測定法の基礎理論 なぜこうなるの?
ジアゾ反応による血清ビリルビンの分画定量の機序・1
著者:
金井正光
,
上島一江
ページ範囲:P.733 - P.736
ジアゾ試薬とアルコールを使用した血清ビリルビン(以下「ビ」と略す)の分画測定は1910年代にHijmans van den Berghらにより考案され,1930年代にはMalloy-Evelyn,Jendrassik-Gréfらによって定量法として発展し,その後多くの方法が出現しながら,今日なおこれらの改良法が臨床化学検査として大勢を占めていることは,近年多くの臨床化学分析が測定機器の著しい進歩や酵素法などの導入によって,方法論的に大きな変革を遂げているなかにあって,特筆に値するものである.
いわゆる直接型,間接型「ビ」の本態をめぐって多くの研究が行われ,1950年代には間接「ビ」は遊離型「ビ」,直接型は抱合型「ビ」で,これにdiglucuronide(pigment Ⅱ),monoglucuronide(pigment Ⅰ)などの存在が明らかとなり,現在monoglucuronideの本態やその他の抱合型など未解決な問題が残っているが,これらの知見は正常及び各種病態時の肝における「ビ」処理機構の解明に大きく貢献しながら,「ビ」に関する臨床化学分析では古典的な直接型,間接型「ビ」の測定が主流で,これらの知見がほとんど応用されていない.ジアゾ反応による「ビ」分画定量が理論的にも実際面でも多くの問題を持ちながら現存する理由の多くは,「ビ」測定に関する臨床的評価が旧態依然のままで新しい検査法の開発とその評価が十分に行われていないことによる.