臨床医からの質問に答える
BNP検査は採血後何時間まで検査可能でしょうか?
著者:
吉本晋作
,
丸橋遼太
,
喜納勝成
,
三宅一徳
ページ範囲:P.1410 - P.1413
はじめに
脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide:BNP)は主に心室から分泌される32個のアミノ酸からなるホルモンで,心血行動態的負荷,特に心室負荷において主要に産生,分泌刺激される.血管拡張作用,利尿作用,ナトリウム利尿作用を有し,心筋障害や心筋負荷を呈する各種疾患,腎疾患において血中濃度が増加する.BNPは心筋細胞のストレスを反映するマーカーとして,心不全の診断や重症度評価,治療効果判定,予後予測ならびに潜在性心不全のスクリーニングに,日常臨床で広く利用されている1〜3).
一方BNPは血中のプロテアーゼによる分解を受けやすいため,保存安定性は良好ではなく経時的に低下することが知られている.したがって,BNPの分解を阻止するため血液へのEDTA(ethylenediaminetetraacetic acid)-2Naやアプロチニン(aprotinin)の添加,PET(polyethylene terephthalate)製採血管の使用,血漿の速やかな分離と凍結保存などの対策が行われている.現在では一般的にEDTA塩を添加することによりエンドペプチダーゼの補因子の金属をキレートし,その活性を阻害する方法が採られており,BNP測定には血清ではなく,EDTA加血漿が用いられる.しかしEDTA加血漿でもBNP分解を完全に阻止できるわけではなく,また溶血の影響(負誤差)も受ける.