icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

検査と技術39巻12号

2011年11月発行

雑誌目次

病気のはなし

皮膚の悪性リンパ腫

著者: 濱田利久 ,   岩月啓氏

ページ範囲:P.1058 - P.1064

サマリー

皮膚リンパ腫は大きくT/NK細胞リンパ腫とB細胞リンパ腫からなり,疾患ごとに異なった腫瘍細胞の性質や臨床学的特徴を併せもつヘテロなグループである.また,皮膚リンパ腫ではB細胞よりもT/NK細胞が圧倒的に頻度が高いのも一つの特徴になっている.病期分類は,菌状息肉症/セザリー症候群ではT(皮膚)N(リンパ節)M(臓器浸潤)B(血液病変)分類をもとに,2007年提唱の新病期分類に従って決定するが,これ以外の皮膚リンパ腫には明確な病期分類が示されておらず今後の課題となっている.欧米やわが国での調査から皮膚リンパ腫の約50%は菌状息肉症/セザリー症候群であることがわかっており,本稿でもこれを中心に取り扱った.

技術講座 病理

HER2検査・病理診断の精度管理

著者: 増田しのぶ

ページ範囲:P.1065 - P.1072

新しい知見

不均一性(heterogeneity):乳癌組織においても,低頻度ながら指摘されていた事象として,HER2遺伝子増幅の不均一性がある.胃癌における不均一性の頻度は,乳癌よりも高いことが知られている.一つの腫瘍内における不均一性のみならず,一腺管内の隣接する上皮細胞にも遺伝子増幅の有無に相違がみられることがある.癌化の機序と遺伝子増幅との関係を考察するうえで興味深い現象である.

脳脊髄液の細胞診

著者: 小松京子 ,   藤山淳三 ,   宍戸-原由紀子

ページ範囲:P.1073 - P.1081

新しい知見

脳腫瘍の分類:1979年World Health Organization(WHO)が中枢神経系組織腫瘍分類を刊行し,その後1993年,2000年の改訂を経て2007年に第4版が出版された.わが国では日本脳腫瘍病理学会と日本病理学会との共同編集により,WHOの第4版との整合性のとれた分類が策定され,2010年に脳腫瘍取扱い規約第3版が発刊された.これによりグリオーマはWHO gradeI~IVの4段階に分類され,とりわけ組織診断において,壊死の有無はgradeIVの診断根拠に重要である1,2).脳室穿刺や囊胞内容液における細胞診断の際にも,壊死物質の存在は重要な所見となる.

疾患と検査値の推移

妊娠高血圧症候群

著者: 梁善光

ページ範囲:P.1089 - P.1095

はじめに

 妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension,PIH)は,妊娠中に発症する代表的な疾患群である.症候としては高血圧が主体であり,これに蛋白尿を呈する腎機能障害と全身性の浮腫が合併する.古くは妊娠中毒症(toxemia of pregnancy)と呼ばれており,なんらかの毒性物質がその発症に関連すると考えられていたが,その病態が少しずつ明らかになり,その本体は血管内皮障害による血管攣縮と著しい凝固亢進状態が原因となって引き起こされた高血圧と理解されるようになった.これに伴い,国際的にも取り残された感のある従来の名称は,2005年に現在のPIHと変更されている1)

 本稿では,PIHの臨床経過と対応させながら臨床検査値を具体的に提示して,その病態をわかりやすく解説する.

オピニオン

日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)の実力評価試験

著者: 白井秀明

ページ範囲:P.1083 - P.1083

はじめに

 わが国の乳がん検診はこれまでマンモグラフィが主に用いられてきた.ただし,わが国の年齢別の罹患率をみると40歳代が最も高いことより,50歳未満にみられる高濃度乳腺に対する検出能が下がるといわれており,マンモグラフィのみでは十分な効果が得られないことが懸念されている.一方,超音波検査(ultrasound,US)は高濃度乳腺に対しても高い精度を保って検査を行うことが可能といわれており,現在乳がん検診における有用性を検討するトライアルが厚生労働省によって進められている.

 このようななか,日本乳腺甲状腺超音波診断会議(The Japan Association of Breast and Thyroid Sonology,JABTS)が主催し,USを行う医師と技師の人材の教育・育成のため,乳房超音波講習会が開催され,併せて資格認定を目指し実力評価試験(以下,評価試験)が行われている.これはこれまで日本超音波医学会が認定してきた超音波検査士とは異なるものということになる.

 この評価試験は,茨城県でUSを対策型検診に取り入れるにあたり,その精度管理の目的に始まった講習会のなかで行われたものが前身にある.それをモデルとして第1回講習会が2003年1月11日~12日に筑波にて開催され,その後現在(2011年4月末日)に至るまでその数全国で,計75回が開かれた.この講習会を受講したものに受験資格が与えられ,その講習会の最終日に評価試験が行われてきた.筆者は講習会発足当初よりJABTS教育委員会の一員として講師の他,さまざまな事柄でかかわってきた.本稿では,その内容について紹介する.

今月の表紙

限局性結節性過形成(FNH)

著者: 内藤善哉 ,   片山博徳 ,   細根勝

ページ範囲:P.1096 - P.1096

【症例の概要】

 38歳,男性.検診の超音波検査で,肝臓S3~4に約4cmの腫瘤様所見を認め,精査目的で紹介された.アルコール飲酒歴があり,脂肪肝を認めるが,各種肝炎ウイルス感染は陰性で,薬剤の服用歴はない.臨床的に肝細胞癌が疑われ,左葉切除術が施行された.

ラボクイズ

一般検査

著者: 伊瀬恵子

ページ範囲:P.1084 - P.1084

10月号の解答と解説

著者: 信岡祐彦 ,   瀧宮顕彦

ページ範囲:P.1085 - P.1085

ワンポイントアドバイス

透析のシャント部をうまく描出するには?

著者: 富田則明

ページ範囲:P.1086 - P.1087

 血液透析患者のシャント〔バスキュラーアクセス(vascular access,VA)〕は,長期使用することでシャント血管の屈曲蛇行,膨隆(凹凸),動脈(静脈)瘤,狭窄とさまざまな合併症が発生する.

 瘤全体を正しく評価するには,体表面に盛り上がった血管に対してプローブを直接当てると血管がつぶれてしまうので,たっぷり硬めのゼリー(軟らかいゼリーは流れやすいため)か,音響媒体(東芝製SONAGEL, GEL PAD,スキンなど)を使用して体表から大きく膨らんだ体表面にプローブを直接(密着)当てないで浮かせるよう工夫をする.

 浮かせたプローブを被検者の検査部位に当てて固定させるために,検者は薬指,小指で支点を作り,肘前腕を枕などで固定する2支点支持部を作り,深部視野幅の広い台形スキャン(トラペゾイド)機能を活用するようにアプローチに工夫をすることが重要である(図1,2).

Laboratory Practice 〈生理〉

心室中部閉塞性肥大型心筋症(MVO)を心エコーで診る

著者: 沖野久美子

ページ範囲:P.1097 - P.1101

はじめに

 肥大型心筋症(hypertrophic cardicmyopathy, HCM)は,心肥大をきたす明らかな要因がなく,左室または右室に不均一に心肥大をきたす疾患である.心肥大に基づく左室拡張能の低下が主な病態である.肥大型心筋症の分類では,左室流出路に狭窄が存在する閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic obstructive cardiomyopathy,HOCM),左室流出路狭窄を伴わない非閉塞性肥大型心筋症(hypertrophic nonobstructive cardiomyopathy,HNCM),心筋肥大の部位により心室中部での内腔狭窄が認められる心室中部閉塞性肥大型心筋症(midventricular obstruction,MVO),心尖部に限局した肥大を認める心尖部肥大型心筋症(apical hypertrophic cardiomyopathy,AHCM),肥大型心筋症からの移行があり,心筋収縮不全と左室内腔の拡張を認める拡張相肥大型心筋症(dilated phase of hypertrophic cardiomyopathy,dHCM)がある.

下大静脈の計測法

著者: 種村正

ページ範囲:P.1102 - P.1106

はじめに

 右房圧を推定するには,下大静脈(inferior vena cava,IVC)径とその呼吸性変動を診ることが必要である.しかし,IVCのどの部位を,どのように,どの心時相で計測するといった具体的な計測法を示したテキストはない.そこで,本稿ではIVCの計測法について述べる.

〈微生物〉

ノロウイルス抗原検査キット(クイックナビTM-ノロ)の使用法

著者: 加藤大介

ページ範囲:P.1107 - P.1110

はじめに

 ノロウイルスは毎年秋冬期に流行する感染性胃腸炎の病原ウイルスの一つである.ヒトに感染するノロウイルスは大きく二つの遺伝子群genogroupI(GI),genogroupII(GII)に分けられ,さらにGI,GII合わせて30種類以上の遺伝子型genotypeに分類される1)

 ノロウイルスの感染経路は多岐にわたっている.汚染食材を食すことによる感染(食品→ヒト),ウイルス保有調理従事者により汚染された食材の喫食(食品→ヒト),感染者との濃厚な接触による感染(ヒト→ヒト),吐物などからノロウイルスの付着した塵埃などを介した感染(空気感染)などが報告されている.24~48時間の潜伏期の後に出現する主な臨床症状は下痢,嘔吐,吐気,腹痛であり,発熱,頭痛,筋肉痛を伴うことがある.臨床症状は通常1~3日で回復するが,症状が回復してもウイルスが便中へ排泄される期間は長期であることが報告されている2).そのため回復後の患者の便が感染源となる二次感染の可能性が高い.また,ノロウイルスの流行がみられた施設の調理従事者の約6.6%に不顕性(感染が成立していながら臨床的症状を示さない)事例が報告されており3),同様に感染源となる可能性がある.

 「ノロウイルス感染の予防指針」4)では,ノロウイルス感染対策の基本は,①感染予防と②感染拡大対策とされている.感染拡大対策としてイムノクロマト法を原理とした試薬を用いて迅速・簡便な検査を行い,ノロウイルス感染(疑)者を早期に特定し,適切な治療とともに二次感染防止策をとることが重要であり,検査陰性者に対しては遺伝子検査を行い,適切な治療とともに二次感染対策を行うことが望まれる,とされている.

 本稿ではノロウイルス迅速診断試薬であるクイックナビTM-ノロについて,測定原理,検体採取方法および採取時の注意点,操作方法,使用に関しての注意点,検査に影響する便成分について述べる.

〈移植医療〉

―移植医療と検査③―生体腎移植時のドナーの検査および評価(イヌリンクリアランスを中心に)

著者: 角田洋一 ,   矢澤浩治 ,   高原史郎

ページ範囲:P.1111 - P.1114

はじめに

 献腎移植の症例数が少ないわが国において,生体腎移植の症例数は年々増加している.生体ドナーによる臓器移植の成功とはレシピエントとドナーの両者が順調な経過をたどることを意味し,術前,術中そして術後も含めて,生体ドナーを適切にケアすることはレシピエントのケアと同様に必要不可欠である1).そのため,医学的・心理社会的な検査を行い生体ドナーの適応を決定し,術後も長期にわたって注意深くドナーをフォローしていくことが重要である.本稿では生体腎移植ドナーの術前評価について,腎機能評価を中心に紹介する.

〈病理〉

新しい組織アレイ作製方法,スパイラルアレイの病理部門への応用

著者: 堀隆 ,   田中伴典 ,   福岡順也

ページ範囲:P.1115 - P.1118

はじめに

 組織アレイ(tissue array,TA)は,複数の組織を一つのブロックに埋め込むことで,解析に大幅な時間短縮と費用の削減を可能にしたツールである.簡便かつ安価に膨大な分子発現のデータを組織学で検討できるようになったことで,多数の疾患関連分子のなかから迅速かつ効率的にバイオマーカーを絞り込むことができるようになった.ポストゲノム時代に入って,膨大な分子発現情報の臨床的意義や生体内での機能を効率よく検討するのに,組織アレイは欠かせないツールといえる1,2)

 組織アレイの最も一般的なものは,組織の包埋されたパラフィンブロック(ドナーブロックと呼ばれる)から円筒形のコアを抜いて新しいブロック(レシピエントブロックと呼ばれる)へ移植するものを指しているが,最近,全く異なったプロセスで作製する方法が発表された3)

 本稿では,新しい方法で作製される組織アレイ,スパイラルアレイ(Spiral Array®,SA)(図1)を紹介するとともに,組織アレイの新たな応用例を紹介する.

トピックス

心機図検査装置:MES-1000

著者: 吉田史

ページ範囲:P.1119 - P.1119

 現在,循環器系の検査には超音波診断装置やEPS(electrophysiological study)が活躍しており,次第に聴診や触診といった診断方法が下火になっている傾向がある.しかし,聴診は最も手軽に行うことができる無侵襲検査の一つであり,この聴診と心電図を結び付けて診ることで非常に効率的な検査を実現できる.このMES-1000(心機図検査装置)(図1,2)はまさに聴診と心電図を関連づけることのできる製品であり,また臨床だけではなく,教育という側面においても強力な味方となる製品である.

 MES-1000の特徴はなんといってもデジタル記録できること.デジタル化を成し遂げたことにより,心電図,心音図2ch,脈波図2ch,呼吸1chといった複数のデータを視覚的に捉えることはもちろん,再生,編集,比較,計測などさまざまな方法で利用できる.心音図を見ながら同時にその音を聞くという従来のアナログ式の心音計では成しえなかったことを実現できるうえに,脈波,呼吸という要素をもプラスすることができる.これによりさまざまな情報を複合的に判断することが可能となるため,臨床的な判断を大幅に助けることができる.

赤外スペクトル解析による無試薬・簡便なカイロミクロン-TGとVLDL-TGの測定

著者: 佐藤謙一 ,   野村文夫

ページ範囲:P.1120 - P.1122

はじめに

 臨床検査では古くから,血中バイオマーカー測定のために生化学反応や抗原抗体反応に発光物質反応を付加させた反応系を用い,測定対象物質の量や活性を吸光度や発光量などに変換して,光を測定する方法が用いられてきた.これらには主に紫外~可視領域の光が用いられている.近年では,近赤外光を用いたパルスオキシメーターや脳機能イメージング,あるいは光干渉断層計(optical coherence tomography,OCT)を利用した眼底検査など非侵襲的検査への光技術の応用がなされ臨床の現場で用いられている.

 また,赤外スペクトル解析は物質の構造解析ための分析法の一つであり,主に分析化学・物理化学の分野で用いられてきた.赤外線をある物質に照射すると,その物質はその分子構造特異的に赤外線のエネルギーを吸収する.したがって,照射光とある物質での透過光とのエネルギー差(吸収スペクトル)を測定することによりその物質の分子構造を知ることができる.物質の赤外吸収スペクトルは照射した赤外線の波数(波長の逆数,単位:cm-1)を横軸にその物質の吸光度を縦軸にとることで示され,そのスペクトル形状は分子固有のものとして現れる.この原理を利用して,測定対象を血清として赤外スペクトル解析を行えば血清成分が無試薬で測定できることになる(図1).これまでに赤外スペクトル解析による,血清中グルコース,総蛋白質,アルブミン,総コレステロール,中性脂肪,高比重リポプロテイン(high density lipoprotein,HDL)コレステロール,低比重リポプロテイン(low density lipoprotein,LDL)コレステロール濃度などの定量測定が報告されている1~6)

 高トリグリセリド(triglyceride,TG)血症では,その主たる成分がカイロミクロンなのか超低比重リポ蛋白(very low density lipoprotein,VLDL)なのかを判断する必要があるが,カイロミクロンとVLDLの測定には,電気泳動法や超遠心法など,煩雑で長時間を要する手技が必要である.ここでは,血清カイロミクロンおよびVLDL濃度測定を赤外スペクトル解析により,簡便で試薬を必要としない方法として試みたので紹介する.

けんさ外国語会話・11

心臓エコー検査〈英語編〉

著者: 医療通訳研究会

ページ範囲:P.1123 - P.1123

日本語

心臓エコー検査
①○○さん,(お部屋に)お入りください.
②これから心臓エコー検査を行います.シャツを脱いで上半身を出して

 このベッドに仰向けに寝てください.
③検査のために,ゼリーを胸につけます.楽にしてください.
④息を吸って,はい,止めてください.
⑤息を吐いて,はい,止めてください.
⑥次は横向きに寝て,胸をこちらに向けてください.
⑦このタオルでゼリーを拭き取ってください.
⑧ゆっくり起き上がり,洋服を着てください.

INFORMATION

第9回大阪臨床検査ISO15189研究会

ページ範囲:P.1064 - P.1064

日 時:2011年12月10日(土) 14:00~19:00

    (13:30開場)

会 場:大阪医科大学 新講義実習棟1F 101号室

 JR「高槻」駅より徒歩約8分,阪急京都線「高槻市」駅より徒歩約3分

「緒方富雄賞」受賞者報告

ページ範囲:P.1072 - P.1072

一般社団法人日本臨床検査同学院 理事長 水口國雄

 平素は,日本臨床検査同学院の事業に格別のご協力を賜りありがとうございます.

 第27回「緒方富雄賞」受賞者が決まりましたのでご報告申し上げます.

 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます.

【第27回「緒方富雄賞」受賞者名】

 永沢善三氏(佐賀大学医学部附属病院 検査部)

 西岡淳二氏(三重大学医学部附属病院 中央検査部)

 西山宏幸氏(駿河台日本大学病院 臨床検査部)

【受賞式】

 日時:2011年11月26日(土) 17:00~

 場所:学士会館本館「210」

千里ライフサイエンス国際シンポジウム―2012 Senri Life Science International Symposium on "Cutting-edge of Autophagy Study"

ページ範囲:P.1081 - P.1081

日 時:2012年1月20日(金) 9:30~17:10

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル 5階ライフホール(大阪府豊中市新千里東町1-4-2,地下鉄御堂筋線/北大阪急行千里中央下車)

千里ライフサイエンスセミナーC4―ストレス応答の分子メカニズム

ページ範囲:P.1087 - P.1087

日 時:2011年11月14日(月) 10:00~17:00

場 所:千里ライフサイエンスセンタービル 5階ライフホール(大阪,豊中市)

--------------------

医学書院ウェブサイトをご利用ください

ページ範囲:P.1088 - P.1088

『臨床検査』11月号のお知らせ

ページ範囲:P.1095 - P.1095

バックナンバーの取り扱い

ページ範囲:P.1106 - P.1106

投稿論文募集のお知らせ

ページ範囲:P.1110 - P.1110

あとがき・次号予告・ラボクイズ正解者

著者: 種村正

ページ範囲:P.1124 - P.1124

あとがき

 人の五感の使用割合は視覚87%,聴覚7%,触覚3%,嗅覚2%,味覚1%だという説があるが,最近の仕事はつくづく目を使うことが多いなあと思っている.私は超音波検査にずっと携わってきたが,電子カルテや生理検査システムが導入されてからはペーパーレス運用となり,もっぱらモニター画面ばかりを見ている.実際に患者の顔や身体を見る時間よりも,モニターを見ている時間のほうが何十倍も長いであろう.電子化に伴って目の負担は増すばかりである.

 私はある学会の研究開発班で,超音波検査に携わっている検査者の負担を軽減しようという調査研究に参加している.ここでは,実態調査を行ったうえで,超音波診断装置のモニター,椅子,ベッドなどの高さ,あるいは検査時の姿勢と身体への負担度の関係を実験で求めたり,モニターの明るさ,照明,空調などの理想的な検査環境について,具体的な指針作りを行ったりする予定である.今まで検査をこなすことを優先して,検査者の負担を顧みない環境が当たり前であったが,ようやく自分たちの安全を守るということに目が向けられるかもしれない.超音波検査を長年やっていると腰痛や肩こりが辛いという人が多い.一種の職業病のようであるが,目や身体の負担を減らすために作業環境を整えるということはとても大切であると思っている.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?