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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術5巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

病気のはなし

急性肝炎

著者: 上野幸久 ,   遠藤了一

ページ範囲:P.164 - P.170

 急性肝炎は肝炎ウイルスによって引き起こされる全身的感染症であり,主として肝に著しい病変を起こす疾患である.肝炎ウイルス以外の病因による急性肝障害,つまり伝染性単核症,Weil病,薬剤性あるいはアルコール性肝障害は,専門的立場からは急性肝炎とは区別して取り扱われるのが通例である.
 肝炎ウイルスにはウイルスAとBの2種があることが疫学的検索,血清学的並びに臨床実験などにより確かめられ,それらによる肝炎はそれぞれA型肝炎及びB型肝炎と呼ばれており,A型は従来流行性肝炎と呼ばれていたものに,B型は血清肝炎と呼ばれていたものに相当する.なお最近では更に少なくとももう一種類,A型でもB型でもない(non A,non B)肝炎の存在がほぼ確実視されている.

技術講座 生化学

リン脂質

著者: 久城英人 ,   細田昌子

ページ範囲:P.185 - P.190

 リン脂質(Phospholipids)は加水分解によりリン酸を生ずる脂質の総称である1)
 血清リン脂質はグリセロリン脂質のレシチン,リゾレシチン,セファリンとスフィンゴリン脂質のスフィンゴミエリンの4種類からなり,ほぼ,68:8:5:19の比率で存在する2).これらのリン脂質はリポタンパクの形で血中に溶存し,総リン脂質濃度はおおよそ136〜240mg/dlとされている3).各リン脂質の構造式を表1に示した.

血清

免疫電気泳動法

著者: 山岸安子

ページ範囲:P.191 - P.195

 免疫電気泳動法はGrabar and Williams によって1953年に開発されて以来,現在では日常検査に広く使用され,血清タンパク成分の追跡に欠かすことのできない検査法の一つとなった.免疫電気泳動法は手技は比較的簡単でだれにでも容易に実施できるが,得られた沈降線の判読及び同定にかなりの習熟と経験を必要とし,また泳動像の臨床的意義に関しては我々技師に十分な専門知識が要求される.
 そこで,今回は免疫電気泳動法の手技ならびに沈降線の判読を中心にふれてみたい.

病理

剖検介助・7—標本の整理と保存

著者: 進藤登

ページ範囲:P.196 - P.198

 理組織学的及び細胞学的検査の激増している今日,その整理保存が非常に重要な課題になってきた.肉眼標本,組織標本及び剥離細胞塗抹標本の整理保存については取り扱いに特に注意し,破損したり紛失したりしないように心掛ける.更に次のような事柄に十分留意して効果的に整理保存する.すなわち,
 (1)永久保存であること,(2)相当なスペースが必要であること,(3)出し入れが容易であること,(4)管理が容易であること,などである.

生理

電気生理検査・7—脳波

著者: 清水加代子

ページ範囲:P.199 - P.204

 頭皮上に電極を装着し,これを脳波計に接続すると種種の周期を持った電位変動が記録される.この電位変動は,大脳皮質内の多数の神経細胞の電気現象の総和を示すもので,頭皮上脳波と呼ばれている.脳波(Electroencephalogram)には,このほか皮質脳波(大脳皮質から導出する),深部脳波(脳内に電極を刺入して導出する)などがあるが,日常臨床で臨床検査技師が検査できるのは頭皮上脳波であるので,ここではこれを脳波と言うことにする.
 導出(derivation):脳波でいう導出とは,1対の電極から記録することを意味する.また導出に用いた単一の電極を導出部(lead)という.

一般

髄液・穿刺液の検査

著者: 真重文子

ページ範囲:P.205 - P.208

髄液検査
 髄液は脳,脊髄に直接接している関係から,その検査は中枢神経系疾患の診断,治療,予後判定に非常に重要な情報を与える.しかし髄液採取は尿や血液に比較して患者の負担は大きく,それだけに検査をする者は慎重に取り行わねばならない.
 髄液検査には,採取時,医師が行う液圧測定,Queckenstedt試験及び外観の判定があり,採取後検査として細胞数の算定,細胞分類,タンパク定量,グロブリン反応,糖及びクロールの定量,トリプトファン反応及びフィブリン析出の判定などがある1〜3).ここでは,検査技師が直接携わる採取後検査について述べることにする.

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

酵素を用いた生体成分の分析

著者: 岡村研太郎

ページ範囲:P.171 - P.174

 臨床化学検査の分野で酵素というと,まず体液中の酵素活性の測定を想い起こすほど,酵素活性測定は病気との関連で重要な地位を占めている.ところが数年前から酵素的測定(Enzymatic analysis)という言葉が現れ,酵素活性測定をも含めて,生体成分の測定に盛んに酵素が使われだした.ごく最近になると,固定化酵素(Immobilized enzyme)とか酵素免疫測定(Enzyme Immobilized)といった言葉も現れてきた,これらは言葉は違っているが,いずれも酵素を分析の道具として利用しようとする考え方では共通している.今回はこうした酵素を用いる分析について考えてみたい.

溶血反応

著者: 三輪史朗

ページ範囲:P.175 - P.178

 貧血にはいろいろの原因によるものがあるが,その中で赤血球が壊れやすくなって,すなわち赤血球寿命が短縮した結果起こる病気が溶血性貧血である.溶血性貧血にもいろいろの原因によるものがある.ここでは種々の溶血性貧血での溶血の機序について述べ,次いで溶血性貧血の詳しい診断に用いられる諸検査法について要点を述べることとする.

細菌の栄養原・4—培地と培地成分

著者: 坂崎利一

ページ範囲:P.179 - P.182

1.培地成分
 一般に用いられる培地,すなわちいわゆる合成培地以外の培地は,カゼインあるいは動物の肉のようなタンパクの加水分解産物を基礎として作られている,加水分解の方法には酸(通常HCl)と熱によるものと,ペプシン,パンクレアチン,トリプシンまたはパパインなどの酵素によるものとがあり,前者による産物は完全な加水分解物であるのに対し,後者の分解は部分的で,一般にペプトンといわれるのはこれである.前者はわが国ではしばしば"カサミノ酸"と呼ばれるが,"casa-mino-acids"はDifco社の製品の商品名で,一般名ではないから,強いていうなら"酸加水分解カゼイン"とすべきであろう,菌の発育は酸加水分解カゼインよりもペプトンのほうがよい.それは後者のほうが分解の程度がまろやかで,多くの発育素が破壊されずに残っているためである.ペプトンの中でもより弱い酵素たとえばペプシンで消化したものはプロテオースペプトンといわれる.

知っておきたい検査機器

心音計

著者: 吉村正蔵 ,   沢近紀夫

ページ範囲:P.183 - P.184

 心音計は心臓ならびに隣接大血管に起因する機械的振動のうち,可聴域にある周波数の振動を記録するための装置である.

最近の検査技術

第ⅩⅢ因子の測定

著者: 浮田実 ,   加藤正俊

ページ範囲:P.209 - P.214

 第ⅩⅢ因子は血漿中において非活性の状態で存在しているが,トロンビン及びカルシウムイオンによって活性型の酵素に転換する.この活性第ⅩⅢ因子は,Transamidase,またはtransglutaminaseの一種と考えられ,フィブリンにトロンビン及びカルシウムイオンが作用して生じた酸可溶性のフィブリンポリマーをcrosslinkさせて,酸不溶性の安定化したフィブリンポリマーとする(図1).従って第ⅩⅢ因子の測定法としては,フィブリン塊の酸に対する溶解性を利用するもの及びフィブリンのcrosslinkを観察する方法とがある.
 近年,精製した凝固因子を抗原として家兎を免疫し,凝固因子の抗家兎血清を用いて免疫活性が測定されるようになった.これら両者を同時に測定することにより出血性疾患の病態の解明は容易となり,保因者の研究も一段と進歩した.第ⅩⅢ因子の場合にも免疫学的手技を応用した測定法が用いられている.以下,最近用いられている第ⅩⅢ因子測定法について述べてみたい.

医療・保健・検査

臨床化学検査領域でのコンピューターの応用—特にデータ管理への応用について

著者: 菅野剛史

ページ範囲:P.215 - P.218

 臨床化学分析の領域では単なるカリキュレーターをはじめとしてミニコンピューターまで,その検査室の規模,分析機の自動化の程度に応じて広くコンピューターが利用されている.
 一般にこれらのコンピューターの利用には,2つの方向からのアプローチがあったと考えられる.その1つは,臨床化学分析における自動分析機の進歩とともにデータ処理機構として開発され,分析システムの確立とともに検査室を1つの分析システムと考え,分析依頼から始まって一貫した流れとして報告書の作成までを,自動分析機を中心として分析データの処理,事務処理を中心とした流れに対する利用法であり,もう一方は,柴田2)によって診断的な視点より考え出された血液スペクトルの延長である病態把握,診断に対しての組み合わせフロー,または多変量解析を用いた利用法であろう.そしてコンピューターと名が付けばそのいかような利用も可能かと言えば,それは異なるのであって,その規模,利用法などには幾つかの制約があるのである.逆に言えば,どのような目的で利用するかによってコンピューターの規模,構成が定まるのである.

二級試験合格のコツ

心電図

著者: 中塚喬之 ,   根岸勇

ページ範囲:P.219 - P.222

 二級試験は筆記試験,口答試問,実地試験を総合して判定が行われる.
 筆記試験では心臓,循環器の解剖,生理,心電計の構造,取り扱い方,正しい記録の方法,心電図の基本,電子工学の基礎,その他最近ではベクトル心電図,脈波,心エコー図,心臓カテーテル検査など,各種循環器検査の基礎知識が試みられる.口答試問は筆記と同様の範囲で行われるが,心電図その他の実例判読,実地にあたっての問題点などについて聞かれる.また電気知識はテスターなどで,簡単な測定法が試問される.実地試験は例年,心電図を記録し台紙に貼り整理するところまでが対象となっている.

実習日誌

肌で感じた病院実習

著者: 竹松重美

ページ範囲:P.225 - P.225

 6月より始まった病院実習もあと2週間を残すのみとなった今,つくづく時間のたつことの早さを感じている.
 私が行っている病院では,病理,生化学(RIを含む),採血,生理機能,一般検査,公衆衛生,血液,血清,細菌の各検査室を,それぞれ2〜4週間ずつで回っていく.やっと慣れたなあと思うころはもうそのパートも終わり,次のパートへという具合で,与えられたことに振り回されているというのが実際であった,学校の実習と違う点は,常に背後には患者が存在するという点であった.

ひとこと

検査の自動化

著者: 大場操児 ,   山藤武久 ,   菅沼源二 ,   新谷和夫

ページ範囲:P.226 - P.227

 検査室に押し寄せる自動化機器の群に技師は困惑し,その選択を困難にさせている.検査の自動化は作業能率を向上させ,測定項目を拡大するが,単純な繰り返し作業から解放されたと喜んではいられない.検討なしに導入した自動化法は測定値をバラツかせ,呈色,反応の異常を見逃し問題点を解明し難い結果にしている.高価な機器操作の誇りは認あるが,自動化機器の単なる使用は技師を上位に格づけることとは結びつかない.検査室の片隅での部分的自動化で,機器のこ気嫌を伺う中に夢を追う技師もあるが,完全自動化の暁に技師の存在価値を疑う人もある.しかし技師を単なる"ボタン押し"係とするには高価に過ぎよう.測定法の改良,新技術の導入,自動化不可能項目の処理など仕事は山積している.自動化機器に測定法を合わせる努力が盛んな現状であるが,技師には測定法を開発する能力が残されている.自動化機器は判断力を持たず,故障時もデータをたたきだす怪物であり,機器の利点・欠点を知り能力を過信することは危険である.
 学校では機器の細部を教えるより,実地に即した物理,化学及び電気測定器具の使用法の指導,現場を経験した技師の母校教育への復帰こそ,日常業務の中から必要と痛感している.機器の教育は現場が有利で,機器とのスキンシップなしに彼らの問題点を解決することはできない.

検査の昔ばなし

血球計算の誤差—検査者側に重点をおいた検討

著者: 日比野進

ページ範囲:P.228 - P.229

 メランジュールによる血球計算は素朴であり簡易であるが,それだけにいろいろの誤差がその数値に入り込んでくることも避けがたい.メランジュールによる誤差に関しては内外に多くの文献があり,我々もかつてこの方面についていろいろな実験や推計学的な考察を試みた.現在では各種の自動血球計算器が漸次メランジュールにとって代わってきており,メランジュールが使用される場合は少なくなってきている,しかしすべてかかる検査者の手技を中心とする臨床検査の誤差には,検査者側の慎重度,熟練度という面の影響が大きいことは言うまでもない,本稿では我々が昔取り扱った問題の中でも,特に検査者側に重点をおいた二三の検討の試みを取り上げてみた.このことはあらゆる臨床検査において,検査者側の問題点を論ずる場合の一つの資料にもなるものとも思われる(各検査における算定器具は,当時,日本血液検査機械検定協会合格済のものを使用した).

文豪と死

堀 辰雄

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.230 - P.230

 堀辰雄(1904〜53)は新心理主義の詩人として新しい出発をし,詩から小説に転換した.モダニズム(芸術的近代派)の風潮に棹さしたエスプリのきいたしゃれた作家であった.
 詩人としての出発は「驢馬」が舞台であり,のちに「四季」の中核となった.詩を書かなくなっても,堀辰雄の周りにただよっている詩的な雰囲気が,おのずから「四季」の詩人たちの中核としての存在を認めさせることになったのである.

おかしな検査データ

検体が新鮮すぎた(?)

著者: 岩田進

ページ範囲:P.236 - P.237

 免疫学的反応を利用した妊娠反応は,小規模な検査室でも広く行われるようになり,動物を用いた生物学的方法にとって代わってきている.この免疫学的方法は,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を感作血球凝集阻止反応,ラテックス凝集反応またはラテックス凝集阻止反応を利用して検出する方法がほとんどである.私どもの検査室では感作血球凝集阻止反応を利用した試薬で妊娠反応の定性,定量を行っているが,特に最近は定量の依頼が増してきている.
 ある日の午後,外来から妊娠反応定量の緊急が依頼された.早速いつものとおり検査を行った.結果は陰性であったのでその旨電話で報告したら,医師は"本当ですか?"と大声で問い返してきた.患者は妊娠5か月の初めで腹囲が正常より少し大きいのと,わずかに出血を見たので胞状奇胎を疑って定量を依頼したというのであった.正常妊娠にしても胞状奇胎にしても,妊娠5か月でHCGが陰性になることはない.もしあるとすれば,胎児死亡か流産が進行し胎盤より離れた場合だけである.これはおかしいと再検を行った.結果は原尿の所でわずかに血球の寄りを認めたが疑陽性くらいで,陽性とは判定できなかった.

12月出題の答

著者: 竹内直子

ページ範囲:P.237 - P.237

Am,Ay,Ax型
 輸血用血液はA型で良い.

国内文献紹介

RRA

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.174 - P.174

 ホルモンの働きは,そのホルモンの作用する細胞に存在する受け入れ部分(receptor)に特異的に結合して,初めて発揮されるものである.標識したホルモンをこのreceptorに結合させてその量を測る方法をRadioreceptor assay,RRAと言う.
 ホルモンの量だけを測っても,この受け入れ部分の少ないもの,受け入れられないものは生理学的にはホルモンとしての働きとならないので,RRAのほうが意義が大きい.

LCAT

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.190 - P.190

 遊離のコレステロールとレシチンのなかの脂肪酸とから,エステルコレステロールを生成する酵素として,Lecithin Cholesterol Acyltransferaseという酵素がある.略号としてLCATで現され,エルキャットと発音している人が多い、
 肝で合成され血中に出てくるので肝障害の時には低下してくるが,家族的に欠損した例やその臨床症状などが報告されている.

RAST

著者: 𠮷野二男

ページ範囲:P.204 - P.204

 アレルギーを起こすレアギン性抗体の検査は,今まで生体を応用した皮膚反応や誘発テストなどを用いて調べていた.
 これを試験管内で行う方法として,1967年にWideらは抗原液をセファデックス粒子に結合させ,それと被検血清とをインキュベーションした後標識IgEと混ぜて,更にインキュベーションした後結合した放射線量を測り,特定のレアギン性抗体を測る方法を発表した.RadioAllergosorbent Test,RASTと略し,アールエーエスティー,またはラーストと発音する.既に外国ではキットが作られているので,日本にもやがて入ってくるであろうし,これによりレアギン性抗体の検査も簡単になるかと思われる.

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略語シリーズ

著者:

ページ範囲:P.184 - P.184

MG Meulengracht Einheit;ドイツ語.モイレングラハト単位(黄疸指数).正常値は5単位以下.

医学用語集

著者: 山中學

ページ範囲:P.223 - P.224

441)軸性近視;axial
 角膜や水晶体の屈折力に異常がなく,角膜表面と網膜中心窩との間隔が延長するための近視.角膜や水晶体の弯曲度が増加したりして,眼球の全屈折力が強くて起こる近視を屈折性近視(refractive myopia)という.

国家試験問題 解答と解説

ページ範囲:P.231 - P.235

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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