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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術46巻7号

2018年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

高血圧

著者: 渡邉直

ページ範囲:P.730 - P.735

Point

●ほとんどが,原因の特定できない本態性高血圧です.

●高血圧は,“サイレント・キラー(沈黙の殺し屋)”と呼ばれており,放っておくと,脳卒中,心筋梗塞などの重大な病気を発症します.

●家庭での血圧測定が,高血圧診断と治療の成功の鍵です.

●診察室血圧140/90mmHg以上の全ての人が治療の対象です.治療の基本は,生活習慣の改善と降圧薬内服です.

●きちんと血圧を下げることで,寿命を延ばすことができます.

技術講座 病理 シリーズ 免疫染色(IHC/ICC)の基礎・1

免疫染色とは:オーバービュー

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.754 - P.764

Point

●原点:免疫染色の原点は,感染から獲得される“免疫”の仕組みであり,組織切片上や細胞上で抗原抗体反応を利用した方法である.

●種類:直接法と間接法の2種類の方法があり,“何を用いて可視化するか?”により,酵素抗体法や蛍光抗体法などの種類に分けられる.

●意義:病変の良性・悪性の判定や,細胞の由来,性質などを知ることができ,病理診断の補助的手段となる.さらに近年では,分子標的治療薬の適応を確認する目的でも用いられ,治療薬の選択にもかかわる重要な検査となっている.

病理・細胞診

パパニコロウ染色

著者: 布引治 ,   佐野太亮 ,   畠榮

ページ範囲:P.766 - P.771

Point

●細胞診は解剖学者パパニコロウ(Papanicolaou)が哺乳動物の排卵期を推測することから始まった検査法である.

●パパニコロウ染色はマッソントリクローム(Masson trichrome)染色の変法である.多彩な染め分けが可能で透過性が良好である.

●EA染色液はpH変化に注意する.染色液減量に対し継ぎ足しをすると,分量比やpH変化が起こり染色状態に影響を与える.

生理

—step up編—腎ドプラを用いたうっ血性心不全における腎実質内血行動態評価

著者: 瀬尾由広

ページ範囲:P.772 - P.779

Point

●中心静脈圧(CVP)の上昇によって生じる腎うっ血は,心拍出量に比べて腎機能低下と関連している.

●腎うっ血によって生じる腎髄質浮腫から腎髄質圧が上昇し,尿細管障害や虚血によって腎機能が悪化する.

●腎髄質近傍を走行する腎葉間静脈ドプラ波形は腎髄質圧を間接的に推定できる.

●腎葉間静脈ドプラ波形の非連続性パターンは心不全の予後不良と関係している.

トピックス

Staphylococcus pseudintermediusを見逃さないために

著者: 笠井智子

ページ範囲:P.736 - P.739

はじめに

 近年,犬の常在ブドウ球菌であるStaphylococcus pseudintermediusのメチシリン耐性株(methicillin-resistant S. pseudintermedius:MRSP)がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant S. aureus:MRSA)と誤同定される可能性のあることが明らかとなり,その鑑別が問題となっている.日々の検査でS. pseudintermediusを見逃さないために,本稿ではその疫学や性状について解説する.

多発性骨髄腫におけるマルチパラメーターFCM-MRD解析

著者: 名塚隆

ページ範囲:P.741 - P.744

はじめに

 多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)は形質細胞が腫瘍化したものであり,血清および尿中に単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)が増加し溶骨性病変,貧血,腎障害などを呈する疾患である1).近年MMの治療評価を目的としたマルチパラメーターフローサイトメトリー微少残存病変(flow cytometry-minimal residual disease:FCM-MRD)解析が注目されている.

FOCUS

煮込み料理で起こる食中毒—ウェルシュ菌に注意!

著者: 甲斐明美

ページ範囲:P.746 - P.749

はじめに

 ウェルシュ菌による食中毒は,腸管出血性大腸菌O157やカンピロバクターによる食中毒ほど認識されていない.しかし,2017年には,飲食店や給食などで提供したカレーライスなどを原因とするウェルシュ菌食中毒が各地で発生し,注目されることが多かった.本稿では,食中毒起因菌として重要なウェルシュ菌の特徴とその食中毒について紹介する.

可溶性フィブリン(SF)の深部静脈血栓症の診断における有用性

著者: 勝部瑞穂 ,   三島清司

ページ範囲:P.750 - P.753

はじめに

 深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)とは,四肢または骨盤部の深部静脈に生じる血栓症であり,血管内に生じた血栓が血管壁から剝がれ肺の血管へ流れて詰まる肺血栓塞栓症(pulmonary embolism:PE)の原因ともなる.一般的にはエコノミー症候群とも呼ばれ,大震災後の突然死の原因としても注目されている.

過去問deセルフチェック!

心エコー検査

ページ範囲:P.744 - P.744

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.805 - P.805

 図1は胸骨左縁左室長軸断面のカラードプラ像である.1.三尖弁閉鎖不全では三尖弁逆流が描出されるが,この断面では三尖弁が見えていないため否定できる.三尖弁逆流は四腔断面や右室流入路長軸断面で描出される.2.心房中隔欠損では左房から右房への短絡血流,あるいは右房から左房への短絡血流が描出されるが,この断面では心房中隔や短絡血流が見えていないため否定できる.心房中隔欠損の短絡血流は四腔断面で描出される.3.僧帽弁閉鎖不全の所見である僧帽弁逆流は,胸骨左縁左室長軸断面で収縮期に描出される.4.心室中隔欠損では胸骨左縁左室長軸断面で左室から右室への短絡血流が収縮期に描出される(図2,橙矢印).しかし,図1ではみられないため否定できる.5.大動脈弁閉鎖不全では大動脈から左室に逆流する大動脈弁逆流が描出されるが,その時相は拡張期であるため否定できる.

疾患と検査値の推移

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)

著者: 長谷川寛雄

ページ範囲:P.780 - P.785

Point

●成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は難治性の白血病・リンパ腫である.その病態は多彩であり,病態によって注目すべき検査値も変わりうる.

●診断,病型,予後の判断のために(異常)リンパ球数,LD,BUN,Alb,補正カルシウム(Ca)値が必要である.

●非ホジキンリンパ腫全般にマーカーとして使用されている可溶性インターロイキン-2受容体(sIL-2R)は本疾患の病態の変化の把握に大変役立つ.

臨床検査のピットフォール

コアグラーゼ試験の基本とピットフォール

著者: 二本柳伸

ページ範囲:P.786 - P.789

はじめに

 コアグラーゼは,Staphylococcus属を同定するうえで最も重要な性状(特徴づけ)の1つであることから,コアグラーゼ試験の鑑別価値は高いといえる.同定とは,“いままでに名を付けられた菌種と同じであると判定すること”であり,特徴づけできる性状の相似性によって行われる.コアグラーゼ試験はS. aureusがガチョウやヒト,ウマ,ヒツジのプラズマ(血漿)を凝固させたという現象から発展してきた1,2).Gratia3)はこの活性因子をスタフィロコアグラーゼと呼称したが,スタフィロコアグラーゼには少なくとも2種類の物質,遊離型コアグラーゼと結合型コアグラーゼ(クランピング因子)が関与している.

 本稿では,日常検査で使用されているコアグラーゼ試験の基本とピットフォールに対する注意すべきポイントを解説する.

Laboratory Practice 〈生理〉 シリーズ 超音波検査の導入奮闘記・1

VA超音波検査始めます

著者: 森真有子 ,   吉道丈

ページ範囲:P.790 - P.793

医師:VA超音波検査をやってもらえませんか.

技師:先生,VA超音波検査ってなんですか?

臨床医からの質問に答える

LDL-C値の測定法には計算式と直接法がありますが,使い分けや注意点はありますか? 

著者: 三井田孝

ページ範囲:P.794 - P.798

はじめに

 LDL(広義)は,low-density lipoprotein(低比重リポ蛋白)の略称で,比重が1.006〜1.063のリポ蛋白である.LDLはリポ蛋白のなかで最もコレステロール含有率が高く,中間比重リポ蛋白(intermediate-density lipoprotein:IDL,比重1.006〜1.019)と,狭義のLDL(比重1.019〜1.063)に分けられ,LDL分画中のコレステロール濃度をLDLコレステロール(LDL-cholesterol:LDL-C)と呼ぶ.臨床検査では,LDL-Cは広義のLDL分画のコレステロール濃度として測定されている.

 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」1)では,高コレステロール血症をLDL-Cの値に基づき診断する.本ガイドラインでは,10年以内の冠動脈疾患発症率を吹田スコアで計算し,血清脂質の管理目標値を設定する.吹田スコアの計算にはLDL-C値が必要であり,正確な値であることが求められる.臨床的には,LDL-C値は計算式かLDL-C直接法により測定される.

Q&A 読者質問箱

梅毒はなぜ,いま増えてきているのですか?

著者: 早川瑞穂

ページ範囲:P.799 - P.802

Q 梅毒はなぜ,いま増えてきているのですか?

A 梅毒は,性的な接触(感染者の粘膜や皮膚との接触)などによってうつります.具体的には,性器と性器,性器と肛門(アナルセックス),性器と口(オーラルセックス)の接触などが原因となる感染症です.また,胎盤を介した母子感染(先天梅毒)や針刺し事故などの医療行為に伴う感染も起こりえます.原因は梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum subsp. pallidum:TP)という病原菌で,病名は症状にみられる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに由来します.

ワンポイントアドバイス

遊走する菌を含む検体から,必要な菌を検出する方法

著者: 鈴木貴弘

ページ範囲:P.803 - P.805

はじめに

 プロテウス属など遊走(swarming)の性質をもつ菌種は,ほかの原因菌の分離を困難にすることが多く,昔から問題になっている菌である.今回,当院で日常検査の検体においてプロテウス属が混入した場合に,ほかの菌を選別する方法を紹介する.

連載 生理検査のアーチファクト・16

—神経伝導検査①—ハムフィルターの影響

著者: 伊藤栄祐

ページ範囲:P.806 - P.808

神経伝導検査のアーチファクト

 神経伝導検査は,電気刺激によって誘発される筋および神経の活動電位を波形として記録する検査である.その原理は比較的単純なものであり,波形の記録だけであれば一定期間の練習で,比較的容易に実施することができる.しかし,正しい検査結果を報告するためには,専門的な知識とテクニックに基づく“正確かつきれいな波形”を記録することが必要不可欠である.神経伝導検査におけるアーチファクトは,それらの弊害となる事象であり,“正確かつきれいな波形”を記録するためには可能な限りアーチファクトを除去する必要があると考える.

 アーチファクトの原因として,主に被検者側の要因,機器や周辺環境に起因するものが挙げられる.今月号から5回にわたり,神経伝導検査のアーチファクトについて解説する.

ラボクイズ

血液検査

著者: 井本清美

ページ範囲:P.810 - P.810

6月号の解答と解説

著者: 青木優子

ページ範囲:P.811 - P.811

書評

よくわかる血液内科

著者: 本郷偉元

ページ範囲:P.745 - P.745

血液疾患の初期対応力が向上し,専門医に適切につなげられるようになる一冊

 本書の著者は,私の初期研修病院の先輩である萩原將太郎先生である.同院では在籍期間が重ならず,直接のご指導は受けなかったが,武勇伝はいくつも伺ったことがあった.萩原先生が内地に戻られて少し経った頃からであろうか,今に至るまでご指導ご厚誼をいただいている.

 本書は,専門家として,内科医として,そして教育者として,そのどれもで超一流であり,何より努力家である萩原先生の真骨頂とも言える魅力に溢れている.専門家としての側面は,さまざまな疾患や病態の機序を基礎医学の面からもわかりやすく解説されている点,最新の診断基準が豊富に記載されている点などに垣間見ることができる.内科医としての側面は,症例の身体所見で腱反射などの神経学的診察,Ⅳ音,Ⅱp亢進,眼底所見などを記載している点,p105の「もちろん結核は常に除外すべき疾患です!」というコメントやp184にランセット状のグラム陽性双球菌である肺炎球菌の喀痰グラム染色写真を載せている点などからもにじみ出てくる.教育者としての側面は,解説がクリアカットで教わる側の立場を大事にしている点,末梢血塗抹を医師が実際に見ることの重要性を強調していること,症例の解説で思考経路を的確に示していることなどから伝わってくる.

微生物プラチナアトラス

著者: 大塚喜人

ページ範囲:P.765 - P.765

微生物検査・感染症診療のバイブルとして,そばに置いておきたい1冊

 本書の著者である佐々木雅一先生との出会いは15年ほど前のことでした.当時,美唄労災病院(現;北海道せき損センター)に勤務していた佐々木先生は,評者が旭川,札幌へセミナー等の講演に訪れる度に熱心に聴講してくれていたことをよく憶えています.少々日本人離れした彼の鼻の高さと,下がった目尻は印象的で,一度会ったら忘れはしない男前です.

 あるセミナーの閉会後,聴講者との懇親の場において,佐々木先生は評者にたくさんの質問をぶつけてきました.詳細は既に記憶から消えてしまいましたが,臨床微生物検査に従事する臨床微生物検査技師として,極めて重要な考え方を持つ先生だなと強く印象に残りました.以来,事ある毎に佐々木先生に注目してきましたが,人事異動によって神奈川県に来たかと思うと,そこを退職され東京都内の現職に転職し,その存在感をも大きくしていきました.そんな佐々木先生が趣味でもある写真の技術を活かして,感染症医の岡秀昭先生と共に,渾身の1冊「微生物プラチナアトラス」を作り上げました.

第40回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.764 - P.764

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目次

ページ範囲:P.728 - P.729

『臨床検査』7月号のお知らせ

ページ範囲:P.727 - P.727

あとがき・次号予告

著者: 大楠清文

ページ範囲:P.814 - P.814

 第7号をお届けします.この「あとがき」を5月5日の“こどもの日”に書いておりますが,今朝の新聞に15歳未満の子ども数は1,553万人で,1950年以降で過去最低となったことが掲載されていました.一方,2017年全国犬猫飼育実態調査によれば,ペットの数は約1,845万頭(犬は892万頭,猫は953万頭)といまや15歳未満の子どもの数より多くなっているようです.犬といえば,今年の干支も“戌年”,動物に関係する“感染症ネタ”をご紹介します.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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