オピニオン
災害時における臨床検査技師の役割
著者:
福田篤久
,
久保田芽里
,
石田浩美
,
伊東宏美
ページ範囲:P.687 - P.687
「災害は忘れた頃にやってくる」は,自然災害の多発・人為災害の脅威・新しい災害モードの登場など,その様相が大きく変化したため今では死語となりつつある.そして,現在では「災害は忘れる前にやってくる」に変わってきている.いうまでもなく,多数の患者が短時間に搬入される災害時に,迅速かつ正確な検査データを提供するためには,まずマニュアルの作成と何よりも訓練が重要である.したがって,本稿では“忘れる前にやってくる災害”に対して,臨床検査技師として考えねばならないことをできる限りわかりやすく解説する.
まず個々の災害について,病院機能が維持されている場合と部分的に維持されている場合,あるいは全く消失する場合もある.仮に病院機能が部分的に維持されていたとしても,次に人員確保の問題が浮上する.このように,“災害時の臨床検査”を考えるとき,無数に存在する場面を想定し対策を立てるべきであるが,それも不可能に近いと言わざるをえない.しかし,不可能に近いからと放置しておける問題でもなく,想定不可能な災害に対してわれわれは災害経験者の講演や話・論文などから経験不足を補わなければならない.これに関してこんな報告がある.それは災害を,①見たことも聞いたこともない,②話に聞いたことがある,③似たようなことを経験した,④以前に経験した,⑤何回も経験した,というように①~⑤の順に経験の度合いが増すにつれて個々の災害対応能力が二次関数的に上昇すると言うのである.このことは,われわれは災害において絶対的な経験不足ではあるが,数多くの情報を得ることによりこの経験不足を補うことができることを示している.