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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術44巻5号

2016年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

気管支喘息

著者: 松倉聡

ページ範囲:P.360 - P.365

Point

●気管支喘息の病因は単一ではなく,Ⅰ型アレルギーが関与するとは限らない.

●病態の基本は,慢性好酸球性気道炎症と,それに伴う気道過敏性亢進である.

●診断は特徴的な臨床症状と他の疾患の鑑別,検査所見を組み合わせ,総合的に判断する.

●臨床検査は,好酸球性気道炎症を確認するもの,気道狭窄の状態と可逆性,気道過敏性を確認するものが主体となる.画像診断や一般血液検査,細菌学的検査は,疾患の鑑別のために必要となる.

技術講座 一般

尿の外観から着目すべき尿定性検査

著者: 太田惣

ページ範囲:P.376 - P.380

Point

●尿検査は,尿の外観を観察することから始まります.

●尿の外観は,尿量や飲食物,各種病態,投与薬剤などの生理学的背景を反映するため,詳細に観察することが大切です.

●着色尿や強度の血尿などでは,尿定性検査(尿試験紙法)の妨げになり,誤判定の原因にもなるので注意が必要です.

●尿の外観および性状は時間経過により変化するため,尿検査は採尿後,速やかに実施する必要があります.

生化学

アディポサイトカイン(adipocytokine)

著者: 宮崎滋

ページ範囲:P.382 - P.388

Point

●アディポサイトカインとは,脂肪細胞が産生・分泌している生理活性物質であり,生体の種々の機能を制御している.

●脂肪細胞が肥大すると,アディポサイトカインの産生・分泌異常が起こりやすく,特に内臓脂肪に顕著に生じる.

●肥満症,メタボリックシンドロームに合併する糖尿病や高血圧,脂質異常症などは,内臓脂肪過剰蓄積によるアディポサイトカインの異常により生じる.

●体重の減少は脂肪細胞を縮小させ,アディポサイトカイン産生・分泌異常を是正するため,合併疾患が一挙に改善する.

生理

—step up編—血管エコーによる穿刺部合併症の鑑別法

著者: 三木俊

ページ範囲:P.390 - P.397

Point

●現在の超音波装置は汎用機でも解像度は良好で,高周波リニアプローブ(7〜12MHz)を用いれば,穿刺部合併症の診断は可能である.

●超音波診断装置にはさまざまなプリセットがあるが,頸動脈(carotid artery)のプリセットを基本に,微調整を行う.

●超音波装置のカラードプラは,瘤内の弱い血流を見るときは10cm/s程度に設定,狭窄や乱流(モザイク血流)の際には流速レンジを徐々に上げ,ピンポイントの狭窄やシャント部位を診断する.しかし,フレームレートは10以上に保つ必要がある.

FOCUS

敗血症の起炎菌の迅速検出・同定

著者: 仁井見英樹

ページ範囲:P.366 - P.369

はじめに

 近年,癌治療や臓器移植などの医療の高度化に伴い,重篤な敗血症のリスクが増えている.適切な抗菌薬治療を行い,重篤な患者を救命するためには,患者検体中の起炎菌を可能な限り迅速に検出・同定することが重要である.しかし,現在の一般的な生化学的性状検査法では,検体採取から起炎菌の同定まで通常2〜3日を要する.その結果,広域スペクトルの抗菌薬使用による多剤耐性菌の出現や,抗菌薬の選択ミスにより重篤患者が致死的となる危険性など,感染症早期の治療においてはいまだ重大なリスクを抱えている.われわれはこの問題の解決のために,検体採取後3時間以内に不特定の起炎菌同定を可能とする新たな方法を考案し,誰でも簡便に実施できる検査システムとして構築した.

新規前立腺癌バイオマーカーの探索

著者: 寺田直樹 ,   小川修

ページ範囲:P.370 - P.373

はじめに

 近年,前立腺癌患者の数は激増しており,2015年のわが国における癌統計予測では,前立腺癌罹患者数は男性の全癌腫のなかで第1位となった1).前立腺癌患者数がこれだけ増加している原因として,高齢化や食生活の欧米化などが挙げられるが,最も影響を及ぼしているのは血中前立腺特異抗原(prostate specific antigen:PSA)検査の普及であろう.本稿では,まずPSA検査の有用性と問題点について言及し,それらの問題点を解決するための新規バイオマーカー探索について,筆者らが現在行っている手法を中心に紹介する.

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患

著者: 中村直哉

ページ範囲:P.374 - P.375

はじめに

 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorder:MTX-LPD)とは,MTXを投与中の関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)患者に発生する“リンパ球が過剰に増生した状態”である.MTXは葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させる酵素DHFR(dihydrofolate reductase)の働きを阻止する葉酸代謝拮抗剤で,抗癌剤もしくは抗リウマチ薬として用いられる一方,副作用としてMTX-LPD,間質性肺炎,肝障害,骨髄抑制などがある.本稿ではMTX-LPDの臨床像と病理像について述べる.

過去問deセルフチェック!

心電図検査

ページ範囲:P.381 - P.381

過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.437 - P.437

 問題の心電図波形を見ると,

1.基線に細動波(f波)がみられず洞調律であることから心房細動は否定できる.

疾患と検査値の推移

原発性アルドステロン症(PA)

著者: 若山綾子 ,   臼倉幹哉

ページ範囲:P.398 - P.405

Point

●低K血症を伴わない原発性アルドステロン症(PA)症例も存在するため,血清K値が正常でもPAは除外できない.

●スクリーニングには,血漿アルドステロン濃度/血漿レニン活性比(ARR)が有用である.

●手術適応を判断する場合は,病型・局在診断のため副腎静脈サンプリング(AVS)が必須である.

●PA術後に高血圧が治癒しない症例や,腎機能が悪化する症例があるため,術前の臓器障害の評価と,術後の慎重な経過観察が必要である.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・5

伝統と革新を生きる・1

著者: 市川染五郎 ,   山藤賢

ページ範囲:P.406 - P.413

 山藤(さんどう):藤間,今日は公演後で忙しいところをありがとう.これ,好物をお土産で持ってきました.

 染五郎:おー,麻布十番の浪花屋のタイ焼きじゃない.小さな頃からの大好物です.取りあえず,一緒に食べよう.

忘れられない症例から学ぶ超音波検査・9

メネトリエ病(Ménétrier's disease)

著者: 川地俊明

ページ範囲:P.414 - P.418

はじめに

 日常の検査のなかで,これまでに経験したことがない珍しい形態の病変に遭遇することが時にあります.その一つとして,メネトリエ(Ménétrier's)病があります.胃の粘膜壁の著明な肥厚(巨大皺襞;しわ,ヒダ)と低蛋白血症を特徴とした病気です.主な症状として,初期では主に上腹部痛や嘔吐,あるいは下痢などの消化器症状が現れ,進行すると低蛋白血症のために貧血やむくみがみられ,疲れやすくなります1)

やなさん。・17

Welcome to Kobe, OZzy!!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.436 - P.436

「お前と1カ月後に勝負だ!」初対面のトルコ人に決闘を宣言された柳田.そう,病理部にトルコからの研修医がやって来た.歓迎会で「遠藤,今川,柳田はキックボクシングをしている」と話すと,3人の中から柳田を選んだOZzy…….まぁ,「目つきの鋭い漢・遠藤」と「重量級・今川」よりは,確実に「超ライト級おチビ・柳田」を相手に選ぶのは納得だが,プライドってものはないのか!? 確実に勝とうとしていたな.しかし同僚が,「エミイはミドルキックが得意だ」と話すと,「オゥ……」と言ったきりで,その後半年以上たつが,OZzyからの決闘申し込みはない.

OZzyはとにかく,「モデルみたい〜」と皆がざわつくほどのルックスだ.初めてOZzyが来たとき,同僚(男性)が,「モデルさんが来ている.かっこいい.ほれちゃう〜」と言って腰が砕けていた.そんなモデル風OZzyは,やたらとおチビ柳田に対抗心を燃やす.「やなさん。2」のバンジージャンプ記事を見せたとき,「俺も飛べるぜ!Yeah!」と言ってきたので,即,遊園地へ連れて行った.まずは絶叫系マシンに立て続けに乗ったら,OZzyは「待ってくれ.休ませてくれよ」と弱腰.「時間がもったいないから乗るよ!」と,とにかく乗れるだけ乗り,直後にバンジージャンプへ.「OZzy,飛ぶんだろ?」と聞くと「オオゥ……」とOZzy.引くに引けないんだろうなぁと眺めていると「キャァ!」と甲高い声で絶叫しながら飛び,その後,放心状態だった.柳田がいないとき,同僚に,「俺はもう二度とバンジージャンプしないからな!」と言っていたそうだ……ぷぷっ.

オピニオン

微生物検査における検体採取の重要性

著者: 山本剛

ページ範囲:P.420 - P.421

適切な検体採取の重要性

 微生物検査にかかわらず,臨床検査を行ううえで不適切な検体採取が行われた場合は,“見かけ上の異常値”として結果報告される.“見かけの異常値”とは,異常値があるのに正常値になり,正常値なのに異常値として捉えられる臨床検査特有のエラー事象のことであるが,血液検査では,採血手技による溶血や抗凝固剤の選択,保存条件の不良などが原因となる.微生物検査では,不適切な検体採取により,雑菌が多く混入したり菌量が少なく培養で検出されないなどの理由で,起炎菌の判断がしにくくなることが想定される.その結果,不必要な抗菌薬の投与が行われたり,広域抗菌薬を使用する頻度が高くなったりし,本当は不必要だが過剰な抗菌薬投与を行うことも想定され,その後の診療方針に大きな影響を与えてしまうことになる.不適切な検体採取が行われれば,どれだけ有能な微生物検査技師をそろえても,どれだけ高度な検査機器を設置しても,正しい検査結果を導くことは困難である.

臨床医からの質問に答える

病理標本(パラフィンブロックやプレパラート)はどれくらいの期間保存されていて,それを使用することができますか? 

著者: 田島秀昭 ,   當銘良也 ,   稲留征典 ,   小野栄夫

ページ範囲:P.422 - P.425

はじめに

 コンパニオン診断や分子生物学的手法がますます発達する今日では,過去の病理標本を使用する頻度が高くなり,病理標本の適切かつ長期保存が望まれている.しかしながら,パラフィンブロックやプレパラートなどの病理標本の保存義務や保存期間などを明確に定めた法的規定はなく,保存方法および保存期間は各施設の裁量に委ねられているのが現状である.したがって,「パラフィンブロックやプレパラートは何年間保存すべきか?」と問われた際には,回答に困ってしまうことも少なくない.

 本稿では病理標本の保存義務や保存期間に関する現状と,保存された病理標本の有用性について,文献的考察を併せて記載する.

臨床検査のピットフォール

体腔液細胞診塗抹標本・セルブロック作製におけるピットフォール

著者: 濱川真治

ページ範囲:P.426 - P.429

体腔液細胞診の目的と標本作製の重要性

 体腔液細胞診の主たる目的は,炎症所見の把握や癌性漿膜症の原因となる悪性細胞の検出であり,他の検査に先立って癌の存在をいち早く発見することができる検査法の一つである.また,細胞形態学的特徴や免疫組織化学染色などの補助的検査を追加することにより,組織型や原発巣推定,個別化医療などの治療法の選択にも貢献する.

 体腔液細胞診の材料として胸水や腹水,心囊液が用いられるが,一般的に遠心分離法による細胞沈渣を回収し,赤血球上層部(いわゆるバフィーコート部 図1黄色矢印↔)の有核細胞層からサンプリングを行い,引きガラス法などによる塗抹標本を作製する.悪性細胞は分化度や組織型により,集塊は球状,乳頭状,ミラーボール状,中空状など,孤立性出現細胞は細胞質の空胞化,大小不同性を認めるなど,さまざまな形態変化として現れる.一般的に,孤在性の大型細胞や大型細胞集塊は塗抹の引き終わりに集簇し,出現する傾向がある.また,目的とする細胞がごく少数の場合は良悪の判断が困難となり,さらに,目的の細胞が出現していない場合はサンプリングエラーの可能性も否定できず,診断可能な変性の少ない細胞をいかに多く標本に載せるかなど,標本作製の精度向上に努めなければならない.

Q&A 読者質問箱

東南アジア帰りの発熱患者を診たときの感染症について

著者: 西條政幸

ページ範囲:P.430 - P.431

Q 東南アジア帰りの発熱患者を診たときの感染症について

A 東南アジア帰りの発熱患者を診たときの感染症について解説します.まず,東南アジアでも,日本で流行している感染症の多くは流行していることを理解することが重要です.また,その流行状況も,日本におけるそれらとあまり異なることはありません.つまり,東南アジアから帰国した方が発熱などの感染症症状を呈した場合であっても,日本で発生する発熱患者に対して通常行う病原診断を実施することが重要です.東南アジア帰りの患者の感染症は,日本在住の患者とほとんど同じといっていいでしょう.

ワンポイントアドバイス

神経伝導検査で,きれいな波形を記録するためには?

著者: 片山雅史

ページ範囲:P.432 - P.433

はじめに

 神経生理検査の分野で,比較的試行回数が多いのが脳波計(electro encephalogram:EEG)と神経伝導検査(nerve conduction study:NCS)である.EEGは1950年代頃から商品化され,その歴史は長く,検査法もほぼ確立されている.一方,NCSは,昨今,一般の病院における検査室でも日常業務として施行されるようになったが,検査法が定着しているとはいえない状態である.本稿では,NCSを迅速かつ正確に測定する工夫などについて紹介する.

今月の表紙

流行性髄膜炎

著者: 小栗豊子 ,   吉藤歩

ページ範囲:P.434 - P.435

Point!

Q.髄膜炎菌の保菌者検査は? ⇒ サイヤー・マーチン培地を用いた咽頭粘液の培養

Q.抗原検出が可能な髄膜炎の起炎菌は? ⇒ 肺炎球菌,Hib,髄膜炎菌,GBS,大腸菌

Q.細菌性髄膜炎の髄液所見は? ⇒ 髄液の混濁,ブドウ糖の低下,蛋白量・細胞数増加

Q.Waterhouse-Friderichsen症候群とは? ⇒ ショック状態で出血斑が多発,DIC

Q.髄膜刺激症状とは? ⇒ 頭痛,項部硬直,ケルニッヒ徴候,ブルジンスキー徴候など

ラボクイズ

生化学検査

著者: 福崎裕子

ページ範囲:P.438 - P.438

4月号の解答と解説

著者: 角坂照貴

ページ範囲:P.439 - P.439

INFORMATION

第22回第1種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.365 - P.365

日本臨床検査同学院の講習会・勉強会

ページ範囲:P.369 - P.369

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第62回臨床検査技師国家試験—解答速報

著者: 本誌編集委員会

ページ範囲:P.440 - P.440

『臨床検査』5月号のお知らせ

ページ範囲:P.419 - P.419

「ラボクイズ」解答/読者アンケート

ページ範囲:P.441 - P.441

あとがき・次号予告

著者: 種村正

ページ範囲:P.444 - P.444

あとがき

 「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の季節ですね.爽やかな春風を浴び,満開の桜を愛でたら学会シーズンの到来です.学会の楽しみは何といっても仲間たちと再会し,美味しい郷土料理を食べ,美味しい地酒を飲むことでしょう.もちろん,建前は学会に参加して情報収集をしたり,研究成果を発表したりして意見交換するのが目的です(笑)

 本誌をご覧の皆さまは「忘れられない症例から学ぶ超音波検査」というシリーズをお読みいただいているでしょうか.このシリーズはエキスパートの先生方に想い出の症例を挙げていただき,忘れられないポイントからさまざまな領域の疾患を学ぼうという企画です.本号ではメネトリエ病という珍しい疾患が取り上げられています.医療の現場に長いこと携わっていると,忘れられない患者さんがきっと誰にもいると思います.筆者の場合はファロー四徴症で手術をした患者さんがそうでした.検査中のふとした会話が切っ掛けで,その後親友となり,家族ぐるみのお付き合いをしました.二人でいろんな所に行き,いろんなことを経験しましたが,最期は筆者が勤めている病院に入院して亡くなりました.今でも彼のことを何度も思いだして,彼のように他人に優しくしようと心掛けています.このシリーズには各先生方の深い想いが込められていますので,今後もご期待ください.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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