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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術4巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

慢性関節リウマチ

著者: 浜田重博 ,   延永正

ページ範囲:P.482 - P.488

 慢性関節リウマチ(以下RAとする)は関節滑膜の炎症に始まり再燃,寛解あるいは持続的炎症の結果,しだいに関節の変形や強直を来すのが定型的な経過であり,いわゆる古典的な膠原病の中でも,生命に関する危険は少ないものの,頻度は最も多く程度の差はあれ全身の諸関節が侵されるという特徴から,患者にとって肉体的苦痛とともに,関節の機能障害のもたらす身体障害者としての精神的苦痛をも伴う難病である.病因がまだ解明されていない現状では,早期診断のもとに適切な治療により,炎症の進行をできるだけ食い止めるのが最も重要なことである.

技術講座 生化学

アルブミン

著者: 正路喜代美

ページ範囲:P.505 - P.508

 ヒトの血清アルブミンは,Behrensらの研究によると,アラニン(63個),ロイシン(61個),グルタミン酸(60個),リジン(58個)を多く含む21種のアミノ酸584個から成る分子量66,248.3のタンパク質である.窒素含量は,16.523%,N末端アスパラギン酸,C末端ロイシンから成る一次構造式が明らかにされ,等電点4.7,その他物理化学的性状など,ウシやラットァルブミンとの相違も明らかにされた1)
 ヒトのアルブミンは,もっぱら肝臓で生合成される.その他網内系細胞や甲状腺でもわずかに合成される.アルブミンの寿命は19目と言われている.1日に約17gのアルブミンが異化崩壊するとともに生合成され,体内でのアルブミン量の平衡が保たれている.ヒトアルブミンの約40%が血液中に存在し,その他は筋,皮膚,腸,肝などの体液中に存在する.血清アルブミンは,正常者で4.2±3.5g/dlで総タンパクの約60%を占める,pH7.4の血液中では負に荷電している.

血液

血球鑑別

著者: 後藤清

ページ範囲:P.509 - P.512

 血球鑑別は一種の細胞診であると言われている.1枚の標本から,白血球形態,赤血球形態,血小板形態,その他腫瘍細胞の出現など注意深く観察することにより,いろいろな疾患の診断治療に大きな情報源となる.従って,1個の細胞を誤って鑑別したり,見逃した場合には重大な誤診にもつながりうる.それだけに,私たち臨床検査技師は常に形態学を学び正しい知識のもとに,その業務に従事しなければならない.
 血球鑑別についての著書は数多くあり詳細については,それらの著書を参照されたい.今回は,ライト・ギムザ染色を基本とした血球鑑別の初歩的な事柄と,初めて塗沫染色標本を観察する場合の注意点などを交えてまとめてみた.

病理

剖検介助・2—肉眼標本の写真の撮り方

著者: 進藤登

ページ範囲:P.513 - P.514

 今日,医学の発展に写真技術の協力が非常に重要な役割を果たしている.科学写真の一部門である医学写真は,患者の全身の写真,手術及び解剖の写真,教材用写真,光学顕微鏡写真,電子顕微鏡写真など普通一般的なものから高度のものまで非常に広範囲にわたっている.写真は重要な証拠物件となるばかりでなく永久性を持ち,次の研究の資料となる.剖検時の写真は解剖の進行とともに失われてゆく各臓器間の関連性や,病的変化による形態及び色彩の変化が主となるので,色や形の変わらないうちに撮影し,疾患の外見上の病態を記録する.以下に述べるのは臓器肉眼写真の撮り方についてである.

生理

電気生理検査・3—アーティファクト,安全問題

著者: 清水加代子

ページ範囲:P.515 - P.519

アーティファクト
 生体現象を電気的に記録する場合,記録装置の出力に雑音がみられることがあり,これが問題になることは前回に述べたとおりである.この出力に現れる雑音のうち,内部雑音についてはすでに述べたので,ここでは外部雑音であるアーティファクト(artifact;人工雑音)をとりあげる.
 生体信号を記録する際,しばしば悩まされるのが目的とする信号以外のアーティファクトである.生体信号は微小信号であるため,アーティファクトがわずか混入しても大きな障害になり,日常検査はアーティファクトとの戦いであるといえよう.実際には,アーティファクトをどうしても避けることができない場合もあるが,多くの場合はその原因を探すことによって除くことができるので,できるだけ努力して除くことが必要である.

一般

尿検査・2—タンパク

著者: 長岡文

ページ範囲:P.520 - P.521

 尿検査を行うに当たってまず"尿"というものがどういうものであるか,また尿の検査が何を意味するものか,この検査がどう役立つかという基本的な知識を持ったうえで検査に当たらないといけない.尿検査は操作が概して簡単であり,検体である尿が得やすいため,ともすると軽視しがちであり非常に気楽に結果を出しているのが見受けられる.これは大きな間違いであり,操作が簡単であるからこそ種々の条件を整えたうえ,厳重に正しい操作を行わなければ正確な結果を得ることができないのである.また尿は,全身を回った血液が腎において濾過され尿路を経て排泄されたものであるから,腎・尿路系の疾患ばかりでなく全身の状態をよく反映しているので,尿検査はすべての検査の糸口となり,臨床上非常に重要であるということを十分に自覚し,慎重に結果を出さなければならない.
 尿検査には定性法と定量法があり,有る(陽性)か無い(陰性)かを見るのが定性であり,いくら含まれているかを測るのが定量である.定量は含有量を正確に数値として表すが,正確な数値は得られないがおおよその量を表すことのできるのを半定量という.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

ASO価測定

著者: 安田純一

ページ範囲:P.489 - P.492

1.β溶血とストレプトリジン
 レンサ球菌が動物の赤血球を溶血させることはLingelsheim(1889),Marmorek(1895)以来知られていた.他方,血液寒天に混釈平板培養した際に集落周囲に生ずる溶血帯の所見からBrown(1919)はレンサ球菌をα(緑色帯),β(無色透明)及びγ(不溶血)に分けた.今日では,血液寒天の表面集落の周囲に見られる溶血帯に対してもα,βという表現が用いられている1)
 同じく溶血と言っても,試験管内溶血では赤血球膜が破れてヘモグロビンが外液中に出るので赤インキのように赤色透明となるが,集落周囲のβ溶血ではヘモグロビンの色もなくなって,無色あるいは基礎培地の色だけになる.試験管内溶血に関与するレンサ球菌の産生物質には2種あり2),酸素に不安定なほうはストレプトリジンO(以下SLOと略す),酸素に安定で血清(serum)を含む培地でよく産生されるほうはストレプトリジンS(以下SLSと略す)と呼ばれる.血液寒天平板の表面集落周囲のβ溶血の過程にはSLSが関与している.

なぜ耐性菌は増えるか

著者: 三橋進 ,   伊予部志津子

ページ範囲:P.493 - P.496

 我が国における化学療法は1945年以降のサルファ剤(SAと略)使用から始まっている.SAは各種の感染症に著しい効果を示したが,その有効性はわずか十数年で失われた.細菌がSAに対する耐性を獲得したからである.赤痢菌を例にとると1951年にはそのほぼ80%がSA耐性となっている.以後ストレプトマイシン(SM),テトラサイクリン(TC),クロラムフェニコール(CM)などの抗生物質が次々と発見され,SAに代わって用いられ威力を発揮したが,これらもSAと同様耐性菌の出現により効果を失ってきた.耐性赤痢菌は1959年以降急速に増えはじめ1967年にはその70%を占め,そのうち90%がSA,TC,CM,SMに対して同時に耐性を示している.
 このような化学療法剤の使用に伴う耐性菌の増加はどのような仕組みで起こるのであろうか.しかも4薬剤に同時耐性という多剤耐性化の原因には何があるのであろうか.

心電図記録の軌跡・4—誘導について

著者: 本橋均

ページ範囲:P.497 - P.500

 心臓の収縮時に示す電気現象を体外に取り出して,これを1つの図形として示したものが心電図である.この体外に取り出す操作を誘導という.ただし,電気学一般では,誘導とは"induction"の訳語で,誘導起電力,誘導コイルといった形で用いられる.
 初めてヒトの心電図を記録したA. D. Wallerはleading-offという文字を用いている.この語だと導出というほうが合理的であるが,ここでは慣習に従って誘導の文字を用いる.

読んでみませんか英文論文

嫌気性菌の抗生物質感受性検査

著者: 河合式子 ,   河合忠 ,  

ページ範囲:P.501 - P.502

 現時点では,通性及び好気性細菌に対する抗生物質感受性検査の実施について,広く認められた標準法がある.これはBauer,Kirby,Sherris及びTurckによる方法で,一般にKirby-Bauer法として知られている.しかし,それは食糧・薬剤庁によって,単に迅速発育好気性または通性菌の検査にのみ推奨されている.

知っておきたい検査機器

デンシトメーター

著者: 大島寿美子

ページ範囲:P.503 - P.504

 セルロースアセテート膜(セア膜)などの支持体を用いた電気泳動法の定量分析(デンシトメトリー)に使用されるのがデンシトメーターである.デンシトメトリーは一種の比色分析法であり,通常の比色分析が溶液の着色度を測定するのに対し,デンシトメトリーでは染色された薄い膜状の支持体における着色度を比色定量するものである.従って支持体は薄く,透明で平板状のものが理想的であり,セア膜のほかに濾紙,寒天ゲル,ポリアクリルアミドゲルなどを用いた泳動のデンシトメトリーに応用されている.

最近の検査技術

ガスクロマトグラフィーを用いた嫌気性菌の同定・1—嫌気性菌の分類

著者: 上野一恵

ページ範囲:P.522 - P.526

 近年嫌気性菌の領域においても菌の分類や同定に終末代謝産物,菌体のデオキシリボ核酸(DNA)の基本構成の分析,DNA-homology,細胞壁の化学組成の分析,菌体の化学組成の分析による方法などが応用され,目覚しい成果を挙げつつある.
 特にガスクロマトグラフィーを用いて,揮発性脂酸(volatile fatty acid;VFA),不揮発性脂酸(non-volatile fatty acid;NVFA),アルコール類などの代謝産物を定性あるいは定量的に分析することは,嫌気性菌の分類,同定に極めて重要かつ有用である.

おかしな検査データ

GPTの基質濃度と測定値

著者: 池田清子

ページ範囲:P.527 - P.528

 問題 GPT測定を市販の3社のキットで比較した.測定方法は紫外部吸収法によるrate assayを自動分析器で行った.得られた値は図1に示してあるように,A社とB社(・印)を較べるとほぼ一致しているがC社(▲)とは全く異なっている.この原因は何であろうか.

4月号出題の答

著者: 小栗豊子

ページ範囲:P.528 - P.528

1.螢光色素を産生するP. aeruginosa(緑膿菌)以外のPseudomonas属
 P. fluorescens,P. putida

医療・保健・検査

救急車とその資器材

著者: 久野雅教

ページ範囲:P.529 - P.532

 東京消防庁の救急業務は,昭和11年(1936)1月20日,6台の救急車をもって開始したのが,その始まりである.はじめ,具体的な法律根拠もなく行われたが,昭和27年(1952)に東京都条例により位置づけられ,その後,産業経済の発展に伴い全国的に交通事故をはじめとする救急需要が増加したため,昭和38年(1963)に消防法に具体的法的根拠をもって行われるようになった.ちなみに東京における救急活動の概要をみると,救急業務が始められた昭和11年中は,出場件数1,022件,救護人員837人であったのに対し,昭和50年(1975)は,救急車149台により出場件数253,476件,救護人員232,532人と驚異的な激増を示している.このような急激な需要の増大に対応して,救急用資器材も漸次改善され,今日に至っている.また,医師法との関係などから制限された中にあって,救急活動に適合した新しい資器材も逐次導入され,救急活動の質的向上がはかられている(表1).

二級試験合格のコツ

細菌学

著者: 寺脇良郎 ,   谷口博一

ページ範囲:P.533 - P.536

 細菌学(寄生虫学を含む)の二級臨床病理技術士資格認定試験は総合病院の細菌検査室で日常業務をほぼ完全になしうる知識と技術を要求する試験である.従って筆記試験と実地試験を受けなければならない制度になっている.
 筆記試験は細菌及びウイルスなどに関する広範囲な知識が要求される.実地試験では規定時間内に与えられた材料で手際よく完了させることが必要である.この間に培地の作り方,染色,検体の取り扱い方,検査の手順,器具の操作及び無菌操作について判定される.特に無菌操作については技術的に完全であることが要求される.

実習日誌

小さなことにも真剣に悩む姿勢を

著者: 紺野長人

ページ範囲:P.539 - P.539

 私,右も左も分からない若輩者でございます.このほど病院実習に出まして,つくづくと,へたをするとねちねちと思うことがありまして,私自身の望むところなく一筆とらせていただくこととあいなりました.繰り返しますが,私,顔は良いのですが,頭が少々足りなくて,そのうえ若干自意識過剰の兆候がありまして,くだらないことをたぶん一生懸命書きますので,最後まで精を出し切って読みましょう.
 私たち第1班4名が最初に占領したのは,リハビリテーションセンターの検査室でした.血液と生化学に分かれて,5週間荒らし回りました.我,為になりしと思えしことはティータイムにおける諸先生方の,検査技師がいかにくだらない商売であるかから始まる雑談と,実習とは試行錯誤である機会が少なくなく,失敗の繰り返しが力となることが多かったということです.

ひとこと

学会出張

著者: 工藤肇 ,   柳川弘 ,   田中敏憲 ,   松沢東子

ページ範囲:P.540 - P.541

 毎年春には日本衛生検査学会,秋には日本臨床病理学会が開催され,数千人の会員が一堂に会し,研究成果を競い合っている.学会はもともと同好の士が集まり十分討議し合う場であったが,今や学会数は増え,演題数も多く発表時間が5〜6分となっている現在,学会のあり方について,種々論議されている.
 卒後教育の重要性についてよく言われているが,臨床検査の進歩は急速であり,卒業後も絶えず勉強を続けていかないと取り残されるし,またそういう努力を怠っては,臨床検査技師の地位の向上も望めない.そういう意味で,各県,各ブロック,全国の学会に発表することはもちろんであるが,若い技師の人たちも学会に参加し,発表の仕方,研究の仕方を学び取り,更には,忙しい毎日の業務の中で研究を続けている先輩の技師たちのいることを実感として味わってもらいたい.

検査の昔ばなし

インフルエンザウイルスの動物実験

著者: 福見秀雄

ページ範囲:P.542 - P.543

 インフルエンザウイルスは今では,サルの腎臓細胞や鶏胚細胞をはじめ種々の培養細胞で感染実験や感染中和実験を行うことができるし,また広く孵化鶏卵も使用されている.しかしかつてはフェレットとマウスとが主要な感染,感染免疫実験の道具であった.しかもフェレットは実験動物としてはかなり扱い難かったので,普通の場合には専らマウスが実験動物として使用されていた.
 従って当時インフルエンザワクチンの検定には,やはり免疫マウス血清のマウスによる中和実験が用いられていた.インフルエンザウイルスによるマウスの感染は経鼻ルートで行われる.マウスをエーテルで麻酔し,鼻からウイルス液を吸い込ませて肺に感染を起こさせるのである.インフルエンザワクチンの検定を私たちは最初この方法で実施していた.1950年前後のころである.

文豪と死

牧野 信一

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.544 - P.544

 処女作「爪」(大正8;1919)に,主人公といとこの道子の会話がある.

ニュース

第11回小島三郎記念技術賞4氏に

ページ範囲:P.550 - P.550

 "第11回小島三郎記念技術賞"贈呈式は五月晴れの5月8日,東京信濃町の野口英世記念会館で行われた.小島三郎記念会は元国立予防衛生研究所所長故小島三郎博士の業績をたたえるため1965年に設立され,春に臨床検査領域で優れた業績のあった方々に"小島三郎記念技術賞"が,また秋には公衆衛生関係で功績のあった方々に"小島三郎記念文化賞"が贈られており,今年で11回目を数える.
 "技術賞"は毎年3〜5名に贈られており,今年でちょうど50名の方が受賞されている.

国内文献紹介

医療従事者とHB抗原及びHB抗体

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.488 - P.488

 医療従事者は感染症に対する危険が多いことは当然予想されるが,B型肝炎が問題になっているのでHB抗原及び抗体について疫学的研究をした.
 直接の医療従事者613名と対照集団325名について調査し,HBs抗原,はIAHA法(immunoadherence hemagglutination test),HBs抗体はPHA法(passive hemagglutination test)により測定した.

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略語シリーズ

著者:

ページ範囲:P.500 - P.500

Invagi Invagination;ドイツ語.腸重積症.通常回盲部で回腸が結腸内にたくし込まれた状態となって起こる.乳幼児期で最も緊急を要する疾患.
IPPB intermittent positive pressure breathing;間歇的陽圧呼吸法.吸気の際,陽圧をかけて酸素あるいは薬剤を吸入させる方法.気管支喘息,肺性心,肺気腫などの治療に利用する.IPPV intermittent positive pressure ventilationとも言う.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.537 - P.538

281)結核;tuberculosis
 結核菌により起こる特殊な感染症.ヒトでは肺病変を起こすことが最も多いが,腎,骨,リンパ節,髄膜にも病変が生ずる.全体に播種する.病変は増殖性及び浸潤性変化が混在する.増殖性変化の特徴は,特殊な肉芽腫(結核腫;tubercle)の形成で,中心部は乾酪化と言われる凝固壊死に陥っていることが多い.浸出性変化は通常のものと違わないが,後にしばしば乾酪化に陥って特有な像を示す.現在あるいは過去に結核菌に感染したことを証明する方法にツベルクリン反応がある.

国家試験問題 解答と解説

ページ範囲:P.545 - P.549

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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