あとがき・次号予告
著者:
大楠清文
ページ範囲:P.1212 - P.1212
本号がお手元に届くころには,今年も残すところ約2カ月となっているかと思います.おそらく,今年の新語・流行語大賞の候補が,世相を反映した表現とニュアンスで,いくつも挙がっているころではないでしょうか.この原稿を執筆している9月にこれらの候補を予測することは難しいので,私の専門領域の現状を鑑み,「今年話題となった感染症トップ5」を挙げてみます.
①「ジカ熱」:ジカウイルスを蚊が媒介する感染症で,オリンピックが開催されたリオデジャネイロをはじめ中南米での流行だけでなく,シンガポール,タイ,ベトナムなどの東南アジアでの感染も拡大しています.②「麻しん」:8月に幕張メッセで開催された外国人アーティストの大規模コンサートに参加した男性が麻しんを発症して,二次感染による感染拡大が危惧されています.日本の主要な玄関口である関西国際空港での集団感染も発生しました.③「E型肝炎」:空前の食ブームのなか,シカやイノシシなど野生の肉(ジビエ)や内臓を,生あるいは加熱が不十分な状態で食べる機会が増え,過去最多の患者数となっています.本号にわかりやすく解説されていますのでご一読ください.④「結核」:世界での死亡者は150万人を超え,エイズによる死亡者を上回っています.日本では今年,警察署,医療施設,学習塾や学校などさまざまな施設での集団感染が報道されました.⑤「梅毒」:近年,猛威を振るっている性感染症で,年間千人以下であった患者数が,昨年約2,700人,今年は4,000人を超える勢いです.若い女性の罹患者が多いことから,母児感染による先天梅毒の増加も憂慮されています.