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雑誌目次

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検査と技術49巻9号

2021年09月発行

雑誌目次

増刊号 病態別 腹部エコーの観察・記録・報告書作成マスター

はじめに

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.933 - P.933

 腹部エコー検査は,観察する臓器が多く広範囲の走査が必要です.消化器領域の肝・胆・膵・脾のみならず,腎・膀胱の泌尿器領域および子宮・卵巣などの婦人科領域,さらに消化管領域や大動脈などの血管領域まで,多領域にわたる観察を行い,リアルタイムに病態を推測しながら検査を進めていく必要があります.

 病態に則した腹部エコー検査をマスターするには,有意所見と思われる画像に遭遇した際,一般的な検査手順だけでなく,病態に則した「プラスα」の検査手技および,必要な画像を精度よく効率的に記録する方法を習得することが肝要です.また,その後さらにレベルアップするためには,遭遇した病態を深く理解するための知識習得(勉強)が欠かせません.

Ⅰ 基本断面の撮り方と報告書作成の基本

必須基本断面の撮像法の基本

著者: 丸山憲一

ページ範囲:P.936 - P.947

はじめに

 腹部領域のエコー検査は観察する範囲も多く,疾患も多彩である.疾患につながる異常所見を発見するには,基本となる断面をしっかりと描出するテクニックが必要となる.そこで本稿では,筆者の施設で行っている撮像法を例にして,必須と考えられる基本断面について,走査法のコツなどにも触れながら説明する(なお,ピンクで縁取られている図が当施設での基本断面の記録画像である).

報告書作成の基本

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.948 - P.961

はじめに

 報告書作成には,検査目的に明確に答えるような所見記載が重要である.また,目的以外に重要な所見が見つかる場合もあり,依頼医が目的以外の病態に注目できるように,わかりやすくポイントを絞った所見記載の工夫も必要である.医師はエコー像に精通しているとは限らず,画像の見かたや場合によってはシェーマなどを添えて“なぜそのような所見記載に至ったか”を明確に示す必要がある.この場合,シェーマだけでなく,画像とシェーマをセットで確認してもらい,エコー像への理解を深めてもらう努力も必要である.また,形式的な表での所見記載は,どんな場合であっても確実に全体を観察している証明として重要であり,これにより冷静なデータの見かたが可能となる.

 すなわち,①目的にフォーカスを絞った明確な所見と,②冷静な全体像把握の所見,この2つを兼ね備えた所見記載がレベルの高い報告書といえる.基本となる検査が終了した時点で,所見記載に必要な画像が記録されているのはもちろんのこと,ある程度の記載内容が考えとしてまとまっている必要がある.明確な文書化により依頼医に考えを伝えるためには,以下が必要項目として挙げられる.

◎依頼医が求める報告書のポイント

・検査目的に明確に答えている.

・全体像を確実に観察した証明となる所見記載がされている.

・診断基準に則した記載である.

・治療方針など,次の診療ステップに進むための記載がされている.

・文章は短く,略語や専門用語をできるだけ使用せずに平易な表現を行っている.

・画像とシェーマが所見記載とリンクし理解しやすい.

Ⅱ 主要疾患別の撮り方および報告書記載 肝疾患

びまん性肝疾患

著者: 伝法秀幸

ページ範囲:P.962 - P.972

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①慢性肝炎・肝硬変
②脂肪肝
③急性肝炎

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,日本消化器がん検診学会超音波検診委員会,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会:腹部超音波検診判定マニュアル.超音波医 42:201-224,2015

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会:脂肪肝の超音波診断基準,2021

●工藤正俊,椎名毅,森安史典,他:日本超音波医学会 超音波エラストグラフィ診療ガイドライン:肝臓.超音波医 40:325-357,2013

腫瘤性病変

著者: 西川徹

ページ範囲:P.974 - P.985

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患

◎良性腫瘤性病変
①肝嚢胞
②肝血管腫
③肝血管筋脂肪腫
④限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)
⑤肝細胞腺腫

◎悪性腫瘤性病変
①原発性肝細胞癌
②肝内胆管癌
③転移性肝腫瘍
④肉腫(平滑筋肉腫,血管肉腫)

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本肝臓学会(編):肝癌診療ガイドライン2017年版補訂版.金原出版,2020

●日本肝癌研究会(編):原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.金原出版,2019

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,日本消化器がん検診学会超音波検診委員会,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会:腹部超音波検診判定マニュアル.超音波医 42:201-224,2015

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会:肝腫瘤の超音波診断基準.超音波医 39:317-326,2012

胆道系疾患

胆嚢隆起性(腫瘤性)病変

著者: 岩下和広

ページ範囲:P.986 - P.998

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①コレステロールポリープ
②胆嚢腺筋腫症
③胆嚢腺腫
④胆嚢癌
⑤肝外胆管癌
⑥乳頭部腫瘍

 

参考となるガイドライン・関連資料

●社団法人日本超音波医学会用語・診断基準委員会:「胆嚢癌の超音波診断基準」の公示.超音波医 29:329-332,2002

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,日本消化器がん検診学会超音波検診委員会,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会:腹部超音波検診判定マニュアル.超音波医 42:201-224,2015

●日本肝胆膵外科学会,胆道癌診療ガイドライン作成委員会(編):胆道癌診療ガイドライン 改訂第3版.医学図書出版,2019

●日本肝胆膵外科学会(編):臨床・病理 胆道癌取扱い規約 第7版.金原出版,2021

非腫瘤性病変(胆石・胆嚢炎など)

著者: 刑部恵介

ページ範囲:P.999 - P.1011

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患

◎胆嚢疾患
①胆石
②急性胆嚢炎
③亜急性胆嚢炎(黄色肉芽腫性胆嚢炎など)
④慢性胆嚢炎
⑤胆嚢腺筋腫症

◎胆管疾患
①総胆管結石
②胆管炎
③原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)
④IgG4関連硬化性胆管炎
⑤先天性胆道拡張症
⑥膵胆管合流異常

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本消化器病学会(編):胆石症診療ガイドライン2016 改訂第2版.南江堂,2016

●急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン改訂出版委員会:急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018 第3版.医学図書出版,2018

●厚生労働省IgG4関連全身硬化性疾患の診断法の確立と治療方法の開発に関する研究班,厚生労働省難治性の肝胆道疾患に関する調査研究班,日本胆道学会:IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012.胆道 26:59-63,2012

●急性腹症診療ガイドライン出版委員会(編):急性腹症診療ガイドライン2015.医学書院,2015

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,日本消化器がん検診学会超音波検診委員会,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会:腹部超音波検診判定マニュアル:超音波医 42:201-224,2015

●臨床検査64巻4月・増刊号 これで万全! 緊急を要するエコー所見.医学書院,2020

●日本超音波検査学会(監),関根智紀,南里和秀(編):日超検 腹部超音波テキスト 第2版.医歯薬出版,2014

膵疾患

膵充実性病変

著者: 米山昌司

ページ範囲:P.1012 - P.1025

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①浸潤性膵管癌(膵癌)
②内分泌腫瘍
③SPN(solid-pseudopapillary neoplasm)
④限局的な膵炎

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会:膵癌超音波診断基準.超音波医 40:511-518,2013

●日本膵臓学会(編):膵癌取扱い規約 第7版増補版.金原出版,2020

●日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会(編):膵癌診療ガイドライン2019年版.金原出版,2019

●日本腎臓学会,厚生労働省IgG4関連疾患の診断基準並びに治療指針を目指す研究班(編):自己免疫性膵炎ガイドライン2020.膵臓 35:465-550,2020

●日本神経内分泌腫瘍研究会(JNETS)(編):膵・消化管神経内分泌腫瘍(NEN)診療ガイドライン 2019年 第2版.金原出版,2019

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,日本消化器がん検診学会超音波検診委員会,日本人間ドック学会画像検査判定ガイドライン作成委員会:腹部超音波検診判定マニュアル.超音波医 42:201-224,2015

●日本超音波検査学会(監),関根智紀,南里和秀(編):日超検 腹部超音波テキスト 第2版.医歯薬出版,2014

膵嚢胞性病変

著者: 川端聡

ページ範囲:P.1026 - P.1037

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①漿液性腫瘍(serous neoplasm:SN)
②粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm:MCN)
③膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)

 *本稿では,特に他の嚢胞性腫瘤との鑑別を要する分枝型IPMN(branch duct-IPMN:BD-IPMN)について述べる.
④膵仮性嚢胞(pancreatic pseudocyst:PPC)および被包化壊死(walled-off necrosis:WON)

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本膵臓学会(編):膵癌取扱い規約 第7版増補版.金原出版,2020

●国際膵臓学会ワーキンググループ:IPMN/MCN国際診療ガイドライン2012年版.医学書院,2012

●国際膵臓学会ワーキンググループ:IPMN国際診療ガイドライン2017年版.医学書院,2018

●急性膵炎診療ガイドライン2015改訂出版委員会,日本腹部救急医学会,厚生労働科学研究費補助金難治性膵疾患に関する調査研究班,他(編):急性膵炎診療ガイドライン2015 第4版.金原出版,2015

脾疾患

びまん性疾患,腫瘤性病変

著者: 中谷穏

ページ範囲:P.1038 - P.1044

代表疾患

 脾に認められる病変としては,脾腫〔肝硬変,門脈圧亢進症,感染症,サルコイドーシスなどの炎症性疾患,白血病,溶血性貧血,ゴーシェ(Gaucher)病などの先天性疾患など〕,嚢胞,梗塞,膿瘍,リンパ管腫,血管腫,過誤種,血管筋肉種,悪性リンパ腫,転移性腫瘍などが挙げられる(表1)1)

腎疾患

腫瘤性病変

著者: 八鍬恒芳

ページ範囲:P.1046 - P.1063

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①腎血管筋脂肪腫(renal angiomyolipoma:腎AML)
②腎細胞癌(renal cell carcinoma:RCC)
③腎盂腫瘍(renal pelvic tumor)
④腎嚢胞(complicated cystなど)
⑤尿管腫瘍(ureteral tumor)
⑥膀胱腫瘍(bladder tumor)

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会,泌尿器診断基準小委員会:腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別.超音波医 40:591-595,2013

●日本泌尿器科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会(編):泌尿器科・病理・放射線科 腎癌取扱い規約 第5版.メディカルレビュー社,2021

●丸山憲一:これから腎泌尿器超音波を始める方のためのレクチャー 腎・泌尿器 初級.超音波医 46:409-423,2019

●日本泌尿器科学会(編):腎癌診療ガイドライン 2017年版.メディカルレビュー社,2017

●日本臨牀68巻増刊号4 腎・泌尿器癌:基礎・臨床研究のアップデート.日本臨牀社,pp1-628,2010

非腫瘤性病変

著者: 岡村隆徳

ページ範囲:P.1064 - P.1072

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①腎形成異常
②癒合腎(馬蹄腎)
③水腎症
④腎結石
⑤急性腎障害(acute kidney injury:AKI)
⑥慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)
⑦尿路感染症(urinary tract infection:UTI)

 急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN),腎膿瘍

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本小児泌尿器化学会:小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害以外)診療手引き2019.日小児泌会誌 28:1-53,2019

●日本泌尿器科学会,日本泌尿器内視鏡学会,日本尿路結石症学会(編):尿路結石症診療ガイドライン2013年版.金原出版,2013

●血尿診断ガイドライン編集委員会,日本腎臓学会,日本泌尿器科学会,他(編):血尿診断ガイドライン2013.ライフサイエンス出版,2013

●AKI(急性腎障害)診療ガイドライン作成委員会(編):AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016.日腎会誌 59:419-533,2017

●日本腎臓学会(編):エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018.東京医学社,2018

婦人科疾患

子宮・卵巣の病変

著者: 木下博之

ページ範囲:P.1074 - P.1088

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①子宮筋腫
②子宮体癌
③子宮頸癌
④子宮肉腫
⑤子宮腺筋症
⑥成熟嚢胞性奇形腫
⑦内膜症性嚢胞
⑧漿液性嚢胞腺腫
⑨粘液性嚢胞腺腫
⑩卵巣癌
⑪異所性妊娠
⑫卵巣出血
⑬卵巣腫瘍茎捻転

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本婦人科腫瘍学会(編):子宮頸癌治療ガイドライン 2017年版.金原出版,2017

●日本婦人科腫瘍学会(編):子宮体がん治療ガイドライン 2018年版.金原出版,2018

●日本婦人科腫瘍学会(編):卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2020年版.金原出版,2020

●日本婦人科腫瘍学会(編):外陰がん・腟がん治療ガイドライン 2015年版.金原出版,2015

●急性腹症診療ガイドライン出版委員会(編):急性腹症診療ガイドライン2015.医学書院,2015

●日本超音波検査学会:走査法の標準化 産婦人科領域(婦人科)標準化(https://www.jss.org/committee/standard/01_e_01.html)(2021年5月24日アクセス)

●日本超音波検査学会標準化委員会:各臓器・各部位におけるチェック項目と表現法の統一化(案).超音波検技 27:61-81,2002

●日本超音波医学会用語・診断基準委員会:卵巣腫瘍のエコーパターン分類.2000(https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/ranso.pdf)(2021年5月24日アクセス)

消化管疾患

炎症性疾患,腫瘤性病変,他

著者: 大石武彦

ページ範囲:P.1089 - P.1103

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患

◎炎症性疾患
①急性虫垂炎
②大腸憩室炎
③虚血性大腸炎
④感染性腸炎(細菌性,ウイルス性)
⑤胃・十二指腸潰瘍,急性胃粘膜病変
⑥炎症性腸疾患

◎腫瘤性病変
①胃癌・大腸癌
②粘膜下腫瘍
③悪性リンパ腫

◎その他
①腸閉塞
②腸重積

 

参考となるガイドライン・関連資料

●急性腹症診療ガイドライン出版委員会(編):急性腹症診療ガイドライン2015.医学書院,2015

●日本消化管学会ガイドライン委員会(編):大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン.日消化管会誌 1(Supp1):1-52,2017

●日本胃癌学会(編):胃癌取扱い規約 第15版.金原出版,2017

●大腸癌研究会(編):大腸癌取扱い規約 第9版.金原出版,2018

●日本癌治療学会,日本胃癌学会,GIST研究会(編):GIST診療ガイドライン 第3版.金原出版,2014

●日本胃癌学会(編):胃癌治療ガイドライン 第5版.金原出版,2018

血管疾患

大動脈病変,その他の血管病変

著者: 藤崎純

ページ範囲:P.1104 - P.1117

主な病態と参考となるガイドライン

代表疾患
①大動脈瘤(エンドリーク含む)
②大動脈解離
③腎動脈狭窄
④上腸間膜動脈狭窄
⑤腹腔動脈狭窄
⑥内臓動脈瘤

 

参考となるガイドライン・関連資料

●日本超音波学会用語・診断基準委員会:超音波による大動脈病変の標準的評価法2020.日本超音波学会,2021

●日本循環器学会,日本心臓血管外科学会,日本胸部外科学会:2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン,2020

●Rundback JH, Sacks D, Kent KC, et al : Guidelines for the reporting of renal artery revascularization in clinical trials. American Heart Association. Circulation 106:1572-1585,2002

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目次

ページ範囲:P.934 - P.935

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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