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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術47巻8号

2019年08月発行

雑誌目次

病気のはなし

パーキンソン病

著者: 西川典子

ページ範囲:P.856 - P.860

Point

●パーキンソン病(PD)は,中脳−線条体系のドパミン神経細胞の変性脱落とレヴィー(Lewy)小体の出現を特徴としている.レヴィー小体はα-シヌクレインで構成される.

●PDには運動症状と非運動症状がみられる.運動症状は,動作緩慢,静止時振戦,筋強剛が初期からみられ,経過中に姿勢反射障害が出現する.

●非運動症状は,運動症状発症以前より出現するものもある.自律神経障害,睡眠障害,精神症状など多岐にわたる.

●ドパミン補充療法により,PDの予後は飛躍的に改善した.適切な薬物治療と運動療法を行っていく必要がある.

技術講座 輸血

輸血検査における異常反応時の対応—日直当直時の不安解消のために

著者: 加藤正輝

ページ範囲:P.876 - P.881

Point

●患者情報(性別・年齢・輸血歴・妊娠歴・移植歴・投薬歴・現病歴・既往歴など)を把握する.

●手技の誤りによる異常反応を防ぐために,検査マニュアルに従い適切な機器・検体・試薬・手順で検査し,異常反応が疑われたら再検査を行う.

●異常反応を見逃さないように,凝集反応の強さ・部分凝集・溶血を的確に捉える.

生化学 シリーズ 生化学検査の基本・1

脂質検査

著者: 佐藤亮 ,   吉田博

ページ範囲:P.882 - P.889

Point

●主な脂質検査には,総コレステロール(TC),中性脂肪(TG),高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C),低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)がある.基準範囲ではなく臨床判断値より高値または低値の場合,脂質異常症が診断されるが,自覚症状に乏しい.

●TGを豊富にもつ超低比重リポ蛋白(VLDL)は,リポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きなどによって中間比重リポ蛋白(IDL)さらには低比重リポ蛋白(LDL)となり,コレステロールは末梢組織に供給される.一方高比重リポ蛋白(HDL)は,余分なコレステロールを末梢組織から除去し,肝臓に転送する.

●LDL-Cは,空腹時かつTG 400mg/dL未満の場合,Friedewaldの式(F式)から求めることができる.食後採血やTG 400mg/dL以上の場合,non-HDL-CまたはLDL-C直接法による評価が推奨されている.

●脂質異常症のタイプ分類として,アガロースゲル電気泳動法とポリアクリルアミドゲル電気泳動法がある.また最近,陰イオン交換クロマトグラフィを用いたリポ蛋白分画(HPLC法)が保険承認された.

病理

原発不明癌の診断

著者: 塚本龍子

ページ範囲:P.890 - P.897

Point

●原発不明癌を診断するうえで,病理学的診断は極めて重要である.

●免疫組織化学染色マーカーの特異度・感度を理解したうえで評価する.

●適切な検体の取り扱い,品質管理を行う.

トピックス

3Dオルガノイドが拓く新ゲノム医療時代

著者: 加藤容崇

ページ範囲:P.861 - P.863

ゲノム医療の現在と課題

 2000年代半ばに米国で,次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)が登場した.従来型シーケンサーと比較して桁違いに高速に塩基配列を読み出せるNGSの登場により,医療は大きな変革期を迎えている.

 特に大きな影響を受けているのが,癌の領域である.従来の癌診断および治療は,病理標本を顕微鏡で見て診断し,病理診断に基づいて治療を行う,いわば形態学がベースである.しかし,人間でも同じであるが,悪い顔をしている人が本当に悪い人であるとは限らないし,善人の顔をしていても本当は悪い人であることもある.すなわち,形態学だけでは本当に正しい診断はできない.これまでは,診断する手段が形態学しかなかったため,医学者たちは形態学を進化させ,精度の高い診断を追求してきた.それが“病理学”である.

遺伝性腫瘍

著者: 水上都 ,   櫻井晃洋

ページ範囲:P.864 - P.867

はじめに

 2013年5月,ニューヨークタイムズ紙に米国女優アンジェリーナ・ジョリー氏が予防的両側乳房切除術を受けたと公表し,世界的に注目されたのは記憶に新しい.これを機に,遺伝性乳がん卵巣がん症候群だけではなく,遺伝性腫瘍そのもの,そして遺伝情報に基づく選択的治療にも世間の関心を集めることになった.

 生涯で,国民の2人に1人ががんに罹患する1)といわれている現代において,家系内にがんに罹患した家族が複数存在することは珍しくない.また,昔から,“うちはがん家系である”といった言葉もよく耳にし,そういう家系であると自覚した人は,“なんとなく”自身で若いうちからがん検診を受診することもある.しかし,近年の急速なゲノム医学の発展により,“なんとなく”から“明確に”原因となる遺伝子のバリアント(変異)と,それに伴うがん発生のリスクがわかるようになり,ゲノム情報に基づいた個別化医療が可能となってきている.本稿では,遺伝性腫瘍について検査や治療,遺伝カウンセリングなどを中心に述べていきたい.

FOCUS

慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)

著者: 後藤俊介

ページ範囲:P.868 - P.870

はじめに

 腎臓病患者に骨の異常を伴うことは昔から知られており,腎性骨異栄養症と呼ばれていた.しかし,さまざまな研究により,このような腎臓病に伴う骨の異常が,骨にとどまらず心血管病など全身に影響を及ぼすことがわかってきたため,2006年頃に“慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(chronic kidney disease-mineral and bone disorder:CKD-MBD)”という名称でこのような疾患を捉えることとなった1).本稿では,このCKD-MBDについて概説する.

造血器腫瘍の病型決定に必要な染色体・遺伝子異常

著者: 佐藤悦子

ページ範囲:P.872 - P.875

はじめに

 造血器腫瘍の病型決定には,臨床病態,形態学,細胞表面マーカー,染色体・遺伝子異常の情報全てを総合的に判断し評価する必要がある.造血器腫瘍の染色体・遺伝子異常は治療方針決定に必要な予後因子,異常クローンの細胞起源決定,治療効果判定としての微小残存病変(minimal residual disease:MRD)にもなりうるため,初発時の異常を確認することは大変重要である.本稿ではまず身近な末梢血検査データから読み取れる染色体・遺伝子異常について,WHO(World Health Organization)分類2016年改定版(2017年発行)1)の内容を踏まえながら,造血器腫瘍の病型決定に必要な染色体・遺伝子異常について解説する.

過去問deセルフチェック!

凝固スクリーニング検査:PTとAPTT

ページ範囲:P.881 - P.881

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.909 - P.909

 プロトロンビン時間(prothrombin time:PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)は,凝固スクリーニング検査として広く実施されているのはご存じと思います.今回は,この基本的検査の復習をいたしましょう.

 PTは外因系凝固活性化機序を反映する検査であり,組織因子によって惹起されます.一方,APTTは内因系凝固活性化機序を反映する検査であり,異物(陰性荷電)によって惹起されます.この外因系・内因系凝固活性化は,共通系凝固経路として合流します.

疾患と検査値の推移

副甲状腺機能亢進症・低下症

著者: 宮﨑直子

ページ範囲:P.900 - P.908

Point

●副甲状腺機能亢進症とは副甲状腺ホルモン(PTH)の慢性的な分泌過剰状態により生じる代謝異常である.

●副甲状腺機能亢進症のうち,高カルシウム(Ca)血症・低リン血症も認める場合を原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT),慢性腎不全などから起こる低Ca血症などによりPTHが過剰に分泌される状態を続発性副甲状腺機能亢進症(sHPT)と呼ぶ.

●副甲状腺機能低下症はPTH作用障害により低Ca血症・高リン血症を呈する疾患であり,PTH分泌不全と標的組織のPTH不応性に大別される.

●PTHの標的組織は腎臓と骨であり,その役割はCa代謝調節の中枢として極めて重要である.

臨床検査のピットフォール

カラム凝集法で血液型検査のウラ検査の反応が弱くでた場合,どのように検査を進めるか

著者: 日高陽子

ページ範囲:P.910 - P.913

はじめに

 ABO血液型検査(以下,血液型検査)は,輸血検査で最も重要な検査である.血液型検査の判定を誤ると,輸血後に重篤な溶血性輸血反応を引き起こすことがある.

 血液型検査は,赤血球膜上の抗原を検査するオモテ検査と,血漿(血清)中の抗体を検査するウラ検査を行う.オモテ検査とウラ検査の結果が一致した場合は血液型が確定される.しかし結果が一致しなかった場合は,判定を保留として原因を究明する必要がある.オモテ・ウラ検査不一致の原因はさまざまあるが,本稿ではウラ検査の反応が弱くなる原因と検査の進め方について述べる.

連載 生理検査のアーチファクト・27

—呼吸機能検査②—息漏れによる影響

著者: 佐野成雄

ページ範囲:P.914 - P.918

こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1は呼吸機能検査で日常みられる波形および数値データである.図1aは肺活量測定波形で,吸気肺活量(inspiratory vital capacity:IVC)より呼気肺活量(expiratory vital capacity:EVC)が著明に増加している.図1bは努力性肺活量測定波形である.努力呼気曲線からの呼気時間は2秒未満であった.図1cは機能的残気量(functional residual capacity:FRC)測定画面および肺拡散能力(lung diffusing capacity of CO:DLCO)データである.安静換気の不均一性およびDLCOとDLCO′(希釈率から求めた)データの乖離が認められる.図1dは通常測定モードでのDLCO自己測定およびシリンジ精度管理結果データであるが,DLCOの異常高値が認められる.

 これらはいずれもアーチファクトであるが,なぜこのようなアーチファクトが現れるのだろうか?

帰ってきた やなさん。・2

いろんな意味で……将来が楽しみだ.

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.919 - P.919

 「エミィちゃん.えほんよんで」2歳の姪は,私を“エミィちゃん”と呼ぶ.まぁ,よいだろう.“おばちゃん”と呼ばないだけよしとしよう.兄夫妻の教育の賜物であると,高く評価したい.姪は,なぜか私の幼少期に瓜二つであり,親戚一同が「絵美衣が小さくなったのかと思った!」と連発する.顔だけではない,食の好みも同じである.白米と魚,乾物があればご機嫌だ.なぜ私に似ているのかは全くの謎であるが,とにかく柳田家の血が濃いことは明白である.そんな姪は花火(手持ち花火)がとても好きで,季節を問わず「エミィちゃん,はなびしよう!」と言う.季節に関係なく,好きなときに好きなことをするところも私と同じなわけだが…….まぁ,そう言うと思って,子どもが好きそうなキャラクターが描かれた袋に何種類かの花火が入った,かわいらしい花火セットを用意していた.「花火買ってきたから,やろうな」と声をかけると,姪が何やら持って来た…….「これ,あるの!!」と.“極上 匠の線香花火”……,えっ? 渋っ! いや,君,2歳だよね?「ひは おとなが つけるの〜」と,花火への点火は大人がするのだと主張する2歳.どうすれば,こんな2歳児に育つのか…….

 翌日,「きょうは おほしさま みにいこうね」と姪に言われた.田舎なので,夜に空を見上げれば一面の星空.空を見ながら「あれがオリオン座だよ〜」なんて会話をするのかと想像していたら…….「はい,では次はM3球状星団をご覧いただきます」…….“ぶをぉぉぉをををん”(巨大天体望遠鏡と天井が動く).なんだよ,球状星団ってよ! なんなんだよ!! 連れて来られたのは“にしわき経緯度地球科学館 テラ・ドーム”.口径81cm大型反射望遠鏡…….スケール大きすぎて,よくわからん.「おほしさまみる〜」って言っているけど,この望遠鏡で見るものを星だと理解しているのか? おい.その辺の道端で見るもんじゃないのか,2歳児の“お星さま”ってやつは…….

臨床医からの質問に答える

共用基準範囲を用いて検査結果を説明するときの注意点を教えてください.

著者: 下澤達雄

ページ範囲:P.920 - P.922

共用基準範囲

 患者の困りごとの原因を知り,治療を行い,また治療効果を判定するために,検査は大きな助けとなります.その結果の解釈や判断のために基準範囲を設定することが求められています.

 従来は施設ごと,測定試薬ごとに基準範囲が設定されてきましたが,標準化された検査方法が広まった結果,わが国で大規模にデータを集積,分析することが可能となり日本臨床検査医学会,日本臨床化学会,日本臨床衛生検査技師会,日本検査血液学会からなる合同基準範囲共用化ワーキンググループ(WG)が共用基準範囲を設定し,現在多くの施設で用いられるようになっています.

Q&A 読者質問箱

尿沈渣中に出現する,リンパ球などの良性細胞と小型異型細胞の鑑別点を教えてください.

著者: 岸本修次

ページ範囲:P.924 - P.926

Q 尿沈渣中に出現する,リンパ球などの良性細胞と小型異型細胞の鑑別点を教えてください.

A 尿沈渣に出現する異型細胞は90%以上が尿路上皮癌で,大きくてザラザラ感のある細胞質とクロマチンの増量した大きな核,大型細胞集塊などを見ることが多いでしょう.大きい細胞ならば,比較対象となる細胞は扁平上皮細胞や尿路上皮細胞の表層部に近い細胞ですから,判定は容易になります.一方,悪性リンパ腫や小細胞癌,小型の前立腺癌などは比較対象となる細胞が多く,またこれらは全尿路系異型細胞の数%のため,尿沈渣経験の少ない技師では見たことのある人は多くないでしょう.小型異型細胞を判定するためには,類似した良性細胞を判別できなければなりません.

Laboratory Practice 〈病理〉

尿細胞診におけるvimentin陽性細胞

著者: 大﨑博之

ページ範囲:P.927 - P.931

はじめに

 尿細胞診は,腎盂・尿管・膀胱の粘膜上皮に発生する腫瘍の発見,すなわち尿中の癌細胞の検出を主目的としている.一方で,尿細管上皮細胞など腎実質由来の細胞は,その形態や意義に関する知見に乏しかったこともあり,尿細胞診において軽視されてきた.

 筆者らは約20年前から,尿細胞診標本に出現する尿細管上皮細胞の細胞学的特徴の検討を行ってきた1).その過程で,糸球体腎炎などの患者の尿中に再生異型を伴う尿細管上皮細胞(反応性尿細管上皮細胞)が出現すること,その形態が癌細胞に類似するため誤陽性の原因となっていることを見い出した2)(図1).さらに,その後の検討で,反応性尿細管上皮細胞と尿路上皮癌細胞の形態学的・免疫細胞化学的な鑑別点を解明してきた3〜9).特に免疫細胞化学において,反応性尿細管上皮細胞がvimentin陽性を示すことを発見し,vimentin陰性の尿路上皮癌細胞との鑑別に極めて有用であることを明らかにした3,4,7)

 近年,学会などにおいて反応性尿細管上皮細胞とvimentinの反応性について発表されることも多くなり,その認識の広がりを実感している.しかし一方で,“vimentinは尿細管上皮細胞のマーカーである”などの誤解も生じている.本稿では,尿中に出現する各種上皮細胞と尿路上皮癌細胞におけるvimentinの反応性について解説する.

ワンポイントアドバイス

冷却メイグリュンワルド希釈液が染色性に与える影響

著者: 齋藤泰智

ページ範囲:P.932 - P.934

はじめに

 メイグリュンワルド(以下,メイ)・ギムザ染色は血球形態の鑑別に用いられ広く普及している染色法ですが,その染色性は施設によって幅があり,施設間差が問題となっています.染色性の差に与える主な要因として,室温環境,染色液メーカー,ギムザ希釈液の濃度や染色時間が挙げられますが,これらの条件が同一であっても,再現性の高い染色性を得ることが困難でした.当院では,染色性の差に与える要因として温度に着目し,メイ希釈液の温度が染色性に影響していると考えました.そこで本稿では,メイ希釈液の温度変化に伴う染色性の変化について,浸漬法(表1)1)と上乗法(表2)1)を用いて検討した結果をご紹介します.

ラボクイズ

生化学検査

著者: 河井貴行 ,   村野武義

ページ範囲:P.936 - P.936

7月号の解答と解説

著者: 石原沙紀

ページ範囲:P.937 - P.937

書評

熱血講義! 心電図—匠が教える実践的判読法

著者: 中川義久

ページ範囲:P.899 - P.899

引き込まれるように心電図の世界に織り込まれていく

 心電図学習に目覚め,確実に判読できるようになりたいと志す者は多い.しかし,その多くは挫折し,心電図が嫌いになり去っていく.そのような迷える子羊に希望を与えてくれる素晴らしい書籍が登場した.その名も『熱血講義! 心電図—匠が教える実践的判読法』である.心電図の初学者を対象とした書籍は多い.本書は従来のどれとも明らかに異なる.一言で言えば「熱い!」のである.これでもかと,微に入り細に入りわかりやすく解説する著者の杉山裕章氏の情熱がダイレクトに伝わってくる.退屈することなくページがどんどん進んでいく.ウーン,素晴らしい!

 書名には「熱血講義!」,「匠が教える」といった魅力的なキャッチコピーが躍っている.『人は見た目が9割』などキャッチーなタイトルの書籍も存在する.まさに「書名は見た目が9割」である.本書のタイトルは内容の充実度に見合うもので,決して過剰な表現ではない.「匠」とは,優れた技術を持った職人を指す言葉である.著者の杉山氏は,まさに心電図判読の「匠」に相応しい技を惜しげもなく皆に開示している.説明には,「杉山流かけことば」と命名された記憶しやすい呪文が散りばめられている.正常心電図の洞調律の定義の項での「イチニエフの法則」などが好例である.こういった躍動感あふれる「かけことば」によって,心電図学習は難しいという敷居の高さを解消し,読者を楽しい世界に引きつけていく仕掛けである.さらに,執筆協力者の小笹寧子氏による「小笹流 私はこう読む」というコラムが本書の活力を高めている.斬新な切り口のコメントが多く,単調に陥りがちな心電図学習にアクセントを与えている.著者の「杉山流かけことば」が経糸(たて糸)となり,執筆協力者の「小笹流 私はこう読む」が緯糸(よこ糸)となって,心電図学習という強靱な布地を構成している.心電図への苦手意識を抱いていた者も,引き込まれるように心電図の世界に織り込まれていくのである.執筆者と執筆協力者の目的意識と情熱が融合することによって誕生した,まさに「熱い!」一冊が本書である.本書の成功の鍵は,著者が,この素晴らしい協力者を得たことであろう.

こんなときオスラー―『平静の心』を求めて

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.923 - P.923

ドラマティックが止まらない! オスラー先生のきら星のような名言

 本書は医学書院『総合診療』誌の同名の連載の単行本化である.近代医学・医学教育の先駆者であり,ジョンズ・ホプキンズを創設した“Big 4”の1人でもあるウィリアム・オスラー医師の言葉には,年代を感じさせない貫通力がある.オスラー先生のきら星のような名言の数々は,臨床や後輩指導のさまざまな現場に直面したときにこそ「ハッ」と思い出され,あらためて胸に刺さるものが多い.本書の魅力を語るには,やはり書中のオスラー先生の言葉を記載することがベストだろう.

 平静の心:「穏やかな平静の心を得るために,第一に必要なものは,周囲の人達に多くを期待しないことである.(中略)仲間の人間に対して,限りない忍耐と絶えざる思いやりの心を持つ必要がある」(p.3)

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目次

ページ範囲:P.854 - P.855

『臨床検査』8月号のお知らせ

ページ範囲:P.853 - P.853

あとがき・次号予告

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.940 - P.940

 自動運転による新交通システムで発生した逆走事故が最近問題となりました.人工知能(AI)やロボット技術による無人化は,働き方改革への応用など期待が持たれていますが,こういった新技術の理念もいずれ形骸化し,問題が起きる可能性があることは十分に認識すべきです.臨床検査においても自動化は必要不可欠なものですが,検査データを読み解く力を常に低下させないような体制作りが大切だと思います.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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