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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術48巻6号

2020年06月発行

雑誌目次

病気のはなし

特発性血栓症—遺伝性血栓性素因によるものに限る

著者: 津田博子

ページ範囲:P.557 - P.563

Point

●「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る.)」は,遺伝性血栓性素因による先天的な血液凝固亢進状態により病的血栓傾向となり,若年性に重篤な血栓症を発症する疾患群であり,指定難病(告示番号327)に認定されている.

●代表的な遺伝性血栓性素因は,先天性プロテインC(PC)欠乏症,先天性プロテインS(PS)欠乏症,先天性アンチトロンビン(AT)欠乏症である.

●新生児・乳児期と小児期・成人では好発する症状に違いがある.

●診断には,特徴的な症状,検査所見(血漿中のPC,PS,AT活性低下),鑑別診断が必須要件であり,PROC,PROS1,SERPINC1の遺伝子変異の同定ないし遺伝性を示唆する所見が求められる.

●長期にわたる抗凝固療法や補充療法を要することが多く,患者およびその家族に対して身体面,精神面,経済面の支援が必要である.

技術講座 生理

超音波検査を用いたバスキュラーアクセスサーベイランス

著者: 菊地実

ページ範囲:P.578 - P.585

Point

●バスキュラーアクセス(VA)の約9割は自己血管内シャント(AVF)で,AVFは非生理的血行動態による影響などでシャント血管に狭窄や閉塞の合併症が起こりえます.

●シャント肢の理学的観察はとても重要です.

●VA超音波検査(VAエコー)の目的はVAの形態と機能を評価することです.

●普段の透析で特に問題がない場合でも,VAエコーで異常を偶発することがあります.

●VAサーベイランスとしてのVAエコーはVAトラブルの予防や早期発見に有用です.

高齢者に対する聴力検査

著者: 前田秀彦

ページ範囲:P.586 - P.591

Point

●高齢者に対する聴力検査のニーズは増加傾向であり,適切な知識をもった臨床検査技師の育成は重要です.

●聴力検査は自覚的検査法であり,検査に対する患者の理解や協力が結果に影響を与えます.

●検査時間が長時間に及ぶと,疲労による集中力の低下によって信頼性も低下します.

●高齢者を検査する際,検査前の情報収集,検査説明の工夫,個人に合わせた臨機応変な対応が重要です.

一般

骨髄検査の検体処理

著者: 中川浩美

ページ範囲:P.592 - P.596

Point

●骨髄検査を行うには必ず目的があり,評価可能な標本を作製することが大切です.

●臨床検査技師が骨髄検査の現場で行うのは,吸引骨髄のなかに骨片(particles)が採取され,きちんと採取できているかを医師に伝えることです.

●骨髄標本にはスメア標本と圧挫伸展標本があります.

輸血

—step up編—単球貪食試験による不規則抗体の評価とその臨床的意義

著者: 伊藤正一

ページ範囲:P.597 - P.603

Point

●赤血球に対する不規則抗体が感作した赤血球の破壊は,脾臓でのマクロファージなどの単核食細胞による貪食(血管外溶血)が主たる要因である.

●貪食率が高くなる重要な要素は,赤血球に感作する抗体量であり,抗体価が低いまたは赤血球との親和性が低い抗体では貪食率が低い.

●生体内で自己抗体が感作した直接抗グロブリン試験(DAT)陽性赤血球は,抗体感作量と補体の関与により貪食(破壊)の程度は異なる.

トピックス

造血制御の破綻による急性骨髄性白血病の発症

著者: 木戸屋浩康

ページ範囲:P.564 - P.566

はじめに

 一見すると静的でもある血液系の恒常性の裏には,絶えず繰り返される血液細胞の産生と破壊というダイナミズムが存在する.それを支えているのが,造血幹細胞の休眠と増殖・分化のバランスを制御する緻密で巧妙な分子システムである.生命維持の要でもあるこのシステムは当然ながらロバストに構築されているが,生体を取り巻く過酷なストレスはシステムの破綻を導くことがある.その結果としてもたらされるのが,異常な造血による白血病の発症である.白血病の再発を防ぎ完全寛解を目指すためには,造血系の分子システムを理解して原因となる異常箇所を的確に標的とすることが理想といえる.

 筆者ら1)は,急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)の新しい発症因子としてRegnase-1を同定した.本稿では,Regnase-1と造血系の分子システムの関係性について解説する.

高血圧治療ガイドライン—2014年版から2019年版への改訂のポイント

著者: 下澤達雄

ページ範囲:P.567 - P.571

はじめに

 2014年に高血圧治療ガイドラインが発行され,日本の研究成果の他にも米国でのSPRINT(systolic blood pressure intervention trial)試験のような大規模臨床試験で適切な降圧目標値を探る研究が発表されたことから,2017年よりガイドライン改訂準備を開始し2019年4月に最新版のガイドラインが発行された.2019年版では従来と異なり17のClinical Questionを設け,現在論文として発表されているデータをメタ解析し,エビデンスに基づいたAnswerを記載している.当初は17以上のClinical Questionが挙げられたが,メタ解析するに足るだけの情報がないClinical Questionもあり,最終的に17個になった.そのため,現状エビデンスに基づいた高血圧診療を行ううえではこのClinical Questionをまずは参照することが勧められる.この他に9つのQuestionとして例えば,水銀血圧計が使えなくなることから,どのような血圧計を推奨するか(Q1),家庭血圧の測定方法(Q2),血圧変動性の評価方法(Q3)のような,まだエビデンスが十分ではないものの日常臨床で問題となる点を取り上げている.

 本稿では2014年版から2019年版への大きな変更点について,特に臨床検査にかかわる部分を概説する.

FOCUS

高齢者在宅医療におけるポケットエコーの有用性

著者: 寺内裕樹

ページ範囲:P.572 - P.574

はじめに

 近年,POCUS(point-of-care ultrasound)という概念が広まり,急性期医療現場では医師によるFAST(focused assessment with sonography for trauma)やFoCUS(focused cardiac ultrasound examination),在宅医療現場では訪問看護師による残尿エコーなど,エコー検査機器の小型化に伴ってポケットエコーの有用性が多職種から報告されている.POCUSとは,ベッドサイドなどにおいてバイタルサイン・病歴・身体所見から判断されたものを中心に的を絞って短時間で行う超音波検査法であり,検査室で行う系統的超音波検査法とは異なる.視覚による定性的評価が中心で,極力計測などは行わず,短時間で身体所見などと合わせて病態評価に用いる方法である.在宅医療現場ではその場で判断を求められることが多く,POCUSは有用である.

 当クリニックは高齢者介護施設対象の訪問診療をメインとしたクリニックで,医師に同行しGEヘルスケア・ジャパン社のVscan® Dual Probeでエコー検査を行っている.在宅医療現場で,ポケットエコーのみで検査を行うソノグラファーから主治医へどのように提案し有効活用できたか,実際の症例を提示し若干の知見を付け加え報告する.

ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程

著者: 立石悠基 ,   小田義直

ページ範囲:P.575 - P.577

はじめに

 日々の病理組織診断においては,生検や手術などにより採取・切除された組織のホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded:FFPE)検体からHE(hematoxylin-eosin)標本が作製され,形態診断が行われています.また,特殊染色や免疫染色を追加することでさらに詳しい診断が行われています.現在ではこれらの形態診断に加え,核酸や蛋白などの生体分子の検索を目的とした分子診断にも用いられています.さらには次世代シークエンシング(next-generation sequencing:NGS)法などの新規技術の臨床導入が一部開始され,今後診療を目的として作製される全てのFFPE検体に対し,これらの技術を用いたゲノム診断で利用可能な一定水準以上の品質が求められるようになっています.

 精度の高い分子診断を行うためには,検体の品質管理は極めて重要です.多遺伝子解析の結果を保証しなければならないゲノム診断(遺伝子パネル検査)においては,その結果の質を保証するためには,これまで以上に,より厳格な検体の品質管理が求められます.

 こうした状況を鑑みて,2016年に策定された「ゲノム研究用病理組織検体取扱い規程」を元に一般社団法人日本病理学会ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程策定ワーキンググループ(委員長:小田義直)は2018年に「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」を策定しました.本稿では,本規程よりFFPE検体の適切な作製・保管方法について紹介します.

過去問deセルフチェック!

抗菌薬の作用機序

ページ範囲:P.585 - P.585

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.611 - P.611

 抗菌薬の系統とその作用機序に関する問題は,ほぼ毎年のように出題されている.主な抗菌薬の作用機序,系統,薬剤名を一覧表(表1)にまとめるので,整理しておきたい.

 細胞壁合成阻害の作用をもつ抗菌薬は,①β-ラクタム系薬,②グリコペプチド系薬,③ホスホマイシン系薬である.

臨床検査のピットフォール

ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体の適切な作製・保管方法の留意点

著者: 佐藤浩司

ページ範囲:P.604 - P.607

はじめに

 ホルマリン固定パラフィン包埋(formalin-fixed paraffin-embedded:FFPE)検体とは,文字通りホルマリンで固定した検体を脱水脱脂後パラフィンへと置換し包埋処理をした検体のことで,病理診断を目的とした検査室で最も広く用いられている処理方法である.

 このFFPE検体は,薄切後のヘマトキシリン・エオジン(hematoxylin-eosin:HE)染色や特殊染色を用いて形態学を基にした従来の病理診断,また免疫組織化学染色(免疫染色)やFISH(fluorescence in situ hybridization)法などを用いた分子病理診断に使用されてきた.近年ではその利用目的がさらに広がり,コンパニオン診断を目的とした免疫染色やFISH法,遺伝子変異解析など多岐にわたって使用されるようになった.特にこのコンパニオン診断における治療標的分子の検索は,固定からパラフィン包埋までのプロセスやブロックの保管方法において,適切な条件で処理することが求められる.すなわちこのFFPE検体の作製プロセスや保管方法について誤った処理が加わると,その後の分子レベルでの正確な診断や治療において重大な問題を引き起こし,患者自身のQOL(quality of life)に大きな支障が生じてしまう.したがって,本稿ではFFPE検体の適切な作製・保管の際の留意点について解説する.

連載 生理検査のアーチファクト・35

—平衡機能検査③ 電気眼振図検査—視刺激検査時のアーチファクト

著者: 工藤弘恵

ページ範囲:P.608 - P.610

 こんなアーチファクトを知っていますか?

 図1は視刺激検査の1つである追跡眼球運動検査(eye tracking test:ETT)の記録である.追跡眼球運動とは,ゆっくり動く視標の動きに合わせて視線を滑らかに動かすときに起こる随意的な眼球運動である.図1の場合,視角40°の幅に左右にゆっくり(0.3Hz/sec)と滑らかに動く視標を見ている眼球の状態を記録したもので,視標の動きと同じように滑らかに眼が動いている様子が記録されている.

 図2は同じ条件での検査の記録であるが,図2aは滑らかな動きができず,ギクシャクした動きの追跡運動(図2a,※)が記録されている.また図2bでは図1と比較して振幅が小さくなっている.どのような原因でこのような記録になってしまうのだろうか?

帰ってきた やなさん。・10

こんなときこそ,自分自身を大切に!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.617 - P.617

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が報道されはじめた頃から,多くの施設で対策が講じられてきた.当院でも“毎朝,検温し,37.5℃以上の場合は自宅待機とする”“院内では常時マスクの着用”“食事は1人無言でする”“長時間の公共交通機関の使用を自粛する”など,多くの策が講じられた.患者を守るため,院内感染を発生させないように,連日,注意喚起の案内が全教職員に連絡された.どれだけ注意を払っていても,そのときは来る.他院からの入院患者が新型コロナウイルスに感染していることが発覚.濃厚接触したと思われる医療従事者も“感染の疑い”となり,われわれ職員を震撼させた.海外では多くの医療従事者がウイルスの感染により亡くなっている.医療従事者は常に感染のリスクがある……それでも,その環境下でわれわれは,自分たちの責務を果たしている.「子どもに“もう,病院のお仕事辞めなよ”と言われました」と笑いながら話す医局の仲間も,毎日変わらず出勤している.いま,どれだけ多くの人が不安や恐怖を抱いているか……それは,われわれも同じだ.“検査を! 検査を!”と連日叫ばれているが,いつでもどこでも実施できる検査ではなく,その歯がゆさを感じている臨床検査技師も多くいるだろう.私もそのうちの1人だ.いまの自分に何ができるのか? なんの役に立てるのか?と.私は,一般の人たちの感染リスクを少しでも下げることはできないかと考え,某ポータルサイトのニュース記事として“マスクの正しいつけ方”について書いた.かなり多くの人たちが閲覧してくれている.私にできることは些細なことだが,1人でも感染から守れたら,と願う.

ワンポイントアドバイス

拡大内視鏡時代の内視鏡切除標本の写真撮影法

著者: 名和田義高

ページ範囲:P.612 - P.613

はじめに

 消化管癌の内視鏡診断の際,拡大内視鏡検査は近年では必須の検査となっています.治療後に,臨床医が内視鏡像と病理組織像を対比する際には,割入り後の切除標本の写真が必要になります.撮影機材があることが前提になりますが,本稿では細かい表面構造まで描出する撮り方を説明します.

Q&A 読者質問箱

CMLではNAPスコアーが低値になる機序,急性転化時には上昇する機序について教えてください.

著者: 森沙耶香 ,   長谷川寛雄

ページ範囲:P.614 - P.615

Q CMLではNAPスコアーが低値になる機序,急性転化時には上昇する機序について教えてください.

A 慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia:CML)患者の成熟好中球においてアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)活性が低下していることが発見され,細胞化学的ALP活性測定法である好中球アルカリフォスファターゼ(neutrophil alkaline phosphatase:NAP)染色法が確立し,白血球数が著増していない早期でもCMLの診断が可能になりました.しかしその後長らく,CMLにおけるNAP活性低下の原因は実はよくわかっていませんでした.近年,さまざまなサイトカインの研究が進むにつれて,その機序が解明されてきました.本稿では,CMLにおいてNAPスコアーが低値になる機序について解説しますが,急性転化時におけるNAPスコアーの上昇については原因が解明されていません.機序に関して諸説あるのですが,私見を交え説明したいと思います.

ラボクイズ

心電図検査

著者: 高橋勝行

ページ範囲:P.660 - P.660

5月号の解答と解説

著者: 竹川啓史

ページ範囲:P.661 - P.661

書評

高齢不妊診療ハンドブック

著者: 久保春海

ページ範囲:P.616 - P.616

加齢不妊に対してはARTと統合医療の併用が重要

 2019年10月に医学書院から森本義晴(IVF JAPAN),太田邦明(福島県立医大)両先生の編集により『高齢不妊診療ハンドブック』が上梓されました.この本の帯にある「多くの不妊診療専門医が苦慮している高齢不妊患者さんに対してどのように治療していますか?」という問い掛けに対して,最新の治療方法として,検査,生殖補助医療技術(ART)手技から統合医療的アプローチまでを含め,高齢不妊患者さんを妊娠へと導くための秘訣をわが国の一流の専門医が伝授することを目的とした成書であります.体外受精・胚移植(IVF-ET)のパイオニアのひとりであるPatrick Steptoeが,世界初のIVFベビーを誕生させた直後の1978年に米国のカリフォルニア大サンフランシスコ校(UCSF)を訪れた時の講演会で,「IVF-ETによる加齢不妊治療は可能ですか?」という私の質問に対して,「IVF-ETは卵管因子による絶対不妊に対してのみ使用すべきものである」と答えられました.これは今から40年以上前のことですが,今やわが国では結婚,出産年齢の高齢化に伴い加齢不妊はART症例の半数以上を占める大きな命題になっています.

—内科医に役立つ!—誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活用術

著者: 清田雅智

ページ範囲:P.658 - P.658

救急医や研修医が尿検査を学ぶバイブル

 今日ほとんどの大病院では中央検査室が標準的に整備され,医師自ら検体検査を行うことはほぼ皆無になっている.検体検査の中では採血を行うことが主流で,多くの疾患は血液検査から分析され診断されていくことが多い.検尿という地味な検査は,腎臓内科医や泌尿器科医を除くとこだわりを持ってオーダーをすることは少ないのではないか.しかし,採血と異なり検査の侵襲は少ないメリットがあり,深く診ていくと意外な気付きもあり,今日でも有用な武器であることには違いない.

 内科医として日常臨床でよく使用するのは,「第9章 尿路感染の起因菌は何か?」における尿中白血球,亜硝酸塩,pHの判断であろう.腎臓の大家Burton D. Roseも他書にて尿のpHの尿路感染での重要性を指摘しているが,きちんとした解釈がここに書かれている.また,「第17章 低ナトリウム血症をみたら尿をみろ」というのは確かにその通りで,ナトリウムに加えて尿酸を解釈することが重要であり,これを血液検査だけで診断するというのはあり得ない話だろう.低ナトリウムの解釈は,学生時代にはあまり教わらず研修医になり臨床現場で学ぶものの一つであり,ここに書かれている内容を読めば,マニュアルの背景がわかることだろう.同様に「第18章 低カリウム血症をみたら尿をみろ」も重要で,低カリウム血症の解釈では尿中Kの排泄を評価するために,K/Cr,TTKG,FEKなどの難解な解釈をHalperinの文献も用いて明確に論じている.

INFORMATION

第45回日本医用マススペクトル学会年会

ページ範囲:P.574 - P.574

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目次

ページ範囲:P.554 - P.555

第66回臨床検査技師国家試験 解答と解説

著者: 「検査と技術」編集委員会

ページ範囲:P.618 - P.657

『臨床検査』6月号のお知らせ

ページ範囲:P.556 - P.556

あとがき・次号予告

著者: 大楠清文

ページ範囲:P.664 - P.664

 この「あとがき」を4月2日に書いておりますが,世界的な新型コロナウイルス感染症患者の爆発的増加によって,東京オリンピック開催の延期が決定し,行動制限や不要不急の外出自粛要請が出され,医療崩壊も懸念されています.本号がお手元に届く頃には,終息に向かっていることを心より願っています.

 さて,本号には「第66回臨床検査技師国家試験」の解答と解説が掲載されています.3月23日の合格発表によれば,新卒は3,940名受験して3,273名の合格で,合格率83.1%は昨年よりも3.4%低下しました.既卒を含めると3,472名の合格,合格率71.5%でした.合格された皆さまは4月から臨床検査技師として,先輩に教わりながら日常業務の修得に日々努力されている頃だと思います.「患者診療に貢献したい」との「志」をもった技師は,患者さんに感謝される機会が増えます.お金をもらうためにする“仕事”と,患者さんに役立つためにする“志事”とでは,明らかに違いが出てきます.逆にいえば,日常検査に「しあわせ」や充実感を得られない原因は,仕事を作業として行い,志を見いだして働けていない自分自身にもあるということなのです(近藤悦康氏の書籍「はたらくを、しあわせに。」から一部改変).「目の前の検体が,自分の一番大切な人から採取されたものだったら……」あるいは「目の前の患者さんが,自分の一番大切な人だったら……」との初心を忘れず,臨床検査技師の仕事に信念と誇りをもち,人生を楽しんでもらえればと願っています.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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