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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術4巻5号

1976年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

バセドウ病

著者: 橘敏也

ページ範囲:P.326 - P.331

 今日バセドウ病といわれる病気の症状を初めて記載したのは,実は1786年英医Parryであった.しかし彼はこれを心臓病と考えた.
 本症を甲状腺機能亢進症と決めこんだのは1835年英医Graves,1840年独医のBasedowであった.今日英米系の国では本症をグレーブス病といい,独系の国ではバセドウ病と呼ぶわけである.

技術講座 生化学

LAP,γ-GTP

著者: 溝口香代子

ページ範囲:P.349 - P.354

 血清ロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)及びγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)活性値は,肝・胆道疾患の診断に有効な検査データとして注目されている.これらの値は,アルカリ性ホスファターゼやトランスアミナーゼなど他の酵素活性値と比較した総合解析により,酵素診断という観点から,より的確な情報を提供するようになってきた.測定法については,LAPは1950年代初め,γ-GTPは1960年代初めからいろいろの方法が報告されてきたが,現在はいずれも合成基質を用いる方法が普及している.

血液

血球計算

著者: 中嶋孝之

ページ範囲:P.355 - P.357

 血液をメランジュールで一定の濃度に希釈し,計算盤を用いて1mm3(1cmm)中の血球数を顕微鏡で測定する方法がある.これは血液検査の基本的な技術の一つであり,自動血球計算器が進歩,普及してきた現在でも,異常値の再検査や自動血球計算器の故障時,精度管理のコントロールとして,また機械のない所など使用用途が数多くあり,更に赤血球や白血球をそのまま鏡検しながら数えている点で有効なことがある.

血清

赤血球凝集反応・1—直接法

著者: 瀬戸幸子

ページ範囲:P.358 - P.360

 赤血球を抗原として使用して行う反応を総称して赤血球凝集反応と言うが,その種類は多く,血液型の判定や赤血球の抗体の検出,抗A,抗B凝集素価の測定,寒冷凝集反応,Paul-Bunnell反応,交差適合試験などを血清検査における赤血球凝集反応としてあげることができる.またこれらを応用した直接クームス試験やウシ血清アルブミンを用いる試験,タンパク分解酵素を用いる試験などがある.
 原理その他は成書を参考にしていただき,今回は検査に必要な実際的な注意事項を今までの経験をもとにして書いてみたい.初めに検査に当たって一番大切な赤血球の選び方,洗い方などを説明し,次に具体的な検査についての注意事項及び判定に際しての注意などについて述べる.

病理

剖検介助・1—病理解剖のための準備

著者: 進藤登

ページ範囲:P.361 - P.364

1.死体解剖保存法―抜粋
(目的)
第1条 この法律は,死体(妊娠4月以上の死胎を含む.以下同じ)の解剖及び保存並びに死因調査の適正を期することによって公衆衛生の向上を図るとともに,医学(歯学を含む.以下同じ)の教育又は研究に資することを目的とする.(保健所長の許可)

生理

電気生理検査・2—増幅器

著者: 清水加代子

ページ範囲:P.365 - P.369

 前回は,計測システムのうちの入力部,すなわち生体信号の導入部となる変換器とその出力を表示する記録器について述べた.生体信号のように微小信号(数μV〜数mV)で,かつ低周波帯域(直流〜数十kHz)にある信号を,観測のできるレベルにもっていくためには,電気的に増幅して入力信号をより高い出力レベルにもっていく必要がある.今回は,計測システムの中枢である増幅器について述べてみたい.
 生体用増幅器の性能として次のことが要求される.

一般

機器の取り扱いと試薬・試験紙の保存

著者: 佐藤春枝

ページ範囲:P.370 - P.372

1.顕微鏡の取り扱い方とその注意点
 顕微鏡にも普通顕微鏡から特殊顕微鏡まで種々のものがあり,また普通顕微鏡の中にも型式も多く,更に接眼の部分が単眼のもの,双眼のもの,三眼のものなどがある.鏡検する検査も種々あり,その目的によって顕微鏡の取り扱い方が異なっている.ここでは普通顕微鏡の一般的な使用法と注意点をまとめてみよう.
 顕微鏡の構造を見ると,(1)接眼レンズ,(2)対物レンズ,(3)鏡筒,(4)標本を載せる載物台とその左右移動装置,(5)ピントを合わせるための鏡筒または載物台の上下装置の粗動ネジと微動ネジ,(6)光源,(7)反射鏡,(8)集光器(コンデンサー),(9)絞り(虹彩遮光器),(10)それらを支えるための支柱,から成っている.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

血沈—実際と理論

著者: 磯貝行秀

ページ範囲:P.333 - P.336

 血液を非凝固性にしてガラスの細管に吸引し一端を封じて垂直に保持すると,時間がたつに従い血漿と血球の2層が明瞭な境界線をもって分離してくる,両者の比重の差によって血球が沈降し血漿層が形成されるためであるが,後者の厚みを計測して血球の自然な沈降速度を求めたものが血沈である.これは赤血球の沈降をみたものにほかならないので赤血球沈降速度(赤沈)とも呼ばれる.
 血沈は非常に単純な明快な検査で古くから愛用されてきているが,そこから引き出しうる情報は非特異的な内容のものであるので,臨床的評価は必ずしも一定していない.

病理組織及び細胞標本の染色機構・2—染まるには理由がある

著者: 山田喬

ページ範囲:P.337 - P.340

 染色法には1種類の色素による単純染色によるものと,2種類以上の色素を重ねて,あるいは混合して染める方法があり,目的別にみると.(1)細胞・組織の形態を単純に観察する(単純染色)(2)細胞・組織の構造をそれぞれ別々に染め分けて観察する(ヘマトキシリン・エオジン,ギムザ,マロリーアザン,パパニコロウ染色その他)(3)細胞・組織の機能の局在性を知る(酵素染色など)などのような染色法がある.それぞれに異なる染色機構があり,幾つかの染色機構が重複して利用されている場合もある.ここでそれらを詳細に記載することはできないので,一般に広く用いられている染色法を例にとって,染色機構の幾つかを説明するにとどめる.

心電図記録の軌跡・2—記録の歪み補正からの出発

著者: 本橋均

ページ範囲:P.341 - P.344

 心電図は1つの図形であるが,提示の方法は,使用する振動記録装置の可動部分の選び方によっていろいろである.可動部分は細管中の水銀柱(毛管電気計),極めて細い細線(絃検流計),振動子のストリップ(絃オシログラフ),可動鉄片,可動線輪としだいに実用性の高いものに進歩していったが,逆に感度の低下を来し,目的に沿う感度を得るために増幅器が用いられるに至った.
 歪みの極めて多い毛管電気計の標示内容に補正と再構成の手を加え,Electrocardiogrammの真の姿を世に示したW.EinthOvenの最初の業績は,"真なるものを描く"という点から今日の心電図学が出発したことを,我々に示してくれる.

読んでみませんか英文論文

コンピューターの基礎知識

著者: 河合式子 ,   河合忠 ,  

ページ範囲:P.345 - P.346

 まずはじめに,コンピューターはデータを移したり,貯蔵したり,また我々の計算を行うのに役立つ一つの道具です,我々がコンピューターを管理するのです.コンピューターは我々の主人でもなければ,考えることもしません.それは単に我々が読むべく与えたもののみを読み,そして我々が指示したことを予定どおりに迅速にかつ疲れることなく遂行します.たとえ巨大な事務室で多数の要員が働いたとしても,我々ではそのような短い時間内に処理できないような問題を解いてしまいます.

知っておきたい検査機器

恒温装置

著者: 舟谷文男

ページ範囲:P.347 - P.348

 恒温槽(サーモスタット)は酵素反応検査,血液凝固検査,微生物の培養など臨床検査に不可欠なものとして利用されている.しかし,あまりにも日常的な装置であるため水槽の水を入れ替えたりするぐらいで,装置の保守管理はおろそかになりがちである.周知のとおり,温度は反応速度のパラメーターの一つとして大きな意味をもつ.事実,精度管理によって,管理血清測定値のカタヨリ,バラツキなどの誤差因が恒温槽の温度調節の不備による場合が多く,日常よく経験されるところである.最近では熱電素子を利用した恒温槽が市販されて,精密で正確な温度制御が簡便なものとなったが,これとても正しい利用の仕方を知らねば,その持つべき機能を十分に発揮させることはできない.

最近の検査技術

酵素による血清コレステロール測定法

著者: 亀野靖郎

ページ範囲:P.373 - P.377

 臨床化学分析における血清コレステロールの定量は,他の脂質成分の中でも最も早くから行われ,日常検査に欠くことのできないものの一つである.しかし,コレステロールに対する特異的な化学反応がなかったこと,またコレステロールは非水溶性で血中ではタンパクと結合した,いわゆるリポプロテインとして存在しているため,分離精製操作が必要であることなど多くの問題点があり,今日まで日常検査法として普遍的な方法が生まれるには至らなかった。
 最近,酵素による測定法が報告され,直接比色定量法の一つとして注目されているが,ここでは酵素法の原理とその問題点について述べる.

医療・保健・検査

化粧品研究所と臨床検査技師

著者: 本好捷宏 ,   吉村正幸

ページ範囲:P.378 - P.380

 近年,国立及び公立の臨床検査技師学校が続々と3年制短期大学へ昇格するとの報に接する機会が多くなった.これは1958年に衛生検査技師法が制定され,更に1971年に現在の臨床検査技師,衛生検査技師に関する法律に改正されて以来わずか10余年の間に,ME技術の拡大を始めとする急速な技術革新に対応できる技術者を社会が要請するようになってきたことによるものと思われる.将来はMEを主体とする4年制学科への移行も夢ではありえないしかつ必要なことであろう.
 我々の勤務している化粧品研究所も同様に,加速度的な社会変化や製品周期の短縮化傾向の影響を受けて,創造的な研究や技術革新が強く要請されるようになってきた.

マスターしよう基本操作

電顕標本の作り方・1—切り出しから包埋まで

著者: 鈴木克哉

ページ範囲:P.381 - P.384

 電顕標本の作製過程は光顕の場合の手順に非常に類似しているが,(1)電子顕微鏡の分解能が数オングストロームのオーダーであること,(2)電子線の透過力が可視光線に比較して弱いこと,及び超微細構造を解像するためには,数百オングストロームという非常に薄い切片を作製しなければならないこと,(3)鏡検の際,標本が高真空内で強い電子線の照射を受けること,などの厳しい条件が要求される.従って,初めの固定操作の段階から慎重に行い,組織の自家融解や固定不良などに起因する人工産物を防止すること,また脱水以降の操作においても細心の注意を払う.樹脂の硬化が不完全なため薄切を困難にしたり,あるいは,電子線の照射に耐えられないようなブロックを作らないようにしなければならない.

実習日誌

病院実習で感じたこと

著者: 鈴木八千代

ページ範囲:P.387 - P.387

 私たちの学校では,学校でできる範囲の基礎的な実習を行った後,2年の10月から3年の3月にかけて,学校生活の割合からすると比較的長いとも言える病院実習に出ます.それぞれ各人が配置された病院の全部の検査室を1年かかって回るわけです.
 私が実習に行っている病院では,化学,血清,生理,血液,一般,病理,細菌の各検査室をそれぞれ4〜9週間ずつで回っていきます.

ひとこと

医療における専門職

著者: 屋形稔 ,   稲生富三 ,   芹田馨 ,   高橋芳郎

ページ範囲:P.388 - P.389

 ■この課題については,現在ある姿と将来あるべき姿とは異なっていても当然であるし,混同すべきでない.単純に,検査技師は技術をもって職分とするものであるから専門職であるという立場に立てば,現在でも十分に専門職として活躍していると見なすことができる,原則としては,医師の指導監督を受けているから,限界をもった専門職ではあるが,technologyを専門とし,ある部分に関してはほとんど委任されて臨床検査を実際に行い,診断に関する重要な情報の精度を高め,これを提供する立場にあるから,検査技師を医療の専門職と呼ばずして何を呼ぼうかということもできる.
 しかし,更に視点を変えて現在の姿をながめてみると,ルーチンの仕事を忠実に遂行するオペレーターであり,山積する検体を機械的にさばくチャップリンのモダンタイムスの職工的存在である限り,果たして技師を専門職と呼ぶべきかという疑問も当然わいてこざるを得ない.人命を預り,技術のほかに批判の能力も併せ持たねばならない医師からすると,単なる技術屋とか医療補助員として遇されてもやむを得ない点がある.この姿はせっかく薬学を学びながら単に薬剤師として包薬のみに従事する立場にも似ているようである.

検査の昔ばなし

30年前の細菌検査

著者: 桑原章吾

ページ範囲:P.390 - P.391

 私が大学を卒業して細菌の研究室に入ったのは昭和18年(1943)だからもう30年以上も前になる.細菌研究者もその時代を体験しない人が過半数を占めるようになったから,案外私の話にも希少価値があるかもしれない.

文豪と死

川端康成

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.392 - P.392

 日本人最初のノーベル文学賞を受賞した川端康成は,昭和43年(1972)の同賞受賞後,わずか3年余の昭和47年4月16日,仕事場にしていた逗子マリーナ・マンションで自殺し,世人を驚かせた.受賞を契機として,日本文学が世界文学の視点から注目されるようになったので,川端文学の本質がどうこうという議論とは別に,その存在自体に意味があったので,日本人だけでなく広く世界から惜しまれた.
 川端康成の人となりには,孤児体験が色濃くまつわりついている.数え年3歳で父を,4歳で母を,8歳で祖母を,11歳で姉を,16歳で祖父を失い,肉親とことごとく死別した.処女作は最後の肉親であった祖父のみとりをした「十六歳の日記」である.自らも孤児根性という言葉を自嘲的に使い,その病患が自分ながらいやだと甘えの感傷を反省している,代表作である「伊豆の踊子」にも,この孤児根性が現れている.孤児根性によるかたくなな心のゆがみが人の言葉を素直に受け取れない悪いしきたりになっていた,ところが一高生として初あて伊豆に旅した旅情のなかで踊り子の一行と一緒になり下田まで同行する人間的なつきあいで,踊り子たちから"いい人だ"と言われて,それを素直に受け取ることができた青春の哀感がこの作品に盛り込まれている.心が浄化されたのである.

失敗の経験

バラツキは機械の故障か?

著者: 川名由利子 ,   北村元仕

ページ範囲:P.398 - P.399

 6チャンネルのディスクリート型自動分析装置を導入して約半年たった1月の寒い朝のことである.自動装置といっても,動き出させるまでの準備はけっこう忙しい.機械のスイッチを入れてから,全チャンネルの比色系統が安定化するのをまず確認し,次いで試薬を流してブランク値を0に調整する.この最初の段階で,ビウレット試薬による総タンパク質の盲検値が異常に高いことを発見した.調整ツマミを回し切っても表示が0まで下がらないのである.
 自動分析で一番恐ろしいのは,測定不能の故障である.メーカーがすぐとんで来てくれても,半日や1日はすぐたってしまう.その間に山積する検体.至急検査などが入って,病室から問い合わせが続いたりすると身の細る思いがする.

国内文献紹介

ガス滅菌

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.377 - P.377

 消毒,滅菌といえばすぐに煮沸,蒸気というように熱を加えることが行われてきたが,最近の医療器具材料の発達は,熱に耐えないものが多く使用されるようになり,これらのものの消毒,滅菌が必要になってきた.
 酸化エチレンを用いるガス滅菌は,低温で行えるし,紙,セロファン,ポリエチレン,ポリプロピレン,塩化ビニル,ナイロンなど,いわゆるプラスチック製品などの滅菌に適している.

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略語シリーズ

著者:

ページ範囲:P.331 - P.331

HGF hyperglycemic glycogenolytic factor;グルカゴン.膵臓のランゲルハンス島のα細胞より分泌され,肝グリコゲンの分解を促進して血糖上昇を起こす因子.
HHD hypertensive heart disease;高血圧性心疾患.長期間高血圧が続いた結果,冠状動脈不全,心筋肥大を生じ心筋虚血を生じ,最後には心不全の状態になる.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.385 - P.386

241)クベイム反応;Kveim test
 サルコイドーシスの50〜80%に陽性で,加熱滅菌したヒトサルコイド組織(脾またはリンパ節)の浮遊液を注射すると,類上皮性結節から成る丘疹状・結節状皮膚変化を生じる.結節を4〜6週後に生検してサルコイドの組織像を確認する.反応の性状は分かっていない.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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