臨床検査のピットフォール
採血の体位によって検査値が変わる項目—レニン,アルドステロンを中心に
著者:
片山茂裕
ページ範囲:P.515 - P.517
レニン−アンジオテンシン−アルドステロン(RAA)系
レニンは腎糸球体輸入細動脈壁にある傍糸球体細胞で産生される分子量37,000の蛋白分解酵素である.当初,分子量が45,000のプレプロレニンが産生され,プロレニン(不活性型レニン)となり,レニン(活性型レニン)となる.レニン−アンジオテンシン系を図11)に示すが,レニンは,レニン基質(アンジオテンシノーゲン)に働き,アンジオテンシンⅠ(AngⅠ)を産生する.さらに,アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme:ACE)の作用により,アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)が生じる.AngⅡは強力な血管収縮作用を有し,また副腎球状層に働いてアルドステロンを分泌させる.アルドステロンは鉱質コルチコイドと呼ばれるように,腎臓の遠位尿細管に働いて,カリウム(K)と水素イオン(H)との交換でナトリウム(Na)を再吸収する.したがって,この一連のカスケードはレニン−アンジオテンシン−アルドステロン(renin-angiotensin-aldosterone:RAA)系と呼ばれ,血圧の調節や水・電解質代謝に重要な役割を果たしている.
血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)は,被検血漿のACEとアンジオテンシナーゼを阻害して,内因性レニン基質からレニンによりin vitroで新たに産生されるAngⅠ生成量を測定するものである.最近では血中の活性型レニン濃度,すなわち血漿レニン濃度(plasma renin concentration:PRC)を直接測定することもできる.