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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術46巻8号

2018年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

胆石症

著者: 黒崎哲也

ページ範囲:P.818 - P.824

Point

●胆石症は主に胆嚢結石症を指し,胆嚢結石の65%はコレステロール胆石,35%が色素胆石である.

●胆石の症状には,食後の突然の右季肋部痛,心窩部痛,嘔気,嘔吐,背部痛などがみられるが,無症状で経過するものも80〜90%程度存在する.その一方で,炎症を起こし重篤化する症例も1%前後だが存在する.

●検査では超音波検査がスクリーニングとして有用である.その他,総胆管結石の存在や治療方針の決定のためにCT,MRCP,ERCP,DIC-CTなどが施行される.

●有症状胆石に対して最も確実な治療は手術治療である.現在は腹腔鏡下胆囊摘出術(Lap-C)が最も多く行われているが,状況により開腹手術も選択される.

技術講座 病理 シリーズ 免疫染色(IHC/ICC)の基礎・2

免疫染色の実際① 染色前準備

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.838 - P.846

Point

●免疫染色では特に固定液,固定時間が肝である.

●切片の伸展温度と伸展時間が染色性に影響する.

●伸展後は確実に切片を乾燥させることで切片の剝離を防止できる.

●2016年にセルブロック法による標本作製が860点で保険収載されたことにより,セルブロック法による免疫染色も増えてきた.

一般

尿沈渣における悪性(異型)細胞の鑑別法—上皮細胞判定を取り巻く臨床情報の把握

著者: 藤利夫 ,   小材和浩 ,   余門誠

ページ範囲:P.847 - P.854

Point

●尿路に発生する悪性腫瘍は,病理組織学的に約90%が尿路上皮癌(UC)であり,残り約3〜5%が腺癌および扁平上皮癌といわれている.よって,多くの労力はUC(特に,高異型度)の同定に向けられる.

●尿中上皮細胞を判定する場合,機械的尿採取・膀胱炎や尿路結石・ウイルス感染・各種癌治療の影響・腎障害などの症例(反応性変化)は,悪性(異型)細胞との鑑別に苦慮することがある.

●悪性腫瘍の診断で単純X線検査・コンピュータ断層撮影(CT)・磁気共鳴画像法(MRI)・内視鏡検査・超音波検査などの画像所見は,尿中形態検査(尿沈渣と尿細胞診)を評価するうえで有力な情報源となる.

輸血・遺伝子検査 シリーズ HLA-DNAタイピング検査・1

—step up編—HLA検査の意義

著者: 中村潤子

ページ範囲:P.855 - P.860

Point

●ヒト白血球抗原(HLA)は第6染色体短腕上に存在する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)であり,生体内で最も多型に富み,免疫応答や移植の成否に関与する.

●医療分野におけるHLA検査は,移植におけるドナーとレシピエントの組織適合性,血小板輸血不応時の血小板選択,各種疾患の診断補助の目的で実施される.

●HLA型は従来,リンパ球細胞傷害性試験(lymphocyte cytotoxicity test:LCT)による血清学的検査法で分類されていたが,遺伝子解析技術の進歩により遺伝子レベルでの分類へと変化した.現在はPCR法に基づき遺伝子多型を判定するDNAタイピング法が主流となっている.

トピックス

臨床検査技師による検体採取

著者: 諏訪部章

ページ範囲:P.826 - P.828

はじめに

 2015年3月まで臨床検査技師(以下,検査技師)が行える検体採取は静脈採血のみであった.骨髄穿刺時や内視鏡検査時に立ち会って得られた検体をその場で前処理し,検査室に運搬して検査を行うことはあっても検査技師が直接採取することはできなかった.しかし,2015年4月1日に「臨床検査技師等に関する法律施行令等の改正」が施行され,一部の微生物学的検査目的の検体採取が実施できるようになった1)

 本稿では,検査技師による検体採取の意義,検体採取における必要事項・注意点,教育カリキュラムについて解説する.

リキッドバイオプシーの現況

著者: 西尾和人 ,   坂井和子

ページ範囲:P.830 - P.833

リキッドバイオプシーとは

 liquid biopsyという言葉が欧米で用いられるようになり,近年,わが国でもリキッドバイオプシーという用語が汎用されるようになってきた.“液性検査”と和訳され,血液サンプルを用いた遺伝子検査を指すことが多い.液性検体のため,血液以外にも尿,唾液,胸水,腹水,脳脊髄液なども用いられる.一方,従来の血液腫瘍マーカーは蛋白質,ペプチドなどを解析するのでリキッドバイオプシーとは称されない.

 リキッドバイオプシーはさまざまな疾患で臨床応用が検討されており,特に癌領域では大変注目されている.癌は,腫瘍の増殖,進展などを制御する遺伝子の変化の蓄積により発生するため,癌における遺伝子異常を検出し,治療につなげるコンパニオン診断,癌ゲノム医療がこれからの精密医療には重要である.しかし,腫瘍は非常に不均一であり,治療経過中に変化する.また,固形癌では,一般的に治療経過中に複数回の遺伝子検査を実施するための腫瘍組織の侵襲的な再生検は困難である.そこで,主に血液中に存在する腫瘍由来物質を用いた遺伝子変化の検出が行われている.

FOCUS

微生物検査室をもたない検査室に必要な微生物検査の知識

著者: 中村久子 ,   木村聡

ページ範囲:P.834 - P.837

はじめに

 2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」が策定され,薬剤耐性菌の対策に国を挙げて取り組む姿勢が求められるようになった.しかし,AMR対策の要となる微生物検査室が,度重なるコストダウンの圧力で外注化されるケースも少なくない.外部委託に伴う大きなデメリットは,常在菌や弱毒菌による感染の見逃し,結果報告の遅延,主治医にしか情報が行かないことによるアウトブレイク把握の困難性などがある1).しかし,たとえ微生物検査室がない不利な条件であっても,感染対策に携わるスタッフは微生物検査の結果と向き合わなければならない.本稿では微生物検査が専門ではない臨床検査技師のため,特に迅速な対応と対策が求められる薬剤耐性菌についてお伝えする.

過去問deセルフチェック!

心電図検査

ページ範囲:P.861 - P.861

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.888 - P.888

 心電図波形に余計な電気信号(アーチファクト)が入ってしまうと,心電図波形が見にくくなるだけでなく,誤った診断を下すこともある.そのため心電図を正しく判読するためには,できるだけアーチファクトを除去することが大切である.

 アーチファクトには,交流障害,筋電図の混入,基線の動揺の3つがある.心電図のⅡ誘導を拡大すると,基線部分に規則正しい波が連続的に認められる.これは交流障害(hum)と呼ばれるもので,周波数は50ないし60Hzである.交流障害の原因は,電源コードと電極を装着している人の間に起こる静電誘導,配線に電気が流れるときに起きる電磁誘導,コンセントから漏れている微弱な交流電流などがある.これらの原因を除去するためには,併用機器を遠ざける,不要な電気プラグをコンセントから抜く,周辺で電気機器を使用しない,誘導コードを束ねる,皮膚と電極との接触抵抗を小さくする,アースを確実に装着するなどの方法がある.特に電気毛布,電気アンカ,モーター類などの電気製品が交流障害の原因になりやすいため,近くにあれば電源を切り,コンセントから抜くとよい.

疾患と検査値の推移

再生不良性貧血における血算と骨髄像の変化

著者: 臼杵憲祐

ページ範囲:P.862 - P.869

Point

●再生不良性貧血は,造血幹細胞が減少して,骨髄の低形成と汎血球減少を呈する症候群である.

●特発性と二次性の薬剤性や肝炎関連などがある.多くは造血幹細胞に対する免疫学的な障害である.

●日本における罹患率は年間100万人に8.2人であり,まれではあるが,欧米諸国に比べて数倍高い.

●診断には採血検査,骨髄検査,胸腰椎体のMRIなどが必要である.

臨床医からの質問に答える

穿刺液を血液培養ボトルで培養検査に提出できますか?

著者: 黒沢未希

ページ範囲:P.870 - P.873

はじめに

 穿刺液とは脳脊髄液や胸水,腹水,関節液などを穿刺して得た体液のことであり,検査には,一般的な性状検査や生化学検査,細胞学的検査,細菌学的検査などがある.通常は無菌であるため,感染部位より直接採取された穿刺液から細菌が検出された場合,細菌性髄膜炎や化膿性胸膜炎などの確定診断を行うことができる.感染症診療において起炎菌を特定することは重要であり,適切な抗菌薬治療を行うためには,検出菌の薬剤感受性試験を行う必要がある.しかし実際は,抗菌薬の先行投与や穿刺液の採取量,穿刺部位,採取・保存方法などのさまざまな要因により,起炎菌を検出することができない場合もある.

 今回のテーマである「穿刺液を血液培養ボトルで培養検査に提出できますか?」は検査室でも賛否両論がある質問であると考えられる.なぜならば,穿刺液からの起炎菌の検出率を上げたいという臨床側の意図とは別に,穿刺に伴うコンタミネーションやコストの面など,避けては通れない問題が多くあるからである.

 そこで本稿では,血液培養ボトルで培養検査を行うことによるメリット・デメリットについて,実際に検査を行っている臨床検査技師の立場なりの意見を述べたい.

Laboratory Practice 〈輸血〉

直接クームス試験の目的と結果解釈

著者: 福吉葉子

ページ範囲:P.874 - P.879

クームス試験

 クームス試験は,1945年Robert Royston Amos Coombs(英国)ら1)が開発した検査法であり,抗グロブリン試薬(クームス試薬)を用いた赤血球凝集反応により赤血球の細胞膜に免疫グロブリンが結合しているか否かを調べる方法です.検査法を開発したクームスの名前に由来し,クームス試験とも呼ばれていますが,現在は抗グロブリン試験(anti-globulin test:AGT)と呼ばれることが一般的であり,直接クームス試験は直接抗グロブリン試験(direct antiglobulin test:DAT),間接クームス試験は間接抗グロブリン試験(indirect antiglobulin test:IAT)といいます.AGTに用いられるクームス試薬には,通常抗IgG抗体と抗補体が含まれています.

〈生理〉 シリーズ 超音波検査の導入奮闘記・2

看護師さんのアドバイス

著者: 森真有子 ,   吉道丈

ページ範囲:P.880 - P.883

看護師:VA(vascular access)超音波検査を始めたそうですね.

技師:はい.経験が浅くまだまだうまくはできないですが.VA超音波検査の所見は透析室の看護師さんからみて役立っていますか?

臨床検査のピットフォール

当直で不慣れな髄液検査を行うときの注意点

著者: 長嶌和子

ページ範囲:P.884 - P.887

はじめに

 髄液検査の適応がある疾患には髄膜炎や脳炎といった中枢神経系感染症をはじめ,くも膜下出血,多発性硬化症,脳ヘルニア,脊髄疾患,ギラン・バレー(Guillain-Barré)症候群,脳腫瘍,白血病の髄膜播種などがあります.

 これらの疾患の診断と経過観察のために髄液検査が施行されますが,実際には患者が発熱や頭痛,嘔吐を起こしており,診察の結果,頸部硬直などの髄膜刺激徴候を認めた際の原因究明のために検査されることが多く,髄膜炎と脳炎がその主体をなしています1)

 髄液検査における検査所見は,患者の予後に大きく関与しているため,専任技師がいるとは限らない当直時においてもその緊急性は高く,適切な治療方法の選択のために正確で迅速な結果報告が求められます.本稿では細胞数の算定を中心に,慣れない髄液検査を行うときの注意点とその対策を挙げます.

Q&A 読者質問箱

CAPD排液の細菌培養方法について教えてください.

著者: 福元達也

ページ範囲:P.889 - P.891

Q CAPD排液の細菌培養方法について教えてください.

A 腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)は慢性腎不全の治療法の1つです.具体的にはカテーテルを用いて腹部に透析液を入れ,腹膜を透析膜として利用し,尿毒素および水分を血液から移行させ透析液を体外へ排出する治療法です.

ワンポイントアドバイス

臨床医が喜ぶ尿沈渣結果の付加価値コメント

著者: 田中佳

ページ範囲:P.892 - P.893

尿沈渣結果の付加価値コメント

 尿沈渣結果の付加価値コメントとは,成分報告以上の病因に関する情報1),あるいはその成分の出現における臨床的意義を確実に臨床に伝えることと思われる.その意味では「尿沈渣検査法2010」2)で推奨された糸球体型赤血球(変形赤血球からの名称変更)や外陰部からの混入成分に関するコメント,異型細胞の組織型や病態推定などは有用であり,的確にコメントできるよう研鑽を積む必要がある.

 また,医師が全く予想していない病態を示唆する成分が突然出現することがあり,この場合も臨床的意義が確実に伝わるよう電話連絡や付加価値コメントをすることは重要である.これまで筆者が経験した事例をもとに臨床医が喜ぶ尿沈渣結果の付加価値コメントについて考えてみたい.

連載 生理検査のアーチファクト・17

—神経伝導検査②—皮膚温の影響

著者: 伊藤栄祐

ページ範囲:P.894 - P.896

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1は,同一健常被検者の手首において正中神経を刺激し,第2指から電位を導出した感覚神経伝導検査の結果である.これらはある1点を除き,全て同じ条件で記録した感覚神経活動電位(sensory nerve action potential:SNAP)の波形であるが,波形①〜③は,見た目にも明らかに形状が異なっており,表1に示す各波形から求めた計測値でも差を認めている.電極位置,電極間距離,フィルター設定および刺激条件などは同じなのに,どうしてこのような変化が起こるのだろうか?

ラボクイズ

微生物検査

著者: 大塚昌信

ページ範囲:P.898 - P.898

7月号の解答と解説

著者: 井本清美

ページ範囲:P.899 - P.899

書評

子宮頸部細胞診運用の実際 第2版—ベセスダシステム2014準拠

著者: 伊藤仁

ページ範囲:P.829 - P.829

現場で有用なベセスダシステム2014手引書

 坂本穆彦先生編集の『子宮頸部細胞診運用の実際—ベセスダシステム2014準拠』の第2版が発刊された.執筆は坂本先生をはじめとし,今野良先生,小松京子氏,大塚重則氏,古田則行氏ら細胞診の第一線で活躍するエキスパートである.

 本書は「Ⅰ.ベセスダシステムの成り立ちとその要点および運用」「Ⅱ.判定の実際」「Ⅲ.報告書作成の実際」から構成されている.紙面を多く割いているのは「Ⅱ.判定の実際」であり,ベセスダシステムの項目に合わせて「A.標本の適・不適の評価」「B.陰性」「C.扁平上皮細胞異常」「D.腺細胞異常」「E.その他の上皮性腫瘍および神経内分泌腫瘍」「F.その他の所見」について多くの写真と詳しい記述が示されている.また,それぞれがさらに小項目に分けられ,代表的な細胞像の所見を箇条書きでリストアップされている.重要なポイントや注意点などは“memo”として適所にわかりやすくまとめられている.また,ASCやAGCなどしばしば遭遇する実際の運用上の問題点などについても,要所要所で丁寧に説明されている.例えば,「ASC-Hは,傍基底型の異型扁平上皮細胞に対して用いられる傾向にある.しかし,萎縮像に対する明確な取り決めがない.現実的には萎縮像における異型扁平上皮細胞が腫瘍による細胞変化なのか,炎症など非腫瘍性の細胞変化なのかを判断することは難しく,非腫瘍性の細胞変化もASC-Hとして評価しなければならない場合もある」(p.90)など,まさに実践向けの手引き書であるといえる.また,日米の判定基準の差についても,米国のCIS判定基準の一つである,「合胞性に出現する細胞像は,わが国でいうところの『異型未熟扁平上皮化生』『異型予備細胞増殖』の像と重複しているところがある」(p.104)など,わが国の細胞診の視点から解説されており,ベセスダシステム2014の理解を深めるために役立つであろう.

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目次

ページ範囲:P.816 - P.817

『臨床検査』8月号のお知らせ

ページ範囲:P.825 - P.825

あとがき・次号予告

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.902 - P.902

 そろそろ梅雨入りという時期にこのあとがきを書いています.本号がお手元に届く頃は,梅雨は明けているでしょうが,猛暑がどうなっているか心配しています.読者の皆さまにおかれましてはお元気にご活躍されておられることをお祈りするばかりです.

 さて,2018年2月号のあとがきで,検体検査の品質・精度の確保を盛り込んだ医療法等の一部を改正する法律が2017年6月7日に成立し,公布後1年6カ月後,つまり2018年のうちには施行されることを書かせていただきました.2017〜2018年にかけて開催された厚生労働省の計5回の検討会において具体的な基準が議論され,その取りまとめた内容も公表されました.ここでは,紙面に限りがあり検討会の詳細は書けませんが,医療機関を含め,検体検査の品質・精度を保つための基準が法令上定められることの意義は極めて大きいと考えられます.この法令改正はゴールというよりスタートラインであり,今後,多くの課題を解決していかなくてはいけませんが,サンプリングを含めた検体検査のプロとしての臨床検査技師の果たす役割はますます大きくなると思います.もちろん,検査の品質・精度を保つという観点では,生理検査を含めた全ての検査に通じることでもあります.ぜひ,読者の皆さまには,医療の根幹をなす臨床検査の原点を再確認していただければと思います.また,その際に,本誌がお役に立てることを願うばかりです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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