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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術51巻12号

2023年12月発行

雑誌目次

技術講座 血液

凝固因子活性測定—方法間差を中心に

著者: 谷田部陽子

ページ範囲:P.1314 - P.1318

Point

●凝固因子活性測定には,主に凝固一段法が用いられているが,近年では合成基質法も利用されている.

●凝固一段法はLAなどインヒビターの存在で偽低値となるだけでなく,使用するPTおよびAPTT試薬により測定値が偽高値になる場合がある.

●血友病の診断や重症度判定,モニタリングにおいては,これら2つの測定法を用いて活性測定を行い,判断することが望ましい.

輸血

在宅における輸血療法

著者: 北澤淳一 ,   馬場千華子

ページ範囲:P.1320 - P.1324

Point

●超高齢社会を迎えた日本の医療では在宅診療が重要な位置を占めることが予想される.機器の進歩により在宅での臨床検査は対象が拡大している.

●輸血検査は,致死的な副反応を予防する重要な検査であり,臨床免疫学の知識が必要である.

●臨床検査技師には,臨床免疫学・輸血医学の専門的知識を生かし,輸血医療の中心的役割を果たすことが求められる.

病理

ナフトールAS-Dクロロアセテートエステラーゼ・ギムザ重染色

著者: 田邉一成

ページ範囲:P.1326 - P.1331

Point

●脱灰には中性脱灰液を選択してください.

●調整する試薬が多いですが,ほとんどが長期保存可能です.

●薄い薄切が,観察良好な標本につながります.

●透徹工程で脱色されることを考慮し,AS-D染色は濃くしっかりと染色します.

生理

呼吸機能検査における患者とのコミュニケーション

著者: 佐藤舞

ページ範囲:P.1332 - P.1336

Point

●呼吸機能検査は患者さんの努力や理解・協力も必要だが,技師のコミュニケーション力も結果に影響する検査である.

●呼吸機能検査をスムーズに進める一番のコツは,患者さんから信頼感や好感,安心感をもたれることである.

●患者さんは少なからず病気や検査に不安を感じ,緊張しているという心理を理解することも必要である.

●コミュニケーションスキルを最大限に発揮するには,患者さんへの信頼感や適切な態度が不可欠である.

トピックス

Deep Learningを用いた尿中赤血球形態の分類

著者: 山本雄彬

ページ範囲:P.1338 - P.1340

はじめに

 尿沈渣検査は,自動分析装置が上市された現在でも,顕微鏡による目視(鏡検法)を欠くことができない検査である.自動分析装置が無遠心尿を対象とするのに対して,遠心後の沈渣成分を対象とする鏡検法では沈渣成分によって結果が乖離することが報告されている1,2).したがって,自動分析装置のみで全ての検査を実施することは,検査の信頼性の観点から不可能と考えられている3)

 尿沈渣検査における鏡検法の必要性が言われている一方で,鏡検法では,検査者間の熟練度の差が,検査結果に技師間差として直接影響する.例えば,尿中赤血球形態は,糸球体型/非糸球体型の判定が尿路系の出血部位の推定に有用である4,5)が,鏡検者が判定に特に苦慮する成分の1つであり,技師間差・施設間差が大きい項目であると考えられている.尿沈渣検査の精度向上には,尿中赤血球などの沈渣成分を,検査者の技量に依存せずに自動分類するシステムの構築が必要である.

リードレスペースメーカの基礎知識

著者: 佐藤俊明

ページ範囲:P.1342 - P.1344

はじめに

 リードレスペースメーカは,カプセル型のペースメーカである.大腿静脈から専用のデリバリーカテーテルシステムを用いて右室心内膜面に留置する.先端と体部の電極により右室心内電位を検知するとともに心筋を刺激する.条件付きMRI対応デバイスであり,レートレスポンス機能を有する.

FOCUS

知っておきたい赤芽球癆の検査と鑑別診断

著者: 石田文宏

ページ範囲:P.1346 - P.1349

赤芽球癆とは

 後天性赤芽球癆(acquired pure red cell aplasia:後天性PRCA)は貧血,網赤血球減少と骨髄赤芽球系細胞著減を認め,白血球,血小板の減少は通常伴わない造血障害性疾患である.種々の基礎疾患によって生じるため,症候群として捉えたほうがよい1,2).本稿では,成人の後天性PRCAに関して述べる.頻度は高くないものの,特に高齢者の貧血の鑑別では注意したい疾患である.

下肢末梢血流評価にはSPPがよいのかTcPO2がよいのか—その使い分けは?

著者: 宇都宮誠

ページ範囲:P.1350 - P.1353

はじめに

 末梢動脈疾患(peripheral artery disease:PAD)に対する非侵襲的血流機能評価の方法として最も簡便かつ有用なのは足関節上腕血圧比(ankle-brachial pressure index:ABI)もしくは足関節血圧(ankle pressure:AP)である.しかし,病態がより重度となりRutherford分類で4以上,特に創傷を有する5ないし6の状態,いわゆる包括的高度慢性下肢虚血(chronic limb-threatening ischemia:CLTI)の状態となるとABIやAPで下肢への大血管の血流を評価するだけでは不十分である.より末梢での血流評価を行うためには足趾血圧(toe pressure:TP)も用いられることがあるが,さらに皮膚近傍での血流を評価するために皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)もしくは経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension:TcPO2)を用いて評価することが多い.本稿ではSPPとTcPO2の違いと使い分けについて解説する.

病気のはなし

血栓性微小血管症

著者: 八木秀男

ページ範囲:P.1354 - P.1360

Point

●血栓性微小血管症(TMA)とは微小血管における血栓形成によって引き起こされる疾患であり,溶血性貧血,血小板減少,臓器障害を特徴とする.その代表的な疾患として血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)ならびに溶血性尿毒症症候群(HUS)が挙げられる.

●TTPはADAMTS13活性の低下によって貧血,血小板減少,臓器障害(脳,心臓,腎臓など)が引き起こされる疾患である.先天性TTPの治療は血漿輸注であり,症状増悪時もしくは予防的な定期投与を行う.後天性TTPの治療は血漿交換とステロイド療法にカプラシズマブを併用し,治療抵抗性の難治例や早期再発例ではリツキシマブを追加する.

●志賀毒素産生大腸菌(STEC)-HUSは腸管出血性大腸菌感染後に貧血,血小板減少,腎障害が引き起こされる疾患である.その治療は支持療法であり,脱水症に対する補液,高血圧に対する降圧薬投与,急性腎障害に対する透析などを行う.

●非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は補体制御因子や血管内皮細胞膜タンパクの遺伝子異常により発症することから,補体C5に対するモノクローナル抗体であるエクリズマブやラブリズマブが有効である.

疾患と検査値の推移

クッシング症候群

著者: 堀越博文 ,   槙田紀子

ページ範囲:P.1362 - P.1368

Point

●クッシング症候群とは,副腎皮質からのコルチゾールの産生・分泌が過剰になった状態で,特徴的な身体徴候や代謝異常を来す.

●コルチゾールの過剰分泌は,ホルモンの日内変動,24時間蓄尿検査,デキサメタゾン抑制試験で評価する.

●病態はACTH依存性クッシング症候群とACTH非依存性クッシング症候群に分類される.前者はACTHが正常〜高値,後者はACTHが低値となる.

●治療後は生理的なコルチゾールの分泌が抑制され,コルチゾール,ACTHは低値となる.副腎皮質の機能が回復するまで,グルココルチコイド補充療法を行う.

過去問deセルフチェック!

MRI

ページ範囲:P.1337 - P.1337

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.1361 - P.1361

 MRIに関する問題は基礎的な内容が主であり,ポイントを理解していれば答えを導くのは比較的容易です.ここでは,MRIの基本について記します.

臨床検査のピットフォール

LAMP法による新型コロナウイルス遺伝子検査の注意点

著者: 土田孝信

ページ範囲:P.1370 - P.1372

はじめに

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はコロナウイルスの1つで,RNAウイルスの一種(一本鎖RNA)である.コロナウイルスは自律複製することはできず,ヒトの粘膜細胞などに付着し入り込んで増殖することが知られている.増殖したウイルスは,感染者のくしゃみや咳などのしぶきが飛び散り,それを吸い込むことで感染する(飛沫感染).

 新型コロナウイルスの感染を調べる方法として,遺伝子検査や抗原検査,抗体検査が挙げられる.このなかでも感度の高い遺伝子検査は,等温核酸増幅法とPCR(polymerase chain reaction)法に大きく分けることができる.等温核酸増幅法にはLAMP(loop-mediated isothermal amplification)法やTMA(transcription mediated amplification)法などがあり,PCR法よりも比較的短時間で測定することができる.

 これらの遺伝子検査は感度が高いため,コンタミネーションを起こさないようにすることが必要である.

Q&A 読者質問箱

がん遺伝子検査に提出予定の検体で脱灰が必要な場合,どんな脱灰液が推奨されますか?

著者: 林衛

ページ範囲:P.1374 - P.1376

Q がん遺伝子検査に提出予定の検体で脱灰が必要な場合,どんな脱灰液が推奨されますか?

A 硬組織を含む検体を用いてがん遺伝子検査をする可能性がある場合は,酸脱灰を回避しEDTA脱灰を行うべきであることが推奨されています.

連載 やなさん。NY留学記・3

ニューヨークの休日を過ごす

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.1377 - P.1377

 留学中の柳田,最初の1カ月は環境に適応できなかったのか「休日は体調を崩して寝込む」というのがお決まりだった.時間が経つにつれ,小鳥が巣の外の世界に出るかのように,柳田も恐る恐るニューヨークの街に出るようになった.ピヨピヨ(といっても,移動時間30分以内の範囲内←へたれ健在!).

 最初に行ったのはニューヨーク公共図書館本館(The New York Public Library).柳田が住んでいるルーズベルト島(本誌51巻11号参照)からは地下鉄に乗って15分ほど.この図書館は世界屈指の規模で,蔵書・収蔵物は5300万点といわれている.なぜ,この図書館に行ったかというと,建築物としてとても魅力的だと思ったから.“ボザール”という建築様式だそう.図書館というより美術館に近い.壁や床は石造りで天井は高く,石像や絵画がいたる場所にあり,照明も美術品のよう.厳かな空気が漂っていた.映画に出てきそうな世界.この図書館は誰でも無料で見学することができ,ニューヨーク在住または勤務している人は無料で会員になれるので……とりあえず会員になってみた(読める本がないだろ!).図書館オリジナルのグッズも売っていて,観光スポットとしても大変人気だ.柳田はミケランジェロの言葉“I am still learning”が書かれた手提げを購入した(生涯,勉強です).

ワンポイントアドバイス

乾燥した検体の応急処置(再水和処理)

著者: 土田秀

ページ範囲:P.1378 - P.1379

はじめに

 細胞診検査で日常的に用いられるパパニコロウ染色では,検体塗抹後直ちに95%エタノールによる湿固定を行います.その際,少量の穿刺材料の塗抹,小さな組織の捺印,検体処理者の知識不足や手順の誤りなどにより,塗抹標本を乾燥させてしてしまうことがあります.乾燥した標本をそのまま95%エタノールで固定した標本では,細胞の観察が困難となりますが,乾燥した標本を通常の湿固定標本に近い状態に戻す方法として,再水和処理があります.

臨床医からの質問に答える

どのがん遺伝子パネル検査を申し込めばよいですか?

著者: 中村信之

ページ範囲:P.1381 - P.1385

はじめに

 複数あるがん遺伝子パネル(comprehensive genomic profiling:CGP)検査のなかから,どの検査を選択したらよいのか.この検査に携わったことのある医療従事者なら一度は悩んだり考えたりしたことがあると思います.本稿では検査を依頼する“臨床医”と検体を準備する“臨床検査技師”の2つの視点からこの課題について考えてみたいと思います.その理由は,臨床医が“希望する”検査と実際に“できる”検査が異なる場合があるからです.筆者は検査技師が“できる”検査を選択し,そのなかから臨床医が“希望する”検査を決定する.これがその患者にとっての最適なCGP検査であると考えています.本稿では,臨床医が“希望する”検査を選ぶときの基準と,“できる”検査を見極めるためのポイントについて分かりやすく解説します.

オピニオン

ゲノム医療の今後の展望

著者: 中山智祥

ページ範囲:P.1386 - P.1387

はじめに

 次世代シークエンサーの登場により,DNA塩基配列決定法が実臨床において活用(クリニカルシークエンス)される時代となった.研究室での活用のみならず,臨床検査の現場での採用がこれほどまでに早く進むとは多くの関係者にとって予想外であったのではないか.本稿ではゲノム医療の今後についての展望と課題について,日本遺伝子診療学会理事長としての立場から筆者の予測も含めて記したいと思う.

ラボクイズ

生化学検査

著者: 三好雅士

ページ範囲:P.1388 - P.1388

11月号の解答と解説

著者: 西田全子

ページ範囲:P.1389 - P.1389

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目次

ページ範囲:P.1312 - P.1313

『臨床検査』12月号のお知らせ

ページ範囲:P.1311 - P.1311

あとがき・次号予告

著者: 平石直己

ページ範囲:P.1390 - P.1390

 先日,母校で同窓会がありました.幹事として準備段階から関係各位の力を借り,無事に開催することができました.同窓会といってもただ同期だけで集まるのではなく,同窓生に可能な限り声をかけ,卒後教育の一環として学術交流を目的とした同窓会でした.各自が学会などで発表した専門分野の学術的な内容のものや,卒業後に臨床検査技師としてどのように活動してきたか,自分の将来像についてなど,それぞれが自由なテーマで発表し,参加者からの質疑応答(ツッコミ含む)に応える,活発でアットホームな会となりました.

 参加者からは,「普段,自分が興味ある分野の話しか聞かないので,いろいろな分野の話が聞けてとても新鮮だった」「自分の担当分野以外は興味がないから聞かないのに,同窓生ということもあり,なぜかすんなりと内容が耳に入ってきて,不思議だった」「久々に母校に足を運んで『ただいま』という気持ちになった」などの感想が寄せられ,それぞれが,いろいろな刺激を持ち帰ってもらえたようでした.卒業して実際に働きだしてみると,学生時代には気づくことができなかった視点や考え,想いがあります.世代を超えた集まりだからこその意見が得られ,とても有意義な時間となりました.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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