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バイオマーカーとしてのエクソソームの将来性
著者:
増川陽大
,
中山ハウリー亜紀
,
飯島史朗
,
濱田悦子
,
前川真人
ページ範囲:P.100 - P.102
はじめに
1983年に,羊の網赤血球から分泌された直径40〜100nmの小胞がエクソソームと名づけられたことが始まりとされ,そこからエクソソーム研究が発展してきた.今日では,ほとんどの細胞から,血液中や尿中へエクソソームが分泌されることが明らかにされている.エクソソームの生成は,エンドサイトーシスにより細胞膜が内側に陥入することで始まる.このとき,細胞膜上に存在する物質も陥入し,細胞内に形成された前期エンドソームが,細胞成分を内側に含みながら腔内膜小胞を多数含む後期エンドソーム(多胞体)を形成する.多胞体の一部は,リソソームと融合する一方で,細胞膜と融合することによって,細胞内成分を含んだ膜小胞が細胞外へと分泌される(図1,2).この小胞がエクソソームと呼ばれている.
エクソソームの表面には,テトラスパニンであるCD9,CD63,CD81などが存在し,エクソソーム表面マーカーとして知られている.またエクソソーム内には,起源の細胞成分が含まれており,さまざまな蛋白質や核酸が内在することが明らかとなっている.このように,外側は起源の細胞の一部をもち,内側には細胞質にある物質を含むことで,細胞構造の位置関係を保ち,さまざまな情報をもつ複合体であることがエクソソームの特徴である.近年,内包する物質のなかでRNA(ribonucleic acid)の転写産物であるmRNA(messenger RNA)やmiRNA(micro RNA)が発見されたことにより,細胞の老廃物と思われていたエクソソームが,癌の転移や増悪の補助因子となると考えられ,注目されている1).