〈生化学〉
ホモジニアス法を用いた新規VLDL-TG測定方法の基礎的検討
著者:
中田瞳美
,
阿部美佐子
,
黒沢秀夫
,
小池優
,
平田龍三
,
阿部郁朗
,
吉田博
,
海渡健
ページ範囲:P.290 - P.293
はじめに
血清脂質異常が動脈硬化症の発症と進展に深く関連することについては数多くの報告があり,特に高LDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol,LDL-C)血症は独立した危険因子として認められている.それとは対照的に,高中性脂肪(triglyceride,TG)血症は,食後の外因性(食事性)TGに大きく影響されるなどの理由から,独立した危険因子としては認められていなかった1,2).
しかし,2003年に米国コレステロール教育プログラム(National Cholesterol Education Program,NCEP)のAdult Treatment Panel III(ATP-III)3)においてメタボリックシンドロームの診断項目の一つに高TG血症が加えられたこともあり,近年TGに関する注目度が高まってきている.
TG値を判断するには食事の関与を可能な限り少なくすることが必要であるが,そのためにはTG全体ではなくVLDL(very low density lipoprotein)-TGを測定することの有用性も報告されている4).VLDL-TG測定にはいくつかの測定方法が報告されているが5~7),超遠心法に代表されるように非常に煩雑な操作が必要であり,大量の検体処理が困難であるという問題点がある.
今回われわれは,食事の影響をできるだけ受けにくく,かつ汎用機で測定可能な新規VLDL-TG測定試薬の使用機会を得た.本測定試薬は,食事性TGであるカイロミクロン(chylomicron,CM)-TGを除き,VLDL-TGを選択的に測定する新たな測定方法である.HDLコレステロール(high density lipoprotein cholesterol,HDL-C),LDL-Cの測定に用いられているホモジニアス法8,9)を原理とし,界面活性剤でほかのリポ蛋白TGを消去するため,遠心操作などの前処理が不要となり,簡便かつ短時間に大量検体のVLDL-TG測定を可能とするものである.
本稿では,本試薬の基礎的検討を報告する.