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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術37巻5号

2009年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

難聴―感音難聴を中心に

著者: 中田誠一 ,   中島務

ページ範囲:P.402 - P.407

サマリー

 音のエネルギーが内耳に達する伝わり方には気導と骨導という二つがあり,難聴は主にその気導が障害されるものと骨導が障害されるものとの2通りに分けられている.外耳,中耳になんらかの病変があり音が伝わらない病態は伝音難聴と定義され,内耳に病変があり音を感受できない病態は感音難聴と定義される.本稿ではそのなかで重要な疾患である突発性難聴,メニエール病,聴神経腫瘍について概説する.それぞれの難聴パターンには特徴があり,検査を組み合わせてしっかり鑑別診断することが肝要である.

技術講座 生理

―臨床生理検査シリーズ・8―脳波検査―臨床編(小児)

著者: 高嶋浩一 ,   湯舟憲雄 ,   稲葉信夫 ,   尾本きよか ,   河野幹彦

ページ範囲:P.409 - P.418

新しい知見

 てんかんについて世界保健機関(World Health Organization,WHO)では“種々の原因によって起こる慢性の脳疾患で,大脳ニューロンの過剰な発射に起因する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし,これに種々の臨床症状および検査所見を伴うもの”と定義している.てんかんは幅広い年齢で発症するが,小児に多い疾患と言われている.てんかんの診断に脳波検査は不可欠であり,近年,電子工学の発展によってデジタル脳波計に付加されるようになったリフォーマット機能や脳波解析プログラムを用いて,臨床的により有用な情報を提供することができるようになった.

生化学

―ホルモンの測定シリーズ・2 下垂体系:2―性腺刺激ホルモン―黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)

著者: 清水聖子 ,   太田博明

ページ範囲:P.419 - P.423

新しい知見

 多様なイムノアッセイ法が開発され,黄体化ホルモン(luteinizing hormone,LH),卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone,FSH)は各種測定原理によって,簡便かつ高感度の測定が実施できるようになった(表1).近年,LHβ鎖の遺伝子のいくつかの点変異が報告されている.8番目,15番目,54番目,102番目のアミノ酸の変化がそれぞれ異なった活性の変化を示すとされている.これらの異常に起因し,検査する抗体の種類の違いによって測定結果が異なる可能性がある1)ので注意を要する.また,FSHについても受容体におけるDNA配列の遺伝子多型によって卵巣の反応性に差があるとの報告がある2)ので留意すべきである.

病理

骨髄標本の染色性向上のコツ

著者: 小林博久 ,   定平吉都

ページ範囲:P.425 - P.429

新しい知見

 ハマースミス・プロトコル1):ロンドンのハマースミス(Hammersmith)病院で骨髄針生検材料の病理診断のために考案された処理法で,酢酸(acetic acid)-亜鉛(zinc)-ホルマリン(formalin)固定液(以下,AZF)で20~24時間固定後,グッディング(Gooding)とスチュワート(Stewart)の脱灰液(以下,GS)で6時間脱灰し,他組織と同様にパラフィン包埋を行い,1μmの薄切切片を作製する方法である.本法は形態保持が良好であるばかりでなく,免疫染色の抗原性やDNA解析,ISH(in situ hybridization)のための核酸の保持に優れている.

 ・AZF:塩化亜鉛12.5g,ホルマリン原液150ml,氷酢酸,7.5ml,蒸留水で1,000ml

 ・GS:10%蟻酸・5%ホルムアルデヒド

疾患と検査値の推移

鉄欠乏性貧血

著者: 塩崎宏子 ,   泉二登志子

ページ範囲:P.430 - P.435

 鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia,IDA)は最も頻度が高く,日常診療でもみる機会の多い貧血である.わが国では食生活が豊かになった現代でも減るどころか,鉄摂取量の減少によってさらに増加傾向にある.わが国は,先進国のなかでもIDAの発症頻度が高い.本稿ではIDAに関連して,最近分子生物学的研究が飛躍的な進歩を遂げている鉄動態についても簡単に触れたい.

オピニオン

“悔しいぃぃ”思い… されど

著者: 山根誠久

ページ範囲:P.408 - P.408

 人みな,悔しい思いはいつまでも残るものです.悔しい思いはいつまでも心の奥底に沈澱し,次第にその厚さを増していくものです.

・戸坂雅一,他:昭和1濃度ディスクによるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)検出法の検討.臨床病理 39:548-556,1991[PMID:2072577]

・Yamane N, Tosaka Mu:uCorrelative interpretation of staphylococcal resistance to penicillinase-resistant penicillins by ceftizoxime disk susceptibility test using Showa disks. Diagn Microbiol Infect Dis:14:451-455,1991 [PMID:1797461]

・Molina E, Saito R, Yamane Nu:uCorrelation of staphylococcal resistance to penicillinase-resistant penicillins and various cephalosporins by NCCLS disk susceptibility test. JARMAM 3:79-85,1991

・Yamane N, Tosaka Mu:uAccurate and rapid detection of methicillin-resistant Staphylococcus aureus by Vitek Assay Card using ceftizoxime. JARMAM 5:69-78,1993

・森安惟一郎,他:セフチゾキシム1濃度ディスク法によるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA)の検出:国内複数施設による共同評価.臨床病理 42:271-277,1994[PMID:8152163]

 もう十分でしょう.なにを言いたいって… MRSAの検出にはメチシリン(methicillin)でもオキサシリン(oxacillin)でもなく,セフチゾキシム(ceftizoxime)というメチシリンとは無縁の抗菌薬を用いた薬剤感受性試験が一番優れていると20年近く前から言い続けてきたのです.ところが2004年になって,なぜか臨床検査の標準化を指導的に推進するNCCLS(National Committee for Clinical Laboratory Standards:2005年1月1日 Clinical and Laboratory Standards Institute CLSIと改称)は,セフォキシチン(cefoxitin)での薬剤感受性試験からMRSAを判定する方法を提案しました.

ワンポイントアドバイス

血小板指数(MPV・PDW)

著者: 雨宮憲彦

ページ範囲:P.436 - P.437

はじめに

 血球計数測定装置は近年の目覚ましい進歩によって赤血球系,白血球系,血小板系と多くの有用な情報を提供している.そのなかで血小板系は血小板数と血小板指数である平均血小板容積(mean platelet volume,MPV),血小板クリット(platelet clit,PCT),血小板体積分布幅(platelet distribution width,PDW),大型血小板比率(platelet-large cell ratio,P-LCR)などがある.特にMPV,PDWは通常の血算測定で算出される便利な指標である.本稿ではMPV,PDWの測定原理,臨床的意義について解説する.

目指せ!一般検査の精度向上

―尿沈渣検査の精度向上:1―採尿指導と尿沈渣内部精度管理

著者: 近藤綾子

ページ範囲:P.440 - P.444

はじめに

 臨床検査は,単に測定するのみでなく,検体採取から報告まで適切な検体採取と管理,検査結果の報告が必要とされている.

 本稿では,採尿方法による尿検査結果への影響,当直業務に適用できる尿沈渣の内部精度管理について述べる.

今月の表紙

甲状腺びまん性硬化型乳頭癌

著者: 廣川満良 ,   前川観世子 ,   太田寿

ページ範囲:P.424 - P.424

【症例の概要】

 20代,女性.前頸部腫瘤を主訴に来院した.超音波検査で,甲状腺全体に微細多発性高エコーが見られた.両側の外側区域リンパ節は腫大し,転移が見られた.特に,左側では数珠状に腫大していた.胸部CTで両側肺野に2~3mm大の転移巣が見られた.穿刺吸引細胞診で乳頭癌と診断され,甲状腺全摘術+両側頸部リンパ節郭清術が行われた.組織学的には,びまん性硬化型乳頭癌で,両側の広範な頸部リンパ節転移を伴っていた.術後,肺転移に対してヨウ素131内用療法(100mCi)を行ったが,シンチグラフィで取り込みは見られず,甲状腺刺激ホルモン抑制療法で経過をみることになった.

ラボクイズ

尿沈渣

著者: 保科ひづる

ページ範囲:P.438 - P.438

4月号の解答と解説

著者: 斎藤菜々子 ,   鶴岡尚志

ページ範囲:P.439 - P.439

Laboratory Practice 〈生化学〉

CLIAによる血清中HER2/neu蛋白質の測定法

著者: 黒田紀行 ,   紺谷桂一 ,   田港朝彦

ページ範囲:P.446 - P.450

はじめに

 HER2/neu(c-erbB2)(以下,HER2)遺伝子は,癌遺伝子の一つで,EGFR(epidermal growth factor receptor)ファミリーであるHER2(human epidermal growth factor receptor type2)蛋白質をコードしている1).HER2蛋白質は細胞表面に存在する受容体で,チロシンキナーゼ活性を有し,上皮細胞の増殖や分化にかかわっている2)

 乳癌においては,その15~30%でHER2の遺伝子増幅や蛋白質の過剰発現が認められており,このような乳癌患者では予後不良であることが報告されている3,4)

 また,モノクローナル抗体トラスツズマブは,HER2蛋白質過剰発現や遺伝子増幅のある(転移性)乳癌に対する治療薬として有効であることが示された5,6)

 HER2検査は,乳癌の予後予測やトラスツズマブ使用決定に際して重要な検査項目になっている.このHER2検査は採取された乳癌組織を用いて免疫組織化学法(immunohistochemistry,IHC)あるいはFISH(fluorescence in situ hybridization)法によって行われるのが一般的であるが,血清中HER2蛋白質(以下,血清HER2)測定も保険適応されている.血清HER2測定は,簡便で迅速に検査結果が得られるため乳癌の転移・再発の補助診断,トラスツズマブの治療効果判定指標として期待されている.

 これまでの酵素免疫測定法(enzyme immunoassay,EIA)では,モノクローナル抗体による競合阻害を受けるため,トラスツズマブ治療の影響がみられるものがあったが,近年開発された化学発光免疫測定法(chemiluminescent immunoassay,CLIA)ではこの影響を受けないとされている.

 本稿ではHER2/neu蛋白質の概説と当院におけるCLIAによる血清HER2測定法について述べる.

〈病理〉

乳腺穿刺細胞診での筋上皮細胞の見分け方

著者: 伊藤仁

ページ範囲:P.451 - P.455

はじめに

 わが国において,乳癌は女性の癌のなかで最も高い罹患率となっており,乳癌で亡くなる患者数も増加の一途を辿っている.また,乳房温存療法の普及,術前化学療法の適応,抗体療法の登場など,治療法は大きく変遷してきており,乳癌診療における病理学的診断の重要性はますます高まってきている.

 乳癌は他臓器に発生する腺癌に比べ,組織像が多彩であり,小型で細胞異型に乏しい癌が多い.また,良性病変,悪性病変ともに類似の組織像を示し,異型度の差異が小さいなどの理由から乳腺細胞診のみならず,組織診においても診断が難しい領域と認識されている.

〈遺伝子〉

アキュジーン®m-HCVによる高感度HCV-RNA定量法

著者: 中山妙 ,   前田豊 ,   鳩宿敏彦

ページ範囲:P.456 - P.459

はじめに

 C型肝炎ウイルス遺伝子検査(hepatitis C virus RNA,HCV-RNA)の測定はC型肝炎の診断,治療選択およびモニタリングに重要であり,これまで定性法と定量法(アンプリコアHCVなど)が併用されてきた.抗ウイルス療法によるHCV陰性化の判断には定性法を用い,ウイルス量の確認には2種類の定量法を使い分ける必要があった.また,高感度化とウイルス量の正確な定量が課題とされていた.

 これらの煩わしさや課題を解消するため,従来法よりも高感度で測定レンジが広く定量性に優れた測定法の登場が待たれていた.

 最近,リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)法を原理として,従来法よりも高感度で測定レンジが広く,核酸の抽出・増幅・検出が自動化された新しいHCV-RNA定量法として「アキュジーン®m-HCV(以下,アキュジーン)」(アボットジャパン製)1)と『コバス®TaqMan®HCV「オート」(以下,TaqMan)』(ロシュ・ダイアグノスティックス製)2,3)が発売された.

 本稿では当施設で実施しているアキュジーンによる高感度HCV-RNA定量法の概要を紹介する.

〈生理〉

血圧脈波検査

著者: 油布邦夫 ,   犀川哲典

ページ範囲:P.460 - P.463

はじめに

 脈波伝播速度(pulse wave velocity,PWV)は全身の動脈壁の硬さを反映する指標として80年以上前から存在する古典的な検査法である.当初その手技の煩雑さから検査室で簡単に測定できるものではなく,一般的に普及するに至らなかった.

 しかし,近年簡易に自動的に測定する機器が開発されてからは爆発的に普及しその存在が広まり,動脈硬化性疾患の患者に応用されるのみならず一般の健康診断や人間ドックの場にさえ登場するようになった.

 非観血的・定量的に動脈硬化を評価できるため臨床研究も進み,開発当初わかっていなかった臨床的意義も解明されるに至りつつある.本稿ではこのPWVについての原理・測定法・臨床応用について解説する.

 当科では株式会社日本コーリン(当時;現オムロン コーリン株式会社)が2000年に開発したPWVの自動測定器である「form PWV/ABI BP-203RPE II(図1)」を使用しており,これを例に挙げて説明する.

〈微生物〉

緑膿菌に対する院内感染対策

著者: 髙橋長一郎 ,   太田玲子

ページ範囲:P.464 - P.468

はじめに

 緑膿菌は河川や湿り気のある場所を好んで生息する細菌で,土壌,野菜など植物にも分布しておりヒトの生活環境である流し台の隅や風呂場,水道の蛇口などにも生息している.緑膿菌は環境由来菌であるが,日和見病原菌としても重要である.

 緑膿菌の学名はPseudomonas aeruginosaであるが,この“aeruginosa”は銅が古くなると生ずる緑の色のことであると言われている.また,緑膿菌という和名は本菌の古い学名“Pseudomonas pyocyanea”の“pyocyanea”が緑色の意味であることに由来する.

臨床検査関連学会・研究会の紹介

日本臨床検査医学会―臨床検査医学に関する学理とその応用の研究・連携協力に向けて

著者: 細萱茂実

ページ範囲:P.470 - P.471

はじめに

 一般社団法人日本臨床検査医学会(Japanese Society of Laboratory Medicine,JSLM)は,「臨床検査医学(臨床病理学)に関する学理及びその応用についての研究発表,知識の交換,会員相互及び内外の関連学会との連携協力等を行うことにより,臨床検査医学の進歩普及を図り,もってわが国の学術の発展に寄与することを目的」とする(本学会の定款から引用).

 本稿では,本学会について,編集企画の趣旨に従い臨床検査技師とのつながりを中心に,学会事務局からいただいた資料をもとに整理する.

復習のページ

―免疫染色のアーティファクト・3―チェック時のアーティファクト

著者: 伊藤智雄 ,   柳田絵美衣 ,   山田寛

ページ範囲:P.472 - P.474

はじめに

 免疫染色は現在の診断病理学にとって必須の手法となっていることは今更言うまでもない.しかし残念ながら,わが国ではその精度管理はいまだ不十分と言わざるを得ない.免疫染色の不良は時に患者の不利益に直結してしまうため,その品質管理は徹底して行う必要がある.

 品質管理の基本は結果の正しい評価と,そのフィードバックであり,日常的な染色結果の評価にほかならない.本稿では,正しい免疫染色の評価法と注意すべき点について述べる.今回は図1に実習として6例の免疫染色結果を載せたので,これをまずは自分の力で評価していただきたい.正しく評価できるであろうか.

けんさ質問箱

成人T細胞白血病・リンパ腫で高カルシウム血症となるのはなぜか?

著者: 本倉徹

ページ範囲:P.475 - P.476

Q.成人T細胞白血病・リンパ腫で高カルシウム血症となるのはなぜか?

 成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma,ATL)では高カルシウム血症が起きやすいと言われていますが,その理由を教えてください.(中津市 F.S.生)

 

A.本倉 徹

はじめに

 腫瘍に伴う腫瘍随伴症候群の代表的病態が,高カルシウム血症である.進行癌患者の10%,末期癌では30%,そして成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma,ATL)では約80%に認められる.

 その発症機序によって,腫瘍細胞が産生・分泌する液性因子による骨吸収亢進が原因の腫瘍随伴性体液性高カルシウム血症(humoral hypercalcemia of malignancy,HHM)と,広範な骨転移に伴う局所的な骨破壊が原因の局所性骨溶解性高カルシウム血症(local osteolytic hypercalcemia,LOH)に大きく分けられる.

 前者は,骨病変がないにもかかわらず高カルシウム血症を呈するが,後者は広範な骨破壊像が認められる.前者の主たる原因が副甲状腺ホルモン関連蛋白質(parathyroid hormone-related protein,PTHrP)で,その他に活性型ビタミンDや副甲状腺ホルモン(PTH)が挙げられる1)

 後者は,局所で産生されるインターロイキン1(interleukin1,IL-1),IL-6,腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor α,TNF-α),PTHrP,マクロファージ炎症性蛋白質1(macrophage inflammatory protein 1,MIP-1)が骨吸収を担う破骨細胞の分化・成熟ならびに骨吸収作用を促進している2)

トピックス

顕微授精

著者: 箱田康典

ページ範囲:P.477 - P.479

はじめに

 顕微授精は,不妊治療における体外受精(in vitro fertilization,IVF)の手法の一つである.1978年に体外受精・胚(受精卵)移植(in vitro fertilization-embryo transfer,IVF-ET)による第1号の児が誕生し,2009年に30歳の誕生日を迎える.

 現在は,体外受精・胚移植を中心とした生殖補助技術(assisted reproductive technology,ART)の進歩によって,新鮮胚を用いた移植当たりの国内平均妊娠率は約30%(28.9%,2006年),顕微授精による妊娠率は約25%(24.3%,2006年)となった.そして約30年の間で,国内では年間出生数の59人に1人(1.7%:19,587人/1,090,000人,2006年)が体外受精児となるまでに急速な発展,普及,定着を成し遂げたのである1~3)

Edwardsiella tardaによる腸管感染症

著者: 十河剛 ,   菅原秀典 ,   日衛嶋栄太郎 ,   小松陽樹 ,   乾あやの

ページ範囲:P.479 - P.481

 Edwardsiella tarda(E. tarda)は1962年に坂崎ら1)が腸内細菌の新しい菌群,Asakusa群としてわが国から報告された菌である.1964年にはKingらも,独自に本菌をBamtholomew群として報告し,1965年にEwingらによりEdwardsiella tardaと命名され現在に至っている.わが国で発見された菌でありながら,主に熱帯,亜熱帯に多く分布する菌であることもあり,一般臨床の現場ではあまり知られていない.

コーヒーブレイク

心臓リハビリテーション

著者: 艶島淳也

ページ範囲:P.469 - P.469

 「先生,俺は退院したら,若いときのように全国を旅して回りたいと思う」

 「どうしてですか?」

 「こうして心臓を患って,ベッドから向かいの山を見ていると,あの山の向こうには何があるんだろうって気になんです.若いときはよくこうして人生を考えたもんでした」

 「そうですか」

 Kさんは映画「男はつらいよ」の“フーテンの寅さん”を地で行くような患者さんだった.職業欄には建設業と書いていたが,お見舞いに来る方の雰囲気からもそれまでの生活が穏やかな生活でなかったことは想像できた.当時,心筋梗塞は一度罹患したら元どおりの生活には戻れないと思われていたが,それが面会の方から患者さんに伝わっているようだった.

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第55回臨床検査技師国家試験―解答速報

ページ範囲:P.482 - P.482

あとがき

著者: 桑克彦

ページ範囲:P.484 - P.484

 本誌の編集委員として最後のあとがきを書くことになりました.

 医療における臨床検査の本質を語るのに,「医療の質は,臨床検査の質に依存する」という言葉があります.臨床検査の質が高ければ,これを用いて行う医療の質も高くなる.というわけです.臨床は患者さんに直接かかわることから,医学におけるアートとしての役割であるとしますと,臨床検査はまさしくサイエンスとしての役割になります.例えば臨床化学検査では,可能な限り化学量論的(stoichiometric)に扱われるように測定方法を組み立て,かつ精確な測定結果になるようにします.そして患者さんの悩みを少しでも解決できるように臨床検査を通して問題解決の成果を患者さんに還元することです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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