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雑誌目次

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検査と技術45巻9号

2017年09月発行

雑誌目次

増刊号 循環器病院の技師が教える メディカルスタッフのための心電図教室

はじめに

著者: 葉山恵津子

ページ範囲:P.900 - P.900

 心電図検査は不整脈や循環器疾患の診断には欠かせない検査法です.そして,検査室以外の医療現場でも記録されたり,モニター心電図として利用されたりして,実に多くの医療従事者(メディカルスタッフ)がかかわる検査法でもあります.心電図を読めるようになりたい! とれるようになりたい! もっと興味を持ちたい! というのはごく自然な想いです.私たち臨床検査技師がその手助けをできないかとずっと考えてきました.

 そこで,心臓血管研究所付属病院では,「新人ナースを対象にした心電図研修の一貫性のあるプログラム作り」と題して,臨床検査室が主体となった心電図の勉強会を2012年4月から月1回ペースで開始しました.看護師は「救急搬送された患者の最初の心電図をとる」,「手術室や心臓カテーテル室での治療を終えた患者の心電図を定期的にとる」,「ペースメーカ植え込み直後に病棟で継続してモニター心電図をとる」など,検査室では普段見ることができない心電図を多くとっています.心電図をとる場面が違うと心電図の見方も異なり,想像していなかった質問を受けることが多くありました.患者に直接接する,そんな看護師の視点から見た心電図は他のメディカルスタッフにとっても大切な視点で,細かいところにとらわれてはいけないということをあらためて学びました.

Ⅰ 心電図との向き合い方

著者: 葉山恵津子 ,   千頭和山奈

ページ範囲:P.901 - P.917

 “正常心電図”を知らなければ,“異常心電図”を理解することはできません.しかし,心電図における“正常”の範囲はとても広く,見極めが難しい心電図がたくさんあります.心電図の正常と異常を理解するには,それぞれの波形が何を表しているのかを知ることが大切です.

 本章では,まず心臓の解剖と機能を知り,心臓を立体的に考えてみます.そして,心臓の位置や大きさ,心筋の厚さが変化することで,心電図がどう変化するのかを理解しましょう.

Ⅱ 心電図電極の付け方を知る

著者: 中嶋美保子

ページ範囲:P.919 - P.932

 心電図には,心臓の情報がたくさんつまっています.ところが,心電図電極を誤って装着していると,正確な情報を得ることができません.本章では,電極の正しい付け方と,できるだけきれいな心電図を記録するためのポイントを紹介します.

 そして,診療に役立つ心電図をとることをめざしましょう.

Ⅲ 心電図検査にはどのようなものがあるのかを知る

著者: 佐藤幸苗 ,   伊藤ひろみ

ページ範囲:P.933 - P.940

1 循環器病院で行われる心電図検査

 当院で行っている心電図検査は以下の7種類で,検査室で行われるのは“植込型心電図ループレコーダー(皮下心電図)”を除いた6種類です.循環器病院以外ではあまり行われない検査もありますが,どのような心電図検査があるのかを知っておくことは重要です.本章では,それぞれの検査がどんなときに,どんな目的で使われているのかを説明します.

 また,各心電図の装着の様子や検査にかかる時間,誘導法,使用する電極の数,電極のタイプなどを▶表1にまとめました.それぞれ比較しながら読み進めてみてください.

Ⅳ 右脚ブロックと左脚ブロックの成り立ちを知る

著者: 伊藤ひろみ

ページ範囲:P.941 - P.950

1 心臓を動かすために必要な刺激伝導系の各役割

 Ⅰ「心電図との向き合い方」でも触れたように,心臓は一生涯動き続ける臓器であり,自然のペースメーカと呼ばれる洞結節という場所を持っています.洞結節から発せられた電気の興奮を刺激伝導系と呼ばれる心臓に張り巡らされた電線が受け取り,全身に血液を送り出すのに一番よいタイミングでポンプを動かしています.刺激伝導系は心臓の上部から順に,以下のように位置しています(▶図1)1)

Ⅴ 頻脈性不整脈を知る

著者: 中嶋美保子 ,   伊藤紗弥果 ,   佐藤麻美

ページ範囲:P.951 - P.971

 不整脈は耳慣れた言葉ですが,そもそも不整脈とは何でしょうか.

 心臓では,洞結節から発生した電気刺激が,刺激伝導系を通って心臓全体に伝わり,心臓を絶え間なく動かし続けています(Ⅰ「心電図との向き合い方」参照).時に,何かしらの異常が生じて洞結節が電気を発生しなくなったり,刺激伝導系が電気を通しにくくなったり,通常とは異なる電気の発生場所や電気の通り道があることで異常な電気が発生したり,電気の伝わり方が異常になったりして心臓の調律が乱れてしまうのが不整脈です.

Ⅵ 虚血の心電図を知る

著者: 堤由美子 ,   徳田みなみ

ページ範囲:P.973 - P.991

 「胸が痛い!」と訴える患者の心電図をとって,まず注目しなければいけないところは“ST-T波の変化”です.では,心電図のST-T波とは何でしょうか? QRS波は心室の興奮(脱分極),T波は興奮が元の状態に戻る再分極を表し,ST部分はその間のプラトーになっているところで……といっても何かよくわからないと思いますが,ST部分には今現在心筋に障害が起きているかどうかを示す大切な情報が隠されているのです.

 心筋に障害を起こす原因で一番多いのは“虚血性心疾患”です.では,虚血性心疾患が疑われるときに注意しなければいけない心電図変化と,その機序についてみていきましょう.

Ⅶ 疾患・治療に伴う心電図を知る

著者: 納口英次 ,   小川朋美 ,   石井香織

ページ範囲:P.993 - P.1011

1 心臓カテーテル室で行われていること

 心臓カテーテル室とは,カテーテルと呼ばれるストローのような中空の管を用いて,心臓や血管の造影を行ったり,心臓内の圧力を測定したりすることで,心疾患の診断や重症度評価などの検査を行う場所です(▶図1).また,検査だけではなくカテーテルを用いた治療も行なわれます.医師,看護師,診療放射線技師,臨床工学技士,臨床検査技師など,多職種で構成されたチームで日々の業務にあたっています.疾患によってはすぐに治療が必要なことも多く,直接心腔内や血管内に医療機器を挿入することから,心電図検査室では経験できないさまざまな心電図にも遭遇します.

 心臓カテーテル室では,検査や治療によって直ちに変化する“生きている心電図”を学ぶことができます.また,治療後の経過を追う際には,どのような治療を行い,その結果どうなったのかも知っておく必要があります.そして治療前後の心電図に興味をもって比較してみてください.もし見学できるような環境であれば,ぜひとも心臓カテーテル室にも足を運び,さまざまなことを学んでみてください.

Ⅷ Brugada症候群を知る

著者: 佐藤幸苗

ページ範囲:P.1013 - P.1021

1 Brugada症候群とは

 1992年,器質的心疾患を有さず,洞調律時に右脚ブロック様QRS波形とV1〜V3でのST上昇を示し,心室細動(ventricular fibrillation:VF)をきたした8症例を,スペインのBrugada兄弟が初めて報告しました.中高年男性が夜間に突然死する“ポックリ病”の原因の1つで,遺伝子異常が基礎にあります.そこに再分極異常と脱分極異常の双方が絡み合って特徴的な心電図波形が形成され,その結果としてVFが起こるといわれており,日本人を含むアジア人の男性に多い疾患です.

Ⅸ ペースメーカ心電図を知る

著者: 葉山恵津子

ページ範囲:P.1023 - P.1052

1 心臓植え込み型電気的デバイスの種類

 ペースメーカ心電図がみられるのは,心臓植え込み型電気的デバイスを装着した患者です.心臓植え込み型電気的デバイスには,次の3種類があります.

実践問題

ページ範囲:P.1054 - P.1075

問1

 70代,男性.宴会中(16時00分)に卒倒し救急車で搬送.嘔吐.“胸腹部の熱い感じ”の訴えあり.25分後(16時25分)の心電図を示す.

 心電図所見として誤っているものはどれか.

解答と解説

ページ範囲:P.1076 - P.1098

問1の解答
④左回旋枝の閉塞

 ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI).心筋梗塞発症早期の心電図を見ると,Ⅱ,Ⅲ,aVF誘導でST上昇がみられる(□).ST上昇の程度はこの例ではⅡ誘導とⅢ誘導はほぼ同じくらいに見えるが,鏡像変化(対側性変化)としてaVLで1mm以上のST低下がみられる(□)ため,高い確率で右冠動脈に病変があると考えられる(p.1079,参考図1).また,リズムを見てみるとP波(→)とQRS波(→)に関係性がみられず,完全房室ブロックになっている.房室結節へ栄養を与えているのは右冠動脈が90%以上であることから,ここに責任病変があると判断できる(p.1079,参考図2).

索引

ページ範囲:P.1100 - P.1104

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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