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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術46巻5号

2018年05月発行

雑誌目次

病気のはなし

胃癌

著者: 江郷茉衣 ,   小田一郎

ページ範囲:P.514 - P.518

Point

●胃癌の原因は生活習慣に加えて,ヘリコバクターピロリ菌の持続感染が指摘されており,ヘリコバクターピロリ菌の感染者に対しては除菌療法が推奨される.

●わが国で胃癌は最も罹患率の高い悪性腫瘍であり,男性で最多,女性では3位である.人口の高齢化に伴い罹患者数は増加傾向を示しているが,以前に比べると死亡率は低下傾向にある.

●今日わが国で発見される胃癌のほぼ半数が早期胃癌であり,そのうちリンパ節転移の可能性が極めて少ない早期胃癌は内視鏡治療が可能である.Stage Ⅰの5年生存率は97.3%であるのに対し,遠隔転移を認めるStage Ⅳの進行胃癌の5年生存率は7.3%である.

技術講座 生理

腹痛患者の腹部超音波検査—私の考え方,進め方

著者: 尾本きよか

ページ範囲:P.528 - P.532

Point

●まず腹腔内臓器の解剖学的位置関係を理解し,腹痛の部位にはどのような臓器があるかを考えながら検査する.

●腹痛をきたす疾患について超音波画像だけでなく,疾患の臨床像,理学所見,検査所見を含め体系的に理解するようにする.

●超音波検査は施行するだけでなく,後日必ずカルテを見返して自分の検査所見や結果が正しかったかを検証することが重要である.

一般

尿沈渣中の赤血球形態

著者: 安土みゆき

ページ範囲:P.534 - P.540

Point

●尿沈渣中の赤血球形態は非糸球体型と糸球体型に分類され,判定は「尿沈渣検査法2010」に準じて行います.

●尿沈渣中の赤血球形態の判定は,個々の形態を分類することも大切ですが,尿沈渣全体のパターンを把握することも必要です.また,全ての血尿について分類できるとはかぎりません.

●尿沈渣中の赤血球形態を判定するうえで,迷った場合は赤血球円柱を探しましょう.

●尿沈渣中の赤血球形態は,尿の性状(浸透圧やpH)により変化します.この現象は非糸球体型,糸球体型両方に起こるので,特徴をよく把握しておきましょう.

生化学

血清or血漿の使い分けによる臨床化学検査結果の違い,注意点

著者: 間瀬浩安 ,   宮地勇人

ページ範囲:P.542 - P.545

Point

●ヘパリン採血管での採血は,採血後に迅速に遠心可能で,診療前報告に有用です.

●血清と血漿の検査値を比較すると,総蛋白(TP),カリウム(K)や無機リン(IP)など差のある項目があります.

●血漿で測定する場合は,試薬が血漿測定に対応している必要があります.

トピックス

医療法等の一部を改正する法律(平成29年6月14日公布)の経緯

著者: 横地常広

ページ範囲:P.520 - P.523

はじめに

 平成27年11月,健康・医療戦略の推進体制の一環として,ゲノム情報を用いた医療等の実用化に係る取り組みを関係府省庁(健康・医療戦略室,文部科学省,経済産業省,厚生労働省)が連携して推進するために,“ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース”が設置され,約1年間の議論の結果「ゲノム医療等の実現・発展のための具体的方策について(意見とりまとめ)」が作成された1).報告書のなかで「遺伝子関連検査の品質・精度の確保」における見解として,遺伝子関連検査の品質・精度を確保するためには,遺伝子関連検査に特化した日本版ベストプラクティス・ガイドライン等,諸外国と同様の水準を満たすことが必要であり,厚生労働省においては関係者の意見等を踏まえつつ,法令上の処置を含め具体的な方策等を検討・策定していく必要があると報告された.厚生労働省は報告書を受け,諸外国においては法令等で臨床検査の品質・精度管理に関する基準が定められているが,日本においては医療機関が自ら実施する検体検査の品質・精度管理については法令上の規定がなく,また,「臨床検査技師等に関する法律」(以下,臨検法)第2条に規定されている検体検査の分類も実態にそぐわない部分がみられるとし,第48回社会保障審議会医療部会(平成28年10月20日)に具体的な考え方が示され,法改正に向けた議論が開始された2)

FOCUS

診療情報管理士の資格と臨床検査技師に期待される役割

著者: 山本康弘

ページ範囲:P.524 - P.527

診療情報管理士とは

■概要

 “診療情報管理士”は,医療機関における患者のさまざまな診療情報を中心に,人の健康(health)に関する情報を国際統計分類などに基づいて収集・管理し,データベースの抽出・加工・分析を行い,さまざまなニーズに適した情報を提供する専門職種である1).診療情報管理士は,諸外国ではHIM(health information manager)と呼ばれており,諸外国においても同様の資格が設けられている.

過去問deセルフチェック!

マラリア

ページ範囲:P.519 - P.519

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.541 - P.541

 マラリアは熱帯・亜熱帯地域の寄生虫症であり,わが国においては,輸入寄生虫症として位置付けられている.マラリアには4種類,つまり,熱帯熱マラリア,三日熱マラリア,四日熱マラリア,卵形マラリアがあり,マラリア原虫をもったハマダラカに刺されることで感染する.そのなかでも,熱帯熱マラリアは脳症,腎症,出血傾向,重症貧血などさまざまな合併症がみられ,早期に治療を開始しないと危険である.マラリアの臨床症状で特徴的なのは高熱であり,三日熱マラリアの場合は48時間おきに,四日熱マラリアの場合は72時間おきに,繰り返される.卵形マラリアは三日熱マラリアとほぼ同じ発熱周期であるが,熱帯熱マラリアの場合には明らかな周期性を認めない.

 なお,従来からの4種類のマラリアに加え,人獣共通感染性を有するサルマラリアが東南アジアの各地で報告されている.

疾患と検査値の推移

深部静脈血栓症

著者: 岡島年也 ,   保田知生

ページ範囲:P.546 - P.553

Point

●主訴が下肢症状である疾患としてまず思い浮かぶのは,閉塞性動脈硬化症などの動脈疾患であるが,静脈疾患である深部静脈血栓症(DVT)も忘れてはならない.

●DVTを単に四肢の静脈疾患と捉えるのではなく,静脈血栓塞栓症(VTE)として肺塞栓症(PE)や奇異性脳塞栓症も念頭に全身を診なければならない.

●血液検査は,DVTの初期鑑別をはじめ治療効果判定やDVTの再発の予測指標として有用である.

●DVTの確定診断には画像検査が必須である.

連載 人の心に寄り添う医療人になる・26

経験を信じる・2

著者: 澤穂希 ,   山藤賢

ページ範囲:P.556 - P.565

[前号(4月号)より続く]

澤穂希の幸福論

 山藤:自分の良さなどを自分で話すのは難しいと思いますので,少し僕が思う澤さんの素晴らしさを話していいですか.これはあくまでも僕が日頃思っていることなので,僕の考えとして聞いてください.僕は澤さんとは長年友人としてプライベートでもご一緒する機会が多く,その中で思うのは,澤さんの良さはすごく多様性があるということです.僕がこの連載のはじめに書いた文章の「世界のシステム」という図(本誌44巻1月号,62頁)を見てください.良い臨床検査技師は,臨床検査技師としての技術と知識を極めていい仕事をしていると思うんですが,本当は,その外にも医療人という枠があって,さらにその外には社会と人間のシステムがあるんです.だから,こういう外の世界を知ってから臨床検査技師の狭い円に戻ってきたほうが,人として豊かになると思うんです.

 サッカーで言えば,サッカーだけを極めて,「サッカーで世界一になる」とか「サッカーで世界一の選手になる」ことだけを目標にしていると,例えば負けたり,サッカーで挫折したりすると,それ以外のことが幸せに感じなくなってしまうのかもしれませんが,澤さんは昔から,「なでしこジャパンの選手はサッカーを極めつつも,審判や相手選手ともきちんと話せるよう,英語も学んだほうが良い」と言っていたり,僕に「医療や経営の話を聞かせてよ」と言ってきたり,フィールドの広さがありますよね.その視野の広さは昔からずっと持っているなと思っているんですが,生き方の中心にあるのがサッカー選手として一流であることだけじゃないというのは,スポーツ選手としてはかなり珍しいと思います.

研究のすゝめ・6

研究的好奇心から臨床現場への還元と成果—症例の出会いと謎解きの面白さ

著者: 藤田清貴

ページ範囲:P.566 - P.572

はじめに

 臨床検査は病気の診断や治療効果を判定するうえで必要不可欠なものであり,診療支援ができる実践的な知識と技術を身につけ,検査値から病態を推測できる質の高い臨床検査技師の育成を望む声が大きくなっている.一方,臨床検査技師は,医療機関で活躍する以外に,生殖医療分野における臨床エンブリオロジスト,科学捜査研究や製薬・試薬関連企業での研究開発など,これまで以上に幅広い分野での活躍が期待されている.そのためには,高度な専門知識と応用能力をもち,科学的視野および技術で問題解決のできるbiomedical laboratory scientistとしての臨床検査技師の育成が急務である.そこで本学では,国家資格を取得するためだけの教育ではなく,実践的な知識と技術能力を身につけ,検査値から病態を推測し診療支援ができる臨床検査技師,および検査技術学を応用しscientistとして他分野で活躍できる臨床検査技師の育成を目的とした“検査技術学科”を2013年にスタートさせた.現在,教育現場にかかわって約18年であるが,表1に示したように,約25年間は一般病院の臨床現場で臨床検査技師として働いていた.

 今回,長年の臨床・教育現場での経験を踏まえ,いかに研究的好奇心が大切か,さまざまな症例との出会いと“謎解き”がいかに面白いかを紹介しながら,臨床現場への還元とその成果について述べてみたい.

生理検査のアーチファクト・14

—脳波検査④—心電図による脳波のアーチファクト

著者: 石郷景子

ページ範囲:P.584 - P.587

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1〜4には共通のアーチファクトが混入している.波形全体に混入しているが,漠然としているので一部を指摘する.図1,3,4の□と図2の●印はなんだかわかるだろうか?

 図1は46歳,男性.脳梗塞の精査のため脳波を実施した.身長167.5cm,体重110.6kg,BMI(body mass index)39.4kg/m2.全誘導に規則的に混入しているのは,心電図のR波である.心電図記録を同時記録しておくとわかりやすい.図2は10カ月,男児.発熱にて入院した.成人と比較するとわかりづらいが,●印の棘波は心電図記録のR波と同じ部位に一致するので心電図のR波である.図3は3カ月,男児.心肺停止蘇生後の脳波実施である.脳波記録に出現しているのは,脳波ではなく全てが心電図記録に一致したR波とT波の混入である.いわゆるECI(electrocerebral inactivity)の脳波である.図4は図3の5倍感度の脳波である.感度を上げると振幅自体も高くなり,T波がδ波に見えたり,R波とT波が重なって突発波に見えたりするが,心電図記録と一致することと,こんなに規則正しい突発波はないことで心電図の混入であると理解できる.

臨床医からの質問に答える

検査室にある分析装置はなぜ1社に統一されていないのですか? 

著者: 原田雅章

ページ範囲:P.574 - P.578

はじめに

 臨床検査では多岐にわたる検査項目の測定を行っている.それに伴い,測定を行う臨床検査分析装置も多く存在している.今回は主に生化学・免疫検査における分析装置について述べたい.

 現在,生化学分析装置および免疫分析装置を販売しているメーカーは16社(少数項目測定分析装置メーカーを除く)あり,分析装置は70機種(1社で複数機種販売しているものを含む)を超える.分析装置は大量の検体を迅速かつ正確に処理し,操作者の負担を軽減するためになくてはならないものとなっている.このような現状のなか,検査室では自施設の運用に適した分析装置を選定し,検査を行っている.その結果,複数の分析装置を扱い検査を行う必要性が発生する.

臨床検査のピットフォール

ミオグロビン尿の色調に注意を!

著者: 山本裕之

ページ範囲:P.580 - P.583

はじめに

 横紋筋融解症などでは,筋細胞から流出した多量のミオグロビン(myoglobin:MYO)は尿細管を傷害する.尿細管腔で形成されたMYO円柱が,尿細管を閉塞することで急性尿細管壊死を引き起こす1).全急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の7〜10%が横紋筋融解症によるもので,横紋筋融解症のうち13〜50%がAKIを発症するとの報告がある2).MYO尿は褐色〜赤紫色などさまざまな色調で表現されており3),学生のときにはコーラ色を呈していると教わった方もいると思う.

 先日,当院で横紋筋融解症の患者が救急搬送されてきた際に,尿試験紙で潜血(3+)であったが,尿沈渣には赤血球(red blood cell:RBC)はなかったため「溶血?」のコメントで臨床にデータを送付した.臨床側から横紋筋融解症の疑いがあり,「尿中にMYOが出ていないか」との問い合わせがあった.担当者はMYO尿をみた経験がなく,「色調から判断するにMYO尿の可能性は低いと思います」と返答した.しかし後ほど測定した結果,血中MYO濃度は約2.7万ng/dLであり,尿中MYO濃度は約8万ng/dLと異常高値であった.早急に輸液による腎保護療法を開始したために,AKIから慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に至りはしなかったものの非常に危険な状態であった.

 このように色調のみで判断することは非常に危険な行為であり,MYO尿=褐色〜赤紫色という思い込みは捨てるべきではないかと考える.

Q&A 読者質問箱

分析装置の精度管理で管理外れが出たときの対応について教えてください.

著者: 細萱茂実

ページ範囲:P.588 - P.590

Q 分析装置の精度管理で管理外れが出たときの対応について教えてください.

A 精度管理で広く用いられる管理図は,値が一定した管理試料を患者検体と同様に繰り返し測定し,それらの測定値から測定法の無視できない“かたより”と“ばらつき”の変化をチェックし,測定法が安定状態にあるか否かを判断します.

Laboratory Practice 〈管理・その他〉

JLACの現状と課題

著者: 真鍋史朗

ページ範囲:P.592 - P.596

はじめに

 検査結果を転記することを考えてみる.人が処理を行うときは,項目を見て書き写すため,項目名が漢字であろうとカタカナであろうと,少々間違いがあったとしても,それを補正して転記することができる(ただし,転記ミスが起きる可能性はある).しかし,コンピューターを用いて処理を行うときは,項目名が全く同じでないと,それは違うものとして捉えられるので,違った項目として転記されることになる.コンピューターを用いてデータ処理を行う際は,その間違いが極力少なくなるよう,項目名などはコードに置き換えられる.

 医療におけるビッグデータの代表的なものとして,臨床検査データがある.臨床検査データをいろいろな施設から集めて,個人の検査値の推移を見る,臨床研究などで比較するためのデータとして利用するなど,さまざまな活用方法が考えられるが,そのためには,同じ項目は同じコードにしなければならない.そのような用途で使えるコードとして,わが国では,一般財団法人医療情報システム開発センター(Medical Information System Development Center:MEDIS-DC)の臨床検査マスターが標準コードとして厚生労働省より認可されている.ただ,臨床検査マスターは,臨床検査医学会が管理・運用している臨床検査項目分類コード(japan laboratory code:JLAC)を基に作成されているため,生化学などの検体検査に関しては実質的にJLACが標準コードとなっている.現在使われているのは,第10回改訂版のJLACであり,これはJLAC10(JLAC version10)と呼ばれている.

ワンポイントアドバイス

ファンギフローラY・Papanicolaou重染色—真菌形態を確認したいが細胞診標本が1枚しかない場合

著者: 植田清文

ページ範囲:P.598 - P.599

はじめに

 細胞診標本で真菌様成分が認められた場合,真菌形態を確認するためにGrocott染色が行われる.Grocott染色は真菌検出を目的にした優れた染色法であるが,標本がPapanicolaou染色標本1枚しかない場合,それをGrocott染色してしまうと,Papanicolaou染色標本がなくなることになるので躊躇する.今回,Papanicolaou染色と重染色できる簡便な真菌染色キットであるファンギフローラY(トラストメディカル社)について,その工夫を含めて紹介する.

ラボクイズ

微生物検査

著者: 山田景土

ページ範囲:P.602 - P.602

4月号の解答と解説

著者: 青木優子

ページ範囲:P.603 - P.603

書評

誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた

著者: 芦澤和人

ページ範囲:P.554 - P.554

「見えかたのメカニズム」から考える必読の書

 小林弘明先生のご執筆による胸部画像診断の入門書『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』が刊行された.胸部単純X線写真に関する数多くの教科書が存在するが,本書はこれまでの他書とは異なる視点で記載されている.すなわち「画像の見えかたのメカニズム」から考える読影法が紹介されている.どうしてその陰影・線が見えるのか,反対に見えないかを解説しながら,陰影・線の写り方,見かたを習得し,1枚の画像からより多くの情報を取り出すことを目標としている.

 その目標を達成するために,本書には多くの工夫がなされている.まず,Introductionのところで,本書で使用されている最低限押さえておきたい画像ないしシェーマが紹介されており,特に重要なものは付録の「読影時必携!お役立ちシート」に掲載され,実際の画像を読影する際に有用である.CTの横断像やMPR画像が適切に配置されており,読者が胸部単純X線写真上の「陰影や線の成り立ちを考える」ことを容易にしている.また,さまざまな知識の習得と整理を目的として,たくさんのコラムが散りばめられている.本書には極めて多数の手術写真や病理標本,細胞診,組織像が掲載されているが,これらは,ほぼ全てが著者によって撮影されたものである.呼吸器外科医でありながら,画像診断から病理診断までを一人で手がけてこられた著者だからこそなし得た偉業であり,著者の豊富な知識と経験に基づいた完成度の高い専門書である.

脳腫瘍臨床病理カラーアトラス 第4版

著者: 中里洋一

ページ範囲:P.597 - P.597

気迫のこもった最新の標準アトラス

 日本脳腫瘍病理学会の編集による『脳腫瘍臨床病理カラーアトラス』が第4版へと改訂された.WHOが2016年5月に脳腫瘍分類,いわゆる「ブルーブック」(WHO Classification of Tumours of Central Nervous System)を第4版改訂版として出版したことを受けての大改訂である.一見すると大きな変更はないように見えるかも知れない.それはこの第4版が第1版(1988年),第2版(1999年),第3版(2009年)と続いた本書シリーズの伝統をしっかり受け継いで作られているからである.すなわち,A4判上製本の書籍であり,原則見開きページで1腫瘍型が完結しており,厳選された見応えのある写真を大きく掲載しており,本文は簡潔で明快を旨としている,等々である.しかし,一歩内容に踏み込んでみると本書が4名の編集委員の並々ならぬ熱意により,緻密に計画された完成度の高い書物であることがわかる.

 まず,著者が第3版の63名から99名へと大幅に増員されている.日本脳腫瘍病理学会の中核メンバーに加えて若手研究者を大幅に登用している.いわば学会の総力を挙げての著作であると言っても過言ではない.若手研究者の積極的な参加は,本書に新しい息吹を与えるとともに学会としての人材育成にも効果があると考えられる.本文の総論では脳腫瘍病理の歴史,新WHO分類,グリオーマの分子遺伝学,免疫組織化学が述べられ,現在の脳腫瘍病理の立ち位置が明確に示されている.

INFORMATION

第5回栄養管理研修会

ページ範囲:P.587 - P.587

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目次

ページ範囲:P.512 - P.513

第64回臨床検査技師国家試験—解答速報

著者: 本誌編集委員会

ページ範囲:P.600 - P.600

『臨床検査』5月号のお知らせ

ページ範囲:P.533 - P.533

あとがき・次号予告

著者: 種村正

ページ範囲:P.606 - P.606

 新緑の季節となりました.初々しい新人たちが一生懸命に仕事を覚えようとする姿は微笑ましいものです.私にもそんなときがあったのだなぁと数十年前を思い出します(笑).最近,ビックデータという言葉を耳にするようになりました.ビックデータとは,従来のデータベース管理システムでは記録や保管,解析が難しい巨大なデータ群のことを指します.いままでは管理しきれず見過ごされてきたデータ群を記録・保管して即座に解析することで,ビジネスや社会に有用な知見を得たり,これまでにない新たな仕組みを生み出したりするものとされ,医療分野では画像診断への応用が期待されています.今年に入って,国立情報学研究所に医療ビッグデータ研究センターが新設されました.2018年度は日本消化器内視鏡学会,日本病理学会,日本医学放射線学会が匿名化した画像データの登録を開始し,今後,連携する学会を増やしていくそうです.医療ビックデータを活用した人工知能(AI)によって画像診断が大きく変わっていくことが予見されます.私は30年以上も心エコーを行ってきましたが,たくさんの症例を経験して覚えていくことは王道だと思っています.しかし,新人たちがこれから10年,20年と活躍していくには,医療ビックデータを使いこなすことが必須となるでしょう.第4次産業革命時代の到来を感じます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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