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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術42巻7号

2014年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

リンチ症候群―(遺伝性非ポリポーシス大腸癌:HNPCC)

著者: 熊谷二朗

ページ範囲:P.648 - P.653

Point

●リンチ(Lynch)症候群は,DNAミスマッチ修復遺伝子の胚細胞性変異あるいは不活性化によって,全身のさまざまな臓器の腫瘍,特に大腸癌,胃癌,子宮体癌,卵巣癌などを発生する家族性腫瘍症候群である.なかでも大腸癌は最も頻度が高く,このため,以前は疾患名として“遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)”とも呼ばれてきた.

●リンチ症候群患者は生涯において高率に大腸癌を発生し,また初回発生診断時の年齢も一般の散発性大腸癌に比べて10歳以上若い.

●リンチ症候群の遺伝形式は常染色体性優性遺伝であり,その原因となるDNAミスマッチ修復遺伝子としては,現在までにhMLH1,hMSH2,hPMS2,hMSH6の4つが知られている.

●患者からの遺伝子を用いたマイクロサテライト不安定性(MSI)検査はリンチ症候群の診断において重要であり,特に,その確定のためには必須である.

●リンチ症候群の大腸癌に対する治療法は散発性大腸癌に準じるが,患者は治療後も大腸を含む多臓器の腫瘍の多発が予想されるので,その早期発見のためのサーベイランスと,このような遺伝的素因を保有することに対する遺伝カウンセリングなどを行うことが必要である.

技術講座 血液

凝固因子インヒビターの測定

著者: 竹尾映美

ページ範囲:P.654 - P.660

Point

●凝固因子インヒビターの測定法としてベセスダ(Bethesda)法が広く用いられているが,この方法は血漿中のpH上昇による凝固因子活性の自然失活が原因で偽陽性を生じることが知られている.

●国際血栓止血学会/学術標準化委員会(ISTH/SSC)では,ベセスダ法を改良したナイメーヘン(Nijmegen)法を推奨しているが,この方法は煩雑であり,現状では,前処理に要する時間やコストの面から,いまだベセスダ法が広く用いられている.

●血漿中のpH上昇による凝固因子活性の失活は,血漿を緩衝化し,pH上昇を抑制することで最小限に抑えることができる.

病理

改良ガリアス・ブラーク染色法の手技とその意義

著者: 羽賀千恵 ,   秋山治彦

ページ範囲:P.662 - P.669

Point

●改良ガリアス・ブラーク(G-B)法は,ピック(Pick)球以外のタウ異常蓄積や多系統萎縮症(MSA)のα-シヌクレイン異常蓄積を選択的に染色することができる.

●免疫組織化学よりもホルマリン固定の影響を受けにくく,染色コストも低いことから,神経変性疾患の病理組織診断において極めて有用である.

●用いる試薬と染色のステップ数は多いが,反応液の多くは作り置きができるので,慣れてしまえば難しい染色法ではない.

生理

乳房における造影超音波の果たす役割

著者: 位藤俊一

ページ範囲:P.670 - P.675

Point

●造影超音波はCT,MRIなどの造影剤に過敏な被験者や腎機能障害を合併した患者にも安全に行うことが可能であり,時間分解能,空間分解能に優れる簡便な検査法である.

●良悪性の鑑別に有用であり,針生検や穿刺吸引組織生検などインターベンション手技の必要性の有無を評価できるため,不必要なインターベンションが回避可能である.

●乳房領域の撮像後に肝臓を撮像することにより,精度の高い肝転移診断も可能である.

トピックス

HbA1c測定における遠心操作の影響

著者: 宮下徹夫

ページ範囲:P.640 - P.643

はじめに

 ヘモグロビンA1c(hemoglobin A1c:HbA1c)は糖尿病関連マーカーとして重要な検査項目である.生体内でHbA1cは非酵素的な2段階の反応によって生成される.まず,ヘモグロビンのβ鎖N末端のアミノ基とグルコースのアルデヒド基とがシッフ(Schiff)塩基結合して,不安定型HbA1cとも呼ばれるアルジミン体が短時間のうちに形成される.次いで,長い時間経過のなかでアルジミン体はアマドリ転位によって安定なケトアミン体のHbA1cとなる.このようにして生成されたHbA1cは過去1~3カ月間の平均血糖値を反映するので,糖尿病の診断や血糖コントロールの指標として広く利用されている.

 また,最近では,世界中で利用されているNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値を用いる国際標準化も実施され,海外のデータと互換性が得られるようになった.しかし,日常検査で正しいHbA1c測定値を得るためには,血液を試料として用いるが故の注意点も多い.本稿では,それらのうち,血液を遠心してHbA1c測定に用いる場合の注意点について述べる.

13価肺炎球菌ワクチン

著者: 中野貴司

ページ範囲:P.644 - P.647

小児と肺炎球菌感染症

 肺炎球菌Streptococcus pneumoniaeは,気道粘膜の常在菌でもあり,特に小児では保菌率が高い.保育園に入園した乳児の調査では,集団生活を始めて数カ月もすると,ほとんどの児が肺炎球菌を気道に保菌するようになる1)

 肺炎球菌は,中耳炎や副鼻腔炎など気道粘膜感染症の主要な起因菌であるが,何らかのきっかけで体内深部にまで侵入し,重篤な疾患を発症する.これらは,侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease:IPD)と総称される.IPDとは,脳脊髄液や血液など,元来は無菌である部位から肺炎球菌が分離される重症感染症であり,肺炎球菌による髄膜炎,菌血症,血液培養陽性の肺炎などが含まれる.

過去問deセルフチェック!

問題 一般検査

ページ範囲:P.661 - P.661

過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解説と解答をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.711 - P.711

 髄液検査は一般検査において最も緊急を有する検査であり,測定方法や健常者の基準値を把握しておくことは重要である.

 細胞の算定にはフックス・ローゼンタール(Fuchs-Rosenthal))計算盤を用いるため,全区画の容量は16mm2×0.2mm=3.2μLとなり,サムソン(Samson)染色液による髄液の希釈を考慮すると細胞数はx/3μLとなる.問題1の全区画内の細胞数は30個/3μLであり,1μL中の細胞数は10個となる.以降の問題は,髄液の健常成人の基準値(色調-無色透明,細胞数-5/μL,総蛋白-10~40mg/dL,糖-40~70mg/dL,クロール-血中の1.2倍120~125mEq/L)を覚えていれば解答できる.問題2で正しいのは,髄液の糖(グルコース)は血中より低値であり,髄液糖は血中の2/3(60~80分)ということになる.

連載 小児の臨床検査・4

小児のウイルス感染症検査

著者: 鹿間芳明

ページ範囲:P.676 - P.680

はじめに

 人間は生まれてから成人に達するまでの間にさまざまな病原体に感染し,それぞれの病原体に対する特異免疫を獲得していく.したがって,小児期は感染症,とりわけウイルス感染症の罹患頻度が高い.小児の発熱や発疹などの鑑別において,また,小児病棟の院内感染対策において,ウイルス関連検査の重要性は成人に比べてはるかに高い.また,同じウイルスであっても,周産期,乳幼児期,学童期と,年齢層によって検査の意義が異なってくる場合がある.

 小児科の臨床上,重要なウイルスは数多くあり,限られた紙面で個々の詳細を述べることは難しいが,本稿ではなるべく多くのウイルスを取り上げ,各ウイルスに関して基本的,かつ臨床上重要と思われる項目に絞って述べる.

今月の表紙

バセドウ病

著者: 廣川満良 ,   鈴木彩菜 ,   武内麻衣

ページ範囲:P.681 - P.681

【症例の概要】

 10年前にバセドウ病と診断され,抗甲状腺薬(チアマゾール)による治療を受けていた.超音波検査では,甲状腺はびまん性に腫大し,峡部厚は18mmで,推定重量は100.6cm3であった.内部の性状はやや粗雑で,エコーレベルはやや低かった.ドプラ法では甲状腺実質の血流シグナルが豊富で,甲状腺血流定量は17.2%であった.生化学検査では,遊離サイロキシン(FT4):4.48(0.7~1.6)ng/dL,遊離トリヨードサイロニン(FT3):≧30.00(1.7~3.7)pg/mL,甲状腺刺激ホルモン(TSH):<0.003(0.3~5.0)μIU/mL,抗甲状腺刺激ホルモン受容体抗体(TRAb):32.5(0.0~1.9)IU/L,抗サイログロブリン抗体(TgAb):≦28.0(0~39.9)U/mL,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb):≧600.0(0~27.9)IU/mLであった.甲状腺腫が大きいため,甲状腺全摘術が行われた.

疾患と検査値の推移

血管炎とMPO-ANCA

著者: 原まさ子

ページ範囲:P.682 - P.685

Point

●血管炎は動脈から静脈までの血管壁に炎症が起こる病気であり,侵される血管の大きさで分類される.

●抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)の1つであり,ミエロペルオキシダーゼ(MPO)に対する自己抗体である.

●MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎と好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の疾患標識抗体であり,疾患活動性とともに変動する.

基礎から学ぼう一般検査・6

便潜血検査

著者: 岡田茂治

ページ範囲:P.686 - P.692

はじめに

 便潜血検査とは,化学法,免疫法を含めて使用されている便中ヘモグロビン(hemoglobin:Hb)検査の呼称である.しかし,現在,化学法は実施されておらず,抗ヒトヘモグロビンA0(hemoglobin A0:HbA0)抗体を用いた免疫学的便Hb検査法(以下,便Hb検査)が実施されている.

 便Hb検査は臨床診療,人間ドック(個人健診),がん検診(対策型検診)と広く利用されている検査法であるが,対象や目的によって使用するカットオフ値が違うことや,他の臨床検査項目のような標準化が進んでいないことなどを認識していただきたい.今回,日常検査やコントロールサーベイで注意するべき点と今後の課題を中心にまとめた1)

Q&A 読者質問箱

心エコーで肺がかぶって見にくい人は,どのような体位・探触子の位置でアプローチすると見やすくなるのでしょうか?

著者: 上村明好

ページ範囲:P.693 - P.695

Q 心エコーで肺がかぶって見にくい人は,どのような体位・探触子の位置でアプローチすると見やすくなるのでしょうか?

A 心臓の前面には,超音波ビームの透過性を妨げる肺や骨があるので,心エコーによるアプローチ部位も決まってきます.代表的なアプローチ部位には,傍胸骨左縁,心尖部,心窩部(剣状突起下),胸骨上窩,傍胸骨右縁が用いられますが(図1),肺や骨の影響を避けるためには,被検者の体位,探触子の位置,呼吸の調整などの工夫も必要不可欠となります.

臨床医からの質問に答える

マカロニサインとは何ですか?

著者: 山本義徳 ,   久保田義則

ページ範囲:P.696 - P.699

はじめに

 “マカロニサイン”とは,頸動脈エコーでみられる高安動脈炎(Takayasu’s arteritis)に特徴的な所見を示す用語として使われている.総頸動脈壁が全周性に肥厚し,内腔が狭小化した画像で(図1,2),その名前のとおり,サラダに入っているマカロニのような画像から名付けられた.

 1991年に,当時,大阪大学医学部第1内科に所属していた前田宏明らが,『Ultrasound in Medicine & Biology』に「Carotid lesions detected by B-mode ultrasonography in Takayasu’s arteritis : “macaroni sign” as an indicator of the disease」1)として初めて報告した.

ラボクイズ

超音波検査

著者: 西川徹

ページ範囲:P.700 - P.700

6月号の解答と解説

著者: 大楠清文

ページ範囲:P.701 - P.701

ワンポイントアドバイス

椎骨動脈や内頸動脈をきれいに描出する方法

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.702 - P.703

はじめに

 頸動脈エコー検査において,椎骨動脈や内頸動脈を広範囲に観察することは,脳血流障害の原因検索において重要です.内頸動脈では,末梢側の口径が安定する部分を描出できればNASCET(North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial)による狭窄率計測値はより正確性が増します.椎骨動脈や内頸動脈をより広範囲に描出するコツを解説します.

オピニオン

風疹ワクチンの積極的接種を

著者: 齋藤昭彦

ページ範囲:P.704 - P.705

最近の風疹の流行

 2012年の夏から流行し始めた風疹は,2013年5月に患者数のピークを迎え,2013年末にようやく終息傾向を迎えた.この流行によって14,700名を超える症例数が報告され,44名の先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の患者が報告された(2014年3月現在).風疹は,不顕性感染(感染しても症状が出現しないこと)をきたすこともある.また,CRSも出生直後ではなく,生後一定の期間を経て症状が出てくることもあるので,患者の実数とCRS患者数は,その報告を大きく上回っていることが想定される.なお,今回の流行における発症者の約3/4が男性であり,特に,20~40歳代の男性がその多数を占めた.

 国内での風疹の流行は,2003~2004年と2011年にも相次いで報告された.なぜ,日本国内で繰り返し,風疹は流行するのであろうか.

Laboratory Practice 〈生化学〉

生化学自動分析装置における供給水の水質劣化が及ぼす分析への影響

著者: 末吉茂雄

ページ範囲:P.706 - P.710

はじめに

 生化学検査における分析精度には,分析装置の性能の向上や診断薬の改良など目を見張るものがある.一方で,従来の分析精度では見えていなかった誤差も,その要因の解明が可能となってきた.このような状況下において,分析装置,診断薬以外にも分析に起因する1つとして,分析装置に供給される純水の水質の影響が見えてきた.各分析装置で若干の構造の違いはあるにしろ,純水は,試料・試薬分注,攪拌,洗浄機構および恒温槽など,さまざまな部分に供給されている.

 一般的な分析装置に用いられる純水の精製は,逆浸透膜(reverse osmosis:RO)-イオン交換方式の純水装置が多く導入されている.ROによって不純物を除去したRO水を,さらに,イオン交換樹脂で脱イオンして純水としている.この方式は,イオン交換樹脂の飽和が近づくにつれて導電率が上昇してしまい,水質劣化が生じるため,イオン交換樹脂の定期的なメンテナンスが欠かせない.メンテナンスを怠り,分析装置メーカーが規定する導電率を上回る水質規準で稼動した場合,分析結果への影響が取りざたされている.

 本稿では,筆者が飽和状態に近づけたイオン交換樹脂を用いることにより純水の水質を劣化させ,検査データに及ぼす影響について検討したことを中心に述べる.このことは,災害時のように高純度な純水が確保できない場合の分析にもかかわってくる.災害後の電力,ガス,水道といったライフライン復旧,特に水道の復旧には長い時間を要するため,水不足によって検査室の機能が大きく損なわれる事態を招くこともある1).やむを得ず分析装置へ劣化した水質の水を供給することを迫られた場合も,水質が分析装置に及ぼす影響をあらかじめ把握しておくことで,ある程度のリスク管理が可能となる.

〈病理〉

乳腺腫瘍の分子マーカーと遺伝子検索

著者: 増田しのぶ

ページ範囲:P.712 - P.716

はじめに

 乳腺腫瘍の発癌および治療の標的分子探索に関する研究については個別的要素が強い.本稿においては,日常診療に必要な知識として,乳腺腫瘍の分子マーカーと遺伝子検索の実際的な内容を中心に解説する.

関節液細胞診

著者: 米田操 ,   金山和樹 ,   白石泰三

ページ範囲:P.717 - P.722

はじめに

 正常関節液は無色・淡黄色で,粘性に富んだ液体である.ごく少量が関節内に存在し,潤滑油の役割を果たしている.通常は採取できないため,細胞診検査の対象にはならない.一方,病的関節液は,関節リウマチ,変形性膝関節症,痛風,偽痛風,感染性関節炎などのリウマチ性疾患によるもので,正常より多い関節液が貯留することから,細胞診検体として検査対象となる.関節液細胞診の目的の多くはリウマチ性疾患の細胞診断であり,悪性細胞を検索することはほとんどない.

 本稿では,病的関節液であるリウマチ性疾患の関節液細胞診について疾患に特徴的な細胞所見を解説する.

書評

―エコーでコラボ―主治医と検査者の相互理解を深める心エコー奥義

著者: 竹中克

ページ範囲:P.723 - P.723

依頼理由別の心エコーと所見別の対応がわかる初学者向け教科書

 執筆陣全員が北海道民の心エコーの教科書が誕生しました.さて,「北海道民だけで執筆した教科書」にどんな意味があるのでしょうか? 執筆陣の中心となるわが友山田聡先生は信州出身ですが,監修の三神先生は「かつて日本の各地から移住した人々が築いてきたコラボレーションの伝統」「北の豊穣な大地」とその意義を説明されています.私自身は,本書は北海道民の「気概」を示すものと理解して,それではその内容は全国区で通用するものか否かを拝読吟味させていただきました.

 心エコー初学者対象の292ページの教科書です.最初に総論として心エコーの基本がコンパクトにまとめられています.初学者対象でありながら,経食道心エコー法まで解説されており,また「心機能と血行動態評価の基本的な考え方」は短いながらも読み応えのある力作です.次に各論「心エコーの活かしかた」が配置されていますが,この部分が本書の特徴となります.従来の教科書は,疾患別に組まれているものがほとんどですが,日常臨床で患者さんが疾患別に心エコー検査室に来られることはありません(経過観察などを除く).初診患者さんが心エコー室に来られる際の情報は「主治医からの依頼理由と臨床所見」です.私自身も「依頼理由別の心エコー」を単行本で著したり,雑誌の企画で取り上げたりしてきましたが,本書は最新の「依頼理由別の心エコー」教科書であります.さらに,心エコー室で依頼内容とは無関係の重要所見が偶然得られることもあります.これ,すなわち「得られた心エコー所見別の対応」にも十分なページが割かれています.前者が,主治医から検査者への投げ掛けで,後者が検査者から主治医への投げ掛けとなり,この二つが本書のタイトル「エコーでコラボ」「主治医と検査者の相互理解」の内容そのものであります.それでは,「心エコーの奥義」とは何でしょうか? 「人生とは死ぬことと見つけたり」のような至言・箴言がどこかに隠されているのかと思い読み進みましたが,各論14から32に盛り込まれた症例提示を通じた「主治医と検査者のやりとり(コラボ)」の数々が本書にちりばめられた奥義であることを納得しました.例えば「残留多重反射」「悪性リンパ腫」「左脚ブロック」のような内容が漏れて(省かれて)はいますが,それは単行本としての紙数制限のために致し方ないことと思います.「主治医と検査者のやりとり」という目で各論を読み進むと,特に初学者にとって心エコーの醍醐味・楽しさが味わえる素晴らしい読み物であることがわかります.各項における緊張感はやはり「道民の気概」を示していると言わざるを得ず,道民以外の日本人にも推薦したい心エコー法の教科書であります.

レジデントのための血液透析患者マネジメント 第2版

著者: 柳田素子

ページ範囲:P.724 - P.724

かゆいところに手が届く非常に優れた入門書

 わが国の血液透析患者さんは31万人を越えました.併存する疾患の治療,検査や手術のためにさまざまな診療科に入院しておられるため,どの診療科の医師であっても,血液透析と無縁であることはできません.その一方で,血液透析患者さんでは体液管理や血液管理,薬剤の使い方などさまざまな点が異なり,分野外の先生方にとっては敷居が高い分野となっています.

 本書は,若手医師や分野外の先生方が血液透析の基本を初めて理解する上で非常に優れた入門書となっています.本書は通読することが前提となっていますが,一人の筆者が一冊を通じて著述しておられるために各章間で重複がなく,あっという間に通読できます.まず第1章で基礎知識を身につけ,第2章では血液透析導入,第3章では維持透析の管理,第4章では急性腎障害と少しずつ知識を深めていき,第5章では特殊な血液浄化についても知識が得られるようになっています.

INFORMATION

第36回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.653 - P.653

 この試験は「ME機器・システムの安全管理を中心とした医用生体工学に関する知識をもち,適切な指導のもとで,それを実際に医療に応用しうる資質」を検定するものです.

 合格者は日本生体医工学会より合格証明証が交付され,「第2種ME技術者」の呼称が使用できます.また,第1種ME技術実力検定試験の受験資格が得られます.

主  催:一般社団法人 日本生体医工学会

試験日時:2014年9月7日(日)9:50~16:30

申込締切:2014年7月11日(金)消印有効

試験会場:札幌,仙台,東京,名古屋,大阪,岡山,福岡

第30回「緒方富雄賞」候補者推薦のお願い

ページ範囲:P.675 - P.675

 昭和60年に日本臨床検査同学院設立十周年記念行事の一環として「緒方富雄賞」を設定,過去に81名の受賞者を顕賞することができました.つきましては,本年第30回本賞授与にあたり,細則をご参照の上,本賞該当者のご推薦を賜りたくお願い申し上げます.

 なお,推薦手続きに必要な書類は事務局までご請求ください.候補者推薦締め切りは7月23日必着とさせていただきます.

日本臨床検査同学院 理事長 水口國雄

資格審査・顕彰委員 小松京子

平成26年度医療機器安全基礎講習会 第36回ME技術講習会

ページ範囲:P.692 - P.692

内 容:安全の基礎とトラブル事例~電気編・医療ガス編~,人工呼吸器と呼吸モニタのトラブル事例と対策,輸液ポンプのトラブル事例と対策,リスクマネジメントの実際,医療機器安全管理の実際(医療機器安全管理責任者の説明を含む)

2014年開催日程・会場:

仙台会場:7月 5日(土) 仙台国際センター

東京A会場:7月12日(土) 大田区産業プラザPiO

大阪会場:7月26日(土) 大阪国際会議場

東京B会場:7月27日(日) 大田区産業プラザPiO

名古屋会場:8月10日(日) ミッドランドホール(名古屋駅前)

※詳細はホームページ URL:http://www.jaame.or.jpをご高覧ください.

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『臨床検査』7月号のお知らせ

ページ範囲:P.660 - P.660

「ラボクイズ」解答/読者アンケート

ページ範囲:P.725 - P.725

投稿規定

ページ範囲:P.726 - P.727

あとがき・次号予告

著者: 手島伸一

ページ範囲:P.728 - P.728

あとがき

 病理検査で用いられる最も大切な色素であるヘマトキシリンがヘマトキシリン・カンペチアナというマメ科の木の心材から精製されていることをご存じでしょうか.細胞診に携わっておられる諸氏は,ヘマトキシリンの葉が日本臨床細胞学会のロゴマークに使われていることをご存じのことと思われます.それでも,ヘマトキシリンの花を実際にご覧になられたかたはおそらくおられないことでしょう.そのヘマトキシリンの花が現在(4月末),静岡県浜松市のはままつフラワーパークで咲いています.折しも浜名湖花博が開催されており,3,000種もの植物が描く美しい風景のなかで,ヘマトキシリンも小さな黄色の可憐な花をいっぱい咲かせていました.しかし残念ながら,本誌を皆さまがお手にする頃には花は散っていることでしょう.

 本号も役に立つ内容が満載ですが,個人的には「技術講座 病理」“改良ガリアス・ブラーク染色法の手技とその意義”に最も興味を覚えました.近年の病理診断学では,免疫組織化学や分子生物学的手法をかかすことができなくなってきています.しかしガリアス・ブラーク(G-B)法は,ヘマトキシリン染色と同様の一般染色です.G-B法によって,ピック球以外のタウ異常蓄積や多系統萎縮症のα-シヌクレイン異常蓄積を選択的に染色することができ,神経変性疾患の病理組織診断に極めて有用とのことです.免疫組織化学などの目覚ましい発展のなかで,G-B法のような一般染色がいまなお病理診断に重要な手法として発展していることに感銘すら覚えます.読者の皆さまにもG-B法やヘマトキシリン染色などの大切さを再認識していただければ,一編集子として幸甚に存じます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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