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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術50巻1号

2022年01月発行

雑誌目次

病気のはなし

乳癌

著者: 武井寛幸

ページ範囲:P.4 - P.11

Point

●乳癌の主たる病因はエストロゲンである.妊娠,出産,授乳は乳癌発症リスクを低下させる.

●自覚症状のない早期発見にマンモグラフィ,超音波検査が重要である.

●病理診断による確定診断と画像による腫瘍径(T),リンパ節転移(N),遠隔転移(M)から病期診断を行う.

●治療は局所療法(手術および放射線療法)と全身薬物療法からなり,病期とER,PgR,HER2,Ki67によるサブタイプに基づいて決定する.

●手術は乳房部分切除術と乳房全切除術に分類され,薬物療法は内分泌療法,化学療法,分子標的療法からなる.

●Luminal Aタイプの乳癌の予後は非常に良好である.

技術講座 血液

血小板数標準測定操作法

著者: 竹田知広 ,   永井豊 ,   近藤弘

ページ範囲:P.28 - P.34

Point

●血液検査分野の標準化は,保存可能な調和標準物質が存在しないため国際調和プロトコル(標準測定操作法)を用いて行われている.

●国際調和プロトコルの国際的整備は,国際血液学標準化協議会(ICSH)および臨床・検査標準協会(CLSI),国際検査血液学会(ISLH)をはじめとする団体が担っており,日本では,日本検査血液学会(JSLH)が各団体と協調してこの活動に貢献している.

●フローサイトメトリー(FCM)を用いた血小板の国際調和プロトコルは,ISLH/ICSHから2001年に公開されている.JSLHは,国際調和プロトコルに準拠した基準測定操作法を標準作業手順書(SOP)として作成し,外部精度管理調査により多施設間で検証されたSOPを公開している(ホームページ1)に掲載).

播種性血管内凝固(DIC)の診断

著者: 窓岩清治

ページ範囲:P.36 - P.43

Point

●播種性血管内凝固(DIC)は,癌,造血器腫瘍や感染症などに合併する重篤な病態です.

●DICの検査には,血小板数とともに一般凝固線溶検査と凝固系分子マーカー,線溶系分子マーカーがあります.

●日本血栓止血学会のDIC診断基準は,基礎疾患に応じて「基本型」,「造血障害型」および「感染症型」の診断基準を適用するためのアルゴリズムと,検査項目のスコアリングシステムから構成されています.

●DICと診断されない場合でも,基礎疾患の推移をみながら経時的にスコアリングを繰り返し,DICの診断が遅れることのないように留意すべきです.

病理

美しい病理マクロ画像を撮影するために 中級編

著者: 二村聡

ページ範囲:P.44 - P.49

Point

●日頃から美しい病理マクロ画像(よいお手本)を見ておく.

●斜俯瞰によって立体感のある病理マクロ画像を撮ることができる.

●スケールは被写体と同じ高さに配置する.

●病変内部の性状を説明するためには近接撮影した割面の画像が必要である.

●必要に応じて四分割法という構図決定法も活用する.

生理

—step up編—末梢神経・筋エコー

著者: 野寺裕之

ページ範囲:P.50 - P.54

Point

●筋エコー検査では,不随意運動の評価や随意筋収縮での観察が行える.

●筋エコー検査では,年齢・性別が筋厚・エコー輝度に与える影響を考慮する.

●末梢神経の腫大を検出することで炎症性・脱髄性などの末梢神経障害の診断につながる.

●筋エラストグラフィにより筋硬度を測定でき,筋痙縮や筋固縮の客観的評価が行える.

トピックス

再生医療最前線—機能的な肺臓器を再生する新技術を求めて

著者: 森宗昌

ページ範囲:P.12 - P.15

はじめに

 昨今,新型コロナウイルス疾患に罹患する患者が増え,とりわけ重症肺炎に対する抜本的治療法のさらなる開発が望まれている.また臨床検査においては,検体を扱う際,二次感染防止のためのSOP(standard operating procedure)の徹底,新規疾患に対する診断技術の確立を目指した検査技術の感度・精度の重要性があらためて浮き彫りになってきている.この度は基礎研究の観点から,新型コロナウイルス重症肺炎をも完治しうる可能性を秘めた,肺臓器の再生技術の確立に向けた最前線をお届けしたい.医療従事者を志す若手,または実際日常臨床に携わる多くの臨床検査技師の方々にとって少しでも多くの知識の享受や希望となれば幸いである.

 まずは私が基礎研究を始めるきっかけから—いまからもう10数年前になるが,一臨床医として日々研鑽を積んでいた頃の話にさかのぼる.

腫瘍循環器学—臨床検査技師が知っておくべきこと

著者: 星野佑太 ,   佐藤洋

ページ範囲:P.16 - P.18

はじめに

 癌治療の進歩により予後が改善し,がんサバイバーが増加している.がんサバイバーの増加に伴い,循環器疾患を併発する人が増えていることから,腫瘍循環器学が注目されている.

FOCUS

妊娠時の凝固・線溶系因子および分子マーカーの変動

著者: 長屋聡美 ,   森下英理子

ページ範囲:P.20 - P.23

はじめに

 妊娠に伴う母体の変化は解剖学的にも生理学的にも非常に劇的なものであり,凝固因子の産生亢進や線溶系の抑制,増大した子宮による下肢静脈圧迫などのさまざまな要因により易血栓傾向を呈する.このような妊娠時の過凝固・線溶抑制状態は,妊娠の維持や分娩時出血の止血に合目的であるが,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)など血栓症の原因ともなりうる.妊娠関連VTEは,発生頻度は低いものの妊娠中および産褥期における死亡原因の1つである.一般集団における妊娠関連VTEの発生率は0.1〜0.2%と推定されており,妊婦のVTE発症リスクは同年齢の非妊娠女性に比べて約5倍高い1).したがって,妊娠関連VTEを正確に診断することが重要であるが,妊娠後期においては呼吸困難,頻呼吸,足のむくみや不快感を認めることが多く,VTEとの鑑別が困難な例も少なくない.

 妊婦における血液凝固・線溶系因子の生理学的変化は劇的であり,各種検査値は妊娠経過とともに変化し,多くは分娩を機に非妊娠時の状態に戻る.したがって,凝固・線溶系検査値が正常か異常かの解釈は妊娠・分娩・産褥それぞれの時期において異なるため,正常妊婦における変動を把握しておくことが重要である.本稿においては,妊娠に伴う凝固・線溶系因子,分子マーカーの変動および妊婦のVTE診断におけるDダイマー測定の有用性について解説する.

地球温暖化と感染症—今後,寄生虫感染症は増加するのか?

著者: 松村隆弘

ページ範囲:P.24 - P.26

はじめに

 “地球温暖化と感染症”というテーマは話題が尽きない内容であり,危機意識をもつ人も多くいるだろう.日本における地球温暖化に関する感染症を検索すると,蚊を媒介とした感染症(デング熱,ウエストナイル熱,日本脳炎など)が多くみられる.そのなかにはもちろんマラリアも話題に挙がる.しかし,マラリアに関しては1900年代初期のような国内での定着の可能性は低いことが論じられている.理由として,①国内にマラリア原虫を保有しているヒトが極めて少ないこと(輸入感染のみ),②インフラが整い公衆衛生状況が安定していること,③住宅構造・居住環境が整備されていること,などが挙げられる.また,熱帯地域だからといって自国感染のマラリア患者が存在するわけではないことはご存じだと思う.アジアではシンガポールやブルネイ,モルディブ,スリランカなどの赤道付近の国でも世界保健機関(World Health Organization:WHO)よりマラリア撲滅国として認定されている.直近では2018〜2019年,マレーシアにおいてもヒトマラリア患者の発生は報告されていない1).上記の条件が改善されてきた結果であろう.加えて,日本においても1900年代初期には沖縄から北海道まで全国にマラリア患者が存在していたが,1959年を最後に国内感染者は“0”となった背景がある.この背景も考慮すると,暑いからマラリアが流行するわけではないことはよく理解できるであろう.

 それでは,地球温暖化と寄生虫感染症につながりはないのかと言われるとそうでもない.本稿ではマラリア以外の寄生虫で地球温暖化の影響を考えていこうと思う.

過去問deセルフチェック!

微生物学 微生物の染色法①

ページ範囲:P.19 - P.19

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.55 - P.55

 顕微鏡で観察するための染色法とその対象になる病原体は頻出問題である.主な染色法を表1にまとめたので,整理しておきたい.

疾患と検査値の推移

睡眠時無呼吸症候群

著者: 髙井雄二郎

ページ範囲:P.56 - P.62

Point

●睡眠時無呼吸症候群(SAS)は咽頭が狭窄・閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)が主体であり,心臓・脳血管および精神活動など幅広い疾患に関連性がある.

●OSAは自覚できないことが多く,第三者による指摘が必要である場合が多い.

●OSAの診断には簡易モニター(PM)が有用であり本邦で普及しているが,信頼性が低く,適用には限界がある.

●OSA診断として睡眠ポリグラフ検査(PSG)はゴールドスタンダードであるが,臨床検査技師が監視・解析するためには教育とトレーニングが必要である.

臨床検査のピットフォール

大腸癌検査における便潜血検査の意義

著者: 岡野恵美

ページ範囲:P.64 - P.67

はじめに

 わが国における大腸癌は,高齢化と生活習慣の変化に伴い,罹患数,死亡者数ともに増加の一途をたどっている.2019年度の死亡者数は男女総数5万人を超え,また,罹患数は2018年度において約15万人に上り,これは全癌中の第1位である(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター統計より)1)

 このように国民病ともいえる大腸癌を早期発見し,早期治療に導くための一次スクリーニング検査として,便潜血検査は推奨され広く実施されている.本稿では,大腸癌検査における便潜血検査の意義と精度の高い検査を行うための重要ポイントを紹介する.

臨床医からの質問に答える

イサツキシマブ投与前になぜ輸血部門に連絡をする必要があるのでしょうか.

著者: 井手大輔

ページ範囲:P.68 - P.71

はじめに

 イサツキシマブは多発性骨髄腫の治療に使われる分子標的薬で,抗CD38抗体が骨髄腫細胞上に発現するCD38に結合し効果を発揮します1).その他に同様の薬としてダラツムマブがあります2).これらの薬は抗CD38治療薬と呼ばれます.今回のテーマ「イサツキシマブ投与前になぜ輸血部門に連絡をする必要があるのでしょうか」に対する回答を最初に述べます.それは“投与された抗CD38治療薬が輸血検査に影響を与えるから”です.さらに投薬前後で輸血検査に特別な対応が必要となります.これらはあくまで投薬情報が輸血検査部門に共有されている場合であって,投薬情報が輸血検査部門に共有されていない場合は,輸血検査が誤った方向に進み,結果の判定ができない,輸血が準備できない状況になる可能性も考えられます.今回は,抗CD38治療薬と輸血検査の関係を以下の3つに分けて解説します.

・なぜ輸血検査に影響を与えるのか

・投与前後の輸血検査

・投薬情報を共有する重要性

Q&A 読者質問箱

エコーで腹水の定量はできるのでしょうか?

著者: 廣岡昌史

ページ範囲:P.72 - P.73

Q エコーで腹水の定量はできるのでしょうか?

A 腹水はさまざまな疾患が原因となり発生します.腹水の量を把握することは臨床的に重要です.例えば腹部外傷で搬送された患者が腹腔内出血をきたしている場合,その出血量をおおむね把握する必要があります.また肝硬変患者では重症度により腹水の量は異なります.さらに利尿剤などの効果を判定するために,経時的に腹水の量を計測することは非常に重要です.結論から申し上げると,エコーで腹水量を推測することは可能です.本稿では,非侵襲的で簡便にエコーにより腹水量を測定する方法を概説します.

ワンポイントアドバイス

血管穿刺トラブルに対しての超音波検査

著者: 山崎正之

ページ範囲:P.74 - P.75

はじめに

 血管内治療での穿刺部合併症は,穿刺部出血・血腫・仮性動脈瘤,血管攣縮,内膜損傷,血栓・塞栓,動静脈瘻などが挙げられます.近年は超音波ガイド下で血管穿刺を行う施設が多く,大阪府済生会中津病院でも以前と比べると穿刺部合併症は著しく減少しましたが,残念ながら年間にいくつかの症例が検査室で見つかっています.早い段階で合併症を診断するために,超音波検査は簡便に評価できるツールであるといえます.

連載 帰ってきた やなさん。・26

やなさん。“香炉”を作る!

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.77 - P.77

 「こ,これは! 金属……日本刀のような,どこか冷たく透明感がある匂い.名人が作り出した名刀……しかし,武器ではなく芸術品としての品と優美さを持った日本刀だ!」(注:これはお香の香りを表現しています)

 柳田の“たとえ”は,いつも独特すぎて「たとえがわかりにくい!」と言われる…….ソムリエには絶対になれないよねぇ(遠い目).

ラボクイズ

血中薬物濃度検査

著者: 菊地良介

ページ範囲:P.80 - P.80

2021年12月号の解答と解説

著者: 中島和希

ページ範囲:P.81 - P.81

書評

もしも心電図で循環器を語るなら 第2版

著者: 増井伸高

ページ範囲:P.78 - P.78

「もしも心電図で循環器を語るなら」を語る

 あの香坂俊先生の名著『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』が全面改訂された.しかもタイトルは『もしも心電図が小学校の必修科目だったら2』ではない!

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

『臨床検査』1月号のお知らせ

ページ範囲:P.1 - P.1

あとがき・次号予告

著者: 谷口智也

ページ範囲:P.84 - P.84

 新年あけましておめでとうございます.今年も『検査と技術』をご愛読のほど,よろしくお願いします.1月号のあとがきを10月下旬に書いています.現在,緊急事態宣言が解除され,東京都の新規感染者数も50人を下回る日が続き,年末に向けて期待と不安が混在しています.2022年——令和4年は一体どんな新年を迎え,どんな一年となるのでしょうか.そして,第68回臨床検査技師国家試験が2月16日(水)に行われます.

 さて,私事ですが,この“あとがき”を初めて書いたのが,2014年7月頃と記憶しています.そして同年10月号でデビューし,年間2回担当,約8年間で16作を書いてきました.“あとがき”を書くようになってからは,専門分野以外のいろいろな社会問題や時事問題,趣味や流行にも目を向けるようになり,専門外の知識や雑学の大切さを実感しています.しかし,気が付くと,最近は新型コロナの話題ばかりとなっていました.それだけ新型コロナに翻弄された2年間でした.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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