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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術48巻7号

2020年07月発行

雑誌目次

病気のはなし

脂肪肝

著者: 永井英成

ページ範囲:P.668 - P.672

Point

●非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は,単純性脂肪肝(simple fatty liver)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類される.

●NASHはNAFLDの20〜30%にみられる.

●NASHは肝腫大に伴う圧痛や腹部膨満などは認めないが,線維化が進行して肝硬変へ陥ると肝硬変に伴う症状を呈する.

●画像診断のみでNASHを診断する方法は確立されておらず,肝生検が必要となる.

●NASHの治療は,各種基礎疾患の治療が優先される.

技術講座 生理

肩関節の超音波検査

著者: 橋口直史

ページ範囲:P.692 - P.699

Point

●運動器エコーは,簡便である点,動的評価ができる点が最大の特徴である.

●上腕二頭筋長頭腱(LHB)を描出する際は,結節間溝の向きと異方性に注意しなければならない.

●肩甲下筋腱,烏口上腕靱帯は被験者の腕を内外旋することで動的に評価する.

●棘上筋,棘下筋は腱板付着面(facet)と腱の位置関係をイメージしながら,プローブの向きを意識する.

微生物

抗酸菌検査

著者: 𠮷田志緒美

ページ範囲:P.700 - P.708

Point

●抗酸菌属は生体内でしか生存できないMycobacterium tuberculosisとらい菌,環境に常在する非結核性抗酸菌(NTM)の総称であり,これらによる感染症を抗酸菌症といいます.

●M. tuberculosisを対象とした場合,患者から提出された臨床材料からM. tuberculosis遺伝子が一度でも検出されれば肺結核と診断できますが,NTM症では,複数の検体からのNTMの検出が確定診断上必要です.

●抗酸菌検査は,患者の管理や治療方針に直結するため,迅速性とともに高い精度が求められます.

●抗酸菌検査は,検査材料のチェックから始まり,菌体の確認および分離,菌種の同定,薬剤感受性の測定,薬剤耐性遺伝子の変異確認に至るまで,多岐にわたります.

遺伝子

遺伝子関連検査における遺伝子定量技術の臨床応用

著者: 池尻誠

ページ範囲:P.710 - P.715

Point

●遺伝子定量技術は特別な技術ではなく,日常的に用いられている技術です.

●主な技術としてリアルタイムPCR,デジタルPCR,NGSがあります.

●定量のためにリアルタイムPCRでは既知濃度サンプルが必要ですが,デジタルPCR,NGSでは必要ありません.

●おのおのの技術にはメリット・デメリットがあり,それを理解して活用していくことで臨床に有用な結果を導き出すことができます.

その他

質量分析の基礎と臨床検査への応用

著者: 佐藤守 ,   野村文夫

ページ範囲:P.716 - P.722

Point

●質量分析計(mass spectrometer)と質量分析(MS)を理解しよう.

●MSが利用される学問領域は多岐にわたっているため,使用する言葉を正確に理解することが重要である.

トピックス

ALP測定試薬のJSCC法からIFCC法への切り替え—理解しておきたい特徴と変更に伴う注意点

著者: 宮本博康

ページ範囲:P.674 - P.678

はじめに

 わが国では,1980年後半〜1990年頃にかけて酵素活性8項目〔AST(aspartate aminotransferase),ALT(alanine aminotransferase),ALP(alkaline phosphatase),LD(lactate dehydrogenase),CK(creatine kinase),γ-GT(γ-glutamyl transferase),ChE(cholinesterase),AMY(amylase)〕について,日本臨床化学会(Japan Society of Clinical Chemistry:JSCC)勧告法が作成された1〜3)

 このJSCC勧告法では,国際生化学連合(International Union of Biochemistry:IUB)や国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine:IFCC)などの国際的な流れを重視し測定温度が30℃に設定されたが,汎用されている自動分析装置の測定温度は37℃であることから,1994年にJSCC勧告法の温度のみを37℃としたJSCC常用基準法(以下,JSCC法)が定められた.ただし,JSCC法は日常検査としての安定性や利便性を考慮していないため,実際にはJSCC勧告法に準じてトレーサブルな値となるように安定性や測定範囲を向上させ,非特異反応を低減させた液状化試薬が標準化対応法試薬として市販されている.

 2019年の日本臨床衛生検査技師会臨床検査精度管理調査によると,この標準化対応法試薬は98%以上の施設で利用されており,国内での標準化により施設間差が解消された妥当性のある日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)共用基準範囲も採用されつつある.

 今般,JSCCを中心に,ALP測定試薬のJSCC法からIFCC標準測定法(以下,IFCC法)に準拠したものへの変更が進められているため,その切り替えに際して知っておくべき要点をまとめた.

サルコペニアの疾患概念と評価方法

著者: 森秀一

ページ範囲:P.680 - P.682

はじめに

 現代医療技術のめざましい進歩によってわれわれの平均寿命は伸び続け,いまでは90歳に手が届こうとしている.一方で,自立した生活を送れる期間を示す“健康寿命”の算定から,健康上の問題で支援や介護を必要とする期間が男性は約9年,女性は約12年もあることが明らかとなっている1).高齢者においてこれら日常生活の質の低下を引き起こす根本的要因が,加齢に伴って無意識のうちに進行する骨格筋の形態的・機能的変化であり,“サルコペニア”と呼ばれる現象である.本稿では,サルコペニアという疾患概念と現在推奨されているサルコペニアの評価方法について紹介する.

FOCUS

輸入感染症—耐性菌を中心に

著者: 柴山恵吾

ページ範囲:P.684 - P.687

はじめに

 世界では新たな薬剤耐性菌が次々と出現し拡散している.海外では,日本国内でまれな薬剤耐性菌がまん延している地域もある.薬剤耐性菌は医療アクセスがよい先進国だけでなく,発展途上国でも深刻な問題となっている.発展途上国で薬剤耐性菌が多いのは,さまざまな抗菌薬が処方箋なしで店頭で購入できるなど抗菌薬の適正使用があまりできていないことや,病院のなかでの院内感染対策が十分でないことなどが原因とされる.

 薬剤耐性はさまざまな菌種で存在するが,本稿では海外から持ち込まれる可能性が高いもので日和見感染の原因となり,さらに感染症を発症した場合に有効な抗菌薬が極めて限られるなど,特に注意を要する薬剤耐性菌に焦点を当てる.このような薬剤耐性菌の頻度について,日本,ならびに海外の例として中国,米国,英国,イタリア,スウェーデンの状況を紹介し,海外との比較から日本の特徴を述べるとともに,海外滞在歴のある患者を受け入れる場合に輸入感染症として持ち込みに特に留意すべき薬剤耐性菌について説明する.

超音波診断装置の精度管理—ISO15189の要求事項に基づいて

著者: 三木未佳

ページ範囲:P.688 - P.691

はじめに

 ISO 15189とは,臨床検査室の品質と能力に関する要求事項を定めた国際規格であり1),臨床検査室が検査結果の品質保証を国際的な水準で行っていることを証明してもらう第三者認定制度である.もともとは検体検査が対象であったが,2015年4月から認定範囲に生理学的検査が追加され,生理学的検査についても要求事項にのっとった標準化が求められるようになった.生理学的検査は,呼吸機能検査,心電図検査,超音波検査,脳波検査が認定の対象項目となる.

 ISO 15189では検査室を維持管理するための「管理上の要求事項」(4項)と「技術的要求事項」(5項)があり,機材に関する事項は主に技術的要求事項「5.3 検査室の機材,試薬,及び消耗品」に記載されている.

 今回は「超音波診断装置の精度管理」について,東北大学病院(以下,当院)の実例を踏まえて解説する.

過去問deセルフチェック!

遺伝子検査技術

ページ範囲:P.673 - P.673

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.723 - P.723

 2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険適用になり,がんゲノム医療が本格的に動き出した.同年末に“血液1滴で13種のがんを早期発見”との見出しで,検査キットが開発されたというニュースも新聞紙上に掲載された.これは血液中のマイクロRNA(ribonucleic acid)を対象とした検査システムのことである.遺伝子検査法の診療への利用が拡大し,保険適用項目も増大している.遺伝子検査は結核菌やウイルスを対象とした病原体遺伝子検査,造血器腫瘍や悪性腫瘍を対象とした体細胞遺伝子検査,遺伝性疾患などを対象とした遺伝学的検査の3つの分野で行われ,これらを総称して遺伝子関連検査と称する.このうち,実施件数が最も多い遺伝子検査は病原体遺伝子検査で,実施件数全体の約95%を占めている.

 さて,遺伝子関連検査にはさまざまな方法が取り入れられている.本問題で提示したノザンブロット法は,RNAを対象とするため現在の利用頻度は少ないが,DNA(deoxyribonucleic acid)を対象としたサザンブロット法は,リンパ性白血病やリンパ腫の診療において,T細胞レセプターや免疫グロブリン遺伝子の再構成検出に利用されている.

疾患と検査値の推移

肝硬変

著者: 影山憲貴

ページ範囲:P.724 - P.732

Point

●肝硬変とは慢性肝障害が進行して肝細胞が壊死と再生を繰り返す過程で,肝線維化や類洞の毛細血管化が生じて肝臓が硬く変化した状態であり,肝機能が低下している.また,病理組織学的に明確な概念規定がある.

●肝硬変の原因のほとんどが肝炎ウイルス感染〔特にC型肝炎ウイルス(HCV)〕によるもので,HCV・B型肝炎ウイルス(HBV)が全体の約60%を占め,次いでアルコール性が約20%を占める.

●機能的な分類として,代償性(自覚症状に乏しい)と非代償性(さまざまな自覚症状を認める)に区別する.

●確定診断は肝生検による組織診断であるが,一般的には血液検査所見,画像所見,臨床症状などから総合的に判断し診断される.

●肝硬変が進行した際の主な合併症は肝不全,門脈圧亢進症,消化管出血,肝細胞癌の発生である.また,肝不全の主な徴候は肝性脳症,腹水,浮腫,黄疸である.

連載 生理検査のアーチファクト・36

—平衡機能検査④ 重心動揺検査—患者の理解不足による影響

著者: 工藤弘恵

ページ範囲:P.733 - P.736

重心動揺検査とは

 今回は体平衡系の検査として,重心動揺検査に関して紹介する.

 重心動揺検査とは,直立起立姿勢時に現れる体の重心の動揺を測定し,平衡機能を評価する検査である.人は直立起立姿勢時には視覚系,内耳(前庭・半規管系),体性感覚系(筋・腱深部受容器系)からの入力を中枢神経系(小脳,脳幹,脊髄など)で処理し,その情報を四肢・軀幹の骨格筋に出力し“偏倚(へんい)”(身体が倒れそうになること)と“立ち直り反射”(偏倚を元に戻そうとする働き)を無意識に繰り返しながら直立姿勢を保っている.そのため,人は直立時には常に微小な揺れが生じている.

帰ってきた やなさん。・11

Stay Home やなさん。

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.747 - P.747

 新型コロナウイルスの流行に伴い,「Stay Home!」が合言葉の現在.“買い物も3日に1回で!”……と言われると,さらに“家の中で何をしようか?”と悩む.ひとまず,いままで見て見ぬフリをしてきた大学院の授業よね(遠い目).新型コロナウイルスの影響で,大学院の前期(4月〜8月)の授業は全てWeb講義に! 仕事終わりに授業に出ていた社会人学生には,Web講義はとてもありがたい.しかし,全ての授業でレポート提出なんて……鬼だわ,鬼.朝起きて,すぐにパソコンに向かってWeb講義を受けた.朝から統計学の授業なんてさ……ほぼ,頭の中には入ってこないわぁ(←統計学が大の苦手).先生が何を言ってるのか,さっぱりわからんのだが,外出自粛のこういうときこそ勉強よね…….その後,ボケーっとしたまま,洗濯機を回し,床掃除をしてみた.

 さて,次は職場の冷蔵庫の鍵につけるタグを作ろう!ってことで,UVレジン.UVレジンは透明の樹脂で,UVライトに当てると数分で硬化する.レジン液を型に流し込んで,入れたいものを沈めて,UVライトに当てるだけ! 操作は簡単なんだけど,結構センスが必要で,柳田はあまりセンスがないのですよ…….いまは,レジン用にさまざまな小物が売っていて,初心者でも簡単に始められる.今回は自分で見つけた四つ葉のクローバーを入れて,キーホルダーも作ってみた.レジンで固めてしまえば,四つ葉のクローバーもボロボロにならず,永久保存が可能! 女性にはアクセサリーを作ったりするのにオススメしたい! 結構,集中するのでアッという間に時間も過ぎちゃう.でも,樹脂の独特な臭いがするので,長時間使用すると,ちょっと気分が悪くなるので要注意.新型コロナウイルス対策も兼ねて,換気を十分行いながら……ね.

ワンポイントアドバイス

乳房内の脂肪組織と病変の見分け方

著者: 何森亜由美

ページ範囲:P.738 - P.741

はじめに

 脂肪組織が孤立性に乳腺の深いところにあると,超音波では低エコー気味に映し出されるので,病変のように見えてしまう場合があります.低エコー気味になるのは,デプスが深いと超音波が届きにくくなるからです.最近の超音波診断装置はさまざまな工夫がされているようですが,筆者の使っているプローブには1.5cmより深くなるとエコーレベルが下がり気味になる特徴をもつものがあります.また,クーパー靱帯からのシャドーがかぶっていると,低エコーが目立つようになります.

臨床医からの質問に答える

薬剤性腎障害の際に,なぜ尿中に好酸球が出現するのですか?

著者: 西尾康英

ページ範囲:P.742 - P.746

薬剤性腎障害の種類と急性間質性腎炎

 薬剤性腎障害は,障害部位や機序から図1に示すようにさまざまな病態疾患がありますが,好酸球が関連するのは尿細管が障害部位となる間質性腎障害です1).尿細管と間質を障害する薬剤性腎障害は図1中の太字で示しますが,障害機序から,薬剤が用量依存性に尿細管を障害する直接毒性(中毒性)(中毒性腎障害),用量非依存性の免疫的機序による腎障害(急性間質性腎炎),腎血流障害や電解質異常を介した間接毒性(虚血性腎障害),溶解度の低い薬剤の結晶析出性(結晶沈着性腎障害)の4つに分類されます.好酸球が尿中にみられるのは,そのなかでも2番目の免疫的機序によって起こされる薬剤性尿細管間質性腎炎です.

 尿細管間質性腎炎は急性と慢性に分類されます.両者が合併することが多く,好酸球が関与するのは主に急性尿細管間質性腎炎で,ATIN(acute tubulo-interstitial nephritis)が正しい病名と略称ですが,通常,尿細管を省略して“急性間質性腎炎”と呼ばれることが多いので,本稿では急性間質性腎炎の略語として汎用されているAIN(acute interstitial nephritis)を用います.

Q&A 読者質問箱

医療安全の5S活動とその効果について教えてください.

著者: 福原由美

ページ範囲:P.748 - P.750

Q 医療安全の5S活動とその効果について教えてください.

A 患者の安全を守るためのスキルには,高い技術や知識が必要なテクニカルスキルと,コミュニケーションなどの情報伝達や事前に危険を察知する力といったノンテクニカルスキルがあります.

臨床検査のピットフォール

シャントエコー血流量の評価におけるピットフォール

著者: 小林大樹

ページ範囲:P.751 - P.753

はじめに

 血液透析におけるシャント(バスキュラーアクセスともいう)は,動脈と静脈を外科的に吻合し,動脈血が静脈に流れ込む構造になっている.故に血管走行や血行動態は複雑化し,時間経過とともに狭窄が発現する.その狭窄が進行すると血栓を形成し,閉塞すれば透析が施行できなくなる.したがって,閉塞する前の狭窄の段階で治療介入することで,シャントを長期的に維持できる.そこで最近注目されているのが,エコーを用いたシャントの評価と管理である.

 今回は,シャントエコーで使用する血流量(flow volume:FV)の評価について以下の2題にテーマを絞り,陥りやすいピットフォールや解決のための考え方について,自験例を交えて解説する.なお,本文中においては,血流方向に関係なく,心臓側を中枢側,指先側を末梢側と表現していることにご留意いただきたい.

COFFEE BREAK

アフリカのモザンビークの臨床検査技師

著者: 小林恵里奈

ページ範囲:P.754 - P.754

 “モザンビーク”という名前の国を聞いたことがあるだろうか.公用語であるポルトガル語では“Moçambique”.アフリカ大陸南東部に位置する開発途上国である.“開発途上国”といえど,水や電気にもあまり困らず,減塩醬油まで買える首都マプトで,私は医療従事者を養成する公立学校(以下,養成校)で青年海外協力隊のボランティアとして活動していた(図1).

 モザンビークで臨床検査技師になるためには,養成校の卒業資格が必要となる.現在,国家試験制度はなく,医療従事者養成校の各コースを卒業すると,その医療職に従事することができる.臨床検査技師コースは,初級・中級・上級があり,初級コースの修了だけでも“臨床検査技師”として働くことができるが,より上位のコースを修了すると,就労時に給料が増えるケースが多い.中級コースの受験には,中等教育の修了が必要だが,家庭や経済的な事情により,中等教育に就学できる割合は37.5%ほどであり,簡単な受験資格ではない.公立の養成校は他に16校あり,学費が無料であるが,予算などの関係で全国の全コースで入学者を毎年募集しているわけではない.私学の養成校も存在するが,学費が高く,授業内容や設備が整っていない場合がある.このようなさまざまな要因が影響し,公立養成校の入試は激戦となり,2019年度の当校臨床検査コースの入試倍率は28倍であった.入学後は,保健省が定めた2年間の教育プログラムに沿って座学と病院実習が開始する.

ラボクイズ

一般検査

著者: 西山大揮

ページ範囲:P.756 - P.756

6月号の解答と解説

著者: 高橋勝行

ページ範囲:P.757 - P.757

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目次

ページ範囲:P.666 - P.667

『臨床検査』7月号のお知らせ

ページ範囲:P.665 - P.665

あとがき・次号予告

著者: 谷口智也

ページ範囲:P.760 - P.760

 現在4月上旬,本来であれば桜の季節,入学式,入社式など気持ちも新たに新年度が始まるはずでした.新型コロナウイルスの影響で,毎日のように感染者数の増加が報じられ,国は特措法に基づき「緊急事態宣言」を出しました.そして“コロナ疲れ”なる言葉が使われ,医療機関のみならず,ありとあらゆる方面で混乱が続いています.

 過去人類は,スペインかぜ(N1H1),アジアかぜ(N2H2),香港かぜ(H3N2)など多くの目に見えぬ敵と戦ってきました.特に1918年から世界的に流行したスペインかぜは,感染者数が全世界で約6億人,死者数はなんと約5千万人と言われています.日本での患者数は1カ月間で約57万人,このうち約4千4百人が死亡しています.当時の新聞には,「魔のごとく蔓延する悪性感冒」と書かれており,当時の状況(看護婦不足など)や注意喚起(マスクや人との距離など)が,約100年後のいまと非常に酷似しています.しかし,人間の心理や行動にはあまり進歩がなく,SNSなどでの悪質なデマ情報やコロナに便乗した犯罪などにはくれぐれも気をつけていただきたいと思います.さらに,医療従事者への誹謗中傷には心を痛めます.一方,教育現場は休校を余儀なくされ,一部の学校ではオンラインやビデオを用いた授業・実習が行われています.この7月号が出る頃には,新型コロナウイルスによる感染が収束し,過去のものとなっていることを願うばかりです.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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