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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術47巻7号

2019年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

うつ病,双極性障害

著者: 桂川修一

ページ範囲:P.768 - P.773

Point

●うつ病,双極性障害(躁うつ病)は気分障害として位置付けられてきた.

●近年,うつ病と双極性障害は別の病態であると考えられている.

●診断は症状の記述をまとめた診断基準によってなされる.

●診断により治療方針が異なり,適切な治療がなされないと症状の悪化を招くことがある.

技術講座 生理

房室ブロックの見分け方

著者: 柴田正慶

ページ範囲:P.794 - P.801

Point

●房室ブロックの診断には心電図検査が必須です.

●房室ブロックの分類には重症度とブロック部位に基づいた分類があります.

●房室ブロックは分類によって予後が異なるため,波形の特徴を捉えてしっかりと診断をしましょう.

—step up編—腹部超音波検査を行う技師に必要なその他の画像診断検査の知識

著者: 森秀明 ,   苅安俊哉

ページ範囲:P.810 - P.815

Point

●腹部CTやMRI画像を理解することは,腹部超音波検査をマスターするために必要な腹部領域の解剖を理解するうえで一助になる.

●マルチスライスCTの開発により,撮像時間が短縮され,被曝量の低減,撮像の高速化,画像の高精細化が得られるようになった.

●MRI画像はT1強調画像とT2強調画像の信号を組み合わせて判断する.

●MRI検査では造影剤を使用しないでも血管や胆管の画像を得ることが可能である.

一般

胸水・腹水検査における中皮細胞の同定

著者: 友森佐規子

ページ範囲:P.802 - P.809

Point

●さまざまな形態を示す中皮細胞を理解するためには,体腔の構造をよく知っておくことが必要である.

●計算盤上での細胞の分類は,多形核球,リンパ球,その他の細胞(中皮細胞を含む)に分類する.

●塗抹染色標本での細胞の鑑別は,鑑別がしやすい良好な標本を作製することが大切である.

●中皮細胞の特徴をよく理解し,反応性と悪性の細胞を見誤らないようにすることが重要であり,できるだけギムザ(Giemsa)染色を行うことを推奨する.

トピックス

新規バイオマーカーであるオートタキシンの臨床的有用性

著者: 佐藤雅哉 ,   池田均

ページ範囲:P.775 - P.777

はじめに

 オートタキシン(autotaxin:ATX)は血漿中に存在するリゾホスホリパーゼDである.細胞運動促進作用をはじめとする,多彩な生理活性を有するリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid:LPA)産生における重要な酵素である.もともとは1992年にヒト悪性黒色腫株であるA2058の培養上清より単離された糖蛋白質であり,当初より腫瘍細胞の運動を促進させる作用をもつ因子として,癌の転移や浸潤に関与する可能性が示唆されていた.さらにATXがもつLPA産生能が明らかになったことにより,癌や組織の線維化,血小板凝集などとの関連性についても,生体内での機能解析が急速に進められることとなった.現在,ATXはさまざまな疾患のバイオマーカーとしての役割の他,疾患の治療標的としても注目されている.本稿では,肝線維化を中心に,これまで明らかになっているATXの臨床的有用性について述べる.

周産期感染症と早産—泌尿生殖器マイコプラズマ

著者: 柳原格

ページ範囲:P.779 - P.781

はじめに

 多くの早産に感染症が関与することは知られていたが,病原体が同定できない場合が多かった.本稿では,近年早産との関連が示された泌尿生殖器マイコプラズマ(Ureaplasma属細菌,およびMycoplasma hominis)について概説する.

FOCUS

認知症にかかわる認定制度に関して

著者: 唐澤秀治

ページ範囲:P.782 - P.785

はじめに

 認知症患者の増加が国家的な問題となっている.これを背景に日本臨床衛生検査技師会(以下,日臨技)は,認知症の病態を理解した臨床検査技師を育てようとしている.

 筆者は,10年前から認知症スピードスクリーニング・ツールを使用して,かかりつけ医が短い時間で楽しく認知症の患者の診療を行うという活動を行ってきた1〜5).また,東京都臨床検査技師会から依頼されて,臨床検査技師に必要な認知症の基本的事項を講演する機会があった.このような経験から,認定認知症領域検査技師を目指す方々のために,どのような学習が必要かというアドバイスをさせていただきたい.

がんゲノム医療の動向

著者: 秋田弘俊

ページ範囲:P.787 - P.793

はじめに

 がんに対するPrecision Medicineの具体的なツールとして,“がんゲノム医療”への期待が高まっています.

 米国では,2010年ごろから大学や研究所,そして,そこから生まれたベンチャー企業においてがん遺伝子パネル検査注1が行われてきました.2015年1月には,当時のオバマ大統領の一般教書演説において“Precision Medicine Initiative”が発表され,世界的にも注目されましたが,以降,米国政府は毎年500〜600億ドルの公的予算を,がんゲノム医療の研究開発費として投入しています.背景には,効果的で安全な治療を提供し,効果の乏しい治療を排除することで医療費削減を図るねらいもあります.フランスではターゲットパネルシークエンス拠点の整備,がん患者5万人/年の全ゲノムシークエンスが行われ,イギリスでもがん患者10万人の全ゲノムシークエンスが実施されました.このような海外の動きを踏まえ,日本でも“ゲノム情報を用いて治療に介入するがんゲノム医療”を早急に開始する必要があります.

過去問deセルフチェック!

臨床化学:二波長法・酵素活性測定(計算問題)

ページ範囲:P.816 - P.816

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.830 - P.830

 二波長法は,極大吸収波長の主波長(λ2)の吸光度と,より長波長側に設定した副波長(λ1)の吸光度をそれぞれ測定するものです.長波長側に副波長を設定するのは,試料中のビリルビン,ヘモグロビン,濁りおよびセルの汚れによる測定値への影響を軽減できるからです.2ポイント測光法においても同様の軽減は可能となりますが,二波長法の最大の利点は,光量補正効果が期待できることです.すなわち,精製水または試薬ブランクで透過率100%(吸光度0)として反応終了後に光量が減少した場合,吸光度は増加し光量のズレに伴う正誤差を招くことになりますが,二波長法を用いることでこれを補正できます.

疾患と検査値の推移

間質性肺炎

著者: 皿谷健

ページ範囲:P.817 - P.821

Point

●間質性肺炎は特発性と二次性に分けて考える.

●さらに,特発性間質性肺炎(IIPs)は抗線維化薬の適応となる特発性肺線維症(IPF)とそれ以外で分けて考える.

●間質性肺炎の急性増悪では末梢血KL-6の上昇が診断に役立つことがあり,特にIPFでは高値になりやすいが,急性増悪から上昇するまで1〜2週を要することがあるため,他の疾患群を鑑別に挙げることが重要である.

ワンポイントアドバイス

心筋梗塞の部位診断に必要な心電図の追加誘導

著者: 尾形申弐

ページ範囲:P.822 - P.824

はじめに

 標準12誘導心電図は,それぞれ6つの肢誘導と胸部誘導からなる.肢誘導は,心臓を前額面で見た誘導で双極肢誘導と単極肢誘導がある.胸部誘導は,心臓を水平面でみた誘導で単極誘導である.心臓の解剖と各誘導との関係は,①Ⅰ誘導は下位側壁,②Ⅱ誘導は左下壁,③Ⅲ誘導は右下壁,④aVR誘導は心尖部,⑤aVL誘導は上位側壁,⑥aVF誘導は下壁,⑦V1・V2誘導は心室中隔,⑧V3・V4誘導は左室前壁,⑨V5・V6誘導は左室側壁に相当する(図1)1).12通りの方向の観察では,心臓の心尖部方向および胸部前面方向から左側面方向の限られた範囲の変化を捉えているにすぎない.特に,右室側および背面(後壁)側での変化は捉えにくく,右室梗塞・後壁梗塞の確認に標準12誘導心電図を用いることは難しいとされている.

臨床医からの質問に答える

自己血糖測定器と検査室で測定したグルコースの結果が乖離することがあるのはなぜですか?

著者: 久米幸夫

ページ範囲:P.826 - P.829

はじめに

 血糖検査には,①検査室で行われる検査,②病棟などで医療従事者が使用する簡便かつ迅速に測定が可能なPOCT(point of care testing),③患者自身が測定する自己血糖測定器(self monitoring of blood glucose:SMBG)の3つがある.本稿では主に①と②との相違について解説する.

 まず,検査室測定値とSMBG測定値の乖離を認め検査室へ問い合わせがあったとき,臨床医からの情報不足と,その原因が多様であることから回答に苦慮する場合がある.通常の患者の血糖値は,両測定法でそれほど差がないが,ごくまれに測定原理や検体の採取法などにより,無視できない差が生じる場合がある.明らかな乖離を認めた場合には検査の専門家として,臨床検査技師が率先して患者や臨床から情報を収集し,その乖離原因を究明する必要がある.

臨床検査のピットフォール

複合筋活動電位(CMAP)振幅のピットフォール—神経破格の存在

著者: 植松明和

ページ範囲:P.831 - P.835

はじめに

 運動神経伝導検査(motor nerve conduction study:MCS)を施行した際,同一神経刺激・同一筋導出において,遠位および近位刺激により導出された複合筋活動電位(compound muscle action potential:CMAP)の振幅は,遠位刺激CMAP振幅>近位刺激CMAP振幅となるのが通常である.ところが,近位刺激CMAP振幅>遠位刺激CMAP振幅となるケースがしばしば認められる.このような場合に,検査結果をそのまま提出していないだろうか? 実際はなぜ逆転してしまったのかを考える必要がある.今回は,遠位および近位刺激によるCMAP振幅が逆転したときにみられる検査手技のミスや上・下肢の代表的な神経破格であるMartin-Gruber吻合と副深腓骨神経について説明する.

連載 生理検査のアーチファクト・26

—呼吸機能検査①—吐き方による影響(努力性肺活量検査)

著者: 佐野成雄

ページ範囲:P.837 - P.841

呼吸機能検査のアーチファクトとは

 呼吸機能検査が他の検査と異なる点は,患者のやり方でデータが変わりうる点(努力依存型検査)である.患者の状態(体調),理解力,性格などを加味したうえで,検査担当者の適切な説明と誘導によって,最良の波形を記録し,得られたデータが正確か見極めることが重要である.

 呼吸機能検査のアーチファクトは,人為的なものと機械的なものに分けられる.人為的アーチファクトでは,吐き方・息漏れ・設定方法・体勢による影響が考えられ,機械的アーチファクトの原因には,ベルシャフトなどの故障が挙げられる(表1).

帰ってきた やなさん。・1【新連載】

何はともあれ やなぎたです!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.846 - P.846

 皆さん,元気ですか〜!? 柳田がカムバックしましたよぉ.Yeah! 「おいおい,誰だよ?」って呟いたアナタ! えぇ,そうですよね.新しい年号にもなったことですし……改めまして.約2年前,この「検査と技術」で連載させていただいておりました柳田絵美衣,またの名を“やなさん。”と申します.この度,カムバック致しました! 連載が終わった後も,一部の(超マニアな)読者の方々が「やなさん。をもう一度!」や,「やなさん。を返せ!」(←ここまで言ってない)といった熱き願いを編集部に訴えくださり,この度戻って参りましたぁ.ありがとうございます! ちなみに,“はじめまして”の方々に…….このコーナーは,“本気の箸休め”的存在であることを宣言しておきます.特になんの知識も技も得られません! しかし,時間潰しだけは提供できます(えっ? 要らない?) 時には真面目に語って涙を誘い,時には体を張って笑いを誘う……(ほぼ毎回,体張ってましたけどね).今回も,皆さんに楽しんでいただけるように奮闘したいと思います!

Q&A 読者質問箱

外来採血室において,患者が迷走神経反射を起こしたときの対応について教えてください.

著者: 松井隆

ページ範囲:P.842 - P.845

Q 外来採血室において,患者が迷走神経反射を起こしたときの対応について教えてください.

A 採血時の副作用として,主に皮下出血および血腫,血管迷走神経反射(vasovagal reflex:VVR),神経損傷,アルコールによるアレルギー反応などが存在するが,採血スタッフが一番慌ててしまう事例がVVRではないだろうか.VVRは,健診などの健康な患者の採血においても,時として失神,気分不良,顔面蒼白,冷汗といった症状が出ることがある.予期していないところに突然症状が現れることが,採血スタッフが慌てる要因になっていると考えられる.日頃から不測の事態に対応できる心構えをし,その対策を行うことが大事である.各施設の規模により対応は変わってくるが,当院の中央採血室で実際に起こった事例から対応を検証し,改善した内容も含めて説明していきたい.

ラボクイズ

輸血検査

著者: 石原沙紀

ページ範囲:P.848 - P.848

6月号の解答と解説

著者: 所司睦文

ページ範囲:P.849 - P.849

INFORMATION

第41回第2種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.777 - P.777

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目次

ページ範囲:P.766 - P.767

『臨床検査』7月号のお知らせ

ページ範囲:P.774 - P.774

あとがき・次号予告

著者: 谷口智也

ページ範囲:P.852 - P.852

 GW中にこの原稿を書いています.“五月病”という言葉は1960年代に使われ始めたようですが,もちろん正式な病名ではありません.学校や会社に行きたくない,なんとなく体調が悪い,授業や仕事にやる気が出ないなどの状態を総称して呼ばれています.特に大型連休や夏休み明けなどに起こりやすく,また近年では“6月病”も増えているので,5月に限ったことではなくなっています.医学的には,適応障害,うつ病,パーソナリティー障害,発達障害,パニック障害,不眠症などと診断され,その対策もさまざまです.

 一方,内閣府の発表によると40〜64歳の中高年の引きこもりが61万人,実際には100万人を超えているとも推測され,青少年・若年層を上回る驚きの調査結果となりました.今回あらためて“8050問題”が浮き彫りとなり,深刻な社会問題となっています.このように精神疾患や心の問題は,これまで科学的なアプローチや研究,対策が遅れていた分野といえます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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