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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術47巻6号

2019年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

膵臓癌

著者: 中井陽介 ,   小池和彦

ページ範囲:P.652 - P.657

Point

●膵臓癌は膵管上皮由来の悪性腫瘍であり,罹患率は増加傾向が持続,予後不良であることから,わが国における癌死亡数の4位となっている.

●症状が非特異的なことが多く,早期診断が困難なため,外科的切除率も20%程度にとどまっている.

●膵囊胞,糖尿病,喫煙,家族歴などの危険因子が注目されているものの,膵臓癌のスクリーニング法自体は確立されていない.

●早期診断に有用な腫瘍マーカーはなく,CT,MRI,超音波内視鏡(EUS)などの画像診断では腫瘤の描出だけでなく,膵管の拡張などの間接所見を拾い上げることが重要である.

●切除不能例の予後は極めて不良であったが,近年の新規抗癌剤の開発により徐々に治療成績は向上している.

技術講座 生理 シリーズ 心エコー検査の基本的な描出法・計測法・2

ドプラ法

著者: 別當勝紀

ページ範囲:P.666 - P.673

Point

●心エコー検査の基本的な断面の描出ができるようになったら次のステップへ進みます.

●きれいなドプラ波形を出すための設定条件を挙げます.

●ドプラ計測時のドプラビームは血流方向と並行に入射させます.

●ドプラ計測には息止めなど被験者の協力を得る必要があります.

免疫

自己抗体検査—基礎と臨床応用

著者: 吉岡華子

ページ範囲:P.674 - P.678

Point

●蛍光抗体間接法による抗核抗体の蛍光パターンで推察できる疾患がある.

●自己抗体は特に全身性強皮症(SSc)と皮膚筋炎で臨床像と関連する.

●抗体によっては病勢までモニターできる.

微生物

菌種名から薬剤感受性結果の矛盾を読み解く

著者: 渋谷理恵

ページ範囲:P.679 - P.683

Point

●菌種により典型的な薬剤感受性パターンは決まっていますが,菌株によってはそのパターンから逸脱する感受性を示す場合があります.

●一般的に起こりやすいエラーに対しては,あらかじめ決められているルールに従って,検査値の修正などを行います.

●通常,みられないような検査結果が出た場合は,その結果が本当に正しい値なのかどうか,検査手技も含めて判断する必要があります.

●治療を誤った方向に導く可能性のあるvery major errorは,適切にチェックできる体制を作り,見落とさない工夫が必要です.

血液 シリーズ 末梢血液像観察の基礎・3

血小板編

著者: 風間文智

ページ範囲:P.684 - P.692

Point

●末梢血塗抹標本では,血小板を観察することも忘れないようにしましょう.

●血小板の形態異常(大型・巨大血小板,小型血小板,大小不同,異形成,凝集)をよく理解しましょう.

●EDTAによる凝集〔EDTA依存性偽性血小板減少症(EDP)〕が疑われる場合は塗抹標本をよく観察し,合わせて時系列データなどにも注意して判断しましょう.

トピックス

顆粒球系幼若細胞分類における内部精度管理

著者: 市村直也

ページ範囲:P.659 - P.662

はじめに

 顆粒球系幼若細胞(immature granulocytes:IGs)の分類では,検査者間の識別基準が異なることが問題となっている.今回,われわれはこのIGs分類における検査者間差を埋めるためのシステムを開発したので,概要を紹介する.

FOCUS

臨床検査情報システムの構築時における工夫

著者: 堀口久孝 ,   齊藤正二 ,   長谷川智子 ,   吉田博

ページ範囲:P.663 - P.665

はじめに

 臨床検査情報システムの導入に際しては,施設の運用設計に合わせてシステムの仕様や設定を調整する必要がある.その調整作業がシステム構築であり,システム構築過程における工夫によってシステムの導入成果をよりよくすることができる.工夫はさまざまあるが,これまでの経験をもとに,重要と考えるポイントを簡単に紹介する.

疾患と検査値の推移

血栓性血小板減少性紫斑病

著者: 髙蓋寿朗

ページ範囲:P.693 - P.697

Point

●血栓性微小血管障害症(TMA)は微小血管に血栓が形成され,それに伴う徴候を呈する病態である.

●TMAをきたす疾患のなかで,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は特に重篤な疾患であるが,早期の診断と治療開始により,救命することが可能となりつつある.

●TTPの発症にADAMTS13が関与することが明らかとなり,確定診断の方法が確立された.

●治療効果の評価は,症状,Hb値,血小板数の推移に加えて,ADAMTS13活性と抗ADAMTS13抗体価のモニターも有用である.

過去問deセルフチェック!

腫瘍マーカー,免疫組織化学的マーカー

ページ範囲:P.698 - P.698

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.713 - P.713

 厚生労働省の人口動態統計において,1981年以降,日本人の死因の1位は男女とも“がん”であることは周知のとおりです.高齢社会の背景もあり,癌患者数は増加の一途をたどっています.近年の医療技術の進歩により,生存率は大きく改善されていますが,生命を脅かす疾患であることに変わりありません.がんの発生部位別の死亡率は,男性では肺癌が特に高く,女性では大腸癌,肺癌です.

 今回,“がん”に対する臨床検査をテーマに,近年の国家試験問題から腫瘍マーカーおよび免疫組織化学的マーカーを取り上げました.腫瘍マーカー検査は,がん以外の疾患(良性腫瘍や慢性肝疾患,腎疾患,呼吸器や各種臓器の慢性炎症など)においても陽性になる場合があり,診断の感度・特異度が低いといった短所をもちます.しかしながら,がんの病期の分類,組織型判定,予後予測,治療効果判定や再発モニタリングに,広く利用が可能です.

ワンポイントアドバイス

膵臓エコーのコツとピットフォール

著者: 渡邊亮司

ページ範囲:P.699 - P.703

はじめに

 膵は,腹部正中付近から左背側にわたって位置する後腹膜臓器で,膵の全体像を描出,観察するためには工夫が必要です.膵の解剖学的部位は頭部〜鉤状突起(腹側膵),体部,尾部と区域されていますが,その境界は明瞭ではないため,観察する施行者がどの区域が描出されているかを把握しなければなりません.また,膵実質のエコー輝度は肝実質と同等の輝度から高輝度までさまざまです(図1).

連載 生理検査のアーチファクト・25

—MRI検査⑤—動きのアーチファクト

著者: 高倉有 ,   佐藤英介 ,   磯辺智範

ページ範囲:P.704 - P.707

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1a,bは,頭部のMR画像(高速スピンエコー法 横断像)である.同一人物,同一スライスの画像であり,図1aにはアーチファクトは認められないが,図1bには左右方向〔PE(phase encode)→:位相エンコードの方向〕に円弧状の曲線を認め,脳実質の評価が困難になっている.また,図1c,dは腹部のMR画像(グラジエントエコー法 横断像)であり,図1cでは左右方向(PE→),図1dでは上下方向(PE→)に白または黒色の円形像を認める(○:アーチファクト,○:腹部大動脈).

 これらは総じて動きのアーチファクト(モーションアーチファクト)と呼ばれる.図1bにおけるアーチファクトの発生要因は被検者の“ランダムな”動きによるもの,図1c,dにおけるアーチファクトの発生要因は被検者の“周期的な”動きによるものである.どのような原理でこのアーチファクトが現れるのであろうか?

臨床医からの質問に答える

イムノクロマト法の非特異反応(偽陰性・偽陽性)はどの程度の頻度で起こるのですか?

著者: 黒田雅顕

ページ範囲:P.708 - P.712

はじめに

 欧米ではlateral flow immunoassayと呼ばれるイムノクロマト法は,特殊な測定機器や測定技術を必要とせず短時間で結果を得ることが可能なことから,POCT(point of care testing)対応試薬として広く普及している.特に迅速診断試薬として病院臨床検査室,検査室をもたない病院で汎用されている.イムノクロマト法を原理とした妊娠検査薬である尿中hCG(human chorionic gonadotropin)検出試薬などもOTC(over the counter)試薬として以前から普及している.近年,排卵予測検査薬としてイムノクロマト法による尿中黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)測定検査薬が認可され,販売されているのは新しいところである.

 現在,イムノクロマト法を用いた測定検査項目は感染症診断を目的とした細菌やウイルス抗原・抗体をはじめ心筋マーカー,特異的IgE抗体,便潜血,薬物など多岐にわたり増加している.特にインフルエンザ抗原などの感染症項目については,測定試薬の性能向上により感度と特異性に優れたものが上市されている.また,対象となる検体の種類も多様になり,尿,血液成分(血清,血漿,全血)以外に,便,涙液,鼻腔拭い液,咽頭拭い液,唾液などが検査検体となり,検体前処理が必要なキットも多くなってきている.本稿では,イムノクロマト法の偽陰性・偽陽性発生の背景について考える.

臨床検査のピットフォール

尿沈渣検査における細菌判定のピットフォール

著者: 松村隆弘

ページ範囲:P.715 - P.718

はじめに

 細菌尿は尿路感染症(urinary tract infection:UTI)において極めて重要な所見であり,UTIのスクリーニング検査として有用なのが尿定性試験と尿沈渣の鏡検である.

 尿定性試験では白血球エステラーゼ試験と亜硝酸塩試験の結果がUTIの指標として用いられている.白血球エステラーゼ試験の感度は75〜96%,特異度は80〜90%であるため,陽性であれば膿尿と判断できる.一方,亜硝酸塩試験の感度は25%程度と高くはないが,特異度は>90%と高く,陽性であれば有意な細菌尿と判断可能である.しかし,偽陰性要因を考えると,一方またはどちらも陰性の場合でもUTIを否定することはできず,最終的に尿沈渣所見が重要となる.尿沈渣の結果で,膿尿〔>5WBC/HPF(white blood cell/high power field)〕,細菌(1+)を確認できれば,症状および所見と合わせUTI診断を確定することが可能となる1)

 本稿では尿沈渣検査における細菌判定を中心に,注意点とその対策事項などを挙げる.

ラボクイズ

ABR検査

著者: 所司睦文

ページ範囲:P.760 - P.760

5月号の解答と解説

著者: 近藤啓

ページ範囲:P.761 - P.761

書評

研究の育て方—ゴールとプロセスの「見える化」

著者: 二木立

ページ範囲:P.714 - P.714

成果を論文や書籍にまとめて発表し続けるための心構えとノウハウ

 本書は医学書院の月刊誌『総合リハビリテーション』で2016〜17年に長期連載されて好評を博した集中講座「研究入門」を一書にまとめたものです.リハビリテーション医療の臨床研究から「健康の社会的決定要因」を中心とする社会疫学へと研究のウィングを広げつつ,現在も第一線で研究を続けている近藤克則氏が,自己の研究をいかに育ててきたか,大学院生や若い研究者をいかに育ててきたかを,系統的かつ具体的に紹介しています.

 全体は以下の4部(24章)構成です.第1部「総論」,第2部「構想・デザイン・計画立案」,第3部「研究の実施・論文執筆・発表」,第4部「研究に関わるQ&A」.各章の最後には,近藤氏オリジナルのさまざまな「チェックリスト」が付けられており,頭の整理に役立ちます.

検査値を読むトレーニング—ルーチン検査でここまでわかる

著者: 山田俊幸

ページ範囲:P.719 - P.719

基本検査とその動きにこだわった学習に大いに役立つ一冊

 著者はここ10数年来,RCPC(Reversed Clinico-pathological Conference)を積極的に紹介,発信し,世に知らしめた立役者である.RCPCとは「検査データを示し,そこから病態を読み解く」という臨床検査医学の教育手法の一つで,個々の検査を深く実践的に学習できるという特徴がある.データの表示法や,conferenceの進め方は多様であるが,重要な原則がある.「1.疾患名を当てることが目的ではない」.ゲーム感覚として診断するのは副次的楽しみとしてあっていいが,時々,推測した病名が外れると不機嫌になったり,こうも考えられる,など執拗に食い下がったりする参加者がいる.そもそも検査値だけから病名診断はできない.病態を読み解くことが主たる目的である.著者の信念もそのように一貫している.「2.基本データのみ提示する」.検査というものは,2次的・特殊なものになればなるほど疾患に直結し,結果の解釈は容易となる.基本的・一般的なものほど考えをめぐらすことが多く,この基本検査(ルーチン検査)に強くなることが臨床的にはどの職種,どの場面でも求められる.著者はかなり以前より「基本検査成績は最早,問診や基本的診察と同等に利用すべき」と主張しており,この基本検査へのこだわりが真骨頂である.

 さて,conferenceの進め方には大きく2通りある.オーソドックスな方法は,基本検査データを提示し(ワンポイントでも時系列でもよい),個々の検査につき,正常でも異常でも型どおりに解釈し,総合して病態を推測し,必要な2次検査を挙げ,その結果を提示し,最終病態診断に至るというものである.評者はこの方式を実践している.もう一つは著者が実践している「信州大学方式」で,基本検査データの時系列を示し,「栄養状態」「細菌感染」など代表的病態それぞれにつき,対応する検査データを基に評価するもので,病態指向型であり,ダイナミックに病態の変化を検討するという,ある種,臨床的・実際的なものである.本書には,それら代表的な病態が網羅されており,病態に関連した検査値の理解を深めるのに大変役立つものと思われる.

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目次

ページ範囲:P.650 - P.651

『臨床検査』6月号のお知らせ

ページ範囲:P.658 - P.658

第65回臨床検査技師国家試験 解答と解説

著者: 「検査と技術」編集委員会

ページ範囲:P.720 - P.758

あとがき・次号予告

著者: 大楠清文

ページ範囲:P.764 - P.764

 この「あとがき」を4月1日に書いておりますが,新たな元号が決定されました.本号がお手元に届くころには,元号が平成から“令和”に改まり,新たな時代の到来に期待を寄せていることと思います.

 さて,本号には「第65回臨床検査技師国家試験」の解答と解説が掲載されています.3月25日の合格発表によれば,新卒は4,002名が受験し3,462名の合格.合格率86.5%は昨年よりも4.0%低下しました.既卒を含めると3,620名の合格,合格率75.2%でした.合格された皆さまは4月から新年度を迎え,臨床検査技師としての第一歩を踏み出しており,まさしく,新時代の新社会人として期待に胸を膨らませているころではないでしょうか.先輩に教わりながら日常業務の修得に日々努力されていると思います.臨床検査の仕事は“知識”“経験”“技術”の3つを融合しながら,自分の技量を高める努力が一生涯続く“実践的な学問”だと思います.3つの融合を意識しながら努力を続けると“技術”が“匠の技”になり,患者診療にいっそう貢献できることでしょう.そして,臨床検査に従事しているからこそ得られる“喜び”と“やりがい”につながっていきます.「目の前の検体が,自分の一番大切な人から採取されたものだったら……」あるいは「目の前の患者さんが,自分の一番大切な人だったら……」と常に原点回帰でこれからの社会人生活を過ごしていただければと願っております.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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