血液
鉄染色
著者:
松本恵美子
,
染矢賢俊
,
藤崎恵
,
宮本望
,
川上裕之
,
柴尾あゆみ
,
永田雅博
,
橋本龍之
ページ範囲:P.1422 - P.1433
新しい知見
World Health Organization(WHO)が2008年に刊行した白血病・リンパ系腫瘍の分類(WHO2008)で,鉄芽球性貧血,鉄芽球性不応性貧血やWHO2008で骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍,分類不能型に暫定的に分類された,著明な血小板増加を伴い環状鉄芽球を有する不応性貧血などでは,環状鉄芽球が全赤芽球の15%以上証明されることが条件となり,骨髄鉄染色の実施,およびその結果解析は重要である.また,生体の鉄代謝制御機構の破綻による鉄過剰症である遺伝性ヘモクロマトーシスは,常染色体劣性遺伝することが知られており,近年,染色体第6番にあるHFE遺伝子の他,TFR2遺伝子(トランスフェリン受容体2),HAMP遺伝子(ヘプシジン),HJV遺伝子(ヘモジュベリン),FPN1遺伝子(フェロポルチン:鉄の細胞外輸送蛋白)といった責任遺伝子群が次々と明らかになった.いずれかの遺伝子に異常があるとヘプシジンの産生が低下し,腸管からの鉄の取り込みが増加してヘモクロマトーシスになる.鉄過剰症は,他に輸血によるものや,サラセミアなどの無効造血に伴うものがあり,βサラセミアでは輸血を受けていなくてもgrowth differentiation factor 15(GDF15:TGFβスーパーファミリーの液成因子)が無効造血の骨髄から大量に分泌され,これが肝臓でのヘプシジン産生を抑制して,鉄過剰症を引き起こしていることも明らかになり(Nature Med 13:1096-1101,2007),結果,鉄過剰症が起こり,これが心不全や肝硬変など重篤な合併症を引き起こしている.鉄芽球性不応性貧血でも血清GDF15が異常高値となっていることが示されている.