: 長谷川泰弘

ページ範囲:P.1171 - P.1172

 フェルメールの絵画を見る機会があった.17世紀の風俗画家が切り取った当時の情景は,時代を超えて確認することができた.同じ芸術家でも,同世代に活躍した多数のバイオリニストは歴史上名前は出てくるものの,その人物が一体どんな優れた技法で音楽を奏でたのか皆目わからない.レコードやテープレコーダーなどの記録メディアの登場で,ようやく演奏家の奏でた音楽の価値や比較が可能となった.

J 最新機器解説超音波診断装置 超音波診断装置

プロサウンドα7

著者: アロカ株式会社

ページ範囲:P.1174 - P.1174

 プロサウンドα7は当社ハイエンド装置で培った技術・機能を継承しながら,小型軽量化によって可搬性を向上させた超音波診断装置です.通常のルーチン検査に加えて,超音波造影,3D/4D機能や本格的な循環器解析なども可能なためマルチに活躍できます.

循環器用超音波画像診断装置 ArtidaTM

著者: 東芝メディカルシステムズ株式会社

ページ範囲:P.1175 - P.1175

超音波診断システムは,3D診断・解析の時代へ

 東芝が新開発した循環器用超音波画像診断装置ArtidaTM(アルティーダ)は,一般的な心エコーの機能に加えて,拍動する心臓の動きをリアルタイムに3次元表示するCardiac 4Dイメージング機能を搭載しています.さらに,Cardiac 4Dの画像をもとに心筋の動きを立体的に追跡し,虚血性心疾患や非同期収縮などによる心筋の異常な動きをパラメトリックイメージで観察できる3D Tracking解析を開発し,臨床で初めて利用できるようにしました.ArtidaTMが超音波による新たな診断の可能性を切り拓きます.

汎用超音波画像診断装置 ACUSON X300 premium edition

著者: 持田シーメンスメディカルシステム株式会社

ページ範囲:P.1176 - P.1176

特 長

 ACUSON X300 premium editionは,コンパクトで機動性に優れ,心臓・表在領域・末梢血管・腹部と,多目的に使える汎用装置です.特に心臓検査の機能を強化し,“院内いつでもどこでもリアルタイム観察”という,超音波検査のメリットを最大限に活かせる工夫を随所に施しました.さらにシーメンス社の高級機で採用されている種々の機能を搭載できます.

iE33 Vision 2008

著者: 株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン

ページ範囲:P.1177 - P.1177

 本装置は2007年末に発売したフィリップス最新の循環器用プレミアム超音波診断装置である.

汎用超音波画像診断装置 Vivid S6

著者: GE横河メディカルシステム株式会社

ページ範囲:P.1178 - P.1178

 GEの先進テクノロジーが心エコーの歴史にまた新しい1ページを刻み込みます.Vivid iを生み出したGEの小型化技術が,ハイエンドのコンソール型装置をここまで小型軽量化しました.業界の常識を覆した重さ70kg,奥行70cmのハイエンドマシーンです.

デジタル超音波診断装置 EUB-7500

著者: 株式会社日立メディコ

ページ範囲:P.1179 - P.1179

笑顔をかたちに,コンパクトにハイエンド

 アーチファクトを抑え鮮明な画像を得るために,日立独自の最先端技術をコンパクトなサイズに納めた,ハイエンドクラスの装置です.

脈波検査装置

HEM-9000AI

著者: オムロンヘルスケア株式会社

ページ範囲:P.1180 - P.1180

 脈波解析から得られる指標は数多くあるが,HEM-9000AIはそのなかでも近年新しい指標として認知されてきた中心血圧,オーグメンテーションインデックス(augmentation index,AI)の測定が可能である

血圧脈波検査装置バセラ VS-1500シリーズ

著者: フクダ電子株式会社

ページ範囲:P.1181 - P.1181

 脳・心血管疾患は動脈硬化が基盤で発症するため,動脈硬化を早期に発見して適切な治療をすることが重要となる.また動脈硬化が進行した結果,高齢者を中心に下肢動脈の血流障害である末梢動脈疾患(PAD)が出現する.これら動脈の硬さの程度,下肢血管の血流障害の程度の2種類の検査を行う装置が血圧脈波検査装置である.

 動脈の硬さの指標として,脈波伝播速度(PWV)が古くからある.血管の2点で脈波を記録し,2点間の距離を脈波の時間差で除した値であり,動脈硬化が進むと大きくなる.このPWVは血圧の影響を強く受けることがわかっている.この血圧の影響を排除した新しい動脈硬化指標がCAVI(cardio-ankle vascular index)である.CAVIは動脈の圧変化に対する口径変化から血管固有の弾性を表す,血圧の影響を受けないスティフネスパラメータβをBramwell-Hillの式を利用してPWVから求めた.このため血圧依存が極めて少ない血管固有の硬さを示す動脈硬化指標である.CAVI≧9.0で動脈硬化の疑いがでてくる.

心電図検査装置

多機能心電計 FCP-7541

著者: フクダ電子株式会社

ページ範囲:P.1182 - P.1182

 最高の波形品質と最高のパフォーマンスを兼ね備えたハイエンド心電計としてFCP-7541は存在しています.まさに時代を先駆け,こだわり抜かれた機能と性能,拡張性で最新の医療ニーズに応える“心臓突然死の予知検査を可能にした心電計”です.

心電計 ECG-1550 cardiofax V

著者: 日本光電工業株式会社

ページ範囲:P.1183 - P.1183

概 要

 ECG-1550は「検査環境はもっと快適にならないか?」,「検査が困難な症例でも,もっと柔軟に対応できないか?」,「検査システムをもっと便利に活用できないか?」そんな思いをカタチにすべく開発された心電計です.短時間で質の高い検査データを得られるよう,各種機能が備わっています.

睡眠時無呼吸障害検査装置

サンドマン ポケット

著者: タイコヘルスケアジャパン株式会社

ページ範囲:P.1184 - P.1184

 サンドマンシステムとは,NellcorとPuritanBennettの二つのブランドが集結して開発した睡眠時無呼吸障害検査装置のことである.ハードウェアは,使用目的によって,SD32+,SD20,そしてサンドマン ポケットの3種類に分かれており,その診断・解析には,Sandman Eliteソフトを共通で使用するものである.

睡眠検査装置 スリープウォッチャー® Eシリーズ

著者: 帝人在宅医療株式会社

ページ範囲:P.1185 - P.1185

構 成

 スリープウォッチャー® Eシリーズは睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害の確定診断や経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)などの治療効果判定に適した睡眠ポリグラフィー(PSG)装置です.

 電極やセンサーを使用して,睡眠中の脳波・眼球運動・心電図・筋電図・口や鼻の気流の変化,胸腹部の呼吸運動・いびき音・体位・動脈血酸素飽和度(SpO2)・心拍数などの生体情報に加え,CPAP治療下での実圧も測定可能です.測定された情報はセンサー接続箱でデジタル信号へ変換され,本体を経由してパソコンに記録される仕組みになっています.

 また,データ通信にはTCP/IPプロトコルが採用されており,日常パソコンで使用するLANを構築する要領で自由にネットワークを拡張させることができます.例えば,病室とナースステーションの間にネットワークケーブルを敷設することで,検査データを遠隔からモニタリングすることもでき,医療機関のニーズに応じた検査システムが実現できます.

睡眠評価装置 スリープテスタ LS-300

著者: フクダ電子株式会社

ページ範囲:P.1186 - P.1186

 慢性心不全患者のうち,チェーン・ストークスパターンを呈する中枢性無呼吸(Cheyne-Stokes respiration-central sleep apnea,CSR-CSA)を合併する率は40%ほどあると言われている.CSR-CSAを説明する一つの発生機序として,心不全による心拍出量の低下が循環時間の遅延を招き,その結果,換気応答の遅れが低呼吸と過換気を周期的に繰り返す異常呼吸につながると言われている.閉塞型無呼吸(OSA)と同様に周期的な異常呼吸の影響を受けて心拍数,血圧は変動を示し,これがもともと低下している心機能をさらに低下させる一因になると言われている.また,慢性心不全に無呼吸が合併したときの生命予後は悪いとの報告もある.

 睡眠時無呼吸低呼吸症候群(SAHS)は,呼吸・循環のさまざまな因子が相互に関係していることから,SAHSを診断するにおいては多方面からの生体情報を収集することが重要である.現在,開発されている睡眠時無呼吸症検査装置には多機能でかつ,循環器分野からもアプローチできるものがある.今回は,その一部を紹介する.

Alice® 5

著者: フジ・レスピロニクス株式会社

ページ範囲:P.1187 - P.1187

概 要

 米国レスピロニクス社製「Alice® 5」は,終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)として期待される機能を備え,使いやすさと高機能を追求したPSGシステムです.

 軽量・コンパクトなベースステーション(本体)とヘッドボックス,使いやすい睡眠解析ソフトウェア“Alice® Sleepware”で構成されています.

ポリメイトと解析プログラム

著者: 株式会社ミユキ技研

ページ範囲:P.1188 - P.1188

概 要

 ポリメイトAP1532は本体重量約300gの生体アンプ内蔵の携帯型収録装置です.被検者の体に装着できるように小型・軽量化を図り,外部バッテリーで脳波・表面筋電図・心電図・眼球運動・呼吸・SpO2・脈波・体位・体動・いびき,などの測定データを本体搭載のコンパクトフラッシュメモリーに24時間以上収録可能です.また,本体をPCとUSB接続することによって,条件設定や測定波形のリアルタイムモニターおよびPC本体へのデータ収録が可能です.さらに,豊富な解析プログラムをラインアップしており,睡眠時無呼吸解析以外にも目的に応じた解析に対応できます.

呼吸機能検査装置

呼吸抵抗計 マスタースクリーン IOS

著者: フクダ電子株式会社 ,   株式会社フクダ産業

ページ範囲:P.1189 - P.1189

 IOS(Impulse Oscillometry System)はオッシレーション法で行われ,流量,呼吸圧,時間の解析によって得られた数値を肺のモデルを用いて各部位の抵抗値を解析する呼吸抵抗測定装置です.検査の理解が難しい小児や,検査をすることに負担のかかる被検者などに特別な協力を要求することなく短時間で安静換気から胸郭内の各部位ごとの抵抗を測定することができ,呼吸抵抗に関する多様な解析ができます.

 既存の機器では解析できなかった呼吸抵抗の粘性,弾性,慣性抵抗を周波数ごとに解析することができるので,気道閉塞が中枢,末梢どちらにあるかの識別や末梢気道や肺の状態を表すことができます.また,解析結果は,予測値や実数値とその両者の比較,波形のパターンでの表示,肺モデルによる模式図で表示や印刷ができます.

オートスパイロメータ システム-21

著者: ミナト医科学株式会社

ページ範囲:P.1190 - P.1190

 オートスパイロメータ システム-21は肺気量分画,フローボリュームカーブ,換気能力,クロージングボリューム,機能的残気量(ガス希釈法),肺拡散能力(1回呼吸法)の検査を行う総合呼吸機能検査装置である.

脳波検査装置

脳波計 EEG-1214

著者: 日本光電工業株式会社

ページ範囲:P.1191 - P.1191

 脳波計EEG-1214はインク書き記録器(14ch,紙幅245mm)を搭載したポータブルタイプのデジタルファイリング脳波計です.“スリム&スマート”をコンセプトに機動性を大幅に向上,生理検査のルーチン脳波測定から病棟,ICUでの測定,法的脳死判定におけるベッドサイドでのECI脳波測定まで脳波検査を行うことができます.

フルデジタル脳波/PSG装置 コメット CMXL-E

著者: 三栄バイタルズ株式会社

ページ範囲:P.1192 - P.1192

概 要

 本装置(以下,コメット)は日本国内で従来から使用されている紙記録式脳波計とは異なり,ディスプレイ上に脳波を描画,再生するペーパレス・フルデジタル脳波計です.メインアンプとデータを収録するワークステーションコンピューター,アイソレーション電源部,架台,光刺激装置で構成され,コンパクトで可搬性にも優れた装置です.また世界的な脳波計のパイオニアメーカーであるGRASS-Technologies社が70年間にわたって培ってきた脳波計測のノウハウをソフトウエアにも生かし,臨床現場での操作性を考慮した大変使いやすい操作環境を実現しています.

デジタル脳波計 ニコレーワン

著者: 株式会社ミユキ技研

ページ範囲:P.1193 - P.1193

製品概要

 ニコレーワンは脳波アンプ,光刺激,ビデオカメラなどを一体構成したペーパレス脳波計です.

 検査室での据え置き利用から病棟への移動利用も簡単に行えます.

 32以上の信号入力を有し,電極で導出された脳波および筋電図,心電図,眼球運動などの生体信号は脳波アンプで増幅されデジタル処理された後信号は電極単位でハードディスクに逐次保存されていきます.

 プリセットされたモンタージュで高解像モニターに原寸大の波形表示を行います.

 構成はスタンドアロンの使用からピア・ツー・ピアの簡易ネットワークやサーバー・クライアントの大規模な構成が可能です.

脳磁図装置

Elekta-Neuromag社製全頭型 306チャンネル生体磁気計測装置

著者: エレクタ株式会社

ページ範囲:P.1194 - P.1194

 Elekta-Neuromag社製全頭型脳磁場計測装置(magnetencephalography,MEG)はヘルシンキ工科大学の多年の研究成果をもとに商品化され,1994年にNeuromag122が1号機として京都大学に納品され,現在世界で臨床・研究用に44台が稼動しています.

160チャンネル脳磁計測システム MEGvision

著者: 横河電機株式会社

ページ範囲:P.1195 - P.1195

 脳磁計は超伝導量子干渉素子(SQUID)と呼ばれる超高感度磁気センサを使って,脳の電気生理学的な活動を高い時空間分解能で非侵襲的に計測する装置で,高度脳機能の解明や臨床における機能マッピングなど,近年広範囲に利用されるようになった.

磁気共鳴装置

EXCELART VantageTM Powered by Atlas

著者: 東芝メディカルシステムズ株式会社

ページ範囲:P.1196 - P.1196

 最新のMRIシステムEXCELART VantageTM Powered by Atlasは,高画質と高い処理能力を兼ね備えた患者にやさしい1.5Tシステムである.

MAGNETOM Avanto

著者: シーメンス旭メディテック株式会社

ページ範囲:P.1197 - P.1197

 従来,脳機能検査はpositron emission tomography(PET)検査を中心として行われており,脳賦活検査を実施できる施設も限られていました.一方,ファンクショナルMRI(fMRI)撮像を行うのに必要な超高速撮像法であるecho planar imaging(EPI)を撮像できる臨床用MRI装置が一般的となり,fMRIでの脳賦活検査が比較的容易になってきました.現在では,fMRIは脳神経外科,神経内科,認知心理学や小児発達の分野で広く応用されるようになってきています.

Achieva 3.0T X-series

著者: 株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン

ページ範囲:P.1198 - P.1198

 現在,国内に導入されているMR装置のなかで臨床機最高の磁場強度は3.0Tです.そのなかでもAchieva 3.0T X-seriesは①マグネット,②RFコイル,③ソフトウェアのすべてにおいてフィリップス独自の最新テクノロジーを搭載しており常識を覆す画期的な装置です.

Signa HDx 3.0T

著者: GE横河メディカルシステム株式会社

ページ範囲:P.1199 - P.1199

 3TMRIは1.5TMRIの約2倍のS/N比が得られることで高画質撮像が可能となり,特に頭部では微細な血管まで鮮明に捉えることができる.

 また,日常のルーチン検査における画質向上はもちろんのこと,ファンクショナルMRI(fMRI)やMRスペクトロスコピー(MRS)といった脳機能検査にも適しており,まだ臨床の場に登場して数年でありながら,大学病院を中心とした多くの基幹病院などで続々と導入され始めている.

日立オープン MRI装置 AIRIS Elite

著者: 株式会社日立メディコ

ページ範囲:P.1200 - P.1200

 日立は1987年の永久磁石MRI(magnetic resonance imaging)装置の市場投入以来,主に垂直磁場方式の永久磁石MRI装置を開発してきた.MRI検査は放射線被曝がないという特徴を有するが,昨今の高磁場化は被検者に不必要なリスクを与えるおそれがあると考えられる.MRI検査の安全性・快適性を追求するというコンセプトで開発された,オープンMRIの最新機種0.3T“AIRIS Elite”を紹介する.

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編集後記

著者: 菅野治重

ページ範囲:P.1202 - P.1202

 「検査と技術」の編集委員会では2008年の増刊号のテーマとして「生理検査」を取り上げました.本誌編集委員の永江学先生を中心に増刊号の編集員会を設け,内容を検討していただきました.「生理検査」を取り上げた理由は,「生理検査」は臨床検査技師の業務として現在最も期待されている領域であること,「生理検査」に関する知識と技術の習得が今後の病院検査室の臨床検査技師にとって必須となることなどの点を考慮したからです.

 生理検査には,心電図や血液ガス分析など緊急検査として重要な検査があり,これらの検査はすべての臨床検査技師が実施できるように訓練しておく必要があります.また,呼吸機能や脳波なども依頼される機会が多い検査です.最近の科学技術の進歩によって,超音波検査,MRI,MRA,CT,内視鏡検査などの画像検査が急速に発展し,医療を大きく進歩させてきました.わが国の医療機関はこれらの新しい画像検査法を積極的に導入しており,今後,臨床検査技師の新しい業務となる可能性が高い領域です.特に超音波検査は健康診断や日常診療で要望される機会の多い検査であり,既に臨床検査技師の重要な業務となっています.「生理検査」は患者と直接接する検査が多く,患者とのきめ細かな対応が求められます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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