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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術47巻2号

2019年02月発行

雑誌目次

病気のはなし

レジオネラ症

著者: 比嘉太

ページ範囲:P.100 - P.105

Point

●レジオネラ症の報告総数は経年的に増加傾向にあり,2016年には年間1,600例超の報告がなされている.

●レジオネラ肺炎は重症化する傾向が強く,臨床徴候としては意外な症状を伴うことが多い.検査では白血球数増多,CRP高値が認められ,低リン血症,CK高値などがみられることが比較的多い.

●診断のgold standardは分離培養による菌の検出であるが,尿中抗原検査が広く用いられている.

●レジオネラは細胞内増殖菌であり,治療薬にはキノロン系薬やアジスロマイシンなどのマクロライド系薬を用いる.

技術講座 生理 シリーズ 臨床に伝わる画像記録とレポート作成の工夫・1

腹部エコー

著者: 松田英世

ページ範囲:P.119 - P.124

Point

●超音波画像をパターンで理解するのではなく,解剖も併せてイメージする.

●拡大画像での撮影とリニアプローブを使用しての撮影を行う.

●正常と思われる領域と病変部との境界を意識した画像を記録する.

●画像記録とレポート作成は一体である.

一般

セルロースアセテート膜電気泳動を用いた蛋白尿の解析

著者: 久保田亮

ページ範囲:P.125 - P.130

Point

●尿蛋白濃度は血清蛋白濃度に比べ非常に低いため,セルロースアセテート膜電気泳動後に高感度銀染色液を用いる必要がある.

●セルロースアセテート膜電気泳動の結果を用いて,腎障害部位(糸球体障害型,尿細管障害型,混合型)の分類が可能である.

●学校検尿の三次検診において,無症候性蛋白尿について詳細に解析することで,早期発見・早期診断が行え,将来的に透析患者の減少につながることが期待される.

血液

造血器腫瘍におけるフローサイトメトリー検査

著者: 常名政弘

ページ範囲:P.132 - P.137

Point

●代表的な白血病の病型と,それらに特徴的な細胞の抗原の種類を覚えることが大切です.

●病型に合わせた測定方法の選択・gatingを行うことにより,正しい評価と解釈が可能となります.

●gatingを行う場合には,白血病細胞の形態観察も重要です.

病理

—step up編—コンパニオン診断としての肺癌遺伝子検査

著者: 羽場礼次

ページ範囲:P.138 - P.144

Point

●肺癌診療ではチーム医療へ参画するため,呼吸器内科医や外科医,病理医,検査技師で話し合いを積極的に行う.

●肺癌検体の取扱いでは,プレアナリシス段階の固定液,固定時間,固定法に関して自施設に適した方法を検討する.

●肺癌検体は1検体,1ブロックで作製後,HE染色検鏡後に通常の免疫染色に加え,コンパニオン診断用の未染色標本をオーダーする.

●EGFR,PD-L1,ALK,ROS1のコンパニオン診断は,手引き書を参考に決められた方法で検査を行い,評価や判定を行う.

トピックス

Dysgonomonas capnocytophagoidesの細菌学的特徴

著者: 松下久美子

ページ範囲:P.107 - P.111

はじめに

 グラム陰性の通性嫌気性球桿菌Dysgonomonas capnocytophagoidesは,2000年に登録された比較的新しい菌種である.現在のところ,生化学的性状を用いた同定キットでは菌種の確定が困難であり,検出されても誤同定することにより見逃している可能性がある.当院で分離した症例も,従来法では同定できず遺伝子検査で菌種を確定することができたが,本菌が示すいくつかの特徴を知り得た貴重な経験となった.本稿ではその経験をもとに,本菌の細菌学的特徴や類縁菌との鑑別点など,日常業務のなかで“D. capnocytophagoidesを見逃さずに出会う”ためのポイントについて解説する.

FOCUS

社会に出て活躍できる医療人の育成

著者: 香取尚美

ページ範囲:P.112 - P.114

はじめに

 まず今回の前提として,私の立場では,私どもの学校で行っていることを軸に述べさせていただくが,これはあくまでも臨床検査技師教育全般を担っているものではないということ,そして見解は,個人ではなく学校としての考えであるということをお断りさせていただく.そのうえで,依頼をいただいた今後の臨床検査を担う若手育成について考えてみたいと思う.

 現在の臨床検査技師教育の現場では,4年制教育・3年制教育,また承認校・指定校と形態はさまざまであり,資格取得という面では薬学部,獣医学部などの教育課程からでも国家試験は受験できる.そう考えると,何をもって臨床検査技師は臨床検査技師であるのだろうか? 本校は臨床検査技師教育に特化した専門学校であるが,ベースとなる考え方として,“臨床検査技師は医療人である”という観点から,医療人教育を行っている.専門性に特化した教育内容はもちろんのこと,現場に立ち続ける力と患者に寄り添える感性,そのうえで多様性を身につけることを大切にしている.そして,卒業後は,自らの力で成長する現場力をもった,そんな基盤のある医療人を輩出するために本校で行っているカリキュラムについて,その意味合いも含めて,いくつかご紹介したい.

見直そう睡眠検査と睡眠医学

著者: 河合真

ページ範囲:P.115 - P.118

はじめに

 睡眠検査をどう捉えるか?というのは“睡眠医学”をどう考えるかということに直結します.睡眠医学にとって,睡眠検査こそが“睡眠を観察する”ことができる手段であり,その目的のために睡眠検査は発展してきたからです.睡眠医学にとっての睡眠検査,特に終夜睡眠ポリグラフ(polysomnography:PSG)検査の発展の歴史は睡眠医学の発展の歴史そのものと言っても過言ではありません.そして,それに従事している臨床検査技師は,他の職種よりもヒトの睡眠をリアルタイムで見る面白さに触れるチャンスがあるともいえます.現在ではいろいろな分野出身の医療従事者が睡眠医学にかかわっていますが,睡眠医学の魅力の原点は“睡眠を観察すること”であって,そこから睡眠医学への興味をもつようになって参入するというのは,まさに“正統な”ルートであるといえます.逆に言うと,睡眠医学に少しでも興味をもったら睡眠検査を経験することは必須といえます.

 残念ながら,現在の日本では,睡眠検査を閉塞性睡眠時無呼吸症候群(obstructive sleep apnea syndrome:OSAS)の診断をするためのツールとして捉える考え方が多いです.「取りあえず無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)を出してくれたらそれでよい!」という意見もよく聞きます.確かにOSASは睡眠医学において最も多い睡眠関連疾患であり,それを診断することが日々求められています.そしてAHIが治療法の選択を決める指標〔AHIの値が20以上で持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)の適応になり,20未満で5以上だと口腔内装具の適応になります〕なので,忙しい日常診療の現場では「とにかくAHIを出してくれ!」となるのもわかります.しかしながら,睡眠関連疾患はOSASだけではありません.睡眠関連疾患国際分類という本を見てもわかる通り,睡眠関連疾患は種々さまざまであり,その診断の多くに睡眠検査が必要になってきます1).OSASの診療ができることは睡眠検査にとって“必要ではあるが,十分ではない”といえます.考えてみれば1つの医学分野にコモンな疾患とまれな疾患があるのは当たり前で,普通はそのどちらにも対応できなければ“専門科”を標榜できません.しかし日本における睡眠医学では,専門医制度はあれども総合的なトレーニングを施すことができる施設は極めてまれなので,OSAS診療に部分的にかかわるような科がその病院の睡眠診療を受けもっていることがほとんどなので,こういう誤解が定着してしまっているのです.

過去問deセルフチェック!

病理

ページ範囲:P.106 - P.106

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.178 - P.178

 病理診断はヘマトキシリン・エオジン染色(H-E染色)によって多くの情報が得られ,鑑別疾患を挙げることができるが,さらなる診断の裏付けや鑑別疾患の絞り込みを行うために,組織化学染色(一般に特殊染色と呼ばれている)や免疫組織化学染色が利用されている.組織化学染色は膠原線維,細網線維,弾性線維を染めだし,組織の線維化の程度や組織構築の把握,腫瘍の血管侵襲の有無の確認などに用いられ,その他にも粘液や脂肪,細胞内物質,病原微生物の証明に有用である.

 問題1は,生体内色素であるメラニンが皮膚の基底層にみられる像である.メラニンは生体内色素のなかでも非血色素性色素に分類され,皮膚の基底層以外にも毛髪,眼球,脳の黒質などに存在し,淡黄色,黄色,褐色,黒褐色,黒色などの色調を呈する.

臨床検査のピットフォール

髄液検体の取り扱い方,細胞診塗抹標本作製時のピットフォール

著者: 大田喜孝

ページ範囲:P.145 - P.149

はじめに

 脳脊髄液(髄液)は常に脳脊髄組織に接してくも膜下腔を循環しており,中枢神経系の病態を捉えるうえで格好の検査材料となる.しかし,髄液細胞はことのほかデリケートで壊れやすく,採取した髄液中の細胞変性速度は極めて速い.そのため,体腔液や尿などと同様の細胞塗抹法では細胞所見の詳細を十分に反映することができない.本稿では髄液細胞塗沫標本作製過程におけるピットフォールについて紹介し,その対応策について詳しく解説する.

疾患と検査値の推移

急性腎障害

著者: 鈴木俊嗣 ,   花房規男

ページ範囲:P.150 - P.157

Point

●ごくわずかのクレアチニン(Cr)の上昇も予後と関連することから,急性腎障害(AKI)は,従来の急性腎不全(ARF)に代わって,提唱された概念である.

●AKIの診断は,尿量とCrの上昇をもとにして行われる.

●ARFの病態を理解するうえでは,腎前性,腎性,腎後性に分けて考える必要がある.

●Crは,腎障害に遅れて上昇するため,より早期に診断可能な各種バイオマーカーが提唱されている.

Laboratory Practice 〈生理〉 シリーズ 超音波検査の導入奮闘記・7

下肢静脈超音波検査奮闘記

著者: 藤田昭寿 ,   富田則明

ページ範囲:P.158 - P.161

深部静脈血栓症

医師:今度から深部静脈血栓症の超音波検査をお願いできますか?

技師:それはDVTといわれるものですか?

経験を通して学んだBrugada症候群の対応

著者: 徳永実紗 ,   石山恵 ,   久保山美奈子 ,   石川未希 ,   光井朋子 ,   白井和之

ページ範囲:P.162 - P.166

はじめに

 Brugada症候群は,1992年にBrugadaらによって報告された疾患で,明らかな器質的基礎疾患を認めず,心室細動をきたし突然死にいたる可能性のある疾患である1).右側胸部誘導V1〜V3におけるcoved型またはsaddle-back型ST上昇を伴う右脚ブロックパターンの心電図波形が,本症候群の診断に重要である.この典型的心電図所見は副交感神経刺激により著明になり,交感神経刺激によって正常化するため2),日内変動および日差変動があり,夜間就眠時や早朝,食後に不整脈発作が多く発生する.よって,常に典型的心電図波形を示しているとは限らず,時には正常化しているため本症候群を見逃してしまう可能性がある.また,失神発作を起こした症例では,発作前の心電図が記録されているものは少ない.

 今回筆者らは,発作前や発作時の心電図を含め,臨床経過を通して多様な心電図変化を記録することができた症例を経験したため報告する.

Q&A 読者質問箱

癌細胞はなぜ腫瘍マーカー分子を産生するのですか?

著者: 大坪和明

ページ範囲:P.167 - P.169

Q 癌細胞はなぜ腫瘍マーカー分子を産生するのですか?

A とても根源的で,非常に意味深く挑戦的な疑問です.腫瘍マーカーの臨床的意義はすでに確立されたものですが,腫瘍マーカー分子が単に癌の進展に応じて出現・増加する生体成分なのか? それとも癌細胞にとって合目的な役割を担う機能分子なのか? という疑問は,これまで十分に明らかにされてこなかった一大命題といえるかもしれません.

臨床医からの質問に答える

各製剤(全血,赤血球濃厚液,新鮮凍結血漿,濃厚血小板)の内容量,輸血スピード,保存方法など,その他製剤の取り扱いについて教えてください.

著者: 津野寛和

ページ範囲:P.170 - P.173

はじめに

 輸血療法の基本的な考え方は,①補充療法であって,根本的な治療ではないが,臓器や細胞治療に匹敵する行為であること,および②必要な成分のみを輸血すべきであること,である.すなわち,同種(他人の)血液が輸血されることから,さまざまな免疫学的または非免疫学的な副作用が発症する可能性があり,必要な成分のみを使用することが大原則となっている.そのため,近年,全血製剤の使用は限定的となっており,本稿では説明を割愛する.貧血を伴う患者には濃厚赤血球製剤を,血小板減少症の患者には濃厚血小板製剤を,血漿因子,特に凝固因子が欠乏している患者には新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)を輸血する.

 現在,日本赤十字社血液センターで製造され,各医療機関に供給されている血液製剤の種類を以下に示す.

連載 生理検査のアーチファクト・22

—MRI検査②—化学シフトアーチファクト

著者: 高倉有 ,   佐藤英介 ,   磯辺智範

ページ範囲:P.174 - P.177

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1aは腹部のMRI(magnetic resonance imaging)(高速スピンエコー法 T2強調横断像)であり,左右の腎臓を縁取る白い帯(図1bの赤色で囲まれた領域)と黒い帯(図1bの黄色で囲まれた領域)を認める.これらは,化学シフトアーチファクトと呼ばれ,脂肪の位置がずれたように誤認されることによって発生するものである.どのような原理でこのアーチファクトが現れるのであろうか?

ラボクイズ

血液検査

著者: 市川佐知子

ページ範囲:P.180 - P.180

1月号の解答と解説

著者: 石田容子

ページ範囲:P.181 - P.181

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目次

ページ範囲:P.98 - P.99

『臨床検査』2月号のお知らせ

ページ範囲:P.131 - P.131

あとがき・次号予告

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.184 - P.184

 いま,とても12月とは思えない暖かさのなかで,このあとがきを書いています.厳冬も歓迎はしませんが,やはり,冬は寒いのが当たり前と思います.この当たり前のことを変えてしまう地球温暖化の問題の切実さをあらためて思います.本号がお手元に届く頃は,冬らしい寒さであることを願っています.

 さて,私の担当のあとがきでは,検体検査の品質・精度の確保を盛り込んだ医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)のことを書かせていただいておりましたが,とうとう,公布後1年6カ月後の2018年12月1日に施行となりました.検体検査を含め,臨床検査は医療の根幹を成すものですが,これは正しい検査結果があってのことです.この法令の目指す方向性は,検査に携わる者の思いと一致していると信じますが,この度の法令改正はゴールというよりスタートラインです.この法令の趣旨が検査現場で根付くように,いろんな立場で検査にかかわる者全員が努力せねばならないと考えます.また,本誌もそのためのよきツールになることを願っていますし,編集委員一同,そうなるよう努力したいと思います.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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