icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

検査と技術38巻13号

2010年12月発行

雑誌目次

病気のはなし

肺炎球菌性肺炎

著者: 藤村茂 ,   庄司淳 ,   渡辺彰

ページ範囲:P.1202 - P.1205

サマリー

 肺炎球菌性肺炎は,細菌性肺炎のなかでも重症化しやすい疾患であり,特に高齢者では注意が必要である.本感染症は,適切な抗菌薬治療により容易に改善されるため,迅速かつ正確な診断が求められる.近年,尿や喀痰などを用いた肺炎球菌抗原検出キットが普及してきているが,より正診性を高めるために従来の培養試験やグラム染色などの意義は高い.また予防医学の観点から,世界に遅れてわが国でも高齢者の肺炎球菌23価ワクチン接種が広がりつつある.

技術講座 生理

下肢静脈瘤の検査法―不全穿通枝の見つけ方と評価法

著者: 山本哲也

ページ範囲:P.1207 - P.1213

新しい知見

 下肢静脈瘤の治療法は古くから圧迫療法や硬化療法,結紮術,ストリッピング術などが一般的に行われている.これらの治療法は下肢静脈瘤の種類や重症度によって選択され,それぞれを組み合わせる場合も多い.静脈瘤の複雑な病態解明が進む現在,低侵襲で効果的な治療を求め,変遷を続けている.最近ではレーザー治療(endovenous laser treatment,ELT)やラジオ波治療(radiofrequency ablation,RFA)などの血管内治療が注目されている.両者とも血管内に挿入したファイバーあるいはカテーテルからエネルギーを照射して病的な血管を焼灼・閉塞する治療法である.まだ再発率や再開通率の遠隔成績の報告は少ないが,低侵襲で術後の回復が早く,下肢静脈瘤の新しい治療法として期待されている.

病理

術中迅速細胞診の工夫および問題点

著者: 佐々木政臣

ページ範囲:P.1214 - P.1218

新しい知見

 2010年4月1日から診療報酬点数表が改定され,病理診断の項目に,手術の途中における胸水・腹水などの術中迅速細胞診が新たに加わり,1手術につき1回450点を算定することができるようになった.さらにまた,専門医が診断を行った場合には細胞診断料240点を月1回算定することが可能になった.このことは,術中迅速細胞診が通常の細胞診とは特に区別された重要な診断業務であることが評価されたものと思われる.当院では胃癌の術中腹腔洗浄液の細胞診を開始してから20年あまりになるが,当初は迅速対応ではなく通常業務として行ってたが,2000年頃より迅速対応となり,近年では乳癌のセンチネルリンパ節(sentinel lymph node)の術中迅速捺印細胞診が加わり,さらに最近では内視鏡室などの臨床側に出向くベッドサイド細胞診,出張細胞診の依頼も加わり業務が多様化するととに,今後の細胞診の方向性として,チーム医療への参画,治療計画,クリニカルパスとして細胞診の重要性が高まっている1)

疾患と検査値の推移

妊娠と糖尿病

著者: 安日一郎

ページ範囲:P.1219 - P.1226

はじめに

 妊娠中の母体の糖代謝は非妊時(妊娠していないとき)とは大きく異なっている.正常妊娠による母体の糖代謝は,非妊時と比べて,食後血糖値の上昇をきたし,一方,空腹時血糖値は非妊時より低下する(図1)1).こうした妊娠時の糖代謝生理的変化を背景にして,妊娠前にもともと糖尿病のある女性(妊娠前糖尿病)は,その糖代謝は妊娠によって増悪する.また,妊娠前には耐糖能正常だった女性が妊娠による耐糖能負荷によって高血糖状態を発症する(妊娠糖尿病).こうした妊娠による糖代謝変化への対応を怠ると母体,胎児,そして新生児に重篤な周産期合併症を発症する.“妊娠と糖尿病”は周産期医療においても,また内科的管理においても大変重要なテーマである.

 さて,2010年には日本糖尿病学会による糖尿病の新しい診断基準が導入されたが,“妊娠と糖尿病”に関して臨床的に大きな転機を迎えた年ともなった.2010年2月,国際糖尿病妊娠学会(International Association of Diabetes and Pregnancy Study Group,IADPSG)から妊娠糖尿病の新しい国際標準診断基準が提案され,わが国でもその新診断基準をもとに妊娠糖尿病の定義と診断基準の変更が行われた(表1)2)

 本稿では,妊娠中の耐糖能異常の診断と検査について概説するとともに,妊娠糖尿病の診断基準の変更を中心に,最近の“妊娠と糖尿病”を巡る話題について解説する.

オピニオン

今,微生物検査室に求められているもの

著者: 佐藤智明

ページ範囲:P.1206 - P.1206

 近年,医療関連感染は大きな社会的問題として注目され,その防止対策は各施設で最重要課題として取り組まれている.このような情況のなかで微生物検査室の役割は重要であり,感染症診断・治療や医療関連感染対策に有用な情報を適時発信することが求められている.本稿では,微生物検査室の役割の変化と有用な微生物検査室の情報の発信について私見を述べてみたい.

今月の表紙

肝血管肉腫

著者: 内藤善哉 ,   彭為霞 ,   上田純志

ページ範囲:P.1227 - P.1227

【症例の概要】

 肝臓外側区に小さな腫瘍が発見され,血管腫疑いで経過観察されていた.半年後には外側区(S2,3)全体を占める腫瘍となり,腫瘍破裂による腹部症状出現のため肝外側区域切除術が施行された.腫瘍は肉眼的に著明な出血・壊死,組織学的には不規則な血管腔形成や充実性の腫瘍細胞増生を認め,腫瘍細胞に血管内皮細胞マーカーが陽性,かつ細胞増殖マーカーのKi-67も高率に陽性となり血管肉腫と診断された.

ラボクイズ

生理

著者: 杉山重幸 ,   山崎家春

ページ範囲:P.1228 - P.1228

11月号の解答と解説

著者: 荒井祐司

ページ範囲:P.1229 - P.1229

ワンポイントアドバイス

右胸心とその検査法

著者: 原田昌彦

ページ範囲:P.1250 - P.1251

はじめに

 右胸心とは,心臓が右胸郭内にあるだけでなく,心基部と心尖部を結ぶ方向(心基部心尖軸)が右方を向いている場合と定義される1).心臓自体の発生段階で生じる先天性位置異常であるが,その病因は不明である.一方,後天的な原因,例えば,結核性胸膜炎や肺気腫により縦隔の機械的な右側偏位に伴うような心臓の右方偏位とは区別される.

役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体

前立腺癌とp63

著者: 米田操 ,   白石泰三

ページ範囲:P.1253 - P.1255

はじめに

 わが国における前立腺癌の死亡者数は,全癌死亡の5%であり(2006年現在),他部位の癌と比較すると突出した増加を示している1).最近では,PSA(prostate specific antigen)による前立腺検診が盛んに行われ,早期前立腺癌の発見が可能になってきた.それに伴い針生検での病理組織診断も増加している.

 前立腺腺房には,分泌細胞とその周囲に基底細胞が存在している.前立腺癌では基底細胞が消失しているので癌の組織診断には有用な所見である.しかし,残念ながらHE(hematoxilin-eosin)染色標本では基底細胞の同定が困難な場合が多い.p63は基底細胞の核に存在し,分泌細胞は陰性であることが知られている.したがって,HE染色標本で異型腺管がみられた場合にはp63を用いた免疫染色により基底細胞を確認することが重要となる.p63陽性細胞,すなわち基底細胞が欠如していれば癌と診断される.基底細胞マーカーには,高分子サイトケラチンもあり,これに対する抗体(34βE12)での免疫染色も有用である.p63は基底細胞の核,34βE12は,細胞質を染めるので両者のカクテルによる重染色も使われている.前立腺癌細胞そのものの免疫染色には,AMACR(α-methylacyl coaracemase)などが用いられる.本稿ではp63,34βE12を中心に免疫染色の条件設定,抗体特性,診断意義について解説する.

Laboratory Practice 〈生理〉

―症例から学ぶ呼吸機能評価⑥―呼吸不全

著者: 比嘉太 ,   藤田次郎

ページ範囲:P.1231 - P.1235

呼吸不全の定義

 呼吸には外呼吸と内呼吸があり,外呼吸は肺換気による酸素と二酸化炭素との交換を指し,内呼吸とは細胞レベルでの酸素利用と二酸化炭素排出を指している.呼吸不全とは,細胞および組織での酸素利用障害とこれによる病態を意味するが,臨床的には外呼吸の障害によって低酸素血症がもたらされることとほぼ同義である.

 臨床的には,動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr(mmHg)以下の場合を呼吸不全と定義する.パルスオキシメータではSpO290%未満にほぼ相当する.動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が45Torr以下の場合をI型呼吸不全,PaCO2が45Torr超の場合をII型呼吸不全と分類する.PaO2が70Torr以下を準呼吸不全としている.

〈生化学〉

肝炎ウイルスマーカー

著者: 浅部伸一

ページ範囲:P.1236 - P.1239

はじめに

 臨床の場で遭遇する肝機能異常の原因の一つとして,種々のウイルス感染がある.急性・慢性感染,慢性感染の急性増悪などその臨床像は複雑であり,個々の感染症としての病態は成書に譲りたいが,本稿では,実際に頻繁に測定されるマーカー項目について説明してみたい.

〈血液〉

検体部門における検体保存と管理

著者: 古田耕

ページ範囲:P.1240 - P.1245

検体とは?

 種々の言葉が出てくるので,まず本稿に限定した定義を示す.検体の定義を検査目的で患者から得られたヒト由来の試料とする.通常は,この定義で十分であるが,私たちは,検査値をも検体の一部であるという認識をもちつつあり1,2),それに従えば,検査目的で患者から得られたヒト由来の試料および関連する検査値ということになる.

 臨床検査後検体とは,上記のように定義された検体のうち,臨床検査を終了した検体をいう.これには,モラトリアム状態で再検査を待つ検体だけでなく,医療廃棄物として廃棄されることになっている検体のうち,あえて後日の再検査に備えて保存されている検体も含まれる.したがって,この定義に従えば,今回の表題である検体部門における検体保存と管理を臨床検査後検体の保存と管理と読み替えてもよいように思う.

〈管理運営〉

細胞プロセシングセンター(CPC)における臨床検査技師の役割―細胞治療の臨床応用に向けて

著者: 笠井泰成

ページ範囲:P.1246 - P.1249

はじめに

 細胞治療とは,再生医療や遺伝子治療,細胞免疫療法などヒト由来の細胞や組織を利用して行われる治療方法の総称であり,細胞プロセシングセンター(cell processing center,CPC)は,その細胞治療を実施する際に患者へ移植される細胞や組織の調製や加工を行うための専用の施設である(図).また,臓器から特定の機能を有する組織の分離作業や,細胞培養や遺伝子導入などさまざまな工程を「細胞プロセシング」と呼んでいる.

 細胞治療を目的として患者へ移植される細胞や組織は,その安全性を担保し高品質を保証するため,医薬品などと同じレベルでの製造管理や品質管理が要求される.そのため,細胞プロセシングには製造管理や品質管理が厳密に行える環境が整ったCPCが不可欠となる.

 わが国でも,さまざまな細胞やiPS細胞を利用した細胞治療の基礎研究が盛んに進められており,既に医療用具として承認を受けた再生医療製品もある.しかし,基礎研究の成果を速やかに臨床応用するためには,関連する法令の改訂やインフラストラクチャーの整備,そしてCPCの管理や細胞プロセシングを行える人材の育成など多くの課題が山積している.なかでも人材の育成は喫緊の課題である.現時点ではCPCの管理や細胞プロセシングに国家資格は必要ではない.しかし,製造管理や品質管理といった事項には種々の検査手技と検査理論に関する知識が必須であり,臨床検査技師はそのプロトタイプ的人材として最短距離に位置するのではないかと考えられる.本稿ではCPCにおける臨床検査技師の役割と今後の課題について述べる.なお,細胞プロセシングに携わる人員としては,臨床検査技師のほか,当然,薬剤師,農学部,理学部などの出身者も含まれるが,筆者は京大病院に勤務する臨床検査技師であり,本誌の読者層も考慮し,臨床検査技師にスタンスを置いた記載になっていることをお許し願いたい.

臨床医からの質問に答える

尿路感染症における尿試験紙検査と尿沈渣検査の役割

著者: 佐々木正義

ページ範囲:P.1257 - P.1260

はじめに

 一般検査領域における尿検査(尿試験紙検査・尿沈渣検査)は患者に与える負担が少なく,また結果が迅速に得られる点から,尿路感染症など各種疾患の診断や経過観察においては極めて有用な検査法である.本稿では尿路感染症に関連する尿試験紙検査と尿沈渣検査の所見とその解釈,測定上での注意点などについて概説する.

トピックス

質量分析計を用いたプロテオミクスによる細菌迅速同定法

著者: 曽川一幸 ,   渡邊正治 ,   野村文夫

ページ範囲:P.1261 - P.1263

はじめに

 組織や体液に存在しているすべての蛋白質を網羅的に解析するプロテオミクス研究は,その解析技術の進歩と相俟って,近年急速に展開している1).質量分析法はプロテオーム解析における最も重要な手法であるが,質量分析計を用いた細菌同定は,1975年にAnhaltら2)によって,ペプチドスペクトルをベースとしたパターンマッチングによる同定が行われた.Staphylococcus epidermidis,S. aureus,Pseudomonas aeruginosa,Neisseria gonorrhoeae,Salmonella sp.,Proteus morganii,P. rettgeriの7菌種の同定が報告されている.

 近年,高い迅速性と正確性を有し,しかも低コストの細菌同定手法として,質量分析計が注目されている.2010年から11か国の欧州諸国における,100か所以上の病院・検査センターの細菌検査室で細菌同定のツールとして運用されている.

 従来細菌の同定には,主に形態学的手法(グラム染色,コロニーの形状やその大きさ)や生化学的手法が用いられている.しかしながら,いずれの手法も煩雑な作業を要し高い専門性が要求される.高い識別能力がある16S rRNAを指標とする手法は,多くの検体を一度に解析することは難しく,日常的に用いることは困難でありコストがかかる.それに対し質量分析計による細菌同定はサンプル調整が容易で,測定操作も簡便であり,一菌種約6分間で同定結果が得られる3,4)

 この特徴を活かして,煩雑な試料前処理を行わず,属や種を容易に識別することのできる手法として注目されている4~8).本稿では本同定方法の原理と当院における臨床応用の一例を中心にして概説する.

肝線維化とリゾリン脂質

著者: 池田均

ページ範囲:P.1263 - P.1266

はじめに

 肝臓を障害する原因には,ウイルス,アルコール,薬剤,自己免疫機序や最近注目されている肥満を伴う脂肪沈着など多くのものが知られているが,原因いかんにかかわらず障害が慢性的に継続することによって最終的に肝硬変症となり,肝臓の機能を全うできずに食道・胃静脈瘤,胸腹水,脳症など重篤な合併症を併発し,肝細胞癌の発生が増加することが臨床の場で大きな問題となっている.そして,この肝硬変症の主要な病態が肝線維化である.肝障害に対する創傷治癒機転として,肝星細胞が増殖して活発に線維成分を産生するが,肝線維化はこれが過剰となることによりもたらされると理解されている.したがって,肝線維化の病態を解明すること,臨床検査学的には肝線維化を正確に簡便に診断することは非常に重要となっている.

 一方,最近の脂質生物学における進歩の一つとして,リゾリン脂質であるリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid,LPA)とスフィンゴシン1-リン酸(sphingosine 1-phosphate,S1P)の多彩な生理活性の解明が挙げられる.“多彩”な生理活性とは,細胞の増殖,アポトーシス,収縮,運動などに及ぼすものであり,LPA,S1Pともに,血漿中の濃度を測定すると,その結果はin vitroの細胞系で作用を及ぼす濃度に非常に近いことが判明している.多彩な作用を有し,かつ血漿中でも作用を及ぼす可能性が高いほど豊富に存在することを考えると,実際にin vivoにおいてなんらかの役割を果たしていることが強く推定されるLPA,S1Pについて,筆者らは特に肝線維化における役割について検討してきた.本稿では,LPA,S1Pと肝線維化の関連についての現在までの知見を紹介する.

コーヒーブレイク

ブランチラボから自主運営回帰―第2回 挫折編

著者: 木村浩則

ページ範囲:P.1226 - P.1226

 新天地での未来に理想と希望を抱き,小さな公立病院の検査技師長として3年前に就任した.公立病院といっても公設民営化した病院なので,地方公務員ではない.そして世間知らずの私はそのギャップに悩まされることとなる.

 病院長は,非常に温厚で優しく,「期待しています.頑張ってください」という言葉をくれた.民間病院はともかく,公立病院でも人と金を握っているのは大方行政の事務である.理事長とか事務長といわれる人たちが病院経営の黒幕と言ってもいいくらいである.この病院も例にもれず影の実力者は病院経営担当副院長の事務長らしい.この事務長,コンサルタントあがりでかなりのツワモノである.「この病院は法を犯さない限り何をやろうと自由だ」という.「白紙だから好きに絵を描いていい」ともいう.かなり話のわかる事務長である.でも「好きに絵を描いていい」という言葉の意味が検査室の業務に就いてすぐに理解できた.この検査室には,管理職がいない.10年以上働いた検査技師はひとりだけで,あとはここ数年間に入ってきた人たちばかりである.検査室の人間関係も複雑でみんな辞めてしまったらしい.検査室の運営に管理を必要としないブランチラボが最適と判断したのが,ことの真相のようだ.すでに原爆が投下された焼け野原に,ひとりたたずむわが運命やいかにというところである.そりゃあ,好きに絵を描けるでしょうよ.検査室が崩壊してしまい何もないのだから….心の中でひとり呟く.でも,本当に描かせてくれるのかしら?

飛行機と医療の深い関係―①気圧が体に与える変化は?

著者: 佐藤健一

ページ範囲:P.1252 - P.1252

 みなさんのなかには子どもの頃の夢がパイロットや宇宙飛行士,客室乗務員(スチュワーデス)だった方もいるのではないでしょうか.そして学会での出張や余暇での旅行で,そのようなことを思い返しながら飛行機に搭乗されている方も多いと思います.

 でも待ってください.飛行機の機内環境は地上と大きく異なることをご存知でしょうか.そしてそのことがすべての方に起こっていることも.

今年もイチローの調子がよかった

著者: 石崎一穂

ページ範囲:P.1260 - P.1260

 今年のイチローも調子がよかった.日本人メジャーリーガーの活躍は,私の元気の素であるだけでなく,野球少年の「夢」と「希望」の源でもある.

 私は,数年前から整形外科領域の超音波検査を担当している.非侵襲的で,リアルタイムな評価が可能な超音波検査は,スポーツ障害の診断や経過観察としての有用性が高い.スポーツ障害に悩む子ども達がこれほど多いことを初めて知った.

--------------------

あとがき

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.1268 - P.1268

 昨日,その道のエキスパートによる骨髄増殖性腫瘍の講演を聴く機会がありました.大変興味深い内容で,日常診療でも必要とされる新しい情報が多々ありました.そのときに感じましたことは,やはり,専門家による同じテーマに関する講演を,もし5年前に聴いていたら,おそらく昨日の内容の大部分はなかったであろうということです.骨髄増殖性腫瘍(慢性骨髄増殖性疾患)は,その発症にかかわるJAK2遺伝子変異が2005年に明らかにされたことが,特に大きかったと思いますが(なお,あとがきで勉強される方は少ないとは思いますが,ご興味のある方は本誌の36巻8号770ページ~と38巻1号30ページ~をご確認ください),すべての専門分野にわたって,同様のことは数多くあると思います.本当に,基礎医学,そして臨床医学とそれを支える臨床検査の進歩の早さは凄まじいと実感いたしました.日々の勉強を怠ると,学問の進歩にすぐに取り残されてしまうと痛感いたしました.

 改訂の間隔・タイミングにもよりますが,どんなに良い教科書,単行本でも,わずか数年前に明らかになった新しい知見を盛り込むことは難しいのが現状です.しかし,最新の知見ではあるが,実際に日常検査業務に携わっている者が理解しておかなくてはいけないことが確実にあります.そこに,本誌のような,毎月発行される雑誌の重要な意義があると考えられます.現在ではインターネットという大変素晴らしいツールがありますが,これから得られる情報は信頼できない場合もあり,これを鵜呑みにすると,場合によっては大変危険であることは,皆様もご存じのとおりです.本誌の編集に携わる一人として,信頼できる最新知見をお届けするという重要な使命を忘れずに努力していきたいと思いますので,今後ともよろしくお願い申し上げます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?