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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術4巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

SLE

著者: 本間光夫

ページ範囲:P.558 - P.564

 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus;SLE)のlupusとは,狼というラテン語由来の言葉で,顔の紅斑性潰瘍を指す.皮膚に食い込み,かみちぎり,破壊する病気を意味する.SLEはひとくちで言うと,極めて多彩な臨床症状を示す結合織疾患で,急性の時期は電撃性であるが,通常は寛解と再燃を波状的に繰り返し慢性に経過する病気ということになる.

技術講座 生化学

LDH

著者: 影平俊介 ,   堀田勝弘

ページ範囲:P.581 - P.586

 乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)は,次の反応を触媒する酵素で,NAD-NADHを補酵素としている.
 l-lactate:NAD oxidoreductase E.C. 1.1.1.27

血液

ヘモグロビン(血色素)測定

著者: 中嶋孝之

ページ範囲:P.587 - P.589

 ヘモグロビン(Hbと略;ヘモグロビンの総称)測定は,貧血や多血症のスクリーニング試験ではHt値と並び,欠かすことのできない重要な臨床検査の一つである.Hbは4個のヘムとグロブリン1分子から成る色素タンパク体であり,分子量はアミノ酸組成から計算すれば64,458で,その大部分は赤血球中に含まれている.哺乳類,鳥類,両棲類,爬虫類,魚類など血液が赤い色をしている生物は多くあるが,ヒトの場合は赤血球のタンパク質の97%がHbで占められている.正常人の血液中にはHbO2(オキシヘモグロビン)が大部分を占め一部Hb red(還元ヘモグロビン)として存在し,その他微量にHi(メトヘモグロビン)やHb CO(一酸化炭素ヘモグロビン)が存在する.病的にはHi,Hb COが増加したりS Hb(スルフヘモグロビン)が出現したりする.正常で大部分を占める型をHb Aと呼ぶ.

血清

溶血反応,補体結合反応

著者: 荒竹ミサ子 ,   川上逸子 ,   永沼みち子 ,   菊谷光

ページ範囲:P.590 - P.594

 補体結合反応(complement fixation test,以下CF反応と略す)においては,第1段階で対応する抗原と抗体が,抗原抗体複合体を作り,適当な条件のもとで補体を結合する.しかし,この現象が起きたか否かは肉眼的に観察することができないため,第2段階でこれにヒツジ,その他の動物の溶血素感作血球を加えて溶血反応を起こし,その溶血の程度を肉眼で判定する.これをCF反応という.
 遊離補体量または補体の結合量が,溶血反応の有無もしくはその程度として判定され,補体がすべて結合されて遊離補体がない場合は完全非溶血を示し,反応結果は陽性である.

細菌

酵母様真菌の分離と同定

著者: 小林種一

ページ範囲:P.595 - P.598

 臨床材料から検出される酵母様真菌は多いが,なかでもカンジダ(Candida)属,トルロプシス(Toruclopsis)属,クリプトコックス(Cryptococcus)属は,日常検査で最も多く取り扱われるので,ここではこれらを中心にその検査について述べる.

一般

尿検査・3—糖

著者: 長岡文

ページ範囲:P.599 - P.600

 糖は健康者の尿中にもわずかに排泄されるが,現在普通に用いられている検出法では反応を示さない程度である.糖尿とは多量の糖が尿中に排泄されたものを言い病的とする.普通この糖はブドウ糖である.
 尿中に糖が増加する原因は種々あるが,血液中の糖が上昇した場合(いわゆる糖尿病),腎臓の障害によるもの,その他脳震盪,脳出血,刺激などによる一過性のもの,また健康者でも糖の取り過ぎにより一時的に血糖が上昇した時などにも糖の出ることもある.血液中の糖は食餌を摂取することにより上昇し空腹時には低下するから,空腹時の尿と食後の尿とでは糖の排泄状態は異なる.時間的に採尿して検査に提出されるのはその状態を見るためであり,診療上,薬の効果や食事の量などの参考に用いられるものであるから,その一本一本の尿を大切に検査しなければならない.体の状態は時々刻々変化しているから再び同じ尿を得ることはできない.尿は採取しやすいという心安さからつい気持ちが安易になりやすいが,大切に扱うよう常に心がけていただきたい.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

血液抗凝固剤の理論と実際

著者: 黒川一郎

ページ範囲:P.565 - P.568

 血液検査に抗凝固剤は欠かせない役割を果たしている.種々の抗凝固剤の使用法,量,検体の時間経過に伴う計数値の変動,血液像の変化などを正しく予測することは非常に大切である.

小川培地

著者: 小川辰次

ページ範囲:P.569 - P.572

 編集の方から小川培地の栄養源について書くように依頼された.しかし,これでは範囲があまりに狭くなりすぎて書きにくいので,少し広げて,組成の意味について書くことにした.いきなり組成の意味について記しても分かりにくいと思うので,"結核菌発育の条件","小川培地の作り方"及び"結核菌の分離培養"について,簡単に触れた.この点は,大部分の方はご存じと思うが,復習のつもりで読んでいただきたい.組成の意味については解明されていない点もあるが,それはそれなりに記してご参考に供したい.

心電図記録の軌跡・5—距離・空間・時間的制約からの脱却

著者: 本橋均

ページ範囲:P.573 - P.576

 1つの現象を,遠く離れた場所で観測あるいは記録する方法をtelemetryと名づける.心電図の観察にもこの方法が導入され,今日では,宇宙飛行士の心電図を地上の基地で持続観測することができるようになった.
 有線あるいは無線搬送法を用いて心電図のtelemetryを行う方法は,医療の広域化,すなわち一つの研究室あるいは検査室の仕事の内容を,そこから遠く離れた地域の被検者にまで広げたという点で,大きな進歩といえよう.あるいは事故患者の実体を刻々と離れた場所の医師に知らせることによって,救急医療は新しい時代に入ったといえる.

読んでみませんか英文論文

細菌尿の検出のための新奇で便利な多項目検査システム

著者: 河合式子 ,   河合忠 ,   L.F. ,   R. ,   C.A.

ページ範囲:P.577 - P.578

 細菌尿の検出のための新奇で便利な多項目検査システムが記述され,かつ検討されている.そのシステムは,乾燥した3つの試薬部分を持った一本の小さなプラスチックの細長い一片から成っている.一つの部分は尿中の亜硝酸塩の存在を直ちに検出し,他の2つの部分は18〜24時間培養後尿中の全細菌数とグラム陰性菌数を定量する.定量の正確度は2種類の盲検で検討された.まず最初に,既知濃度の18種の細菌について比較し,次に無作為に集めた濃度未知の218の尿検体について定量白金耳塗抹法と新しいシステムの両方で定量した.菌発育試薬部分では全般的な相関関係は96%であった.亜硝酸塩部分では,細菌尿の84%を検出した.従来の細菌尿検出システムに対するこのシステムの利点について触れている.

知っておきたい検査機器

pHメーター

著者: 戸谷誠之

ページ範囲:P.579 - P.580

 pHメーターは水溶液のpHを測定するための最も優れた機器である.一般にはガラス電極を装備したものが多くみられる.このほかに簡易型としてアンチモン電極を用いたものもある.
 本項ではガラス電極を用いたpHメーターの原理と,その使用上の注意などについて述べる.

最近の検査技術

ガスクロマトグラフィーを用いた嫌気性菌の同定・2—ガスクロマトグラフィーの実際

著者: 上野一恵

ページ範囲:P.601 - P.606

 前号で述べたごとく,嫌気性菌の分類学的研究あるいは分離菌株の同定にガスクロマトグラフィーの導入は極めて有用であるばかりか,もはやガスクロなくしては嫌気性菌の正しい同定は困難となっている.
 よって嫌気性菌の同定に際してのガスクロの実際について述べる.なおガスクロの理論などの詳細については紙面の関係で割愛する.

医療・保健・検査

学校保健管理センター—特に早大学生相談センターについて

著者: 冨永一

ページ範囲:P.607 - P.610

 現在我が国では,大抵どこの大学にも,何らかの形の学生相談の施設が設けられている.
 こういう施設は戦前にはあまり聞かれなかったように思う.私どもが学んだ40年ばかり前の大学とは,もちろんかなりその様相が違っている.あのころは小人数のクラスにその担任がいるほかに,個人担任の教授がいて,学業成績や出席日数など,その他の素行に問題のある時にだけ注意を受け,身体の病気にかかると,時に学生診療所でみてもらったような記憶があるのみである.

おかしな検査データ

血小板減少症を疑わせた一症例

著者: 秋山淑子

ページ範囲:P.611 - P.612

 ザルコイドージスで入院した患者で,血小板減少症を疑わせる症例に遭遇した.

5月号出題の答

著者: 北村元仕

ページ範囲:P.612 - P.612

 チモール試薬のpHをpHメーターで測定してみたところ,3.4であった.規定のpHは7.55±0.03.ふだんこのpHから外れることがほとんどないので,pHのチェックを怠ったことがミスにつながった.しかし,どうしてpHが狂ったのか.
 試薬が間違っていたのである.チモール試薬は,バルビタールとそのナトリウム塩とチモールで作る.バルビタールの化学名はジエチルバルビツール酸である.バルビタールを請求する時に,勘違いをして"バルビツール酸(特級)"と書いてしまったのである.ちなみに,このような試薬でも同じような混濁を生ずるが,その値はチモール混濁試験とはほとんど関係のない低値になってしまっていた.すなわち患者血清では,プール血清の値よりも更に収拾のつかない誤差が発生していたのである.

マスターしよう基本操作

電顕標本の作り方・2—薄切から鏡検まで

著者: 鈴木克哉

ページ範囲:P.613 - P.616

 包埋された組織片は非常に小さく,いきなり超薄切切片を作っても,目的とする視野が得られるとは限らない.通常は薄切の前に0.5〜1.0μの準超薄切切片(semithin section)を作製し,メチレン青などで染色を施し,光顕的にオリエンテーションをつける.超ミクロトームには現在,外国製,国産の各種があり,大別して機械送り,熱膨張送りに分けられる.
 超ミクロトーム刀にはガラス及びダイヤモンドナイフがあり,簡単に入手できるガラスが多用されている.ダイヤモンドナイフは高価ではあるが,大事に取り扱えば数年使用でき,しかもガラスナイフに比較して簡単に良い切片を得られるので便利である.

実習日誌

社会復帰一本道

著者: 郷田隆

ページ範囲:P.619 - P.619

 入所して3日目は土曜日で,実習室の大掃除があった.
 床にクレンザー液がぶちまかれる.

ひとこと

検査室と研究

著者: 工藤肇 ,   柳川弘 ,   田中敏憲 ,   松沢東子

ページ範囲:P.620 - P.621

 ■第25回日本術生検査学会が5月に秋田市で開催されたが,一般演題317,シンポジウム68と多数の発表がなされた.一般演題数と各技師会員数とを比較してみると(分子は演題数,分母は317題を会員数に割り当てた時の演題数),東京94/27,神奈川37/16,大阪25/18,愛知25/15,栃木13/5,埼玉12/6,静岡13/10などで,大都会またはその周辺の都市で演題数が会員数に比較しても多い.
 毎日ルーチン検査で忙しい検査室の中から385題もの研究発表がなされ,独創的な優れた研究も数多くみられ,敬服している.忙しいから研究ができないなどと言われるのを耳にすることがあるが,忙しい中にも何か毎日の検査の中で疑問なり,不思議な現象が起きているはずであり,疑問を持つということが研究の始まりであると思う.第2に仲間同士,先輩,他の専門家の人たちと十分議論することが大切である.

検査の昔ばなし

本に書いてあること,ないこと

著者: 吉利和

ページ範囲:P.622 - P.623

 私が実際に臨床検査という仕事をやっていたのは,戦争直前,戦中,戦後のしばらくであったが,苦労という点では,いろいろの面のことがこったがえしていて,一緒に書くと何のことか分からなくなってしまう.その中で,現在と非常に違うこととして,臨床検査について書かれた本ということが挙げられてよかろうと思う.
 当時は,日本語で書かれたものはもちろんなかった.ドイツ語で書かれたものには中にいい本があったが,それは主として,尿,糞便,穿刺液,一般細菌検査などについてのものであった.その内容はかなり充実したものであって,こういう一般検査について書かれたものは,むしろ今日行われているものよりも親切なことが書いてあった.

文豪と死

三島由紀夫

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.624 - P.624

 三島由紀夫(1925〜70)は本名平岡公威,若くしてノーベル文学賞候補に擬せられたことがある.谷崎潤一郎,川端康成らとともに日本現代の作家として海外から注目されたひとりである.
 三島由紀夫は日本浪曼(ろうまん)派の流れをくみ,学習院の生徒時代既に「文芸文化」に「花ざかりの森」を連載してその才能をかわれた.「文芸文化」は太平洋戦争中も,日本浪曼派の準機関誌のように見られていた雑誌である.「文芸文化」の同人には学習院時代の国語の恩師清水文雄がいた.その推薦で「花ざかりの森」が旧制高校生の分際で,この雑誌に載ったのである.この作品は,戦争末期の紙のない時代に,当時としては豪華本である短編集「花ざかりの森」の巻頭を飾った.

あなたとわたしの検査室

共存物質の影響を調べるために

著者: 桑克彦 ,   T生

ページ範囲:P.630 - P.630

 質問 コレステロール酵素法やγ-GTP測定法(γグルタミル-p-ニトロアニリド使用)などにおける共存物質(溶血やビリルビンの存在,乳び血清など)の影響を調べたいのですが,ビリルビン添加血清列や溶血試料列のよい作り方を具体的にお教えください.

学会印象記

第25回日本衛生検査学会

著者: 天川勉

ページ範囲:P.631 - P.631

 第25回日本衛生検査学会は,去る5月22,23日の両日秋田市民会館を中心として,市内10会場にて開催された.学会前日に開かれた日本衛生検査技師会定期総会では,技師法改正以来の課題となっていた会名が,日本臨床・衛生検査技師会と変更されることが決定された.これによって名実ともに会の性格が表現され,心新たに学会当日の朝を迎えることができた.宿舎から会場に向かう堀端に学会特集号の雑誌を片手にした会員の姿が多く見られ,折から選挙戦に沸く秋田市内にひとときの学会ムードがあふれたと感じたのは,私だけではなかったろう.
 今回の学会は,招待講演,学会長講演のほか,シンポジウム11,分科会講演11,一般演題317,技師会全国研究班報告とディスカッション9部門と膨大なプログラムであり,ますます臨床検査の進歩発展がうかがえる.各会場とも満席に近い盛況で,若い技師諸君の真剣な眼差しが演者とスライドに注がれ一生懸命にメモを取る姿が見られた.特に昨年の横浜学会から始められた分科会講演では,各分野でのオーソリティを演者に迎えて最近の話題や問題点についての講演があり,これらを細大もらさず吸収しようとする雰囲気が感じられた.

国内文献紹介

ブロンズベービー

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.580 - P.580

 新生児黄疸の治療法として光線療法(phototherapy)が取り入れられてきて,核黄疸の発生予防に役立っている.
 ところがphototherapyを行うと,ビリルビンの光分解産物が血清中に蓄積して,新生児の外観がブロンズベービー(bronze baby)と言われるような特殊な外観を呈し,更にほかの臨床症状が出現してくる.

同居とHB抗原の感染

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.610 - P.610

 HB抗原に関する知識が普及するにつれて,その感染についての心配が高まりつつあり,施設内での感染が報告されている.
 寮の同室に起居生活をともにした159名についてHB抗原,HB抗体をIAHA法,ならびにPHA法で1年間追跡調査した.

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略語シリーズ

著者:

ページ範囲:P.586 - P.586

IUPAC International Union of Pure and Applied Chemistry;国際純粋応用化学連合.
IUPAP International Union of Pure and Applied Physics;国際純粋応用物理連合.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.617 - P.618

301)結節性紅斑;erythema nodosum
 発熱,関節痛,食思不振などの前駆症の後に発疹し,発疹とともに発熱,全身症状が顕著となる.両下腿伸側,まれに前腕伸側に対側性に碗豆大ないし鶏卵大の皮下結節を伴う,皮膚からわずかに膨隆する紅斑で,自発痛,圧痛がある.多くは数週で吸収される.原因として化膿菌の巣感染,アレルギー,結核などが考えられている.

国家試験問題 解答と解説

ページ範囲:P.625 - P.629

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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