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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術48巻11号

2020年11月発行

雑誌目次

病気のはなし

頭痛

著者: 飯ケ谷美峰

ページ範囲:P.1188 - P.1194

Point

●頭痛は2タイプあり,頭痛自体が疾患の一次性頭痛となんらかの疾患の一症状として頭痛が生じる二次性頭痛に大別される.

●一次性頭痛にはバイオマーカーや画像的異常所見はない.

●二次性頭痛のなかには,生命にかかわる重篤な疾患がある.危険な頭痛をきたす疾患について見識を広め,検査所見を学び,見逃さないようにすることが重要である.

技術講座 生理

頸動脈エコー検査—頸動脈狭窄率の意義と評価

著者: 笹木優賢

ページ範囲:P.1210 - P.1217

Point

●なぜ70%以上(もしくは50%以上)の狭窄評価が重要なのか理解しましょう.

●50%以上の狭窄を疑った場合(目視でOK)はまず血流速度を測定しましょう.

●無理に各種狭窄率を計測する必要はありません.

●レポートにはどの狭窄率計測法を用いたか,必ず記載しましょう.

血液

血栓性微小血管症(TMA)の診断

著者: 上田恭典

ページ範囲:P.1219 - P.1225

Point

●血栓性微小血管症(TMA)は微小血管に生じた血小板血栓による溶血性貧血と消費性血小板減少が特徴です.

●血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は先天性もしくは抗体産生によりADAMTS13活性が10%未満になり,von Willebrand因子(VWF)血小板血栓を生じるTMAです.

●溶血性尿毒症症候群(HUS)は志賀毒素産生大腸菌(STEC)感染や肺炎球菌感染に続発して生じる腎機能障害を特徴とするTMAです.

●非典型HUS(aHUS)は第2経路を介した補体活性の亢進によるTMAで,補体,補体制御因子の先天的異常や抗体産生によって生じます.

病理

細胞診検体を用いた特殊染色—PAS反応(染色)・アルシアンブルー染色を中心に

著者: 渡部顕章

ページ範囲:P.1226 - P.1232

Point

●粘液や糖類を染色する代表的な特殊染色です.

●過ヨウ素酸シッフ(PAS)反応(染色)およびアルシアンブルー染色の染色原理,使用する試薬,染色手順を理解しましょう.

●染色不良を起こさないためのトラブルシューティングを理解しましょう.

生化学

—step up編—糖尿病療養指導士が考える—SMBG機器とPOCT対応血糖測定装置の使い分け

著者: 中川裕美

ページ範囲:P.1234 - P.1241

Point

●血糖値は採血部位,使用検体で値が異なることがある.さらに測定原理によって反応性が異なり,特に干渉物質の影響には注意が必要である.

●血糖自己測定(SMBG)機器とPOCT対応機器は,薬機法のクラス分類が異なる.

●医療法等の一部改正により,医療機関内で使用する機器の内部精度管理の実施が明記され,努力義務となった.SMBG機器やPOCT対応機器においても適応される.

●機器の特性を理解し,施設の状況に応じて機器を選定することが重要である.

トピックス

血友病A治療の最前線—二重特異性抗体の登場

著者: 西川真子

ページ範囲:P.1195 - P.1197

はじめに

 血友病とは,血液凝固第Ⅷ因子(FⅧ)あるいは第Ⅸ因子(FⅨ)の量的・質的異常によるX連鎖性劣性遺伝形式の先天性出血性疾患である.血友病の止血療法は,インヒビター非保有例では不足した凝固因子の補充療法,インヒビター保有例ではバイパス止血製剤の輸注が標準治療として行われてきたが,2018年にわが国で保険収載された二重特異性抗体製剤エミシズマブによって,血友病Aの治療は転換期を迎えている.エミシズマブはFⅧの活性化を要さずに血液凝固第Ⅹ因子(FⅩ)を活性化させるため,エミシズマブ投与下では活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT)が過度に短縮する.本稿では,エミシズマブ投与下での血液凝固系検査への影響を中心に述べる.

喘息−COPDオーバーラップ(ACO)

著者: 鈴木雅

ページ範囲:P.1198 - P.1201

はじめに

 気管支喘息(以下,喘息)は“気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性をもった気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患”であり,主にアレルギー性気道炎症が関与する1).一方で,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,“タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生ずる肺疾患であり,呼吸機能検査で気流閉塞を示す疾患”であり,主に喫煙による慢性炎症が関与する1).両者は異なる原因および機序で病態が形成され,臨床的特徴も異なる疾患ではあるが,ともに閉塞性換気障害を示し,実臨床においても両者を厳密に区別できない症例も多く存在する.

 このような喘息の特徴とCOPDの特徴を併せもつ患者は,増悪が頻回で生活の質(quality of life:QOL)が低く,生命予後も不良であることが報告されており,2014年に喘息の国際組織であるGINA(Global Initiative for Asthma)とCOPDの国際組織であるGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)とが共同で,喘息−COPDオーバーラップ症候群(asthma-COPD overlap syndrome:ACOS)に関するステートメントを発表した2).さらに2017年には,“症候群(syndrome)”は原因不明で共通の病態の場合に使用される言葉であること,ならびに喘息もCOPDも単一ではないさまざまな機序によって病態が形成され,臨床的特徴も多様性を認める疾患であることなどから,“症候群(syndrome)”という言葉は外され,喘息−COPDオーバーラップ(asthma-COPD overlap:ACO)と呼称することが提唱された3).そのような背景もあり,2017年12月に日本呼吸器学会より,「喘息とCOPDのオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap:ACO)診断と治療の手引き」(以下,ACO診断と治療の手引き)1)が発行された.

FOCUS

血算,生化学検査で患者の病態を探ろう

著者: 本田孝行

ページ範囲:P.1202 - P.1204

はじめに

 世界中で最も頻回に行われる検査は,血算と生化学検査(ルーチン検査)である.皆さんはルーチン検査から患者の病態を探ろうとしたことがあるだろうか.多くの医療従事者は,ルーチン検査で驚くほど正確に患者の病態を把握できることを知らない.ルーチン検査の価値を理解していない.

 医療の最終目的は,患者の病気を治すことである.患者の状態を正確に捉えなければ,正確な診断を行えない.患者の小さな変化に早く気づかなければ,適切な治療は行えない.患者の変化する状態を常に把握するために,医師は診察を行っている.ルーチン検査は毎日行えないが,診察よりも感度よく患者の変化を捉えられることも多い.ルーチン検査は,検査室が行う“診察”と考えてもよい.

 検査室はルーチン検査以外にも多くの検査を行っている.検査なので,診断目的で行うものが多い.全ての臨床検査技師がルーチン検査で患者の全体像を把握したうえで専門検査を行えば,臨床検査技師の仕事の楽しさが2倍になる.そして,検査部としての医療貢献も倍増する.

石綿健康被害救済制度

著者: 森永謙二 ,   鈴木誠

ページ範囲:P.1206 - P.1209

はじめに

 2006年3月27日より「石綿による健康被害の救済に関する法律」(以下,石綿救済法)が施行された.当時,最も話題になった疾患は,クボタ社の旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の近隣に居住していた住民に発症した胸膜中皮腫であった.本誌2006年7月号に,石綿曝露と関連する中皮腫と肺癌についてのトピックス1)が掲載されているが,胸膜中皮腫の発生状況はいまなお増加傾向が著しい.

 石綿救済法施行以降,2020年3月末までにこの石綿救済法で認定された患者は,中皮腫9,197人,肺癌1,937人,石綿肺41人,びまん性胸膜肥厚175人である2)

過去問deセルフチェック!

病理解剖

ページ範囲:P.1197 - P.1197

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.1257 - P.1257

 医学における解剖とは,目的により系統解剖,病理解剖,行政解剖,司法解剖の4つに分けられています(表1).臨床検査技師は,業務として病院内で行われる病理解剖の目的や意義を理解し,病理解剖の手続きや臨床検査技師の役割を把握しなければなりません.また,病理解剖は1949年に制定された死体解剖保存法に従って行わなければならず,執刀者の資格(第二条),遺族の承諾(第七条),試料の保存(第十七条,第十八条)などが全て規定されています.

 問題1,2では,病理解剖における臨床検査技師の役割に関して問われており,臨床検査技師は単独で病理解剖を行うことはできませんが,剖検執刀医の指示の下,病理解剖業務の介助にあたることができます.その際の具体的な介助内容として,書類の確認(感染症有無の確認も含む),解剖の準備(器具など)から始まり,剖検執刀医の直接指導の下で,開腹および開胸,血液の採取,胸腹水の吸引・軽量,臓器摘出,マクロ標本の作製(臓器に割を入れるなど),摘出臓器へのホルマリン注入,皮膚縫合などがあります.

疾患と検査値の推移

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

著者: 上ノ宮彰

ページ範囲:P.1242 - P.1248

Point

●慢性閉塞性肺疾患(COPD)は,進行性の疾患である.その進行はとても緩徐であり,自覚症状が乏しいまま経過する.

●呼吸機能検査を行うことでCOPDの病期の分類が可能である.指標となるのは1秒量/予測1秒量(%FEV1)である.また,フローボリューム曲線は特徴的な形状を示す.

●近年,気管支喘息や間質性肺炎との合併症が報告され,気腫型COPDとの鑑別が必要となっている.気管支喘息との鑑別には呼吸機能検査が必須であり,特に重要なのは気道閉塞の可逆性,呼気一酸化炭素濃度の検査である.間質性肺炎との鑑別にはCT検査が有用である.

臨床検査のピットフォール

造血器腫瘍遺伝子検査結果の解釈

著者: 石毛崇之

ページ範囲:P.1250 - P.1252

はじめに

 分子生物学の発展により,造血器腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫など)の分子病態が次々と明らかになっている.染色体・遺伝子レベルでのさまざまな異常が同定されており,これらの検査は造血器腫瘍の病型分類・予後予測・治療法選択の決定に重要な役割を担っている.急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の分類においては,形態学を基本としたFAB(French-American-British)分類から,特徴的な染色体・遺伝子異常を加味したWHO(World Health Organization)分類が主流になってきている1)

 また,遺伝子異常を標的とした分子標的薬の開発も進んでおり,例えば,慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)におけるBCR-ABL1(breakpoint cluster region-Abelson murine leukemia 1)融合蛋白質を標的としたチロシンキナーゼ阻害薬はCMLの治療成績を劇的に向上させた.臨床検査においては,染色体検査に加えて,より感度に優れた遺伝子検査が普及しつつあるが,検査結果を正しく解釈するためには,これら検査の特性を知っておく必要がある.本稿では,造血器腫瘍のなかでもCMLを中心に遺伝子検査のポイントを記載する.

Q&A 読者質問箱

エコーで甲状腺の体積を正確に測る方法と基準値を教えてください.

著者: 太田寿

ページ範囲:P.1254 - P.1256

Q エコーで甲状腺の体積を正確に測る方法と基準値を教えてください.

A エコーによる甲状腺の体積の測定は,甲状腺の異常の有無,経過観察,バセドウ(Basedow)病のラジオアイソトープ(radioisotope:RI)治療における131I投与量の計算のために有用な指標である.

臨床医からの質問に答える

喀痰グラム染色像から起炎菌をどのように推測すればよいですか?

著者: 森本徳仁 ,   西田愛恵 ,   横山彰仁

ページ範囲:P.1258 - P.1262

はじめに

 肺炎の原因となる起炎菌を早い段階でグラム(Gram)染色から推測することは,今後の診断・治療の方針を決めるためにも非常に重要なことです.本稿では,喀痰のグラム染色から起炎菌を推測するうえでのポイントについて解説します.

連載 帰ってきた やなさん。・14

皆で勉強すりゃいいじゃん!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.1263 - P.1263

 新型コロナウイルス感染症はまだ終息する兆しもなく,セミナーや学会もWebで開催されるようになった.半年前まで毎月週末はほとんど出張していた柳田は,なんだか気力と体力が有り余っているみたい♥……で,始めましたよ,勉強会を(学生さん向け).きっかけは,SNSで毎日のように送られてくる相談.「コロナで休校です.家にいても勉強をする気が出ません」,「1人で孤独に勉強していると取り残されているような不安感に襲われます」,「助けてください」と.

 皆,自宅に1人でいて,同じ気持ちになっていることがわかった.「じゃぁ,皆で勉強すればいいじゃん!」という,柳田のいつもの楽天的な思いつきで,「なぁ,Web上で学生向けの勉強会するから,病理学の解説よろしく」と,同僚に突然振る.「え?……あぁ,いいよ」と,同僚.さすが,私の性格(思いつき→即行動)をよくおわかり.早速,SNSで告知をし,臨床検査技師の過去の国家試験問題を解説していくことになった.月2回,誰でも参加自由.中には薬剤師を目指している学生や,医療関係でもない社会人も参加している(笑).同僚が病理学,柳田が細胞診と遺伝子検査学を解説して1回40分間.気軽に参加できるスタイル.過去の勉強会の動画も見られる(https://www.youtube.com/channel/UCS1pttIOjaDk92167oKty8Q/videos).「すごくわかりやすかったです!」と,高評価をいただいております! 喜んでもらえて本当にうれしい.

ワンポイントアドバイス

臨床微生物検査に生かすための臨床情報入手のコツ

著者: 鈴木智一

ページ範囲:P.1264 - P.1265

はじめに

 臨床検査の分野で,臨床情報を踏まえて検査を行うことは非常に重要です.実際に患者に接している医師や看護師からは,患者の身体所見や生活歴など詳細な情報が得られます.薬剤師からは,患者の薬歴情報が得られます.これらの情報は,検査の方向性に大きな影響を与えることがあります.特に,臨床微生物検査では臨床情報が得られるのと得られないのとでは検査のスピードや精度などに大きく差が生じます.本稿では,臨床情報を多職種(特に医師)からどのように入手していくかについて考えていきます.

ラボクイズ

遺伝子関連検査

著者: 山本章史

ページ範囲:P.1268 - P.1268

10月号の解答と解説

著者: 鈴木まりな

ページ範囲:P.1269 - P.1269

書評

スパルタ病理塾—あなたの臨床を変える!病理標本の読み方

著者: 志水太郎

ページ範囲:P.1205 - P.1205

病理診断を学ぶ全ての医学生・若手医師への最初の一冊

 本書は全ての医学生・若手臨床医にとって病理診断のロードマップを示してくれる重要な一冊です.診断にかかわる臨床家の私達としては,病理診断の技術や考え方は専門家に頼りきりではなく自らも理解する努力を払う必要があります.本書は,その学習のわかりやすい手順を与えてくれます.評者は個人的に,「病理診断はフィジカル診断の一環」くらいの距離感で,親近感を持っています(その意味では本書は《ジェネラリストBOOKS》シリーズでもよいのかとも思います).なぜなら,フィジカルでは血管を直視できるのは眼底と爪くらいですが,病理の場合は全て直視,つまり病理は究極の視診ともいえるでしょう.フィジカルの延長という理解で行けば,「病理診断」のとっつきにくい(?)印象が少しでも払拭されるのではないでしょうか.

 個人的には愛媛大学在学時の基礎配属が病理学(第二病理学)だったために,病理(特に腎)にはとても親近感を持っていますが,そのような曝露でもないと,病理の魅力に行きつくまでには心理的距離があるかもしれません.本書はそのような距離をぐっとゼロに近づけてくれます.その理由は,おそらく本書の心臓となる第1章の病理総論の整理の表(p.9)に示されるように,病理組織の見方,考え方のbig pictureが示されていること,異常のパラメータをベクトル図で示したもの(p.12)をはじめとして,病理を理解するための視覚化が明快に行われていることだと思います.それに続く章では,弱拡大・強拡大のレンジを使い分けることで全体を見ることの重要性,さらに,組織を傷害する病態の代表的な分類である腫瘍・炎症で切り分けた病理の見方,また特殊染色・免疫染色の理解についての章というわかりやすい展開になっています.

臨床研究の教科書—研究デザインとデータ処理のポイント 第2版

著者: 曽根博仁

ページ範囲:P.1253 - P.1253

初心者を即戦力にするのに必要な「疫学・統計学的センス」が短期間に身につく

 そのものずばりの書名とおりの本である.多くの類書に目を通すが,その中でも本書は,臨床研究をやりたいと教室の門戸を叩いてくれた若い皆さん(臨床医,メディカルスタッフ,非医療系大学新卒生などさまざま)に薦める最初の数冊のうちの一冊となっている.

 当教室にはすでに,多くのタイプやサイズの大規模臨床データベースが存在し,著者の川村孝先生も本書内で同様のことを述べられているように,「世界の臨床現場に役立つエビデンスを自ら創る」という方針の下に,院生は修士・博士にかかわらず,すぐに研究最前線に投入され,先輩院生やスタッフと同じように独立したテーマで,先行研究調査→解析計画立案→データ解析→学会発表→論文作成に取りかかることが求められる.しかし,多くの臨床教室と同様,指導に当たる先輩院生やスタッフも,基礎から手取り足取り教えている時間的余裕は少ない.そのような状況で,初心者を即戦力にする(少なくともわれわれとある程度ディスカッションできるようにする)のに必要な,(川村先生も本書内でおっしゃる)「疫学・統計学的センス」を短期間に身に付けてもらうのに最適の書である.

がんゲノム医療遺伝子パネル検査実践ガイド

著者: 藤原康弘

ページ範囲:P.1266 - P.1266

まず手にとってほしいと素直に思えた一冊

 がんパネル遺伝子検査が保険適用となり,既に活用されておられる方も多いと思う.ただ,活用したくとも,「ゲノム」という言葉を目にしたり,耳にしたりすると,とっつきにくいと感じられるベテランの方も多いだろう.そんな時,がん診療の一線に立っている医療者の方たちに,まず手に取ってもらいたいと素直に思えたのが本書である.がん遺伝子パネル検査の基本と実際を,基礎科学者,臨床検査や病理の専門家,腫瘍内科医,さらには企業人まで,がんパネル遺伝子検査を開発し,さらには一線で診療に活用されている日本全国からえりすぐりの新進気鋭の執筆陣が解説してくれている.

 がんゲノム医療の初学者である臨床家には,第1章 基礎知識 臨床のためのがん遺伝子パネル検査のABCと第2章 がん遺伝子パネル検査のキーワードは,がんゲノム医療の背景になっている事項の理解に非常に役立つ.がんパネル遺伝子検査結果レポートの遺伝子異常の欄に出ている英語と数字の並ぶバリアントの表記に二の足を踏まれた方もベテランには多いのではないかと思うが,74ページから始まる「遺伝子異常(バリアント)の表記方法は?」を一度ご覧いただくと安心して次回から結果レポートに目を通せるのではないだろうか.また,巻末付録のがんゲノム医療関連webリンクはQRコード付きで非常に参考になる.

INFORMATION

第60回日本臨床化学学会年次学術集会

ページ範囲:P.1241 - P.1241

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目次

ページ範囲:P.1186 - P.1187

『臨床検査』11月号のお知らせ

ページ範囲:P.1185 - P.1185

「ラボクイズ」解答/読者アンケートFAX

ページ範囲:P.1267 - P.1267

あとがき・次号予告

著者: 横田浩充

ページ範囲:P.1272 - P.1272

 8月も終わりの時期となりました.現在も新型コロナウイルスの感染は収まる気配がありません.この影響により多くの学会が現地開催を中止し,Web開催としました.LIVE配信や録画後のプレゼン資料動画の配信が行われておりますが,オンデマンド配信されているものは参加者が聴講したいテーマを自由なときに何回も,広い分野を聴講できるので利点が多いと感じております.セミナーや会議もWeb開催となったことで移動の時間がなくなり,合理的に時間を使えるようになりました.コロナ禍は頭痛の種ですが,Web開催は新たな方向性で定着するものと思っています.

 さて,本誌11月号です.「病気のはなし」頭痛を今月のピックアップとしました.頭痛は日常身近に知る症状ですが,原因によって367種類に分類され,大別すると一次性と二次性があり,本稿では早急に診断する必要がある二次性頭痛について学ぶことができます.「技術講座」では血栓性微小血管症(TMA)について深く学ぶことができるほか,SMBG機器とPOCT血糖測定装置の使い分けは実際の現場に有益な情報と思いました.また,細胞診検体を用いた特殊染色では染色の原理とその意義を学ぶことができます.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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