連載 やなさん。・21
叩き,唄い,舞う!!
著者:
柳田絵美衣
ページ範囲:P.784 - P.784
「はっっ!!」静かなライブハウスに柳田の掛け声と,弦と太鼓に撥を叩きつける音が響き渡った〔“やなさん。・20”で紹介したが,神戸大学病院病理部主催のセミナーの情報交換会で,柳田はバンド(ベース担当)と三味線演奏をすることとなった〕.同じ弦楽器とはいえ,弾き方や構えが全く異なる.和楽器は奥が深い.生まれて初めて民謡を唄わされるのは,バンドでボーカル担当だった遠藤.「声の出し方が全然違う……難し過ぎる」と.曲は“黒田節”.そして,曲に合わせて,演舞のごとく居合を披露するは山田.「居合は舞とは違うからなぁ.曲に合わせることができるかなぁ」と不安げだった.練習時間はたったの2時間.個人で自己練習をし,いざ合同練習の日…….「やなさんの三味線に合わせることができるから,自由に弾いてくれていいよ」と遠藤と山田.おいおいおい,何だその自信は!? 恐る恐る,掛け声とともに三味線の弦を叩く柳田.すると2人は,柳田の三味線のスピードに乗せて唄い,舞う.遅れても,速めても,柳田の三味線に乗せ,三味線がミスって音が飛んでも,それをカバーするかのように唄い,舞う.す,すごい…….こんなに,この年上メンズが頼りになると実感したことがあっただろうか……いや,ない!(おっと,失礼).
本番当日,はかまを身に着け,楽屋でウロウロ…….3人とも人前で披露するのは初めて.緊張状態MAXで舞台へ上がり,柳田の掛け声と三味線が始まり,唄が音に乗り,音と唄に居合刀が舞った.三味線の音色に合わせ,山田が正座し頭を下げ,礼で締めくくった.「ひろしぃ〜! きゃ〜! ひろしぃ〜!」と,観客席の最前列を陣取った当病理部の女医から,強烈な黄色い声が,山田寛氏へ送られた.おいおい,その声援……ちゃんと責任取りなさいよ……と思いながら,柳田と遠藤は後ろから山田の背中を見守った.何はともあれ,成功して安心した.成功したのも,2人の年上メンズのおかげだと感謝しています……2人ともThank youねぇ!(軽っ).