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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術38巻7号

2010年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

日本脳炎と新しい日本脳炎ワクチン

著者: 宮崎千明

ページ範囲:P.500 - P.504

サマリー

 日本脳炎は高熱,頭痛,痙攣,意識障害を主徴とし,今なお予後不良の疾患である.患者数は年間10名未満に減少したが,ウイルスはわが国の関東以西に広く存在している.2009年6月にマウス脳由来ワクチンに代わって,新ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)が発売され,1期の定期接種に新ワクチンが使用され始めた.そして,2005年5月以来差し控えられていた予防接種勧奨が2010年度に再開されたので,蓄積した数百万人の未接種小児に接種が広がると思われる.

技術講座 生理

―ステップアップのための画像診断入門・5―頸動脈MRI,MRA

著者: 坂本雅彦

ページ範囲:P.505 - P.511

新しい知見

 頸動脈MRI,MR angiography(MRA)では動脈狭窄の有無や狭窄率,さらにはプラーク性状からその後の脳梗塞などの発生の危険を予測し,治療の必要性を評価されていた.最近ではさらに治療に伴う合併症の危険を予測し,外科的治療(頸動脈内膜はく離術)や血管内治療(頸動脈ステント留置術)の適否の決定,スタチン投与などの内科的治療によるプラークの体積の変化,安定化などの評価が行われるようになり,頸動脈MRI・MRA検査の重要性が高まってきている.

生化学

―ホルモンの測定シリーズ・16 その他:1―心房性ナトリウム利尿ペプチド,脳性ナトリウム利尿ペプチド

著者: 石井潤一

ページ範囲:P.513 - P.518

新しい知見

 脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide,BNP)とN末端プロBNP(N-terminal pro-BNP,NT-proBNP)は主に心室で合成・分泌される生化学的心機能・心不全マーカーである.近年,BNPとNT-proBNPは心不全診療だけではなく,急性冠症候群の診療にも役立つことが期待されている.NT-proBNPは腎機能低下の影響を強く受けるため,心腎連関マーカーに位置付けられている.しかし,現時点では両者の有用性は同等と考えられている.一方,心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide,ANP)は最初の生化学的心機能・心不全マーカーである.しかし,主に心房で合成・分泌されるため,心機能・心不全評価における精度はBNPやNT-proBNPより劣る.

血液

血小板ペルオキシダーゼ

著者: 山崎家春 ,   矢冨裕

ページ範囲:P.519 - P.526

新しい知見

 急性白血病の分類は,形態学と細胞化学所見中心に確立されたFAB(French-American-British)分類1)で行われている.近年,細胞免疫表現型,細胞遺伝子所見などの進歩が目覚ましく,これらに形態所見と臨床所見を加えた分類法の検討がアメリカ血液病理学会,ヨーロッパ血液病理医協会,そしてわが国を含めた世界の病理学者,血液学者らによって行われた.その結果を受けて2001年に刊行されたWHO分類第3版2)では血液学的悪性腫瘍の病型を個々の疾患単位として定義された.現在では2008年9月に刊行されたWHO分類第4版3)を用いている.しかしながら,急性白血病ではこれらの情報からでも総合的に判定することが難しい病型も存在する.このような場合,電子顕微鏡(以下,電顕)的血小板ペルオキシダーゼ(platelet peroxidase,PPO)検査結果が最終診断の有効な情報となっている.

疾患と検査値の推移

発熱性好中球減少症

著者: 田村和夫

ページ範囲:P.528 - P.533

はじめに

 近年,発熱性好中球減少症(febrile neutropenia,FN)が注目されてきている.それは,白血病や再生不良性貧血のような血液疾患ばかりでなく,胃癌や肺癌のような発症頻度の高い固形癌にも強力な抗癌化学療法が応用されるようになってきたため,好中球減少に伴う発熱や感染症を日常診療の現場においてしばしば経験するようになったからである.本稿では,FNの疾患概念,原因,診断・治療について概説し,本疾患の理解の一助として,重篤な感染症を合併した1例を提示する.

今月の表紙

閉塞性肥大型心筋症(HOCM)

著者: 田中道雄 ,   原光彦 ,   常深あきさ ,   高野誠 ,   田辺康宏 ,   手島保

ページ範囲:P.512 - P.512

【症例の概要】

 20歳,男性.父が突然死.中学1年の学校検診で心雑音と心電図異常(左軸偏位,I,II,V5,V6のST低下)を指摘され,心エコーで著明な非対称性中隔肥厚(asymmetric septal hypertrophy,ASH)と僧帽弁収縮期前方運動(systolic anterior motion,SAM)が認められ肥大型心筋症と診断された.βブロッカー(インデラル(R)30mg/日)内服と運動制限を指示され,無症状で経過していたが,入院当日に姉が帰宅時に心肺停止状態の患者を発見.救急車到着時には心室細動で,直流除細動とエピネフリン投与を行ったが心室細動は持続.入院後に経皮的心肺補助装置,大動脈バルーンパンピング,抗不整脈剤静注,星状神経節ブロック,一時ペーシング,頻回の除細動を行って心室細動は停止.循環動態は改善せず,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation,DIC)を併発して第3病日に死亡した.剖検にて,ASH・中隔線維帯・心筋線維の錯綜配列(disarray)がみられた.

ラボクイズ

微生物

著者: 吉田弘之 ,   木下承皓

ページ範囲:P.536 - P.536

6月号の解答と解説

著者: 田上稔

ページ範囲:P.537 - P.537

ワンポイントアドバイス

末梢血幹細胞移植におけるCD34陽性細胞の評価

著者: 川平宏 ,   田中博

ページ範囲:P.534 - P.535

はじめに

 末梢血幹細胞移植(peripheral blood stem cell transplantation,PBSCT)には,自己(自家)と同種とがあり,同種はさらに血縁者と非血縁者とに分かれる.自己PBSCTは,化学療法後の造血回復期に患者から末梢血幹細胞(peripheral blood stem cell,PBSC)を採取,凍結保存しておき,より強力な治療を実施した後に,保存してある自己PBSCを患者に戻す.同種PBSCTはドナーのPBSCを用いるもので,骨髄移植に代わる造血幹細胞移植として増加してきている.ただし,現在では安全性の面から血縁者ドナーからの移植に限られているが,近い将来,非血縁者ドナーからの移植も始まると思われる.

役に立つ免疫組織化学●免疫組織化学で注目すべき抗体

悪性リンパ腫とCXCL13

著者: 太田聡

ページ範囲:P.538 - P.540

免疫染色と悪性リンパ腫の診断

 リンパ節または諸臓器リンパ組織の良悪を含めた診断をする際に,病理医は通常のHE(hematoxylin-eosin)標本で鑑別を絞る.その後に,病理標本では免疫染色やin situ hybridizationを施行し,病理診断を確定していく.その診断過程で,病理標本のみでは診断確定できず,臨床経過やフローサイトメーター,染色体検査,遺伝子再構成(T細胞受容体,免疫グロブリン)などほかの検査の結果を併せて判断する必要がある症例もしばしば経験する.

 ただし,悪性リンパ腫の診断に病理標本の検討は不可欠な検査であり,免疫染色は欠かすことのできないツールであることは言うまでもない.

Laboratory Practice 〈遺伝子〉

FISH法のピットフォール

著者: 梅村しのぶ

ページ範囲:P.541 - P.545

はじめに

 fluorescence in situ hybridization(FISH)法は,細胞あるいは組織標本上で,遺伝子変異を検出する方法として有用である.特に,遺伝子変異のなかでも,遺伝子増幅と相互転座の検出に有用であるが,細胞診検体の場合には,欠失の検出も可能である.本稿では,FISH法の結果が安定しないときに確認すべき点や,重大な影響を与える因子であるにもかかわらず見落とされがちな点について解説する.FISH法の原理や方法の詳細については,成書をご参照いただきたい.

〈微生物〉

抗マラリア薬に対するマラリア原虫耐性化の現状

著者: 狩野繁之

ページ範囲:P.546 - P.550

はじめに

 マラリアは,世界で年間2億4,300万人の患者が罹患し,死亡者数は86万3,000人と報告されているが1),わが国の輸入マラリア患者数は年間50人余りである.しかし,そのなかには,診断・治療の遅れから重症化ののち死亡する例も散見され,わが国におけるマラリアに対する適切な医療が強く望まれている.本稿では,世界におけるマラリア原虫の抗マラリア薬に対する耐性化の現状と,新しい有望な薬の登場の話題を提供する.

〈病理〉

捺印細胞診の有用性(脳腫瘍以外)

著者: 浅野重之 ,   小野早苗

ページ範囲:P.551 - P.556

はじめに

 細胞診には,①穿刺吸引,②はく離,③擦過,④捺印,⑤圧挫,⑥洗浄細胞診などがあり,簡便,経済的,反復採取が可能で,適応を慎重に選択すれば確定診断が可能となる有用な診断方法である1,2)

 一方,迅速組織診断をする際に,上記の細胞診,特に捺印細胞診を併用し,組織所見と細胞所見を総合して最終病理診断とすることは大変有用である.

 本稿では,捺印細胞診の有用性につき当院で経験した症例を用いて解説する.

〈生化学〉

簡易血糖測定器におけるアスコルビン酸の影響

著者: 速水貴弘

ページ範囲:P.557 - P.561

はじめに

 従来,血糖測定は検査室内の生化学汎用測定器にて行われていたが,迅速性や簡便性の観点から自己血糖測定(self-monitoring of blood glucose,SMBG)機器が普及してきた.しかし,その一方で測定原理の違いからヘマトクリットや溶存酸素などの内的要因,マルトースやプラリドキシムヨウ化メチル(PAM)などの外的要因などさまざまな要因が測定値に影響を与えることが報告されている1~4)

 今回筆者らは,アスコルビン酸大量投与後に低血糖症状を示しているのにもかかわらず,簡易血糖測定器にて偽高値を示した症例を経験した.干渉物質としてアスコルビン酸を用いた検討の報告5)もあるが,アスコルビン酸濃度は10mg/dlで,それ以上の濃度での影響は不明であった.

 そこで,高濃度アスコルビン酸が簡易血糖測定器およびポイント・オブ・ケア・テスティング(point of care testing,POCT)機器に与える影響について検討を行ったので報告する.

〈診療支援〉

的確な緊急異常値の報告の運用

著者: 大川龍之介 ,   矢冨裕

ページ範囲:P.562 - P.567

はじめに

 緊急異常値,いわゆるパニック値は,診療で発見することが困難である患者からの静かな生命の警鐘であり,検査部はその患者の唯一のライフラインとなる可能性を伴っている.したがって検査部は,この緊急異常値の重要性を把握し,的確に設定・発見し,臨床へ速やかに報告しなければならない.

 本稿では,この緊急異常値に対する,当院における設定・報告方法,さらには,緊急異常値見逃しや報告遅延防止のための取り組みを紹介したい.

復習のページ

総カルシウム(Ca)値の臨床的評価について―補正Ca

著者: 川崎健治 ,   菅野光俊 ,   野本昭三

ページ範囲:P.568 - P.570

血清中の総カルシウム(Ca)とは?

 復習のページということなので,「血清中の総カルシウム(Ca)とは?」から始める必要がありそうである.

 人体のCaは成人の場合で総量およそ1kgといわれ,そのおよそ99%が骨にハイドロキシアパタイトとして蓄えられており,残りの約1%のほとんどが骨以外の組織細胞内に,そして約0.1%が血漿および細胞間液に分配されていて体内を循環している.これが血清中の総Caに相当する部分である.ここではin vivoの状態をイメージして話を進める関係から“血漿中のCa”と呼ぶことにする.この血漿中のCaのうちおよそ半分が生理的役割をもつイオン化Ca(Ca2+)で,残りの半分が蛋白結合Ca(組織から組織へ運搬中のCa)とみられている.なお,このほかに炭酸または乳酸など有機酸と結合したCaもわずかに存在するといわれている.なお,赤血球中のCaは血漿中のおよそ1/700ほどである.

臨床医からの質問に答える

グラム染色標本では認められるが培養検査で発育しない細菌

著者: 大塚喜人

ページ範囲:P.571 - P.573

はじめに

 近年,感染症分野では遺伝子解析技術の進歩により新たな感染症が次々と明らかとなっている1).それらはウィルス感染,細菌感染,その他の感染症に大別されるが,診断と治療が最も発達している細菌感染症は,従来同定し得なかった菌種やその対象とならなかった菌種,全く無害と考えられていた菌種などが加わり,それらの症例では複雑な患者背景が存在する.細菌感染を診断するうえで,最も迅速で診断的価値の高い臨床検査法としてグラム染色が挙げられるが,しばしば培養結果と一致しないことがある.

 本稿では,グラム染色標本では認められるが一般的な培養検査では不一致となる細菌について解説する.

けんさ質問箱

採取後の髄液に出血が多いとき

著者: 大田喜孝

ページ範囲:P.574 - P.577

Q.採取後の髄液に出血が多いとき

髄液検査に関して,採取後の髄液にはヘパリンなどの抗凝固剤は使用しないという記事を読んだのですが,出血が多い場合フィブリンの中に細胞などが入ってしまいます.どうしたらよいでしょうか?(岐阜市 O.A.生)


A.大田喜孝

はじめに

 脳脊髄液(髄液)はその90%以上が脳室の脈絡叢で産生される.血液循環と脈絡叢組織の分泌機能によって作られた髄液は通常無色透明であり,脳室・脳表面・脊髄のくも膜下腔を循環する.こうして髄液は循環を繰り返すうちに,最終的には脳の頂上部にあるくも膜顆粒より吸収され,再び血液循環に組み込まれることになる.髄液の主な働きとしては,静水力学的なクッション作用による中枢神経の保護や,脳組織への各種ビタミンの運搬,脂質系を主体とする脳の老廃物の排除などが挙げられる.髄液は中枢神経系組織に直に接して存在することから,その病態をよく反映する.特に髄膜炎,脳炎の診断や治療経過の観察には,髄液細胞数の算定と分類は欠くことのできない検査項目とされている.

 ご質問の趣旨は「血液が混入した髄液で,髄液一般検査における細胞数の算定や細胞分類を精度よく行うためにはどうすればよいのか? また,このような場合,臨床医にどう対応するのがよいのか?」と理解する.

 まず,採取された髄液が肉眼で血液色を確認できるような髄液であっても,採取後すぐに検査に取り掛かれば,凝固することはほとんどないということを理解いただきたい.むろん,血液そのものと見紛うほど血液成分が混入した髄液では,比較的早期にフィブリンが析出し凝固を示すが,このような髄液で細胞数の算定を行うことはまず不可能であるし,蛋白量や糖量などの化学成分も本来の髄液のものとはかけ離れた数値となり,髄液検査を行う本質的意義に乏しい.というよりはむしろ,このような髄液で検査を進めることで,誤ったデータが患者に対し不利益を与えることだけは避けなければならない.このような場合は臨床医に対し十分に説明を行い,時期をみて採り直しを依頼すべきである.また,血液色が強度ではない髄液であっても,長時間放置すると凝固を示すことがある.髄膜腔閉鎖症などで蛋白量が著明に増加した髄液も同様である.しかし,いったん採取した髄液中の細胞変性や化学物質の変動は極めて早く,髄液検査のガイドラインには採取後少なくとも1時間以内に検査を開始する必要があることが記されている.さらに,髄液検査の対象となる中枢神経系疾患が迅速な診断と治療を必要とすることを考慮すれば,髄液が長時間放置されることはまずあり得ないことであろう.

 これまで,血性髄液の取り扱いに関しては全国の臨床検査技師諸氏より数多くの質問を受けてきた.今回,質問をいただいた機会を十分に活かす意味から,血性髄液にまつわるいくつかの問題点を洗い出し,その対処法とともに筆者の見解を述べてみたい.

トピックス

ホルマリン希釈混合装置を用いた衛生工学的対策

著者: 梅澤敬 ,   土屋幸子 ,   芦川智美 ,   福村絢奈 ,   佐藤俊 ,   池上雅博

ページ範囲:P.578 - P.580

はじめに

 病理検査室における固定槽での作業は,高濃度のホルムアルデヒドを拡散させ,切り出し開始前から劣悪な作業環境となる.特に固定槽からの臓器持ち出し作業は日常業務であり,これらの改善なくしてホルムアルデヒドの根本的な対策は困難である.

 筆者らは,固定槽におけるホルムアルデヒドに最も曝露する作業をアセスメントした結果,以下が明らかとなった.①固定槽からの臓器持ち出し,②固定槽のホルマリン入れ替え,③ホルマリン希釈混合,である.高濃度のホルムアルデヒドの曝露を回避するため,作業環境管理として工学的対策(ホルマリン希釈混合装置,囲い式局所排気装置付きの臓器固定槽)を,作業管理としてホルムアルデヒドに曝露しないための作業手順の改良と標準化を行った.

 本稿では,ホルマリン希釈混合装置による環境改善を中心に,作業環境管理と作業管理のコラボレーション,病理検査室の労働安全衛生の取り組みについて報告する.

敗血症患者における生化学検査値の特徴

著者: 金井信一郎 ,   本田孝行

ページ範囲:P.580 - P.581

はじめに

 敗血症は診断や治療開始の遅れが死亡率に大きく影響する重篤な病態であるが,その検査データを解釈することは難しい.炎症マーカーが参考になるが,炎症は感染だけでなく,種々の原因に起因し,敗血症に特異的ではないからである.

 本稿では炎症マーカーのうち,特に頻用されるC反応性蛋白(C-reactive protein,CRP)と細菌感染症に特異度が高いプロカルシトニン(procalcitonin,PCT)について触れたい.また,筆者らは敗血症において,肝機能検査が早期のマーカーとなる可能性を検討したので併せて紹介する.

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あとがき

著者: 伊瀬恵子

ページ範囲:P.582 - P.582

 2010年も新型インフルエンザに始まり,現在は口蹄疫が猛威を振るっています.最近わが国も,感染症関連の話題にこと欠きません.そこで,今月の“病気のはなし”は「日本脳炎と新しい日本脳炎ワクチン」をお届けします.以前は感染者数の多い疾患でしたが,患者数の激減やワクチン接種による事故などでワクチン接種率が低迷しています.日本脳炎抗体保有状況からも乳幼児と40~60歳代で抗体陰性者が多いです(ちなみに私も終生免疫である麻疹,水痘の抗体が陰性化していたので自費でワクチン接種しました).地球温暖化や流行地への渡航者の増加により検査室でも日本脳炎患者に遭遇する機会が増えています.また,“Laboratory Practice”の「抗マラリア薬に対するマラリア原虫耐性化の現状」でも感染症に対する薬剤耐性の脅威が紹介されています.微生物も人類のスキをついて進化しています.検査最前線の臨床検査技師として知識を得ることは必須といえます.また,同じく“Laboratory Practice”の「簡易血糖測定器におけるアスコルビン酸の影響」には個人的に興味があります.尿ではアスコルビン酸による偽陰性は常識です.紹介されていた症例は,他院で悪性腫瘍に対するアスコルビン酸大量投与療法中であった患者が低血糖であるのに簡易血糖測定器で測定した値が高値を示していた.重大な医療事故を起こしかねない症例です.測定機器の特性を熟知することも重要です.検査を行っていくうえで遭遇するパニック値の発見と的確な報告はとても大切です.東大病院の異常値報告のシステム化の例は大変参考になりました.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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