増刊号 染色画像を比べて学ぶ 体腔液アトラス
はじめに
著者:
保科ひづる
ページ範囲:P.943 - P.943
穿刺液検査の標準化が求められている現在.その重要性に反して,細胞像に関するアトラス集や,体腔液のデータをまとめて俯瞰することができるような資料はあまりみられません.そこで今回,筆者が勉強のために十数年前より撮り続けてきたサムソン液やメイギムザ染色の細胞写真から,重要なものを集めて一冊にまとめました.臨床検査自動化の流れの中においても,塗抹標本を作製して鏡検の必要性を判断する技師の能力,そして若手を指導する力は変わらず求められ続けます.この一冊は,その一助になるものと考えています.
本書では,細胞数は赤血球以外の細胞全てを数えており,悪性細胞の集塊は,集塊を構成している個々の細胞を数えられる範囲で全部数えています.また細胞3分類は,好中球,リンパ球,その他の細胞を記載し,その他の細胞の詳細については,表に記すようにしています.さらに,記載している細胞は,細胞診または病理標本にて診断済みのため「悪性細胞」と表記しています.体腔液の検査結果は,用手法で測定した細胞数と塗抹標本による細胞3分類,また生化学や免疫検査と照らし合わせて,読み説くことで参考になると思います.加えて,数年前に,当検査科に体腔液検査が可能な多項目自動血球計数装置XN-1000(シスメックス社)が導入されたため,スキャッタグラムが保存できた検体は,画像スキャッタグラムを載せています.なお,サムソン液とメイギムザ染色の細胞は同一検体ですが,同じ細胞とは限らないこと,また同じ病態であっても全て同じ細胞像を呈するというわけではなく,患者の状態などで変化することをご承知置きいただき,あくまで参考としてご活用いただきたいと思います.