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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術46巻10号

2018年10月発行

雑誌目次

病気のはなし

ネフローゼ症候群

著者: 山﨑恵介 ,   河村毅 ,   大橋靖

ページ範囲:P.1126 - P.1131

Point

●ネフローゼ症候群とは何らかの糸球体疾患により,体内に必要な蛋白質が尿中に漏出し低蛋白血症をきたすことによってさまざまな症状が出現する疾患群の総称です.

●腎臓自体の炎症による一次性ネフローゼ症候群と,全身疾患に併発する二次性ネフローゼ症候群に分けられます.

●ネフローゼ症候群の予後および治療法は原因疾患により異なるため,腎生検による確定診断が重要となります.

技術講座 病理 シリーズ 免疫染色(IHC/ICC)の基礎・3

免疫染色の実際② 用手法の手順

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.1147 - P.1155

Point

●基本プロトコール:脱パラフィン,抗原賦活処理,一次抗体反応,二次抗体反応(ポリマー試薬),発色,核染色の順で行う.

●HRP標識ポリマー試薬を使用するため,内因性ペルオキシダーゼ活性の阻止が必要となる.また,HRP系の発色剤を使用して発色する.

輸血・遺伝子検査 シリーズ HLA-DNAタイピング検査・2

—step up編—現在行われているDNAタイピング技術

著者: 橋口裕樹 ,   金本人美

ページ範囲:P.1156 - P.1161

Point

●HLA-DNAタイピング検査では,抽出するDNAの良し悪しが検査結果に影響するので,DNA濃度,純度測定は重要である.

●HLAタイピング検査の精度は,アレルを区別する程度により,抗原レベル(血清学的レベル)で判定する粗分別(low resolution)タイピング,細分別(high resolution)タイピング,その中間型(middle resolution)に大別される.

●アレルの否定できない組み合わせ(ambiguity),表記法を正しく理解する.

微生物

—step up編—16S rRNA遺伝子配列を利用した病原細菌の同定法

著者: 荻原真二 ,   内田幹 ,   雨宮憲彦 ,   井上克枝

ページ範囲:P.1162 - P.1168

Point

●16S rRNA遺伝子は全ての一般細菌に存在しており,遺伝子配列を解析することにより菌種が同定できる.

●受託サービスを利用することにより,遺伝子増幅装置サーマルサイクラーを有しているだけで解析ができる.

●16S rRNA遺伝子配列解析を信用しすぎてはならない.従来の検査法から得られた検査結果も加味して総合的に判断することが大切である.

その他

人を対象とする研究の倫理的要件—研究を申請するために

著者: 笹栗俊之

ページ範囲:P.1169 - P.1176

Point

●研究は診療とは目的が異なり,特別な倫理的配慮が求められる.

●研究デザインは倫理性とも深くかかわるため,明確でなくてはならない.

●実施計画書には,研究として行うことの“全て”が記載されていなければならない.

●研究は,原則として全て倫理審査を受けなければならない.

●研究では,原則として全ての行為にインフォームド・コンセント(IC)が必要である.

●個人情報の取り扱いには十分注意する.

●判断に迷ったら倫理原則に立ち戻って考える.

トピックス

「産科危機的出血への対応指針2017」改訂ポイントと検査体制

著者: 牧野真太郎

ページ範囲:P.1133 - P.1137

はじめに

 産科出血は突発的で大量になることがあり,二次的な弛緩出血を起こして急速に播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)へと至ることも多い.また,大量出血による希釈性凝固障害だけでなく,常位胎盤早期剝離,羊水塞栓症,妊娠高血圧症候群重症型,HELLP(hemolysis,elevated liver-enzymes,low platelets)症候群,死胎児稽留症候群など,早期よりDICとなる消費性凝固障害があることが特徴的である1)

 このため,大量出血が起こった場合には,その出血点の確認や適切な止血操作に加え,出血の原因と患者の全身状態を把握しながら輸血のタイミングを考慮することが求められる.

 分娩後異常出血(postpartumhemorrhage:PPH)の予測にフィブリノゲン値が有効であるとされ,200mg/dL以下では陽性反応適中度(positive predictive value)100%で重度のPPHが発生すると報告されている2)

 海外においては産科大量出血に対して少用量で多量の凝固因子を補充できるクリオプレシピテートやフィブリノゲン濃縮製剤(fibrinogen concentrate:FC)が使用されている.現在,日本ではクリオプレシピテート製剤は販売されておらず,FCは先天性フィブリノゲン欠損症の適応しか認められていない.しかし,近年日本においても産科大量出血に対するFCの効果について論文や学会などでの症例報告が増えてきている.

膀胱癌診療の最前線

著者: 菊地栄次

ページ範囲:P.1138 - P.1140

はじめに

 わが国では年間2万人が膀胱癌を発症するとされ,発見の契機としては無症候性肉眼的血尿で見つかることが多い.男性が女性の3倍と多く,65歳がピークとされている.またリスク因子として喫煙が挙げられる.

 膀胱癌の90%以上は尿路上皮癌であり,病理組織学的には乳頭状を呈することが多い.一方,膀胱の上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)は異型度の高い癌細胞からなるが,flat carcinomaの像を呈する.

 膀胱癌は初診時に大きく3つのタイプに分けて診療が進められる.①腫瘍が粘膜あるいは粘膜下にとどまる筋層非浸潤性膀胱癌,②すでに腫瘍が膀胱筋層あるいは周囲脂肪織に浸潤している筋層浸潤性膀胱癌,そして③リンパ節転移あるいは遠隔転移を認める転移性膀胱癌である.

 筋層非浸潤性膀胱癌に対しては経尿道的膀胱腫瘍切除術(transurethral resection of the bladder tumor:TURBT)により腫瘍の完全切除を行った後,再発予防として抗癌剤あるいはBCG(bacillus Calmette-Guérin)の膀胱内注入療法が試みられる.筋層浸潤性膀胱癌に対しては根治的膀胱全摘除術が施行され,尿路変向として非禁制型(尿失禁型)あるいは禁制型尿路変向術(自己導尿型,自排尿型)が選択される.転移性膀胱癌に対してはシスプラチンを中心とした多剤併用の全身化学療法が初期治療として施行される.

 本稿ではごく最近の膀胱癌診療に関する4つのトピックスについて概説する.

FOCUS

新たな検体採取等業務に必要とされる医療安全管理学

著者: 萩原三千男

ページ範囲:P.1141 - P.1143

はじめに

 平成26(2014)年6月18日,「臨床検査技師等に関する法律施行令」(昭和33年政令第226号)の一部が改正され,平成27(2015)年4月1日から検体採取等業務が臨床検査技師の業務範囲に含まれることとなり,診療の補助として,医師または歯科医師の具体的な指示を受けて行うことができる検体採取について,次の5つの行為が定められました〔「臨床検査技師等に関する法律施行令」(第8条の2)〕.
①鼻腔拭い液,鼻腔吸引液,咽頭拭い液その他これらに類するものを採取する行為
②表皮並びに体表及び口腔の粘膜を採取する行為(生検のためにこれらを採取する行為を除く)
③皮膚並びに体表及び口腔の粘膜の病変部位の膿を採取する行為
④鱗屑,痂皮その他の体表の付着物を採取する行為
⑤綿棒を用いて肛門から糞便を採取する行為

 本稿では,業務の拡大を受けて2017年度から新たな授業として開始した“医療安全管理学”の内容について解説し,検体採取の今後についても言及します.

—在宅医療時代の臨床検査—“在宅臨床検査”考

著者: 小谷和彦

ページ範囲:P.1144 - P.1146

在宅で臨床検査を要する時代

 わが国は,世界に先駆けて少子・超高齢社会となった.人口減少社会でもあり,多死社会でもある.この人口構造の変化のスピードは速く,医療をはじめとして保健・福祉・介護を一体化させての社会変革が喫緊事となっている.この高齢化や人口減少の程度,そして医療・介護の体制は地域ごとに異なっており,わが国全体を一律には語れない.

 そこで,各都道府県の“地域”単位で,地域医療構想(医療圏内の医療機能の分化および連携をもって医療機関の効率的整備を図るコンセプト)と地域包括ケア(住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるような住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する仕組みや活動)を進める方向性が打ち出された.現在,これに基づいて,地域医療,ひいては地域社会の整備が進んでいる〔それぞれの地域社会資源(住民を含む)が当事者として協議しながら創り上げる必要がある〕1)

過去問deセルフチェック!

吸光光度法(分光光度法)

ページ範囲:P.1132 - P.1132

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.1186 - P.1186

 吸光光度法(分光光度法)は,Lambert-Beerの法則により,生体成分の分析に広く用いられ,検査部門では欠くことのできないものです.Lambert-Beerの法則は,単色光または単色光に近い光でのみ成立するため,溶液の濁りや蛍光を発する場合には成立しません.

 2波長測定のメリットは,試料の濁りやセルの汚れ・傷による影響を軽減すること.また,溶血やビリルビン,投与薬物などによる非特異的吸収などの影響も軽減することができます.

疾患と検査値の推移

重症熱性血小板減少症候群

著者: 安川正貴

ページ範囲:P.1177 - P.1182

Point

●重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は,マダニが媒介する新興ウイルス感染症である.日本国内では西日本を中心に,主として春〜秋に患者が発生している.

●臨床症状は,高熱,消化器症状,出血傾向,中枢神経症状などであり,多臓器不全をきたしやすく致死率は10〜30%である.

●検査成績として,白血球減少,血小板減少,肝機能異常,CK値,LDH値,フェリチン値の上昇,凝固異常などの頻度が高く,骨髄穿刺検査では血球貪食像を示す.高度の炎症所見があるにもかかわらず,CRPの上昇が認められないことが多い.

Laboratory Practice 〈生理〉 シリーズ 超音波検査の導入奮闘記・3

頸動脈超音波検査の意義と頸動脈の解剖

著者: 鈴木博英

ページ範囲:P.1183 - P.1185

頸動脈超音波検査の意義

新人(Aさん):本日から血管エコー室に配属されましたAです.よろしくお願いします.

先輩(中堅技師):Aさん,これから一緒に頑張りましょう.ところでいままで超音波検査の経験はありますか?

臨床検査のピットフォール

—非糸球体型赤血球なのに糸球体型赤血球と間違いやすい—膜部顆粒成分凝集状脱ヘモグロビン赤血球の鑑別

著者: 野崎司 ,   浅井さとみ ,   宮地勇人

ページ範囲:P.1187 - P.1191

はじめに

 上部尿路(糸球体性血尿)と下部尿路(非糸球体性血尿)の出血では,尿中に認める赤血球形態が異なり,出血部位を推定するうえで重要な情報となる.一般に糸球体からの出血(糸球体性血尿)の場合,赤血球がコブ状,標的状,ドーナツ状など,標本内の赤血球形態は多彩となる(図1).

 しかし,赤血球形態は尿比重,pHをはじめとする尿中に含まれる諸因子によっても形態変化をきたし,両者の鑑別に苦慮する場合がある.本稿では非糸球体型赤血球のなかで,近年,新たに報告された膜部顆粒成分凝集状脱ヘモグロビン赤血球(以下,膜部顆粒赤血球)1)の鑑別ポイントおよびその背景の特徴を述べる.

Q&A 読者質問箱

エコーで肝臓の大きさをより正確に評価するためにはどうすればよいでしょうか?

著者: 柴田陽子

ページ範囲:P.1192 - P.1194

Q エコーで肝臓の大きさをより正確に評価するためにはどうすればよいでしょうか?

A 肝臓の大きさは,肝疾患だけでなく血液や心臓の病気などでも変化することがあり,大きさの把握は大切な事項となります.

ワンポイントアドバイス

—美しい切片の作製法—爪などの非脱灰硬組織における薄切の工夫

著者: 東学

ページ範囲:P.1195 - P.1197

はじめに

 病理診断に不足のない美しい組織標本を作製するためには,染色前段階として,①十分な組織固定が完了していること,②十分なパラフィン浸透が完了した包埋組織であること,③完成度の高い組織切片が得られていることに尽きる.しかしながら,検体のなかには各工程が十分達成できていても薄切が難しい検体に遭遇することがある.本稿では,薄切が難しい非脱灰硬組織における薄切法の工夫を解説する.

連載 生理検査のアーチファクト・18

—神経伝導検査③—筋の状態による影響

著者: 伊藤栄祐

ページ範囲:P.1198 - P.1199

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1は,同一健常被検者の手首において正中神経を刺激し,短母指外転筋から電位を導出した運動神経伝導検査の結果である.

 これらはある1点を除き,全て同じ条件で記録した複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)の波形である.しかし,3つの波形は明らかに形状が異なっており,表1に示す各波形の主な計測値においても,特に振幅と持続時間に大きな差を認めているのがわかる.

学会訪問

第18回 愛知県医学検査学会

ページ範囲:P.1200 - P.1200

 2018年7月1日(日),ホテルプラザ勝川にて,大橋功男学会長(春日井市保健センター)のもと,第18回愛知県医学検査学会が開催された.学会のメインテーマは「“変わるもの 変わらないもの”〜臨床検査の今昔〜」で,変わるものとしては,超高齢社会を迎え,臨床検査業界を取り巻く環境が変化したこと(法改正にて採血,検体採取ができるようになったことなど),変わらないものとしては,検査の精度確保が必要であることを挙げた.

 当学会では,シンポジウム「“変わるもの 変わらないもの”〜臨床検査の今昔〜」をはじめ,公開講演「臨床検査の今昔」(春日井市民病院 渡邊有三病院長),シリーズ企画「尾張北プレゼンツ これからはじめるあなたへ」,一般演題54題,ランチョンセミナー4題,臨床検査技師養成校による中学生・高校生を対象にしたガイダンス,検査機器などの企業展示などを行い,843名の参加者があった.

ラボクイズ

尿沈渣

著者: 石田容子

ページ範囲:P.1202 - P.1202

8月号の解答と解説

著者: 大塚昌信

ページ範囲:P.1203 - P.1203

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目次

ページ範囲:P.1124 - P.1125

『臨床検査』9月号のお知らせ

ページ範囲:P.1123 - P.1123

「ラボクイズ」解答/読者アンケートFAX

ページ範囲:P.1201 - P.1201

あとがき・次号予告

著者: 谷口智也

ページ範囲:P.1206 - P.1206

 2015年4月から新たに微生物学的検査を目的とした鼻腔・咽頭・皮膚・口腔・肛門からの検体採取が臨床検査技師の仕事に含まれ,さらに2017年6月には検体検査の精度確保に関する医療法の一部改正と,臨床検査技師を取り巻く環境が急激な変化を迎えています.これに伴い臨床検査技師を養成する指定校では,単位数増加に伴う学則変更,教育内容の再構築,シラバス作成,担当する教員など,その対応に迫られています.学生はわれわれが20年以上かけて経験し,積み上げてきたことを短期間で学ばなければなりません.

 そこで,今月号の表紙のピックアップは,フォーカス「新たな検体採取等業務に必要とされる医療安全管理学」を取り上げました.今回,法改正後に日本で初めて本講座を担当した萩原三千男先生(東京医科歯科大学医学部附属病院検査部技師長)に,これまで散在していた医療安全の内容を試行錯誤の末,再構築していただき,実際の授業内容をオープンに説明していただきました.萩原先生は,単に検体採取の業務を足しただけにとどまらず,“患者との良好な信頼関係および配慮”について述べています.また,今後の方向性として在宅医療を視野に入れていることが挙げられます.これと同期するように今月号では,フォーカス「在宅医療時代の臨床検査“在宅臨床検査”考」をクローズアップし掲載しています.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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