抗菌薬適正使用支援チーム(AST)と診断支援(DS)
著者:
静野健一
ページ範囲:P.422 - P.426
はじめに
近年,薬剤耐性菌の増加は世界的な問題となっており,対策を施さない場合には2050年には年間1,000万人以上が薬剤耐性菌によって死亡するとの推定データから1),世界保健機関(World Health Organization:WHO)は2015年に薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)に関する世界行動計画(global action plan)2)を発表し,加盟各国に行動計画の策定を求めた.日本は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」を発表し,対策の1つとして2018年に抗菌薬適正使用支援加算(入院初日100点)が診療報酬で制定され,多くの施設で抗菌薬適正使用支援チーム(antimicrobial stewardship team:AST)による活動が行われている.
AMR対策には,①耐性菌を保菌・感染した患者から,保菌していない患者へ広げない対策,②不適切な使用による耐性菌発生を防ぐための抗菌薬適正使用管理,の2つの対応が必要とされ,①に関しては感染制御チーム(infection control team:ICT)が対策を行い,ASTは②に関しての介入が主体となる.起炎菌の決定や薬剤感受性の報告など,抗菌薬を使用するにあたり微生物検査の寄与する影響は大きく,その検査精度を上げるために,診断支援(diagnostic stewardship:DS)の実践が提唱されている.本稿では,ASTにおける臨床検査技師の役割とともに,AST活動を支援するDSについて紹介する.