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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術41巻11号

2013年10月発行

雑誌目次

病気のはなし

骨肉腫

著者: 加谷光規

ページ範囲:P.1034 - P.1037

サマリー

骨肉腫は類骨・骨を産生する紡錘形細胞肉腫であり,10歳代の若年者の大腿骨遠位部や脛骨近位部といった膝関節近傍に好発する.抗癌剤を用いた術前・術後化学療法と腫瘍の広範切除が治療の原則であり,これによって80%程度の5年生存率が見込まれる.腫瘍切除後の骨欠損は腫瘍用人工関節や血管柄付き骨移植,骨延長術などで再建することが可能となり,患肢温存術が主流となっている.

技術講座 生理 シリーズ 血流を診る・1

超音波―カラードプラ法/パルスドプラ法/エコーPIV法

著者: 渡部美佳 ,   遠田栄一

ページ範囲:P.1038 - P.1042

新しい知見

心血管,脳血管疾患の病態把握には血流の評価が不可欠であり,その際,最も用いられている検査方法はエコー図法である.現在,連続波ドプラ法,パルスドプラ法,カラードプラ法の3種類があり,それぞれの特徴によって使い分けがされている.連続波ドプラ法やパルスドプラ法を用いると血流の速度や血流量を測定でき,疾患の重症度を評価できる.カラードプラ法を用いると異常血流を瞬時に検出でき,弁膜症の重症度を評価することも可能である.また,連続波ドプラ法やパルスドプラ法のガイドとしても用いられる.いずれの方法もドプラビーム方向の成分のみ計測するため,血流方向と超音波ビームのなす角度に依存する.近年,血流の流れの方向も評価できるエコーPIV(particle image velocimetry)法が開発され,期待されている.

自動聴性脳幹反応による新生児聴覚スクリーニング検査

著者: 山田ゆか ,   中山麻衣

ページ範囲:P.1044 - P.1048

新しい知見

 現在,新生児聴覚スクリーニングの検査機器には自動聴性脳幹反応(auditory brainstem response,ABR)と耳音響放射(otoacoustic emission,OAE)の2種類がある.自動ABRはOAEに比べて偽陽性率は低いものの検査時間が長く,機器自体も高価であった.しかし近年,技術の進歩に伴い自動ABRもOAEと変わらないほど短時間で検査が可能となった.

 2009年の日本耳鼻咽喉科学会の福祉医療・乳幼児委員会の報告によると,精密検査の紹介元のスクリーニング検査機関が使用している検査機器として,自動ABRが55.1%,OAEが31.7%であり,自動ABRが普及してきていることがわかる.

生化学

臨床検査のための純水の基礎知識

著者: 金子静知 ,   金沢旬宣

ページ範囲:P.1050 - P.1055

新しい知見

生化学自動分析装置などに供給される水に含まれる不純物が,検査結果に影響を及ぼすことが明らかになりつつある.電解質の測定系への混入や,不純物が流路系の動作を妨害して測定精度に影響を及ぼすような現象が報告されている.一方,電解質測定ではEDI(electric-deionization)方式の精製処理を従来のイオン交換の代わりに使用することで精度向上が確認できた事例などもある.EDIは水質が長期にわたって安定的に保たれるため,イオン交換樹脂の飽和による水質変動が測定に影響しないためと考えられる.

疾患と検査値の推移

前立腺癌の画像診断とPSA

著者: 上村博司 ,   大竹慎二 ,   佐野太 ,   窪田吉信

ページ範囲:P.1056 - P.1061

はじめに

 近年,わが国では前立腺癌患者の増加が著しく,2025年には男性固形癌で第1位になると予測されている.その理由として,過剰な脂肪摂取など食生活の欧米化や,高齢者の増加が挙げられる.また,前立腺特異抗原(prostate specific antigen,PSA)が前立腺癌の腫瘍マーカーとして検診などで普及してきたことも患者の増加に寄与している.

 一方,PSAスクリーニングが進んでいる米国では,PSA検査の年齢制限が発表された.その理由として,初期診断された症例の実に97%が早期癌であり,治療の必要がない潜在癌までも過度に治療している可能性があることと,さらに前立腺針生検による感染などの有害性などが考慮されている.その結果,55歳未満あるいは70歳以上の男性に強くPSA検査を勧める有用性は低いとの判断がされた.しかし,その考え方はわが国に当てはまるものではない.それは,筆者らの統計結果でもわかったことであるが,初期診断での70%が早期癌,30%が局所浸潤癌や転移癌と進行癌の割合が高く,米国とは大きな違いが存在するからである.つまり,日本の転移癌症例は米国の約10倍であり,日本においてはまだPSAスクリーニングの普及が進んでいないといえる.早期前立腺癌の治療には前立腺全摘術や放射線治療(密封小線源治療や強度変調放射線外照射,重粒子・陽子線外照射など)が適応とされている.米国では早期癌の割合が高いため,1990年以降の前立腺癌の死亡率は低下傾向を示している.したがって,いかに効率よく早期癌を診断するかが重要な点である.

 早期癌では,直腸診で硬結を触れないPSA高値の所見で,前立腺針生検で癌陽性の病理診断となる症例が増えている(臨床病期:cT1c).針生検は通常,12~16本程度を前立腺全体に定点的に刺入する系統的生検を行うが(図1),癌陽性率は40数%前後と高くない.その最大の理由は,癌病巣の同定が画像上難しいからである.生検時には経直腸的超音波検査を行いながら,生検針の位置を確認するのみであるが,筆者らは以前から,第二世代の超音波造影剤であるソナゾイド®を用いた造影超音波法(contrast enhanced ultrasound,CEUS)を行っており,癌と前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia,BPH)の鑑別,さらには標的生検の有用性を得ている1)

 FDG-PET(fluorodeoxyglucose-positron emission tomography)は尿路系腫瘍には適していないとされているが,CT画像との融合によるPET-CTでは前立腺癌病巣の同定が可能になってきた.本稿では,その画像解析と生検結果について述べる.近年,MRIが生検前の前立腺癌同定に使用されて癌陽性率を向上させているので,筆者らの使用結果も交えながら文献的考察を加える.

オピニオン

自覚が足りない職場におけるハラスメント

著者: 山崎家春

ページ範囲:P.1062 - P.1062

 2007年に興味深い調査結果が公表された.それは独立行政法人労働政策研究・研修機構が転職経験のある35歳未満の若い世代を対象に,複数回答形式で実施した「最初に転職を考えた際に悩んだ内容」を学歴別にまとめたものである(n=9,458)1).それによると,内容の内訳は,①仕事の内容(43.3%),②賃金が低い(41.6%),③職場の人間関係(セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントなどを含む:29.5%),④自分のキャリアや将来性(29.4%),⑤会社の安定性(24.0%),⑥労働時間が長い(21.9%),⑦仕事量が多い(19.2%),⑧休日がとれない(14.3%),⑨個人的な事情(結婚・育児・介護など)(7.7%)であった.

 自由を求めて転職する技師はいないと思われるが,昭和医療技術専門学校学校長の山藤賢先生が最近出版された著書2)で“自由と社会性”についてわかりやすく記述されておられる.以下に一部を抜粋する.

今月の表紙

肉腫様膀胱癌(膀胱癌肉腫)

著者: 寺畑信太郎

ページ範囲:P.1063 - P.1063

【症例の概要】

 症例は60歳代後半の女性.血尿を主訴として泌尿器科受診.既往歴では40歳代に子宮癌で摘出術と放射線治療を受けている.経尿道膀胱超音波検査で膀胱腫瘍が指摘され,尿細胞診では悪性腫瘍が疑われ,膀胱鏡による組織生検で肉腫が示唆されたため,膀胱摘出術が施行された.肉眼的には膀胱左壁に長径3.7cm大の亜有茎性腫瘍が認められた.組織学的には腫瘤の大半は多形性に富む紡錘状の腫瘍細胞が花むしろ状配列を示しながら束状に錯綜する像からなり,巨細胞の出現や炎症細胞浸潤を伴っていた.免疫染色ではケラチン,EMA(epithelial membrane antigen)など上皮性マーカーは陰性で,軟部腫瘍で認められる悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma,MFH)を思わせる像であった.浸潤は膀胱筋層内に及んでいた.腫瘤の表層のびらんをまぬがれた部分にsquamous cell carcinomaの像が認められ,最終的に肉腫様癌(いわゆる癌肉腫)と診断された.

ラボクイズ

超音波検査

著者: 田村悦哉

ページ範囲:P.1064 - P.1064

9月号の解答と解説

著者: 佐々木正義

ページ範囲:P.1065 - P.1065

臨床医からの質問に答える

MRSAが分離された場合,感染症とコロニゼーションをどのように鑑別しますか?

著者: 比嘉太 ,   田里大輔 ,   藤田次郎

ページ範囲:P.1066 - P.1069

はじめに

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA)は院内感染の最も重要な起炎菌であり,多くの医療施設がその対応に今なお難渋している.さらに,近年は市中におけるMRSA(community-associated MRSA,CA-MRSA)の分離頻度が増加している.特に,米国を中心にPVL(Panton-Valentine leukocidine)と呼ばれる毒素を有するCA-MRSAが市中感染の起炎菌として広がる傾向にあり,新たな脅威となっている.

 一方では,近年いくつかの新規抗MRSA薬(リネゾリド,ダプトマイシン)が上市され,従来用いられてきたバンコマイシン,テイコプラニン,アルベカシンに加えてMRSA感染症治療における有力な武器を得たのは確かである.しかし,抗MRSA薬も決して万能ではなく,例としてバンコマイシンに対するMRSAの耐性化あるいは感受性低下MIC creepが報告されている.

 MRSA感染症の診断および治療の適正化には,臨床細菌検査部門の役割も大きい.本稿では,臨床検体からMRSAが分離された場合の臨床的判断を概説する.

臨床検査のピットフォール

微量採血管における採血量および抗凝固剤の差異による測定値への影響

著者: 齊藤憲祐 ,   稲葉亨

ページ範囲:P.1070 - P.1071

はじめに

 臨床検査における各種測定結果の変動は当該患者の病態変化を反映するだけではなく,検体採取や検体処理などのpre-analytical phase(分析前段階)においてさまざまな人為的要因の影響を受けることが知られている1)

 本稿では,このような分析前要因のうち,採血量や抗凝固剤の差異による測定値への影響について,血球数算定(complete blood count,CBC)および凝固検査を例に挙げて概説する.

Laboratory Practice 〈微生物〉

ブルーリ潰瘍(M. ulcerans感染症)を疑った場合の細菌検査

著者: 石井則久 ,   四津里英 ,   中永和枝

ページ範囲:P.1072 - P.1076

ブルーリ潰瘍(Buruli ulcer)とは

 ブルーリ潰瘍(Buruli ulcer)とは,抗酸菌のMycobacterium(M.) ulcerans,またはその近縁のM. ulcerans subsp. shinshuenseが原因で発症する,潰瘍などの皮膚病変を主症状とする感染症である1,2)

 世界保健機関(World Health Organization,WHO)では,ブルーリ潰瘍を「顧みられない熱帯病」(neglected tropical diseases,NTD)の1つとして,診断・治療・予防・研究などに精力的な活動を行っている3).新規患者はガーナ共和国などの西アフリカを中心に年間約5,000人以上いる.日本でも1980~2012年末までに36例が登録されており,近年,患者数が増加している.

肺炎マイコプラズマ感染症の診断法の比較

著者: 河合泰宏 ,   尾内一信

ページ範囲:P.1078 - P.1081

はじめに

 呼吸器感染症は今日において最も重要で,かつ頻度の高い疾患の1つである.肺炎患者への対応では,迅速かつ正確な起因病原体の決定が重要である.しかし,実際の臨床現場では,診断に難渋する症例,起因病原体不明症例が多数みられる.特に一般細菌培養検査で陽性とならない,レジオネラ,肺炎マイコプラズマ,肺炎クラミジアなどのいわゆる非定型肺炎の診断は今日においても難しい.

 市中において発症する呼吸器感染症の原因微生物の1つである肺炎マイコプラズマは細胞壁をもたない,長さ約1~2μmの細菌である.従来,肺炎マイコプラズマ感染症は数年おきに流行を繰り返し,「オリンピック肺炎」などの呼称をされることもあったが,近年ではその流行パターンは崩れ,2000年以降ではほぼ2年おきに小流行を繰り返していたが,2011年半ばから突如,全国的に今までにない大きな流行を認め現在に至っている.また,わが国では2000年ごろから小児科領域を中心にマクロライド(macrolides,MLs)耐性肺炎マイコプラズマ感染症の報告があって以降,その分離率は上昇の一方をたどっている1).流行の拡大に伴って,MLs耐性肺炎マイコプラズマによる成人肺炎例も増加している.このようなMLs耐性株による報告例は当初は日本のみであったが,最近では世界的にMLs耐性株の存在が報告されている.いずれも小児や若年成人での報告が主である.

 マイコプラズマの診断法は大きく分けると,①PPLO(pleuro-pneumonia-like organism)培地を用いたマイコプラズマの分離を行う培養法,②寒冷凝集素法(cold hemagglutinin,CHA),酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA),微粒子凝集反応〔PA(particle agglutination)法,HDPA(high density composite particle agglutination)法〕,補体結合反応(complement fixation,CF)法などの免疫血清学的診断,③血清または血漿を用いたイムノカード®「マイコプラズマ抗体キット」(immuno card mycoplasma,IC)法,④DNAレベルで迅速に検索するPCR(polymerase chain reaction)法〔real-time PCR法,LAMP(loop-mediated isothermal amplification)法,従来型のPCR法〕,の4つがある.現在臨床で応用されているのは,②の血清免疫診断であるPA法またはCF法と,③のマイコプラズマIgM(immunoglobulin M)を検出する迅速性に優れたIC法が大半である.また,④のLAMP法が保険収載されている.

 本稿では,肺炎マイコプラズマの検査法の進展について,培養法,血清診断法,抗原検出法,遺伝子診断法などを中心に概説する2)

〈免疫・生化学〉

even check法によるリアルタイム精度管理

著者: 畑中徳子

ページ範囲:P.1082 - P.1086

はじめに

 診察前検査が導入されリアルタイム精度管理の必要性が高まっている.生化学検査においては,一定時間または一定検体数ごとに管理血清を測定し管理しているが,リアルタイムというわけではない.また,CEA(carcinoembryonic antigen)などの免疫学的測定法では1測定当たりのコストが高いことから,生化学検査のように反復して管理血清を測定することは少なく,リアルタイムはなおさら難しい.

 本稿で取り上げるeven check法(real-time Δ value distribution even check法)は,患者検体の前回値との差の分布をリアルタイムにモニタリングし,分析中に起こりうる測定状態の変化をいち早く捉えようする方法である.even check法は分析中の患者測定値を用いるという特徴から,リアルタイム精度管理および免疫学的測定法における試薬lot間差の管理の2点に応用することが可能である.以下に,この2点について述べる.

検査値を読むトレーニング 信州大学R-CPC・22

外傷にて2病日に入院し9病日から発熱を認めた40代男性

著者: 本田孝行 ,   菅野光俊

ページ範囲:P.1088 - P.1095

信州大学のreversed clinicopathological conference(R-CPC)では,なるべく多くの検査を行った症例を選び,経時的検査値で解析している.しかし,決して多くの検査を行うことを推奨しているわけではない.陰性データも陽性データと同じように重要と考え,できる限り多くのルーチン検査を行った症例を選択してR-CPCで検討している.ある病態において,検査値が陰性になることを知って初めて必要のない検査と認識できる.その結果,必要な検査を最小限に行える医療従事者になれると考えている.また,検査値は基準値内でも動くことに大きな意味があり,動いている検査値を読むことによってより詳細な病態が解明できる.時系列検査結果を読むことができれば,異常値の出るメカニズムを理解できたことになり,入院時のみのワンポイントの検査値であっても容易に理解できるようになる.

ワンポイントアドバイス

臨床的に重要な緑膿菌以外のグルコース非発酵性グラム陰性桿菌

著者: 引田芳恵 ,   島川宏一

ページ範囲:P.1096 - P.1097

はじめに

 グルコース非発酵性グラム陰性桿菌(non-fermenting gram-negative rod,NF-GNR)は,グルコースを嫌気的に分解しないグラム陰性桿菌の総称である.酸化的に糖類を分解するか,もしくは糖類を全く分解しない菌種がこれに含まれる.通常,自然界に広く分布する環境常在菌が多く,土壌や水系環境で検出されるが,ヒトの皮膚や粘膜にも存在する.Pseudomonas spp.,Achromobacter spp.,Burkholderia spp.,Acinetobacter spp.,Stenotrophomonas spp.,Chryseobacterium spp.などが臨床検体からも検出されることが多く,日和見・院内感染の原因菌として問題となっている.

けんさ質問箱

臨床検査技師が内視鏡室でできる仕事の範囲を教えてください.

著者: 小沼利光

ページ範囲:P.1098 - P.1099

Q 臨床検査技師が内視鏡室でできる仕事の範囲を教えてください.

例えば,内視鏡下での生検やポリペクトミーなどは臨床検査技師が行ってもよいのでしょうか?


A 2005年5月に衛生検査技師法が廃止され,臨床検査技師に関する法律は「臨床検査技師等に関する法律」(臨技法)に一本化されました.これによって申請による検査技師の免許は廃止になり,全員が国家試験を受験し,その水準が国家資格として担保されることになりました.この臨床検査技師法には臨床検査技師が可能な医療行為が挙げられています.

トピックス

新型うつ病

著者: 高塩理

ページ範囲:P.1100 - P.1102

はじめに

 新型うつ病は,精神医学用語ではない.現代の世相を反映させ話題にすることに長けているマスメディアにより作り出された,「決して新しくない」「学術的根拠の裏付けがない」「イメージありき」のうつ症候群である.この影響は計り知れず,うつ病に対する誤解の広がりを危惧する専門家たちも少なくない.

 本稿では,症例を提示しつつ,うつ病について概説する.また,「新型うつ病」の診断的位置付け,生物進化的考察,そして対策について述べることとする.

クロピドグレル抵抗性

著者: 坂田飛鳥 ,   大森司

ページ範囲:P.1102 - P.1105

はじめに

 動脈硬化症を背景としたアテローム血栓症発症には,血小板活性化が重要な役割を果たしている.このためアテローム血栓症の予防・治療には主として抗血小板薬が用いられる.さまざまな抗血小板薬が動脈血栓症の予防・治療に使用されるなか,クロピドグレルなどのチクロピジン系抗血小板薬の使用が重要になるのは主に冠動脈疾患である.経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention,PCI),特に冠動脈ステント留置後にはアスピリンとチエノピリジン系薬剤による2剤抗血小板薬併用がステント内血栓症を予防するために必須である.

 近年,薬剤溶出性ステントの登場でステント内再狭窄のリスクが低減されたが,一方で,遅発性のステント内血栓予防のために抗血小板薬併用療法を行う期間は延長傾向にある.クロピドグレルなどの抗血小板薬はワルファリンなどと異なり,全ての患者に一定量を投与することが一般的となっているが,抗血小板薬にも他の薬剤と同様に,その効果に個人差が生じることが予想される.クロピドグレル抵抗性とは,クロピドグレル内服後の抗血小板作用が減弱している現象・患者群を指す.

 本稿では,クロピドグレル抵抗性の機序ならびに臨床予後への影響と,その対策について概説する.

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『臨床検査』10月号のお知らせ

ページ範囲:P.1076 - P.1076

医学書院ウェブサイトをご利用ください

ページ範囲:P.1106 - P.1106

あとがき・次号予告・ラボクイズ正解者

著者: 舘田一博

ページ範囲:P.1108 - P.1108

あとがき

 「検査と技術」10月号,いかがだったでしょうか.

 “病気のはなし”では,骨肉腫について札幌医科大学の加谷先生がわかりやすく解説してくださいました.本症は10歳代の若年者に多くみられ,関連する遺伝子異常も明らかになってきているようです.“技術講座(生理)”では,札幌東豊病院の山田先生が自動聴性脳幹反応による新生児聴覚スクリーニング検査について解説してくださいました.新生児の両側聴覚障害は2,000人に1人,片側聴覚障害は1,000人に1人で,これが新生児の言語発達障害の重要な原因になっているとのことです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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