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文献詳細

雑誌文献

検査と技術42巻2号

2014年02月発行

文献概要

Laboratory Practice 〈病理〉

ホルムアルデヒドを含まない固定液“アルテフィックス®”の有用性と問題点

著者: 榊原健夫1 滝野寿1 稲垣宏1

所属機関: 1名古屋市立大学大学院医学研究科臨床病態病理学

ページ範囲:P.162 - P.168

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はじめに

 人体や動物の組織固定のために一般的に用いられるホルマリンは,ホルムアルデヒドの水溶液である.ホルムアルデヒドは強い刺激臭のある揮発性有機化合物であり,慢性曝露によってシックハウス症候群や化学物質過敏症を引き起こすことが知られている1,2).ホルムアルデヒドは発癌とも関連しており,2004年,世界保健機関(World Health Organization, WHO)の国際がん研究機関によって,グループ1(最も癌との因果関係が深い群)の発癌物質に指定された3).わが国でも,2008年に特定化学物質障害予防法において第2類物質(癌などの慢性・遅発性障害を引き起こす物質)に分類され,ホルムアルデヒドの使用と環境基準が厳しく規定されている4).病理関連領域でも,ホルムアルデヒドの慢性曝露低減のための施設改修や,ホルムアルデヒドを含まない代替固定液への変更などの対策が迫られている.

 アルテフィックス®は,ファルマ社から発売されているホルムアルデヒドを含まない固定液である.筆者らは,組織標本作製におけるアルテフィックス®と10%中性緩衝ホルマリン(buffered formalin,BF)との比較検討を行った.本稿では,この検討に基づいて,アルテフィックス®の有用性や問題点について述べる.

参考文献

1)工藤雄一朗,進士永子,相澤好治:ホルムアルデヒドの健康影響.産業医ジャーナル 25:104-108,2002
2)岩澤聡子,野見山哲生,大前和幸:ホルムアルデヒドと発がん.産業医ジャーナル 28:84-87,2005
3)World Health Organization International Agency For Research On Cancer : IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans VOLUME 88. IARC, Lyon, 2006
4)厚生労働省:特定化学物質障害予防規則等の一部を改正する省令(平成19年厚生労働省令第155号).2007(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei17/)
5)榊原健夫,滝野寿,藤吉行雄,他:非ホルマリン系組織固定液の有用性に関する検討(第2報).日病理会誌 100:441,2011
6)藤田浩司,黒田雅彦:組織固定法の理論と実際 ホルマリン水と中性緩衝ホルマリン液の固定原理.Med Technol 40:586-590,2012
7)Takahashi M, Okamiya H, Furukawa F, et al : Effects of glyoxal and methylglyoxal administration on gastric carcinogenesis in Wistar rats after initiation with N-methyl-N’-nitro-N-nitrosoguanidine. Carcinogenesis 10:1925-1927,1989
8)曽根美智子,南原しずえ,佐々木政臣,他:分子病理学的検査のためのグリオキサール固定の評価.医学検査 59:689-693,2010
9)Cotham WE, Metz TO, Ferguson PL, et al : Proteomic analysis of arginine adducts on glyoxal-modified ribonuclease. Mol Cell Proteomics 3:1145-1153,2004
10)Umlas J, Tulecke M : The effects of glyoxal fixation on the histological evaluation of breast specimens. Hum Pathol 35:1058-1062,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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