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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術36巻7号

2008年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

特発性血小板減少性紫斑病

著者: 尾崎由基男

ページ範囲:P.594 - P.597

サマリー

 特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura,ITP)は,急性または慢性に経過する後天性の血小板減少症であり,皮膚や粘膜の出血を主症状とする疾患である.血小板減少の原因となるような明らかな基礎疾患や遺伝的要因がないため特発性血小板減少性と命名されているが,現在では免疫学的機序によるものと考えられている.赤血球や白血球など他の血球成分には異常なく,また凝固線溶系にも変化はない.予後は比較的よく,ITPによる出血で死亡することは少ない.ITP治療の第一選択は副腎皮質ステロイドであるが,一部にはステロイドに反応しない難治性の症例も存在する.最近になりITP患者に高率にヘリコバクターピロリ菌の感染があり,除菌によりITPが治癒することが明らかになった.

技術講座 生化学

―臨床化学基礎技術シリーズ―4.分析ツール その3:圧力

著者: 関口光夫

ページ範囲:P.599 - P.604

はじめに

 圧力は日常生活においても水圧やガス圧などでなじみ深い量である.物理化学,臨床化学領域では圧力と他の変数が一つの関数に関与した法則がしばしば応用されている.圧力の単位は歴史的に数多く登場している.列記すると,atm,mmHg,mmH2O,Torr,kgf/cm2,psi,bar,N/m2,m-1・kg・s-2,Paがある.本稿では,SI単位として定義されている単位とわが国の計量法とのかかわりについて述べたい.さらに,臨床化学領域において圧力のパラメーターが含まれている法則について考えてみたい.

微生物

肺炎マイコプラズマの分離培養法

著者: 田澤節子 ,   丸茂健治

ページ範囲:P.605 - P.608

新しい知見

 肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)の培養はPPLO(pleuropneumonia-like organisms)培地を使用するが,培養に時間がかかり,判定が煩雑なことから,M. pneumoniae感染症診断では血清学的検査法〔粒子凝集反応(particle agglutination,PA)法や迅速酵素免疫測定法など〕が主流である.最近では,特異プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)法によるマイコプラズマ肺炎の迅速診断も可能になった.一方,2000年を境にしてマイコプラズマ肺炎治療に有効なマクロライド耐性株が分離されるようになり,新たな問題が発生した1).このような薬剤耐性M. pneumoniaeの検出検査には,薬剤感受性試験や耐性遺伝子検出試験が必要である.このため患者検体からのM. pneumoniae分離培養は,以前にも増して欠かせなくなった.

血液

赤血球形態異常における最近の状況

著者: 阿部泰典

ページ範囲:P.609 - P.616

新しい知見

 赤血球形態異常は,大きさ,染色性,形状,封入体などによって判別される.近年,日本検査血液学会の血液形態検査標準化小委員会によって標準化が進められているが,現状では,赤血球形態異常の臨床サイドへの報告は施設によって大きく異なり,臨床に対してどれだけ標準的な情報を提供できるかが課題となっている.また,赤血球の形態異常のなかには,破砕赤血球(schizocyte)のように臨床サイドに早急に報告を必要とする疾患や,病態と密接に関係しているものもあり,近年では血球分析装置を用いた破砕赤血球や有核赤血球(nucleated red blood cell,NRBC)の検出,網赤血球ヘモグロビン等量(reticulocyte hemoglobin equivalent,RET-He)/網状赤血球ヘモグロビン含量(reticulocyte hemoglobin content,CHr)の測定を試みた研究も多く報告されている.

疾患と検査値の推移

再生不良性貧血の臨床病態と臨床検査学的特徴

著者: 石山謙 ,   中尾眞二

ページ範囲:P.620 - P.625

はじめに

 再生不良性貧血(aplastic anemia,AA)は,赤血球,白血球,血小板の三系統がいずれも減少する汎血球減少と骨髄の低形成を特徴とする症候群であり,類似の徴候を示す疾患群から他の疾患を除外することにより初めて診断することができる.先天性と後天性が区別され,後天性はさらに特発性,二次性,特殊型に分類される(表1).また,AAは血球減少の程度により5段階に分類されている(表2).

座談会 21世紀の臨床検査

微生物検査の現状と将来展望

著者: 川上小夜子 ,   水谷哲 ,   柳沢英二 ,   菅野治重

ページ範囲:P.654 - P.663

昨今,新たな感染症や薬剤耐性菌が次々と登場し,“医療安全の確保”の一環としての“感染管理”という観点からも微生物検査の重要性はますます高くなっている.その一方で,経営的な理由から病院検査室が廃止され,本来外注に不適な微生物検査も外注化が進んでいる.このような現状を踏まえ,これからの微生物検査はどうあるべきか.座談会シリーズの第1弾として,微生物検査の現状と将来について語っていただく.

オピニオン

ISO15189認定取得と検査スタッフのモチベーション

著者: 勝野浩

ページ範囲:P.598 - P.598

はじめに

 検査結果の信頼性の第三者評価について考えていた折,われわれは,2002年にISO15189(臨床検査室の質と適合能力に対する特定要求事項)の国際規格最終案ができたことを知ったのである.しかし,その規格に関する講演会に出席しても,内容は全く理解できないまま時間だけが過ぎていった.それまでは,われわれ臨床検査室の検査結果の信頼性については,日本医師会や日本臨床衛生検査技師会が主催する技能試験に参加し,その結果で担保していた.しかし,この国際規格を少しずつ理解していくに従って,検査をする技術的な面だけでなく,検査室全体を管理したうえで技術面も考えることの重要性に気づかされた.しかし同時に,そのことを検査スタッフ全員に周知することの難しさも知らされたのであった.

ワンポイントアドバイス

ホルマリン固定組織標本の凍結切片作製法の検討

著者: 大森康旨 ,   森地久子 ,   守安岳征 ,   西村知己 ,   雑賀興慶

ページ範囲:P.626 - P.626

はじめに

 通常,病理検査ではホルマリン固定組織標本が使用されている.ヘマトキシリン-エオジン(hematoxylin-eosin,HE)染色,特殊染色をはじめ,今日では免疫染色でさえホルマリン固定後,パラフィン包埋処理された組織で実施されている.しかしなお,脂肪染色はパラフィン包埋後の標本では作製不可能であり,生組織あるいはホルマリン固定組織からの凍結切片が使用される.ホルマリン固定された組織からの凍結切片作製は困難であり,これまでは,①高張蔗糖液で約24時間浸透(4°C),②電子レンジと圧力釜を用いる,などの方法が実施されてきた.その基本的な考え方は,いずれも組織からホルマリン固定液を除去し,包埋剤を組織に均等に浸透させることである.

 今回われわれはこのような考え方に基づき,ホルマリン固定組織を前処理することなく直接包埋剤に入れ,陰圧・陽圧を繰り返し加える操作を行ったところ,ホルマリン固定組織からの凍結切片作製を可能にすることができた.

私の一推し免疫染色

WT1

著者: 三上芳喜

ページ範囲:P.628 - P.629

症例

 56歳の女性.腹膜癌腫症の診断により試験開腹が行われ,大網の小腫瘤がサンプリングされた.肉眼的には卵巣は正常であった.組織学的には,不整形の核と好酸性でやや暗調の細胞質を有する異型細胞から構成される腫瘍が確認された.腫瘍細胞の核クロマチンは増量しており,核分裂像も多数見られた.細胞質内粘液の存在は認められなかった.主として充実性シート状の増殖を示していたが,一部では間質性の芯を伴わない微小乳頭状増殖が認められた(図1).

一般検査室から私の一枚

糞線虫の戯れ,それとも???

著者: 中村広

ページ範囲:P.627 - P.627

 沖縄といえば,“青い海・青い空”を一般的にイメージすることでしょう!

 寄生虫といえば,“糞線虫・広東住血線虫”が掲げられると思います.さて,写真に見える虫体は,糞便を寒天平板培養法で培養した自由生活世代の雌雄成虫です.1匹の雌に3匹の雄,そのなかの2匹が羽交い締めをして遊んでいるのか? 子孫繁栄のための行為を営んでいるのか?と興奮しながら急いでデジカメを取り出し撮影した記憶に残る一枚です.

今月の表紙

僧帽弁狭窄症と心房中隔瘤

著者: 信岡祐彦

ページ範囲:P.617 - P.617

 今回は,僧帽弁狭窄症に心房中隔瘤と卵円孔開存を合併した1例を提示する.


【症例の概要と心エコー所見】

 症例は44歳,女性.心雑音の精査目的で当院を受診した,胸部の聴診では,心尖部に僧帽弁開放音と拡張期低調性雑音を聴取した.

ラボクイズ

寄生虫関係

著者: 升秀夫

ページ範囲:P.618 - P.618

6月号の解答と解説

著者: 加藤幸子 ,   下川憲子 ,   滑川妙子

ページ範囲:P.619 - P.619

復習のページ

新しい腎機能マーカー

著者: 要伸也

ページ範囲:P.668 - P.670

[CKDとは何か?]

 最近,慢性腎臓病(chronic kidney disease,CKD)という新しい概念が注目されている.背景には末期腎不全を含む腎臓病患者の増加があるが,より重要なのは,たとえ軽度であっても慢性的な腎障害の存在が腎予後(腎機能悪化)のみならず,心血管疾患の発症ないし生命予後を予測することが確実になってきたことであろう.そして,このような問題意識のもと早期から慢性腎臓病の患者を把握し,対策を講じていく必要性が強調されている.

 さて,CKDは次のように定義される.すなわち,①腎機能低下がなくても検査上あるいは画像上3か月以上腎障害を認めるもの,②糸球体濾過量(glomerular filtration rate,GFR)の低下(60ml/分/1.73mm2以下)を認めるもの,である.このうち,①は従来の蛋白尿・血尿に相当するが,一般尿検査で陰性であっても,微量アルブミン尿が出ていれば該当することに注意する,②は従来の慢性腎不全に相当する.

臨床医からの質問に答える

免疫クロマトグラフィー法を用いた尿中抗原検査による肺炎診断

著者: 舘田一博

ページ範囲:P.664 - P.666

はじめに

 肺炎をはじめとする感染症の診断法としては培養法がゴールドスタンダードであるが,その他に血清抗体価測定,遺伝子診断,病原体抗原検出などの方法が臨床応用されている.最近になって重症肺炎の原因として重要な肺炎球菌とレジオネラ(Legionella)に対する尿中抗原検出キットが開発され,その臨床的有用性が確認されている.特に免疫クロマトグラフィー法による検査は,「いつでも,どこでも,誰にでも実施可能な検査で,しかもすぐに結果がわかる」という理想的方法の一つである.本稿では,これら尿中抗原検出キットの特徴・有用性について説明するとともに,最近わかってきたいくつかの問題点について概説する.

Laboratory Practice 〈病理〉

標本作製の自動化

著者: 金子伸行

ページ範囲:P.630 - P.636

はじめに

 ここ数年,病理組織標本作製の自動化は急速であり,標本作製におけるほとんどの工程で自動化が進められている.検体受付に始まり,プレパラート・ブロックカセット印字,薄切,ヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin-eosin,HE)染色,特殊染色,免疫組織化学染色(免疫染色),インサイチューハイブリダイゼーション(in situ hybridization,ISH),検体管理,精度管理に至るまで機器が介在しうる.細胞診の分野でも,液状処理によって標本作製が自動化され,婦人科検体についてはスクリーニングまでもが自動化可能になっている.

 当施設でも,当日病理診断(same day diagnosis)のための連続処理を目的としていくつか自動機器の導入が始まっており,本稿ではこのうちの「包埋」「HE染色」「特殊染色」「免疫染色・ISH」「封入」について機器と運用を紹介する.

〈血液〉

血小板機能検査の標準化

著者: 佐藤金夫

ページ範囲:P.637 - P.639

はじめに

 血栓症の治療には抗凝固療法や抗血小板療法が有効な手段となっている.抗凝固療法ではプロントロンビン時間-国際標準化比(prothrombin time-international normalization ratio,PT-INR)を指標としてワーファリンの薬効モニタリングが実施されているが,抗血小板療法では血小板機能検査を利用した薬効モニタリングの実施は一部の施設にとどまっている.そのため“どの程度まで血小板機能を低下させればよいのか”といった治療基準は設定されていない.近年,アスピリン治療に抵抗性を示す病態生理(アスピリンレジスタンス)が明らかとなり,この点でも抗血小板薬の薬効をモニタリングする必要性が増している.現在,血小板機能検査の結果を利用した抗血小板療法の治療基準やレジスタンスの診断基準は確立されていないが,その一因として施設ごとに異なるプロトコルで検査が実施されていることが挙げられる.そのため,血小板機能検査の標準化を進めてデータの共有化を図ることは,治療基準や診断基準の確立に大いに役立つと考える.

〈臨床生理●脳波検査のステップアップ・8〉

小児基礎脳波

著者: 小林勝弘 ,   大塚頌子

ページ範囲:P.640 - P.647

はじめに

 乳児期から小児期にかけて脳神経系には,脳重量の急激な増加や,髄鞘化の進展などの著しい発達がみられる.これを反映して脳波像にも著明な発達的変化が認められる1~6)ため,小児脳波の判読には年齢的変化に関する知識が必須である.

 脳波は発達を示すため,正常の基準がそれぞれの月年齢で変化し,正常・異常の判定が成人よりも困難であり,各月年齢での正常状態を把握する必要がある.未熟児や新生児では,頭囲が小さく通常の国際10-20電極法の電極配置が困難な場合,電極数を減らした特殊な配置を行うこともある(図1).またポリグラフィとして,眼球運動,呼吸,心電図,筋電図などを同時に記録する8)

〈一般●精度管理・2〉

便検査(潜血)の精度管理

著者: 岡田茂治 ,   小池真由美 ,   澁澤幸枝 ,   西田俊朗

ページ範囲:P.648 - P.652

はじめに

 日常使用されている便潜血検査とは,化学法,免疫法いずれにも使用されている便中ヘモグロビン検査の呼称である.しかし両法は測定原理,測定精度,検査対象などにおいて大きく異なり,本来別名で称する必要がある.本稿では化学法を原理とするテトラメチルベンジジン法,グアヤック法などを便潜血化学法,抗ヒトヘモグロビン抗体を用いた免疫学的検査法を便ヘモグロビン検査法(以下,便Hb検査)とする.

 便潜血化学法と便Hb検査は他の臨床検査項目のように十分な日常精度管理,コントロールサーベイが行われておらず,標準化も進んでいない.大腸がん検診で実施されている便Hb検査は,非侵襲で多検体処理に適するコストパフォーマンスに優れた1次スクリーニング検査として実施され,精査検査(全大腸内視鏡検査など)への重要な振り分け検査となる.しかも,便Hb検査の大腸がんに対する検査診断精度はがん発見率に大きく影響する.つまり,便Hb検査は大腸がん検診システム全体の有用性を大きく左右する重要な役割を担っており,社会的責任の大きな検査である.本稿では改めて便Hb検査における日常精度管理法実施の必要性を考えたい.

けんさ質問箱

ホルマリンの取り扱いについて

著者: 谷山清己

ページ範囲:P.671 - P.673

Q.ホルマリンの取り扱いについて

2008年3月からホルマリンの取り扱いが厳しくなったようです.病理のルーチンにおいてどのくらいまで許容されるのでしょうか(作業時には当然ホルマリン臭は強くなるのですが).また,取り扱い上さらに気をつけなくてはいけないことは何でしょうか.(岐阜市 A.K.生)

 

A.谷山清己

はじめに

 病理診断・検査では,ホルムアルデヒド(formaldehyde,FA)を約4~8%含む水溶液(10~20%ホルマリン液)を通常の組織固定に用いています.FAは標本作製,病理診断に欠かせない化学物質です.近年,FAのさまざまな有害性が指摘されています.高濃度長期曝露により鼻咽頭癌を発生させる発がん性物質であることが,世界保健機関(World Health Organization,WHO)により2004年に報告されました.また,慢性曝露による生殖毒性,胎盤通過性による胎児への影響,感作による喘息・アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎の発症などに加えて,FA曝露による気道粘膜の細胞変性,炎症,過形成,扁平上皮化生などの組織学的変化についても報告があります.さらに,FAはシックハウス症候群などの化学物質過敏症の原因物質の一つとされ,住環境においては厳しく管理されています.

トピックス

たこつぼ型心筋症

著者: 伊藤大起 ,   森野禎浩

ページ範囲:P.675 - P.677

概念,定義

 たこつぼ型心筋症はわが国で命名された心尖部を中心とした一過性の収縮障害であり,1990年に佐藤ら1)によって「急性心筋梗塞に類似した胸痛と心電図変化を有しながら,それに伴う左心室の壁運動異常が一つの冠動脈の支配領域を超えて心尖部を中心とした広範囲に及び,左室造影において“ツボ型”を呈するが,その左心室の壁運動異常は1~2週間でほぼ完全に正常化し,かつ冠動脈造影には有意の狭窄を認めない」と報告された.

 成因としては冠動脈の多枝攣縮や微小循環障害,またカテコラミン心筋症などが挙げられているが,そのすべてに矛盾点も多く,いまだ明らかとされていないのが現状である.背景として疾病罹患時も含めた精神的,身体的ストレスに曝露されていることが多く,ストレス心筋障害(stress cardiomyopathy)などと表現されることもある.諸外国では“Takotsubo”の名から病態を連想しにくく,本症の形態学的異常から“apical ballooning”と称されることが多い.筆者らはたこつぼ型心筋症と診断された症例から,類似の病態を惹起しうる脳血管障害,褐色細胞腫,ウイルス性もしくは特発性心筋炎などを2007年発表のガイドラインに基づいて除外し,連続45例において患者背景,症状や各種検査結果などにつき後ろ向きに調査した.この集積をもとに,たこつぼ型心筋症の臨床像を中心に以下に述べる.

活性酸素を減らす物質8-ニトロ cGMP

著者: 澤智裕 ,   赤池孝章

ページ範囲:P.678 - P.679

はじめに

 過剰な活性酸素の生成によって起こる細胞死,遺伝子損傷などを介した酸化ストレスが,感染,炎症,癌,動脈硬化・糖尿病などの生活習慣病や,アルツハイマー病などの神経変性疾患といった多くの疾患の発症に共通して関与する分子病態として認識されている.活性酸素の生成とその消去が細胞内でどのようにして制御されているのか,そのシグナル伝達経路の解明は,酸化ストレス病態の分子基盤の理解を深め,それら疾患の診断や治療への展開が期待される.本稿では,活性酸素を減らすための新しいシグナル分子としてわれわれがごく最近発見した,8-ニトログアノシン3′,5′-環状ヌクレオチド(以下,8-ニトロcGMP)について紹介する1)

コーヒーブレイク

整理収納をちょこっと科学する―第7回:「IN-STOCK-OUT」の流れで考える―「IN」をコントロールする

著者: 本多弘美

ページ範囲:P.653 - P.653

 前回は,入り口の「IN」には種類があるという話をしました.今回は「IN」のなかの「生活に必要な消耗品」をコントロールする方法を紹介します.

 私たちは「安い」といううたい文句に釣られて,必要以上のモノを買ってしまう傾向があります.特にいつか使えて,しかも目に見える劣化のないものは,過剰ストックになりがちです.

家族の病気と介護休暇

著者: 中村佐和子

ページ範囲:P.667 - P.667

 コーヒーブレイクへの登場は3回目となりました.今回は検査技師生活23年目の現在を振り返りたいと思います.

 2007年5月に入り,長野市にある両親の家で母と2人同居生活を始めました.父が4月半ばから入院生活を送ることになったためです.長野に帰省してからも別居していたため,親子で暮らすのは25年振りです.そのうえ以前とは違って私が介護者として暮らしを支えていかねばなりません.過去2編でも紹介しましたように今までは介護される(?)ような経験ばかりしてきた私が180°方向転換して逆の立場になったわけです.子育て,育児も知らないで介護をするわけですから,いろいろな困難や状況に慣れて先へ突き進んでいくにはかなりの労力と時間が必要でした.5月の宮崎での医学検査学会参加後,気持ちを切り替えて母との暮らしを優先した生活が始まりました.

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あとがき

著者: 曽根伸治

ページ範囲:P.680 - P.680

 まもなく夏本番の時季になりました.昨今地球温暖化でCO2削減が叫ばれておりますが,私が勤める大学は都内でもCO2排出量が多いため,その対策に大学で取り組んでいます.原油も毎日最高値を更新しています,新たにバイオエタノールなども開発され,石油のエネルギーに頼らないものが開発されてきています.臨床検査もエネルギーを効率よく利用して,より有用なデータを臨床側に報告できるような研究・開発を行うことが必要でしょう.

 “ワンポイントアドバイス”で「ホルマリン固定組織標本の凍結切片作製法の検討」や,“Laboratory Practice”では「標本作製の自動化」などが紹介され,手作業が多く効率化が難しいと思われていた病理検査にも自動化が進んできています.また,“けんさ質問箱”で取り上げたように検査に使用するホルマリンの取り扱いをはじめ,働く人の安全や健康確保のために各種の規制も実施されてきています.“技術講座”では「臨床化学基礎技術シリーズ」としてこの4月号より臨床化学に必要な物理化学パラメータが連載され,5月号は「分析ツールその1:容量と重量(質量)」,6月号は「その2:温度」,そして今月号は「その3:圧力」が解説されています.このように臨床検査技師は,臨床検査のみではなく,あらゆる方面の知識を集めて仕事に臨むことを心がけていくことが大切です.また今月号は“一般検査室から 私の一枚”と“ラボクイズ”で,最近では珍しい寄生虫が掲載されていますので,寄生虫について勉強をされて,クイズに応募してみてはいかがでしょうか.さらに今月号は,特発性血小板減少性紫斑病,血小板機能検査の標準化,赤血球形態異常に関する標準化,再生不良性貧血に関連する検査値の推移など血液検査に関する知識を習得するには最適な号となっています.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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