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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術46巻4号

2018年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

慢性リンパ性白血病

著者: 髙松泰

ページ範囲:P.426 - P.431

Point

●末梢血および骨髄中に成熟した小型リンパ球(B細胞)が増加する疾患である.進行するとリンパ節腫脹や肝脾腫を生じ,骨髄抑制のため易感染性,貧血,止血困難になる.

●進行が緩徐で,治療を行わなくても日常生活への影響は少ない.薬物療法で治癒は得られず,早期に治療を開始しても長期予後は改善しない.そのため活動性の病態がなく無症状の場合は,経過観察(watchful waiting)を行う.

●標準治療薬はフルダラビンである.シクロホスファミド,リツキシマブを併用すると治療効果が高まるが,血球減少,感染症など副作用が強くなる.

●再発時は,オファツムマブ,アレムツズマブ,イブルチニブが有効である.

技術講座 微生物

薬剤感受性検査の内部精度管理

著者: 角田拓也 ,   石松尚 ,   久川聡

ページ範囲:P.448 - P.457

Point

●薬剤感受性検査は試薬や測定装置の異常,検査手順の逸脱,検査担当者の結果解釈の違いなどの影響を受けるため,内部精度管理(QC)による日々の監視が必要である.

●QCの結果が外れた場合に是正措置を講じるために,薬剤感受性検査結果に影響を及ぼす要因を把握しておくことが重要である.

●毎日実施するQCを週ごとの実施に変更する際は,20〜30日プランもしくは15重測定(3×5日)プランのいずれかを実施し,その基準を満たした場合,週ごとの実施に変更できる.

●QCの結果が良好であっても,患者由来菌株の検査結果を報告する際は,菌種と薬剤感受性検査結果の整合性を評価する必要がある.

一般

全自動尿中有形成分分析装置を使いこなす

著者: 田中雅美 ,   宿谷賢一

ページ範囲:P.458 - P.463

Point

●全自動尿中有形成分分析装置の測定原理は,大きく分けるとフローサイトメトリー法と画像解析法があり,分析装置ごとに性能が異なる.

●尿中に認める成分は多種多様で,全ての成分を分析装置で分類することはできないため,尿沈渣検査(目視法)との併用運用となる.

●全自動尿中有形成分分析装置の使用時は目視鏡検(尿沈渣鏡検)を実施する再検基準を設け,運用ロジックを構築する必要がある.

トピックス

血小板活性化受容体CLEC-2—その多機能性と臨床検査への応用

著者: 長田誠 ,   井上克枝

ページ範囲:P.432 - P.435

はじめに

 血小板は血管内皮細胞の損傷により血管内皮下組織であるコラーゲンなどに反応し,粘着・放出・凝集を起こし血栓を形成する(一次止血).さらに血液凝固系の反応が進行して強固な二次血栓となる(二次止血).血栓止血は,血小板の極めて重要な役割である.

 CLEC-2(C-type lectin-like receptor 2)は,2000年にバイオインフォマティクス手法により発見された.その後,2006年にマレーマムシの毒から精製されたロドサイチン(rhodocytin)をリガンドとして,血小板を活性化する新規血小板活性化受容体として報告された1).CLEC-2は,ヒトでは血小板,巨核球に高発現し,肝臓のKupffer細胞,肝類洞内皮細胞に低発現している.ロドサイチンは生体内には存在しないため,CLEC-2の生体内リガンドが存在することが予想された.その生体内リガンドはシアロムチン様膜蛋白であるポドプラニン(podoplanin)であり,Ⅰ型肺胞上皮細胞,リンパ管内皮細胞,リンパ節の細網線維芽細胞,腎臓のポドサイトに発現していた.しかし,これらの細胞は通常血管内を流れている血小板と接触する機会がないため,その機能は不明であった.さらにポドプラニンは扁平上皮癌やセミノーマなどに発現を認める.

FOCUS

原発性免疫不全における免疫グロブリンサブクラス測定の意義

著者: 野々山恵章

ページ範囲:P.436 - P.439

はじめに

 原発性免疫不全では,免疫グロブリンサブクラスが低下し,易感染性を呈することがある.ここでは,免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)(抗体)について解説し,IgGサブクラス測定の意義,IgGサブクラス欠損症,IgA欠損症について述べる.

細胞検査士の今後の展望

著者: 伊藤仁

ページ範囲:P.440 - P.441

細胞検査士の現状

 細胞検査士は,日本臨床細胞学会および日本臨床検査医学会が認定する資格で,毎年1回行われる資格認定試験は合格率が平均30%程度1)の難関である.細胞検査士資格認定試験は2017年で50回目を迎えたが,現在全国に約7,450名(実数)1)の細胞検査士がおり,主に医療機関や検査所などで仕事に従事している.細胞検査士を取り巻く環境は急速に変化してきているが,細胞診を用いた子宮頸がん検診など,まだまだその重要性に変わりはないのも事実である.予防医学的なHPV(human papillomavirus)ワクチンが停滞ぎみのわが国では,検診による早期発見がどのような治療よりも治癒率の向上に貢献するものであり,細胞検査士は現在でも変わることなく,顕微鏡で癌や前癌病変を探し出し,治療に結びつけている.

過去問deセルフチェック!

心電図検査

ページ範囲:P.431 - P.431

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.485 - P.485

 房室結節の伝導障害によって心房からの刺激が心室に伝わらなくなってしまい,心室の収縮が起こらなくなってしまった状態を第2度房室ブロックという.第2度房室ブロックは,P-Q間隔が徐々に延長した後に房室伝導が途絶するWenckebach型(MobitzⅠ型)と,P-Q間隔が変わらないのに房室伝導が突然途絶するMobitzⅡ型に分類される.

 問題の心電図を見てみると,①P-P間隔が一定で,②P-Q間隔が徐々に延長してから,③QRS波が脱落している.その後,④短いP-Q間隔に戻っている.これらの所見はWenckebach型第2度房室ブロックの特徴を示している.

疾患と検査値の推移

心筋梗塞

著者: 小西正紹 ,   木村一雄

ページ範囲:P.442 - P.447

Point

●心筋梗塞は,心電図で持続的ST上昇を認めるST上昇型心筋梗塞と,認めない非ST上昇型心筋梗塞に大別される.

●ST上昇型急性心筋梗塞に対し有効性の確立された治療である緊急再灌流療法を行うためには,12誘導心電図による速やかな診断が必要とされる.

●非ST上昇型心筋梗塞の診断には,近年心筋壊死の検出感度が大幅に向上した心筋トロポニンを中心とした心筋バイオマーカーが重要な役割を果たす.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・25

経験を信じる・1

著者: 澤穂希 ,   山藤賢

ページ範囲:P.464 - P.472

 山藤:今回の対談相手は,皆さんご存知と思いますので,紹介するまでもないですが…(笑),サッカー界のレジェンド澤穂希さんをお招きしました.2011年に開催されたFIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会でチームを世界一に導き,自身もバロンドール(世界最優秀選手)を受賞,またワールドカップは6大会連続出場でギネスブックにも認定された,まさにサッカー界を代表する選手です.私は,2005年からチームドクターとして,なでしこジャパンにかかわり,公私共に親しくさせていただいております.このたび,この連載の最後の対談相手として,チームでは戦友であったと同時に,お互い親友と呼んでいる澤穂希さんに,対談をお願いいたしました.どうぞよろしくお願いいたします.

 澤:よろしくお願いします.対談読んだけど,さんちゃん,もう雲の上の人だねぇ(笑)

研究のすゝめ・5

臨床現場から教育現場へ—地方の中小規模病院でも研究はできる!

著者: 大﨑博之

ページ範囲:P.480 - P.485

入職から現在まで(表1)

 私は,高知県の3年制短期大学を卒業後,愛媛県の国立病院(現・国立病院機構)に就職しました.当時,世間はまだバブルに浮かれていましたが,臨床検査技師の求人は極めて少なく,私はパート職員での社会人スタートとなりました.運よく翌年から正職員として雇用され,就職4年目に香川県の国立病院に転勤となりました.ちょうどその頃に3年制の専門学校・短期大学の卒業者が,放送大学で単位を取得して,研究論文を学位授与機構(現・大学改革支援・学位授与機構)に提出することで学士を取得できる制度が開始されました.私もその制度を利用して28歳で学士(保健衛生学)を取得できました.香川県の国立病院に12年間勤務した後に,教員として香川県立保健医療大学に赴任しました.そこで4年間お世話になっている間に香川大学大学院の博士課程を修了し,39歳にしてようやく博士(医学)の学位を取得することができました.次に愛媛県の大学に6年間勤務し,2016年度より神戸大学大学院の准教授として教育と研究に従事しています.したがって2017年度末時点の私のキャリアは,病院勤務15年,教員12年となります.

生理検査のアーチファクト・13

—脳波検査③—電極の不良による脳波のアーチファクト

著者: 石郷景子

ページ範囲:P.486 - P.489

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1〜4のうち図1,3,4の□と図2の◯にみられる波形はなんでしょうか? 図1,2はよくみられる波形である.図1の□で囲んだ波形のうちFp2-A2に出現しているのは脳波検査①(本誌46巻1号,61〜64頁)で解説した眼球運動である(●).左側のみに出現している不規則な基線の揺れは左耳朶からの電極の接触不良が原因で混入してくる(●).図2は双極誘導を示し,◯の波形はF7に限局しておりCH3とCH4では向き合っていない.sharp waveであれば向き合うはずである.図3の□で囲んだ波形は左後頭部に徐波がみられるが,これも後頭部に限局しており電極の接触不良,たとえば電極が浮いている可能性が示唆される.図4の□で囲んだ波形もF3-A1に限局しているが,spike(持続1/50〜1/14秒以下)にするには周波数がより大きく比較的規則的である.図4の◯もCz-A1に限局しているのでアーチファクトといえる.どの波形も基準電極では1つの電極に限局していること,双極誘導では波形が向き合っていないことなどからアーチファクトと判断できる.

臨床医からの質問に答える

細胞診の依頼書には,どんな臨床情報を書いておくとよいですか.

著者: 加藤隆

ページ範囲:P.475 - P.479

細胞診とは

 細胞診は,形態学的な検査・診断方法の1つであり,生体から剝離した細胞や穿刺吸引した細胞を観察し,腫瘍の有無,良・悪性,組織型,浸潤の程度,治療効果などについて判定を行うものです.細胞診の結果によって手術の適否や治療方針が決定される場合もあり,重要な検査となります.顕微鏡下で細胞診標本を観察する際には,患者情報(年齢・性別),採取部位・採取方法,臨床診断(各種検査データ,画像所見),臨床経過(既往歴),検査目的など全ての情報を念頭に置き,細胞形態をもとに鑑別すべき疾患を除外しながら診断します.

 よってそれらの基本的情報が伝わっていないと,細胞学的診断に重大な誤診や支障を生じる可能性が少なからずあります.正確で迅速な細胞診断を行うには,臨床医の協力が不可欠です.適正な細胞診検体の取り扱いや必要十分な臨床情報の提供および病理・臨床間の円滑な連携が,正確な細胞診断には非常に重要です.

Q&A 読者質問箱

血液培養検査の適正さと評価法について教えてください.

著者: 溝上幸洋

ページ範囲:P.491 - P.494

Q 血液培養検査の適正さと評価法について教えてください.

A 血液培養検査は,血液中に流出している原因菌を採血により採取し,液体培地(血液培養ボトルなど)で培養し,原因菌の同定や薬剤感受性検査を実施することで,感染症治療を有効かつ的確なものにするための最も重要な検査です.

 血液培養が診療の現場で適正に行われ,その結果が有効に利用されるためには,血液培養が適正に実施されているかを評価することが大切です.採取プロセスや結果(検出菌)を数値化し,評価する方法が各種ガイドライン1,2)で示されています.以下に,適正さの判断に用いられる代表的な指標と評価について紹介します.

ワンポイントアドバイス

末梢血塗抹標本作製時の乾燥法と血小板形態

著者: 金田直輝 ,   細川一磨 ,   山本千恵 ,   満谷進

ページ範囲:P.496 - P.497

はじめに

 血液塗抹標本上の大型(幼若,網状)血小板比率の増加と血小板大小不同の所見は,骨髄における血小板生成の亢進を示唆し,血小板減少症の病態を推測するうえで重要な指標となり,また,血小板増多症における血栓症の危険因子にもなりうるといわれる.

 しかし,標本作製時の乾燥法の違い,すなわち,欧米で一般的な自然乾燥1)か,日本でほぼ標準化されている冷風による強制乾燥2)かによって,リンパ球のみならず血小板の形態が著しく相違する事実3)は,現在必ずしも十分に認識されているとは思われない.

Laboratory Practice 〈病理〉

沖縄県離島における遠隔病理診断環境

著者: 新垣善孝

ページ範囲:P.498 - P.503

はじめに

 沖縄県は49の有人島と多数の無人島からなる島嶼県であり,その県域は東西約1,000km,南北約400kmと広大で,国内でもかなり特異な地域といえる.県民の9割は沖縄本島に集中しているが,それは医療においても同様で都市部への医療従事者の集中や病理専門医の慢性的な不足・偏在(図1)は国内の他地域と同様である.このような状況下において,離島の各保健医療圏にある沖縄県立宮古病院(以下,宮古病院),沖縄県立八重山病院(以下,八重山病院)では情報技術(information technology:IT)を活用し,沖縄本島の琉球大学医学部附属病院(以下,大学病院)と連携した遠隔病理診断(テレパソロジー)を行うことで,地域医療格差の軽減を図っている1)

 本稿では,筆者が2013〜2015年の3年間赴任していた八重山病院の遠隔病理診断環境を紹介するとともに,業務を通して見えてきた課題と今後の展望を交えて紹介したい.

ラボクイズ

免疫血清検査

著者: 青木優子

ページ範囲:P.506 - P.506

2月号の解答と解説

著者: 井本清美

ページ範囲:P.507 - P.507

書評

臨床検査技師のための 血算の診かた

著者: 常名政弘

ページ範囲:P.473 - P.473

血液検査技師,日当直を担当する臨床検査技師は必見!側に置いておきたい一冊

 血液学に関する書籍は数多く目にしますが,その中で血液検査データの診かたに関する書籍は数えるほどしか見かけません.また研修会,講演会などで血液検査データの診かたに関する講演は近頃多く行われているテーマではありますが,その内容が書籍になったのは本書が初めてではないかと思われます.名古屋にて岡田定先生(聖路加国際病院)のご講演を聴講した機会がありましたが,まさに講演会の内容がまとまった書籍です.

 本書を拝読した感想を示します.

日常診療に潜むクスリのリスク—臨床医のための薬物有害反応の知識

著者: 徳田安春

ページ範囲:P.504 - P.504

薬の副作用のエビデンスリソース

 医療現場でクスリの副作用ケースが増えています.高齢化,マルチモビディティ,ポリファーマシー,新薬開発,ガイドラインによる推奨などが要因です.それでも,処方した医師には副作用を早期に発見し対処する責任があるといえます.そのためには処方する医師には「特別」な学習が必要です.なぜ特別かというと,悲しいかな,薬の副作用についての臨床的に役立つ実践的な知識は薬のパンフレットや添付文書を熟読しても習得できないからです.

 本書はそのような実践的な知識をコンパクトにまとめてエビデンスを提供してくれる新しいタイプのリソースです.著者は総合診療エビデンス界のプリンス,上田剛士先生(洛和会丸太町病院救急・総合診療科).本書では,得意技である円グラフを駆使して,徹底的な科学的エビデンスを提供してくれています.

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目次

ページ範囲:P.424 - P.425

『臨床検査』3月号のお知らせ

ページ範囲:P.490 - P.490

あとがき・次号予告

著者: 谷口智也

ページ範囲:P.510 - P.510

 今年は年明けから48年ぶりの大寒波と全国的に雪も多く,とかく春が待ち遠しかったことと思われます.春になると毎年桜を見に行きますが,とりわけ“千鳥ヶ淵の桜”は格別です.千鳥ヶ淵は半蔵門と田安門の土橋で塞き止めて作られたお堀で,この界隈は桜の名所として有名です.

 4月号のあとがきを1月末に書いています.ちょうどセンター試験も終わり,今年も地理Bの出題で「ムーミン谷がある場所」がノルウェーかフィンランドかで問題になっていました.ここ数年こうしたクレーム問題が話題となっているセンター試験ですが,臨床検査技師の国家試験も,2017年はかなりのクレーム問題がありました.実際に複数解答が認められたのは1題で,これはほかの医療職の国家試験と比べると少ないのが現況です.受験生は一問一問の1点に必死です.問題を作る側の人間として,一番気をつけていることは,難易度よりも,誤植が“ない”ことと答えが“ある”ことです.本号をご覧になっているころには,そろそろ国家試験の結果が出ているころでしょう.ここ2年間の全国合格率は8割を切り,ほかの医療職より低いのが現状です.今年の第64回国家試験はどうなっているのでしょうか.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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