icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

検査と技術4巻2号

1976年02月発行

雑誌目次

病気のはなし

劇症肝炎

著者: 北見啓之 ,   浪久利彦

ページ範囲:P.88 - P.94

 急性肝炎は,普通3〜4か月の経過で治癒する予後の良い疾患であるが,一部の急性肝炎では,急速な経過をとって死亡する場合があり,劇症肝炎と呼ばれている.劇症肝炎の定義は,"急激に起こる肝の広範な壊死により,急速に肝不全症状が現れる肝炎で,臨床像のうえで肝萎縮,進行性の黄疸,なんらかの精神神経症状を伴うもの"とされている.なかでも,精神神経症状は疾患の重篤度を知るうえに重要で,発病前に健康であった症例では特に重視される症状である.肝機能は,発病前は正常であり,発病後肝不全症状が6〜8週以内に現れる.

技術講座 生化学

アミラーゼ

著者: 内田壱夫

ページ範囲:P.132 - P.137

 アミラーゼはデンプン,グリコゲン,アミロース,アミロペクチン,デキストリンなどの多糖体のα-1.4-グリコシド結合または,α-1,6-グリコシド結合を水解する酵素で,表1のごとく分類される.
 これらのうち,臨床上重要なのは膵臓唾液腺,血液,尿に存在するα-アミラーゼである.α-アミラーゼは,分子量約50,000,至適pHは,6.9,1分子中に少なくとも1当量のCa2+を含み,Cl-のごとき1価の陰イオンを活性保持のため必要とするendo型の典型的な酵素で,その作用は,基質となる多糖体のα-1,4-グリコシド結合を無選択に水解しデキストリンとする(1次反応).更にデキストリンを水解し,α-マルトース,マルトトリオース,グルコースにする作用がある(2次反応).1次反応は急速に起こりデンプンのヨウ素発色性が失われ粘度が低下する.2次反応の反応速度は遅く,最終分解生成物はマルトースが主でマルトトリォースと少量のグルコースである.

血液

血小板粘着能

著者: 馬場百合子

ページ範囲:P.138 - P.141

血小板粘着能(adhesiveness of platelet)の原理
 血小板は異物面に触れると粘着する,止血の際は,損傷した血管壁に血小板が粘着し凝集し,血小板血栓を形成して止血の,または血管内凝血の基礎となる.血小板は正常の血管内皮細胞には粘着せず,内皮細胞が障害を受けると粘着する.ことに血管壁が傷害されて,コラゲン線維が露出すると血小板は容易に粘着する.また血小板粘着は,血小板や赤血球からのadenosine diphosphate(ADP)により起こされ,カルシウムイオン,更に血漿中のフィブリノゲン,Von Willebrand因子(抗出血性因子)などを必要とし,血小板の荷電状態も関係する.
 血小板粘着能は異物面に触れると粘着する血小板の性質から,ガラスなどの異物に血液を接触させ,接触させる前と後の血液中の血小板の数を計測し,この差から血小板の粘着率(正確に表現するならば停滞率)を求める.現在,測定に使用する血液には抗凝固剤を加える方法と,抗凝固剤を加えない方法とがあり,一般的には後者の方法が多く使用されている.

血清

梅毒補体結合反応(緒方法)・1

著者: 上尾八郎

ページ範囲:P.142 - P.145

1.原理
 梅毒(syphilis)は性病の一つで,トレポネーマパリズム(Treponema pallidum;1905年ドイツのSchandinnとHoffrnannの共同研究により発見.以下TPと略す)による慢性全身性感染症である.患者の血清あるいは髄液中に脂質及びTPに対する抗体が証明される.
 1906年ドイツの生化学者Wassermannが初めて補体結合反応(complement fixation test)の原理を利用した血清反応による梅毒の診断法を発表し,俄然世間の注目を浴びることとなった.その功績をたたえ,梅毒血清反応史上永久にその名をとどめていることは衆知のとおりである.この発表以来多くの医学者によって改良,工夫が加えられ,他の血清反応では到底比類をみないいくつかの梅毒血清反応が出現し現在に至っている.これらの反応なかんずく抗体検出法を整理すると,それに用いる抗原の種類により,(1)脂質抗原を用いるもの,(2)TP抗原を用いるもの,の2つの系統に大別される.表1は梅毒血清学的診断法を分類したもので,現在検査室で広く行われている方法は表に示した○印のものである.

細菌

ファージ型別(phage-typing)

著者: 潮田弘

ページ範囲:P.146 - P.149

1.ファージ型別の意義
 多くの病原細菌は生化学的性状や血清学的型別により細かい分類がなされている.しかしながら,中にはこれらの方法による分類,型別が極めて困難か,あるいは不可能な場合がある.他の方法として,バクテリオファージ(以下ファージと略す)の持つ宿主特異性を利用したファージ型別(phage-typing)法がある.生化学的性状などにより菌種までの同定は比較的容易だが,それから先,血清型別法が確立されていないものの一つに黄色ブドウ球菌がある.
 化膿性疾患,肺炎,骨髄炎,腎盂炎あるいは敗血症,更に毒素型食中毒の原因菌となるなど,多様な疾患の原因菌である黄色ブドウ球菌は自然界に広く分布し,しかも健康人の鼻前庭,咽頭,皮膚表面などの常在菌である.このことは臨床材料や食中毒の推定原因食品などから典型的な黄色ブドウ球菌が分離・同定されても,必ずしもこれをその疾患や汚染の原因菌と断定できない理由である.

病理

細胞診検体の取り扱い方・7—穿刺標本

著者: 黒木須雅子

ページ範囲:P.150 - P.152

 細胞診における検体採取法の一つに,注射針などの器具を用いて組織,臓器あるいは体腔を穿刺し,陰圧にて吸引することにより細胞を得る方法があり,穿刺細胞診と呼ばれている.この方法は,試験切除の不可能な腫瘤にも施行でき,皮膚切開を加えることなく検体が得られるので被検者にとって苦痛も少なく,また短時間で診断可能であるなどの利点があり,極めて応用範囲が広い.しかしそれだけに検体の性状は様々であり,各部位の病理組織学,細胞学的知識の習熟とともに,検体の性状や検査目的に応じた適切な処理法が必要である.

生理

シグナルとノイズ・19

著者: 石山陽事 ,   近藤美佐子 ,   根岸勇 ,   村崎義紀

ページ範囲:P.153 - P.155

《サンプル1》
 1.解答
 近藤 まず肢誘導のⅡ,ⅢとaVFの波形の揺れと,胸部誘導全体に交流が入っています.それでⅡ,Ⅲ及びaVF,胸部誘導の交流の関連から,四肢誘導の足の接触抵抗が高いために,胸部誘導にもこのように交流障害が入ってきたのではないかと思います.波形の揺れは別にありませんから.

一般

尿検査成績のチェックの仕方

著者: 大竹順子

ページ範囲:P.156 - P.157

 尿検査は検体が患者に苦痛を与えないで採取でき,腎機能障害や,全身の諸種臓器の状態変化をよく示すために広く行われている.このうちいわゆる一般検査室で行っている種々の尿検査について,私たちが出している検査結果をより正確に,より再現性よくするにはどうしたらよいかを絶えず考えなければならない.この点について私たちの行っている方法を含めて以下に述べよう.

病人と病気と病院

病院情報システム

著者: 河村徹郎

ページ範囲:P.95 - P.98

 最近,コンピューターや自動化機器をベースとした医療のシステム化への関心が急速に高まっている.この背景としては,医療需要の増加や,医療技術の進歩に伴い,医療情報の量が飛躍的に増加しつつあること,一方では必要な医療従事者が不足していることが挙げられる.医療のシステム化とは,近年急速に進歩してきた情報処理やエレクトロニクスなどの工学技術を,医療の分野へ導入し,先に述べたような現状に対処しようとするものであるといえよう.更にこれらの技術を,医療の質的な向上のために積極的に利用しようとする考え方もある.
 医療の分野における,コンピューターを中心とした情報処理技術の応用は多岐にわたるが,ここでは病院の総合的な運営の改善をはかることを目的とする病院情報システム(Hospital Information System;HIS)について述べる.

基礎から応用へ

レーザー

著者: 戸川達男

ページ範囲:P.99 - P.102

 今は,新しい技術が開発されると一般に広く紹介されるので,すぐにまんがの材料にまでなってしまうが,レーザーというものは,殺人光線になるというようなことよりもむしろ,物理現象として見てもたいへん興味あるものなので,光源の話の続きのところで説明しておきたいと思う.レーザーにはいろいろな種類があり,新しいレーザーもたくさん開発されている.また,レーザーの応用は,今盛んに研究が進められているところで,工学方面はもちろん,医学,生物学や大気汚染の測定などいろいろな試みがある.

生態系と寄生現象

著者: 大家裕

ページ範囲:P.103 - P.106

1.ミクロフィラリアの定期出現性
 ヒトにフィラリア症を起こさせる糸状虫(線虫の仲間)の一つに,Wucheleria bancroftiと呼ばれる種類がある.日本の南部をはじめ,ほぼ全世界の熱帯,亜熱帯に分布しており,蚊を中間宿主としている.ヒトのリンパ系に生息する成虫が有性生殖を行い,雌虫はミクロフィラリアと呼ばれる仔虫を生み出すが,これが血流中に出て,末梢血中を流れているおり,蚊の吸血により蚊の体内に入って成長し感染仔虫となるのである.この感染仔虫は蚊の吸血の際,再びヒトに侵入する機会を得,終局的にヒトのリンパ系に棲みつくのであるが(図1),このミクロフィラリアがヒトの末梢血流中に出現する時間帯について,定期出現性(turnus)ということが知られている(図2).つまり,末梢血流中へのミクロフィラリアの出現が,主として夜間であったり昼間であったりするのである.
 日本,アジア,アフリカ,中南米にみられるものでは,この夜間出現性が極めて明瞭で,ミクロフィラリア出現の時間帯は,夕方の6時ごろから翌朝の6時ごろまでである.夜中の12時ごろには,末梢血中のミクロフィラリア数はピークに達するので,夜間強周期性と呼ばれている.タイのジャングル地帯の住民の間にみられるものでは,上に述べたような明瞭な周期性がなく夜間弱周期性と呼ばれている.また,ポリネシアの住民の間にみられるものでは,ミクロフィラリアの末梢血出現は昼間に認められ,しかも周期性が明瞭でないところから昼間弱周期性と呼ばれている.

酵素的連続反応

著者: 降矢震 ,   降矢熒

ページ範囲:P.107 - P.110

 有機物質の酵素的定量法が日常検査にも導入されるようになってきた.検査試料のように圧倒的多量,多種物質の中に混在する微量物質を直接定量するには,基質特殊性の高い合理的な方法である.その方法には一種の酵素による1段階の反応を利用することもあるが,ブドウ糖酸化酵素法のように2種の酵素を連続的に働かせることもある.
 酵素活性度の測定でも,生成物の定量を酵素的に行えるわけである.被検酵素の作用を停止させてから,生成物を酵素的に定量するならば,上記有機物質の定量と同様である.しかし現在検査室で行われているGOT,GPTのUV法はこれとは異なる.これはGOT,GPTの反応を停止させることなく,生成するオキザロ酢酸,ピルビン酸にMDH,LDHを作用させて,NADHの減少速度を測る.これらの反応速度をそのままGOT,GPTの反応速度とみなすのである.

統計学的思考・9

著者: 土肥一郎

ページ範囲:P.111 - P.112

1.一元配置法と二元配置法
 前項において述べた15匹のモルモットを使った実験は,L1(皮内),L2(皮下),L3(腹腔内)という注射方法の相違が免疫抗体の産生量に差を生じるかどうかを検定するためのもので,実験結果の一覧表では縦3列,横5行にならんだ数字のうち,縦のものは注射部位という点でそれぞれの列の中での共通性があるが,横のものはたまたま第1行に並んでいても何の共通性もなく,例えば第1列の2番目と3番目の数値を入れ替えてもかまわないものであった.
 これに対して,例えば血圧降下剤の効果を調べる目的で,8人の被検者を使って注射前後の血圧を記録し,これを表にしたものは,縦にも横にも,それぞれの中で入れ替えがきかないという意味の一貫性がある.これを二元配置法というが,今回はその二元配置法に繰り返しを入れた場合の分析法を説明する.その前に,前稿で示した計算法のうちで,

知っておきたい検査機器

オートクレーブ

著者: 大塚正和 ,   清水喜八郎

ページ範囲:P.113 - P.114

 滅菌とは,すべての微生物を殺すことであり,目標になるものは熱に強い枯草菌の芽胞であり,これを殺滅することにより滅菌が完了する.高圧滅菌を完全なものにするための重要な条件は,3要素,つまり温度,湿度,滅菌時間の相乗作用である.滅菌温度を得るための飽和蒸気は湿熱により微生物の細胞内タンパク質を凝固し死滅させる.
 検査室においても,最近の高圧滅菌器は,機能的に多くの進歩がみられ,滅菌の原理は変わりがないが,迅速化,小型化,自動化など種々改良が加えられ,装置の操作も簡単で,タイマーをセットし電源スイッチを押すだけで滅菌が終了する.操作が簡便になった反面装置の異常の発見が遅れ,滅菌が不完全になるデメリットがあるので,その点については常に十分な配慮が必要である.

最近の検査技術

薬剤中毒の検査法

著者: 狐塚寛

ページ範囲:P.115 - P.120

 医学関連領域の拡充,強化の重要性が唱えられている昨今では,薬物検査はより広く,例えば患者についての積極的な薬効評価のようなものにまで及ぶべき使命があると考えるが,こうした問題は別の機会に譲ることとし,本稿においては薬剤中毒の対象の主体を,(1)故意,過失などにより毒性の高い薬剤を服用したと思われる患者の血液,尿,胃洗浄液などからの薬剤の検出,(2)習慣性,乱用性薬物の使用の有無の確認,において話を進めたい.
 薬剤中毒の検査法は,一般の臨床化学検査と比較するとたいへんに難しいように考えられがちだが,これは多分に食わず嫌いの要素もあり,かえって容易な点もあるのである.難しい点を挙げれば,(1)一般臨床化学検査ほど術式が一般化していない,(2)対象とすべき毒物が不明な場合が多く,スクリーニングを主眼にした分析が必要とされる,(3)緊急を要することが多く,結果は迅速を要求される,(4)再採取できない検体がほとんどで,失敗を許されない,などである.

ひとこと

人間にとっての機械

著者: 仁木偉瑳夫

ページ範囲:P.122 - P.123

 日常の検査業務で我々を取り巻く機械が多くなってきた.生化学自動分析機械,血球カウンター,組織の自動包埋,自動染色,ついに白血球の自動分類,心電・心音図の自動診断など,自動化はますます進んでいる.
 こうした機械に取り巻かれていると,毎日の検査業務が機械中心になり,人間は機械に使われ,追い回され,スイッチのON,OFFだけをやっているような感じさえしてくる.こうなると,今まで苦労して修練を積んできた検査手技,あるいは知識はもういらないのか,自分の能力の発揮できる余地はどんどんなくなっていく感じが強い.人間にとって"機械はいったい何なのか".

検査の昔ばなし

血糖測定

著者: 柴田進

ページ範囲:P.124 - P.126

 私が京都大学医学部を卒業して母校の内科第一講座で実地修練を始めたのは,昭和12年,今から実に38年も前のことである.そして私の血糖定量の思い出もここまでさかのぼる.講座の主任は内分泌学の先達であった辻寛治教授で,病舎では甲状腺と糖尿病患者がたくさん治療を受けていた.このように耐糖試験をぜひ必要とする患者がいるのに病舎で血糖を定量する設備がなかった.研究室でウサギの実験をして学位論文の仕事をしている先輩の先生に患者血液をお願いして,ウサギの血液の間にはさんでHagedorne-Jensen法(H-J法)で血糖を測っていただいた.
 しかしこれではいけないではないかというわけで,入局1年にもならない青二歳の私は自分で病舎において血糖測定ができるようにしたいと考えた.だが実際に患者に糖質を負荷し,3時間にわたって間歇的に採血し,硫酸亜鉛・水酸化ナトリウム混液に混ぜ,加熱し,脱脂綿をつめた漏斗でこして濾液を集め,アルカリ性赤血塩を加えて加熱,糖により赤血塩を還元し,残存赤血塩を酸性に……最後にチオ硫酸ナトリウムで滴定を済ますのに多大の時間を要することを知った,前夜病舎に泊り込み,午前6時半から活動を開始し,やっと終了して窓外に眼をやれば暮色蒼然たる有様であった.これでは糖尿病患者1人を受け持っただけで1日振り回されて,修練もあったものではない.私にとっては辻内科医局時代のこの体験が身にこたえて,H-J法から脱却し,たとえ精度は悪くても簡便な血糖定量法を開発しない限り糖尿病患者の良心的治療は不可能であると思った.

マスターしよう基本操作

写真による手術材料切り出しの記録

著者: 高木スミ子

ページ範囲:P.127 - P.130

 病理検査のための切り出し図は,病理医(鏡検者)のスケッチによって残されるのが普通である.当然のことながら,病変部の微細な構造まで記録するのは困難である.最近,便利な臓器複写機も市販されているが,高価でどこの施設にもというわけにはゆかない.
 簡単な写真技術をマスターすることによって,固定前病変部のカラー写真と,実物大写真(モノクロームでよい)に忠実に書き込んだ切り出し図が作られると,顕微鏡的所見と同時に,肉眼的所見が対比でき,病理診断もより精度の高いものが得られる.

おかしな検査データ

尿素窒素測定における2つの管理血清の測定値の食い違い

著者: 正路喜代美

ページ範囲:P.131 - P.131

 尿素窒素をオートアナライザー(AA)で測定するようになって10数年になる,尿素とジァセチルモノオキシムとの酸化的縮合物の比色定量法である,標準液の系列と血清をサンプラーに並べた後,自動分析された記録のチャートよりデータを読み取るものである.手数のかかる手法に比べ,再現性は15.0±0.5mg/dlと良好である.本法による尿素窒素の測定はAAに適していたようだ.
 その後多チャンネルAAなるSMA12/60が導入された.測定法は,Waltonらによる原法の改良法である.反応中に副成するヒドロキシルアミンの還元性を酸化剤により分解するのに,チオセミカルバジドを加えて促進させるとともに感度が増加し,呈色の極大も525nmに移動している.実はSMA搬入当初,直線性が得られず困った.原因は希釈血清が反応系に送られるところ,原血清が送られているという試料過剰によるものと分かり改善された,国産試液による直線性,再現性,相関などごく一般的なチェックの後,日常検査に入った,自動的な濃度の算出は,0濃度と測定範囲(0〜100mg/dl)の約2/3の60〜70mg/dlのレファレンス血清で濃度を設定する.このレファレンス血清の一部を異常値管理血清に代用し,正常プール血清の直前に入れ,この組み合わせを,血清試料10〜15本の間隔で挿入している.システムの条件がよい時には,前者は69.3±1.0mg/dl,後者は15.6±0.7mg/dl以内におさまり問題の少ない測定項目である.ところがある日突然,高値管理血清は68.8〜69.8mg/dlを示すので良いと思われるが,正常プール血清が10.6±0.4mg/dlと異常低値を示した.

実習日誌

臨床検査の確かな認識を

著者: 中村明

ページ範囲:P.158 - P.158

 新大病院では,付属臨床検査技師学校から20名ほどの実習生を受け入れている.期間は10月から2月まで,2人1組で各検査室を回る.私が5年前に実習した時は7月からであったので,10週余り短くなっている.期間が短縮された理由としては,年々検査件数が増大し,実習生を指導する時間的余裕がないこと,技師が若く経験も浅く実習生を教える自信がなく煩わしいと思っている人が少なくないこと,また,学校が2年制から3年制に移行し実習時間にゆとりができ,実習設備も整ってきてかなり実習内容が充実してきたこと,などがあげられる.
 学校実習と病院実習の違いは,学校では知識と技術(単に測定手技)の修得のみで,与えられた検体(プール血清など)を,教えられた手順で処理し成績を出してみるのが主体で行われているのに対し,病院実習は患者が中心であることである.特に生理機能検査では直接患者を扱うので,患者を無視して検査をしても,データは全く診療に役立たないばかりでなく誤診の危険さえある.患者に接するに当たっては,実習生であるという安易な考えは捨て,自らの言動に必要以上の気を配ることが大切である,生化学検査においても同様,患者の貴重な検体を微量,正確,迅速に処理し,データを提供する.これらのことを実際に経験し,臨床検査の立場,重要性を理解し,臨床検査技師の使命,責任,倫理などを自覚してもらいたい.
 私の所属する臨床化学検査室では現在17日割り当てられている.始めに,主任教官が生化学検査全般の講義,微量ピペットの検定,精度管理,正常値などの総論を行う.その後,各項目の担当技師が実習を進めていく.実習をより確かなものにするため,レポートを提出させている.レポートの内容は,実習内容のほかに,気のついたこと,注意点,疑問点,教科書にない検査のコッを特に記述するよう指導している.

--------------------

略語シりーズ

著者:

ページ範囲:P.94 - P.94

GPT glutamic pyruvic transaminase;グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ.肝炎などの時,血清GPT(S-GPT)が上昇する.最近,alanine aminotransferaseと言う.
HA hemoagglutination;赤血球凝集.インフルエンザウイルスなどが,ヒト,ニワトリなどの赤血球を凝集する.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.121 - P.121

201)牛眼;buphthalmia
 幼児では眼球の外膜が脆弱なために,緑内障で眼圧が亢進すると,眼球は膨張して大きくなる.ちょうど牛の眼のように大きく突出した形になる.これを牛眼という.

国家試験問題 解答と解説

ページ範囲:P.159 - P.163

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?