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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術48巻4号

2020年04月発行

雑誌目次

病気のはなし

ウイルス発疹症—単純疱疹,水痘,帯状疱疹,麻疹,風疹

著者: 清島真理子

ページ範囲:P.380 - P.385

Point

●単純疱疹,水痘・帯状疱疹は水疱形成が特徴で,水疱内容からウイルスを検出する.

●単純疱疹には1型,2型の2種のウイルスがあり,種々の臨床症状を起こす.

●水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染で水痘,再活性化で帯状疱疹を引き起こす.

●麻疹,風疹では発熱を伴って全身に紅斑がみられる.

技術講座 微生物

アンチバイオグラムの作り方・使い方

著者: 小森敏明

ページ範囲:P.402 - P.407

Point

●アンチバイオグラムとは,自施設の一定期間において分離された微生物の各種抗菌薬への感受性率を一覧表にまとめたものです.

●アンチバイオグラムは感染症の経験的治療における薬剤選択の参考になり,抗菌薬適正使用を推進していくための重要なデータです.

●基準に従ってアンチバイオグラムを作成することで,自施設で活用できるとともに,施設間比較にも利用できます.

●検査室は定期的なアンチバイオグラム作成とその活用方法を広く周知する努力が必要になります.

病理

病理材料の切り出し・包埋における注意点と工夫

著者: 平田勝啓

ページ範囲:P.408 - P.416

Point

●肉眼診断がかかわる切り出しは医師が担当することが多いが,切り出しを補助する臨床検査技師も周辺知識・技術の習得に努めなければならない.

●包埋は適切な部分を標本にするうえで極めて重要なステップで,また検体紛失や取り違えの発生しやすい工程でもある.不適切な包埋は,薄切後に復元不能となる可能性にも留意して慎重に行う.

●均一で美麗な病理標本は診断の効率化,エラー防止に役立つ.一定品質の病理標本が作製できるよう,施設内でルールを定めておくことが望ましい.

血液

自動血球計数器のスキャッタグラムの活用

著者: 安藤秀実

ページ範囲:P.417 - P.424

Point

●自動血球計数器は血球数算定(CBC)や白血球(WBC)5分画データから異常フラグを表示するが,異常細胞が認められる症例で異常フラグを表示しないケースも多々ある.

●急性骨髄性白血病では,WBC数の減少や増加,貧血,血小板減少などのCBCデータの異常から血液腫瘍性の異常を判断できることが多いが,慢性骨髄性白血病やリンパ性白血病/リンパ腫ではCBCデータの異常がないか少ないケースもある.

●WBC分画の依頼のない検体でも,WBCヒストグラムの確認で血液腫瘍が発見されるケースもある.

生理

—step up編—EVAR術後のエコー検査—合併症のエンドリークを中心に

著者: 工藤朋子

ページ範囲:P.426 - P.430

Point

●治療デバイスの特徴や患者情報を入手のうえ,検査に臨む.

●他のモダリティの情報を利用しながら効率的に検査を行う.

●無エコー領域や低輝度領域を丁寧に観察し,エンドリークの原因を見つける.

●超音波の特性であるリアルタイム性と血流の詳細な情報を生かす.

トピックス

凝固波形解析技術によるフィブリノゲンの量的異常と質的異常の鑑別

著者: 鈴木敦夫

ページ範囲:P.386 - P.390

はじめに

 私たちが怪我をして出血をすると,その出血を阻止するべく,生体防御反応の1つとして止血反応が起こります.私たちの体には出血を止めるさまざまな要素が備わっていますが,代表的なものは血小板と血液凝固因子です.

 血液凝固因子はさまざまな酵素や補酵素,あるいは基質となる蛋白質の集団です.これらはいわゆる“凝固カスケード”に沿って相互作用し,最終的にフィブリンという不溶性の蛋白質を生成します.これが血液凝固です.フィブリンの“もと”になるものがフィブリノゲンであり,フィブリノゲンの量や質は正常な凝固反応を完結させるうえで極めて重要です.言い換えれば,他の凝固因子が十分量備わっていたとしても,フィブリノゲンがなければ血液凝固反応は成立,完結しないことになります.

 ここで,フィブリノゲンが“ない”あるいは“欠乏している”ということについて,それが“量の欠乏”なのか,あるいは“質の低下”なのか,もしくはその両方なのかを考える必要があります.これらを見極めるには,これまで複数の検査を組み合わせる必要があり,多くは専門の機関や施設でのみ可能でした.当院では,一般の病院でもこれらが簡単に,かつ迅速に区別できる方法を発明しました.本稿では凝固波形解析を用いたフィブリノゲンの量的・質的異常の鑑別法についてご紹介します.

科学的根拠に基づいた輸血有害事象対応ガイドライン—作成のポイント

著者: 岡崎仁

ページ範囲:P.391 - P.393

はじめに

 筆者は2018年12月に発表された「科学的根拠に基づいた輸血有害事象対応ガイドライン」1)の作成に携わった.本稿では,ガイドライン作成の目的や実際に有害事象が起きた際の対応についてガイドラインの内容を踏まえながら解説する.

FOCUS

臨床輸血看護師の役割—臨床検査技師とのかかわりを中心に

著者: 木村秀実

ページ範囲:P.394 - P.397

はじめに

 輸血は移植の一種と考えられているように,種々の副作用・合併症を伴いやすく,輸血治療を行うには深い知識と的確な判断力が要求されます.特に患者に最も近いところで臨床輸血に関与する看護師には,輸血に関する正しい知識と的確な看護能力が求められ,医師,臨床検査技師,そして看護師が一体となることで輸血の安全性は飛躍的に向上することが期待されます1).本稿では学会認定・臨床輸血看護師(以下,臨床輸血看護師)の院内での役割や臨床検査技師と看護師との連携について考えていきたいと思います.

髄膜癌腫症—髄液検査の重要性

著者: 中洲庸子

ページ範囲:P.398 - P.401

はじめに

 癌の臨床では診断と治療の進歩,特に分子標的薬を含む癌薬物療法の進歩は目覚ましく,患者の生命予後の延長に寄与している.しかし,中枢神経系(central nervous system:CNS)は血液−脳関門,血液−髄液関門で保護されており,薬物が有効治療域に達しにくい.このため癌診療のなかでCNS合併症の患者が増加しており,特に最近は治療困難で短命とされていた髄膜癌腫症に対する新しい診断と治療が注目されている1)

 髄膜癌腫症は,悪性腫瘍細胞がくも膜・軟膜・脳室上衣,くも膜下腔や脳室内に広がり,髄液内に播種した状態である.髄膜癌腫症には,①固形癌の髄膜播種,②血液腫瘍の髄膜浸潤が含まれる.これらは病態疫学・診断・治療などが異なるため,本稿ではおのおのに分けて最近の知見を概説する.

過去問deセルフチェック!

脳脊髄液(CSF)検査

ページ範囲:P.397 - P.397

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.425 - P.425

 髄液は,正式には脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)と呼ばれ,脳室系とくも膜下腔を満たす無色・透明,無臭の液体です.弱アルカリ性で細胞成分はほとんど含まれていません.その働きは,①外圧から脳や脊髄を保護する,②内部の化学的環境を維持する,③老廃物を除去する,などがあります.髄液は側脳室脈絡叢で血漿から生成されます.成人の全髄液量は約150mLで,1分間に0.3〜0.5mL生成され,1日で約4〜6回入れ替わっています.

 髄液中に存在する糖質のほとんどはブドウ糖で,髄液糖は血糖に由来します.成人の基準値は,血糖の約1/2〜1/3の割合で,髄液中に赤血球や細菌が混在する場合,長時間放置された検体ではブドウ糖が消費されて低値を示すことがあります.また,髄液中の糖は,血糖より1〜2時間遅れて増減するため,髄液糖値を評価する場合は,空腹時に穿刺採取し,併せて事前に血糖の測定も必要となります(問題1).

疾患と検査値の推移

心房細動

著者: 宮本康二

ページ範囲:P.432 - P.437

Point

●心原性脳塞栓症は心腔内から遊離した血栓などが脳血管を閉塞して生じる脳梗塞であり,心房細動が原因となることが多い.

●現在,経口抗凝固薬としてワルファリンに加え4種類の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)があり,その有効性・安全性はワルファリンと同等もしくはワルファリンよりも優れている.

●DOACの安全性に影響を与える因子として,年齢,体重,腎機能,抗血小板薬併用の有無などがある.DOACの投与を開始するときにはこれらの因子を考慮して,DOAC投与の可否や用量設定を行うが,腎機能に関しては,投与中に悪化する可能性があるため注意が必要である.

臨床検査のピットフォール

下肢静脈DVTエコーのピットフォール

著者: 笹木優賢

ページ範囲:P.438 - P.442

はじめに

 下肢静脈エコーは深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)のスクリーニング検査の第一選択として数多くの施設で取り入れられており,また被災地におけるエコノミークラス症候群評価のためにも行われている.しかし,下肢静脈エコーでは数々のピットフォールが存在し,その判断に苦慮する場合もある.本稿では下肢静脈エコーでの注意点とピットフォールの対処法を実際の観察順に大腿領域,下腿領域,腸骨領域の部位別に分け解説する.

連載 帰ってきた やなさん。・8

やっぱ熱いな! さすが温泉県,大分!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.443 - P.443

 「大分県で講演をお願いできませんでしょうか?」そんな文字を,まさかSNSのメッセージで見るとは思わなかった.おいおい,大分,イマドキだな.「これ……いつ来たメッセージだよ」日付を見ると……2カ月前! いいや,まさかSNSで依頼が来るとは思ってないよ! 焦ってすぐに返事を送った.もう2カ月も前だし,講演はなしかな……なんて思っていると,「ありがとうございます! では,日程を!」と超迅速なレスポンス! 熱すぎるだろ大分! そして,講演依頼の内容に,さらに度肝を抜かれた.「一部 がんゲノム医療について90分,二部 自己紹介90分」……え?二部構成!? しかも1人で二部構成!? え?自己紹介90分!? いやいや大分,構成がぶっ飛んでる! 柳田の自己紹介90分もいる?誰が知りたいのさ!と,プログラム構成にかなりどきどき.「事前に参加申し込みしないので,当日何人来るか,わからんですよぉ」と言われた.

 柳田1人の180分……誰が,聴きたいと思ってくれるんだよ……めちゃくちゃ不安のなか,講堂の一番前の席に座り,講演時間まで前を向いていた.後ろを振り向く勇気が出なくて,何人来てくれるんだろうって,ずっと前だけ向いていた.「では,時間になりましたので……」座長の声のなか,演台に立ち,会場を見た.「なんだよ……これ」講堂いっぱいの人.皆,私を見ていた.演台に立つとわかる.その視線が,どんな視線なのか,演者はわかる.大きくて厚みのある,熱い視線だった.私1人の180分に,こんなにも多くの人が時間を割いて,この場に来てくれている.がんゲノムのこと,自分のことを話した.

生理検査のアーチファクト・33

—平衡機能検査① 電気眼振図検査—まばたきによるアーチファクト

著者: 工藤弘恵

ページ範囲:P.444 - P.449

平衡機能検査のアーチファクトとは?

 平衡機能検査にはさまざまな原因による平衡障害を客観的に評価する種々の検査がある.平衡機能検査において正しい結果を得るために重要なことは,正しい電極装着,機器の設定,異常所見とアーチファクトの鑑別ができることはもちろんであるが,“患者の協力”も必要不可欠なものとなる.したがって,患者の心理状態,理解度に合わせて検査内容を説明できることもアーチファクトを減らすためには重要である.本号からは平衡機能検査のなかでも眼運動系の検査として電気眼振図(electronystagmography:ENG)検査,体平衡系の検査として重心動揺検査に関する内容を4回にわたり紹介していく.

 本稿はENGにおけるアーチファクトに関して触れていくが,その前にENGについて簡単に説明する.ENG検査とはめまいの他覚的所見である“眼振”をはじめ,平衡障害の他覚的所見としての自発的な異常眼球運動,視刺激,温度刺激(カロリックテスト)などを用いて異常を検出する際の眼球運動を記録する検査であり,図1,2のように記録される.

Q&A 読者質問箱

胆囊壁の周囲の高エコー部分は何を見ているのですか?

著者: 上牧隆

ページ範囲:P.450 - P.451

Q 胆囊壁の周囲の高エコー部分は何を見ているのですか?

A 胆囊は頸部,体部,底部に区別され,肝下面で肝右葉と肝左葉内側区域の境界部をなす胆囊窩に位置します.体部から頸部は胆囊窩において結合織で肝に付着していますが,他の部分は肝被膜から続く腹膜に当たる漿膜で覆われています.胆囊壁は内腔側より粘膜層,固有筋層,漿膜下層,漿膜層の4層構造ですが,正常な壁の厚みは1〜2mmで,超音波検査では高エコーで薄く平滑に描出されます(図1).

ワンポイントアドバイス

心電図検査において臨床検査技師に求められること

著者: 内田文也

ページ範囲:P.452 - P.454

はじめに

 われわれ臨床検査技師は,検査室の電気的環境ノイズが多い時代,アナログ心電計を用いての波形記録においていかにノイズ混入の少ない心電図波形を記録するかに注意を払い,依頼医は,われわれに判読能力よりも,より精度の高い検査技術を求めていた.しかしながらデジタル心電計の登場や環境改善により,心電図検査において新たなことが求められはじめている.

 循環器診療において12誘導心電図検査は不可欠であることに間違いはない.不整脈診療における頻拍機序や起源の推定といった判読力も問われつつある.

臨床医からの質問に答える

透析患者の心エコー検査は透析前後のどちらで行うべきでしょうか?

著者: 内藤博之 ,   石津智子

ページ範囲:P.455 - P.458

はじめに

 透析患者の心機能評価を目的に行われる心エコー検査で,前回,僧帽弁逆流(mitral regurgitation:MR)の程度がmoderate to severeだった患者が,今回はmildの評価であった.特に時間やタイミングの指定などはなく検査を実施したが,本来はどのように検査を実施するのがよいのだろうか? このような疑問をもった者は少なくないと思われる.本稿では臨床検査技師がもつべき知識として,血液透析による体内の変化,心エコー検査の際に考慮すべき点などを症例を踏まえて解説する.

ラボクイズ

一般検査

著者: 平石直己

ページ範囲:P.460 - P.460

2月号の解答と解説

著者: 伊藤智雄

ページ範囲:P.461 - P.461

第26回第1種ME技術実力検定試験

ページ範囲:P.401 - P.401

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目次

ページ範囲:P.378 - P.379

『臨床検査』3月号のお知らせ

ページ範囲:P.377 - P.377

あとがき・次号予告

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.464 - P.464

 令和になって初めての正月が過ぎました.皆さま,一年のスタートを切られ,新年度の準備にお忙しい頃と思います.現在,2月の上旬に,この「あとがき」を書かせていただいておりますが,ニュースの中心は,これまでに報告されていない新型コロナウイルスに関連する呼吸器感染症,つまり,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題です.中国湖北省武漢市を発祥とした本感染症は,一気に,わが国を含めた海外に流行拡大したことはご存じの通りです.グローバル化時代における新興感染症の脅威をあらためて認識しました.その一方,本感染症に関する重要な研究成果が次々と発表され,遺伝子増幅法(リアルタイムPCR検査やPCR検査)を中心とする新型コロナウイルスの検査体制も構築されました.また,臨床検査の分野で活躍されている微生物領域の専門家の方々は,マスメディアにおける啓発活動においても活躍されています.あらためて,臨床検査の重要性を認識しています.本号が皆さまのお手元に届く頃には,この新型コロナウイルス感染症が終息に向かっていることを願うばかりです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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