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雑誌目次

雑誌文献

検査と技術51巻2号

2023年02月発行

雑誌目次

技術講座 一般

尿定性検査—偽陽性・偽陰性を見抜くコツ

著者: 原美津夫

ページ範囲:P.92 - P.100

Point

●尿試験紙法は,尿を希釈せずそのまま用いて検査するので,尿の性状や尿中に含まれる種々の共存物質の影響により,異常発色や偽反応を呈することが多くみられます.

●尿試験紙法にて偽反応を発見するためには,常に偽反応が起こりうることを念頭に入れて検査を行うことが重要です.

●反応原理・偽反応が起こる原因種類の正しい理解をもって,検査に臨むことが偽反応を発見するために非常に重要です.

●多くの場合,尿の外観(色調・匂い)に注意することで,偽反応を起こさせる物質の存在を察知することが可能となってきます.

血液

異常データを見抜くコツ:血液学的検査

著者: 中川浩美

ページ範囲:P.102 - P.107

Point

●異常値が出た場合,まずは再検査を行います.その場合には,再現性がよいこと,あり得ない値になっていないことを確認します.

●赤血球系では,溶血の有無を確認し,溶血がない場合は平均赤血球容積(MCV)で貧血を分類していきます.

●白血球系では,どの種類の細胞が増減しているかを確認し,自動血球分析装置のスキャッタグラムに注目します.

●血小板系では,偽性血小板減少を確認するために,生血液を顕微鏡で観察します.

生化学

臨床化学検査試薬検討の基礎知識

著者: 佐藤文明

ページ範囲:P.108 - P.113

Point

●メーカーにより妥当性確認(バリデーション)された分析機器・検査試薬の性能が,各検査室において適合しているかどうかを,実機にて検証(ベリフィケーション)することが重要です.

●基礎的検討手法を十分に理解することで,特性仕様など性能データを読み解くことができ,適正な分析機器・検査試薬の選定が可能となります.

●検討データをとることが目的ではなく,その得られたデータに対して適切な解釈・評価をすることが重要となります.

その他

臨床検査試薬性能評価に必要な統計手法—回帰と相関

著者: 山西八郎

ページ範囲:P.114 - P.121

Point

●通常の最小二乗法による回帰法では,x軸に配置した測定法の誤差は回帰式に反映されません.

●測定誤差を無視できない日常検査法間の回帰分析に最小二乗法による回帰式を適用することは妥当ではありません.

●試薬性能評価を目的とする場合は,標準主軸回帰法により実用的かつ適切な回帰式が得られます.

●極端な飛び外れ値が存在すると,相関係数の絶対値は見かけ上大きく算出されます.一方,xとyの平均値付近のデータを追加しても,相関係数はほとんど変化しません.

トピックス

自動分析装置を用いた抗A/B抗体価測定

著者: 松浦秀哲

ページ範囲:P.122 - P.125

ABO不適合臓器移植と抗A/B抗体価測定法

 ABO血液型抗原は赤血球のみならず,血管内皮細胞や肝臓,脾臓,腎臓などの臓器にも発現している.そのため臨床の現場では,抗A/B抗体が臓器移植後の拒絶反応の原因となることがある.ABO不適合生体腎移植(ABO-incompatible living kidney transplantation:ABOi-LKT)において,高力価の抗A/B抗体価は免疫介在性拒絶の原因となる1).また,抗体除去療法後の抗体価の再上昇は,免疫学的ハイリスク症例の指標とされている2).抗体価およびその変動によって治療法が選択されるため,正確に抗A/B抗体価を測定することは重要である.

 現在,最も一般的な抗A/B抗体価の測定法は試験管法である.2倍段階希釈した検体を用いてIgM抗体を検出する室温反応(生理食塩液法)とIgG抗体を検出する間接抗グロブリン試験を実施し,1+の反応強度を示す最大希釈倍率を抗体価とする(図1).IgG抗体の測定を実施するには,被検血漿(血清)をジチオスレイトール(dithiothreitol:DTT)処理することによって,IgMを失活させる必要がある.

臨床検査へのLC-MS/MS導入における現状と課題

著者: 中川央充

ページ範囲:P.126 - P.129

はじめに

 微生物検査でのMALDI-TOF/MS(matrix assisted laser desorption ionization-time of flight mass spectrometry)の普及により,“質量分析”という言葉に聞き馴染みのある読者も多いのではと思う.一方で,液体クロマトグラフタンデム質量分析計(liquid chromatography-tandem mass spectrometry:LC-MS/MS)という言葉はいかがだろう.LC-MS/MSもMALDI-TOF/MSと同様に,臨床検査の定量分野において革新的な機器であると期待される.本稿ではこの機器の可能性,世界の動向,臨床検査応用上の課題について説明する.

FOCUS

感染対策に必要な消毒薬の知識

著者: 戸高玲子 ,   芳賀慧 ,   片山和彦

ページ範囲:P.130 - P.132

はじめに

 病原体による感染症の予防または拡大を防ぐためには,手指の消毒や生活環境中で人が触れるものの消毒は不可欠である.さらに医療機関においては,院内感染防止のために診療や検査に使用した医療機器・器具類の消毒,ならびに院内環境の消毒などが極めて重要であると考えられる.病原体には細菌やウイルス,真菌などが挙げられるが,本稿では特にウイルス感染症の予防のために役立つ効果的なウイルス消毒法について記述する.

 現在,ウイルス感染症の拡大防止のための消毒薬として多く用いられているのは,エタノールと次亜塩素酸ナトリウム製剤である.ウイルスのなかで,エンベロープといわれる脂質二重膜からなる外膜に包まれた構造を持つインフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルスなどには,エタノールやイソプロピルアルコールなど脱脂作用を持つ成分を主成分とした消毒剤が効果的である.一方で,ヒトに感染するノロウイルス(ヒトノロウイルス)やアデノウイルス,ロタウイルスといったエンベロープを持たないウイルスなどの殺滅には次亜塩素酸ナトリウム水溶液が有効であるが,どちらの消毒薬も,適切な濃度で使用しなければその効果が不十分な場合があり注意が必要である.本稿ではそれぞれの消毒効果について述べるとともに,市販の洗剤などに含まれる界面活性剤のウイルス不活化効果についても記述する.

タスク・シフト/シェアと救急医療における臨床検査技師の役割

著者: 岩嶋誠

ページ範囲:P.134 - P.137

はじめに

 医療が高度化・複雑化するなか,患者へのきめ細やかな対応や書類作成などの事務的な業務も含め,医師の業務が増加の一途をたどっていると指摘されている.そのため,医師の時間外労働の上限規制が適用される2024年度に向けて,厚生労働省で「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」が開催された.各医療関連職種よりヒアリングで提案された約300項目の業務において,現行制度下で実施可能な業務,法令改正を行いタスク・シフト/シェアを推進する業務に仕分けが行われ,臨床検査技師については現行制度下で実施可能な業務として14業務(表1)1),法令改正を行いタスク・シフト/シェアを推進する業務として9業務が選定された(表2)2)

 亀田総合病院(以下,当院)臨床検査部では2010年より臨床検査技師の新たな活躍の場として,救命救急センターで臨床検査の専門領域にこだわらないチーム医療活動を行っており,いち早く救急医療の現場にタスク・シフト/シェアを取り入れ業務を行っている.

 本稿では救急医療で求められる臨床検査技師の役割(当院における臨床検査業務およびそれ以外の介助業務内容,必要な知識や技術)と法令改正によりタスク・シフト/シェアで臨床検査技師に認められた“静脈路の確保”について紹介する.

病気のはなし

全身性強皮症

著者: 浅野善英

ページ範囲:P.138 - P.144

Point

●全身性強皮症(SSc)は皮膚および内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患である.

●線維化に関連する症状として,皮膚硬化,間質性肺疾患,胃食道逆流症,心病変などがあり,血管障害に関連する症状として,肺動脈性肺高血圧症,強皮症腎クリーゼ,指趾潰瘍などがある.

●皮膚硬化の範囲および自己抗体の種類により,比較的画一的な臨床経過をとるいくつかの病型に分類できる.

●肺病変(間質性肺疾患と肺動脈性肺高血圧症)が主要な予後規定因子である.

過去問deセルフチェック!

生化学・臨床化学:尿素回路(オルニチンサイクル)と尿素窒素(BUN)

ページ範囲:P.101 - P.101

 過去の臨床検査技師国家試験にチャレンジして,知識をブラッシュアップしましょう.以下の問題にチャレンジしていただいたあと,別ページの解答と解説をお読みください.

解答と解説

ページ範囲:P.133 - P.133

 尿素は生体内の蛋白質が分解され,アミノ酸を経て最終代謝産物として生成されます.尿素回路は肝細胞のミトコンドリアと細胞質に存在し,オルニチンサイクルとも呼ばれています.生体内のアミノ酸分解により生じたアンモニアはpHを上昇させ代謝障害を起こすため,各組織ではグルタミンやアラニンに変換し肝臓に運び,尿素にする必要があります(問題2).アミノ酸の分解速度が上昇すると,カルバモイルリン酸合成酵素-1(調節酵素,アロステリック酵素)が活性化し,結果的に尿素サイクルが活性化することになります.

 尿素回路の最終段階にて,アルギニンがアルギナーゼにより加水分解され尿素とオルニチンとなり,アンモニアは無毒化されます(問題1).尿素回路では1分子の尿素を生成するのに,見かけ上3ATP(実質4ATP)を消費しています.

疾患と検査値の推移

ウイルス性発疹症(麻疹,風疹,水痘・帯状疱疹)

著者: 中野貴司

ページ範囲:P.146 - P.153

Point

●ウイルス性発疹症の一般的な臨床検査値の推移は,他のウイルス感染症と同様に特異的な変化は乏しい.

●感染症法に定められ,医師に報告義務が課せられた疾患も多く,診断確定のためには病原体検査を行うことが望ましい.

●病原体を特定する検査法には,病原体検出法と血清学的検査法の2つがあり,それぞれ採取すべき適切な検体の種類や時期があり,疾患によっても異なる.

●病原体検出法にはウイルス分離やPCR法があり,血清学的検査法では免疫グロブリン(Ig)M抗体やペア血清でIgG抗体の推移を測定する.

臨床検査のピットフォール

臨床化学検査の分析前エラー—異常値発見に役立つ検査値を読み解く力

著者: 菅野光俊

ページ範囲:P.154 - P.158

はじめに

 日常検査では,患者の病態を反映しない,さまざまな原因による異常データに遭遇する.検査担当者には,病態を反映したデータ変動なのか,分析前や分析のエラーによる異常データなのかを検査データから判断し,適切な対応をすることが求められる.判断を誤ると重大な医療過誤につながる場合もある.異常データを見落とさないためには,極端値チェックや項目間チェック,前回値チェックなどをはじめとした,検査システムを活用した個別データ管理(リアルタイム検査データチェック)が適切に行われていることが必要である1).ただし,検出されたデータをどう判断し対処するかは,個人の力量により変化する.

 本稿では,分析前エラーの事例について,判断を行ううえで注意するポイントについて解説する.

Q&A 読者質問箱

尿潜血が+なのに赤血球が見つからず,細菌が+のことがよくあります.細菌による尿潜血偽陽性の理由と頻度について教えてください.

著者: 石澤毅士 ,   菊池春人

ページ範囲:P.160 - P.161

Q 尿潜血が+なのに赤血球が見つからず,細菌が+のことがよくあります.細菌による尿潜血偽陽性の理由と頻度について教えてください.

A 日常診療において尿潜血反応が陽性であるにもかかわらず尿中赤血球が存在していないことは少なくありません.まず,尿試験紙法の尿潜血の測定原理について考え,乖離する要因について考えてみましょう.

ワンポイントアドバイス

集落の外観から推定できる菌種を教えてください

著者: 鈴木まりな

ページ範囲:P.162 - P.164

はじめに

 近年,質量分析装置や遺伝子検査が普及し,菌種同定はより迅速で簡便なものとなった.一方で,生化学性状での菌種同定法を実施している施設がいまだ多いのも事実である.観察は微生物検査の基本であり,外観からの菌種推定は,菌種判別における有用な方法である.本稿では,集落の外観から推定できる代表的な菌種を紹介するとともに,観察するポイントや注意点について述べる(表11),図1).

連載 帰ってきた やなさん。・37

「オンラインセミナー開催!」

著者: 柳田絵美衣

ページ範囲:P.165 - P.165

 がんゲノム医療に携わる臨床検査技師10人で立ち上げた“がんゲノム研究会”(2021年5月号参照)主催でオンラインセミナーを開催いたしましたっ! いえ〜い!! やったぁ!

 今回のセミナーでは,研究会の幹事メンバーが「がんゲノム医療の全体像」「がんゲノム医療コーディネーターの実際の業務」「がんゲノム検査領域の病理検査工程」「がんゲノム医療領域の遺伝子検査工程」「Dry解析工程」を解説し,がんゲノム医療の全工程を網羅した内容でした.柳田の強引な采配で,講師の幹事メンバーと講義内容を決めたのだが,皆は快く承諾してくれ,講義資料もかなり細かく作りこまれていた……み,みんな,優秀すぎるっ! セミナーでは質疑応答も活発で,がんゲノム医療が注目・意識されてきたことを実感できた!

臨床医からの質問に答える

DLCOとDLCO′はどう違いますか? またどちらを用いればよいでしょうか?

著者: 田村東子

ページ範囲:P.166 - P.168

はじめに

 肺拡散能力検査は,肺胞から肺胞毛細血管膜を通って血液中に至るまでのガスの拡散しやすさを評価する呼吸機能検査である.本来は酸素(O2)の拡散能力を測定することが望ましいが,それは技術的に難しいため,指標とするガスには一酸化炭素(CO)を用いて,一酸化炭素肺拡散能力(diffusing capacity of the lung for carbon monoxide:DLCO)を測定して代用している.

 DLCOの測定方法は,測定時間が短く,測定値のバラツキも少ないという理由から,1回呼吸法が世界的に最も普及している.

ラボクイズ

一般検査

著者: 大沼健一郎

ページ範囲:P.172 - P.172

1月号の解答と解説

著者: 山村展央

ページ範囲:P.173 - P.173

書評

心研印 心電図判読ドリル

著者: 井上博

ページ範囲:P.169 - P.169

山下塾で心電図判読スキルアップ!

 「心電図が読めるようになるにはどうしたらよいですか?」という質問はいつの時代にもある.小生が現役時代,医学生や研修医諸君に答えていたことは,「まず何でもよいから一通り心電図の本を読んで基本的事項を理解し,その後は一例一例の心電図を読んで専門家に教えてもらう」であった.本書の編者はまさに同じことを序文で述べている.しかし周囲に心電図の専門家が必ずしもいるとは限らない.そのような場合どうすればよいか? この難題に応えてくれるのが本書である.心臓血管研究所の山下武志先生とその5人のお弟子さんの手で上梓された.

 基礎編(小手調べ)7例,実践編(いよいよ本番)43例の計50例から成る.まず簡単な病歴と心電図が提示され,多肢選択形式で質問に対する回答を読者が考えるという形式である.解答としては心電図所見の場合もあれば,疾患名の場合もある.解説では心電図所見が丁寧(重要な部分にはアンダーライン)に説明され,必要に応じて胸部X線写真,冠動脈造影,心エコー図などが示され,読者の理解を容易にする工夫がされている.心電図や,提示されている画像は鮮明で見やすい.解説に続いてLearning Pointとして,その心電図所見で注意すべき要点が示され,最後に深く学びたい読者のために参考文献が引用されている.本編に続いて逆引き疾患目次があり,心電図所見,疾患名から検索できるようになっている.最後にLearning Pointのまとめが50例分示され,心電図所見のカルテへの記載例が英語で示されている.痒いところに手が届く工夫が随所になされている.

臨床整形超音波学

著者: 田中康仁

ページ範囲:P.171 - P.171

全ての運動器医療にかかわる方にお薦め

 全ての運動器医療にかかわる方々に,本書をお薦めいたします.

 超音波画像構築技術の進歩やリニアプローブの開発により,整形外科診療にパラダイムシフトが起こり,今や超音波は日常診療に必須のものとなってきました.操作が簡単になり,誰でも手軽に目的とするものが描出できるようになったことで,裾野はますます広がっています.しかし,中にはまだ,超音波の有用性を感じながら,ご自身で超音波プローブを触ったことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか.本書ではそのような方にもわかりやすいように第1章では「はじめの1歩—まずはのぞいてみよう」ということで,超音波画像の基本的なプローブの操作の仕方や描出方法など,全身の各部位について,誰でもわかるようにやさしく記載されています.

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目次

ページ範囲:P.90 - P.91

『臨床検査』2月号のお知らせ

ページ範囲:P.89 - P.89

あとがき・次号予告

著者: 矢冨裕

ページ範囲:P.174 - P.174

 秋の学会(学術集会)シーズンも一段落した師走のはじめに,このあとがきを執筆しております.新型コロナ感染症対策のため,オンラインが中心であった学術集会は,最近では,集会現地への参加形式も増えてきているようです.私も,いくつかの臨床検査関連学会の学術集会に直接参加いたしました.やはり,多くの方々は,現地参加の良さ・意義を感じておられるようでした.もちろん,オンライン参加の便利さ・機動性は多くの方々が実感されるところですが,現地にて生で意見・情報交換できることの素晴らしさは何物にも代えがたいと思われます.アフターコロナの,さらに進化した学術集会の開催の在り方を願うものです.

 その一方,新型コロナ感染症は第8波とも言われている状況で,予断を許しません.コロナ下での発熱外来の逼迫を避けるため,抗原定性検査キットでの自己検査が促されている状況ですが,その適切な利用は広がっていないようです.体外診断用医薬品として未承認の「研究用」キットが広く流通していることもあり,キットを使った自己検査の精度をめぐっても課題があり,検査に携わる者にとっては残念な状況です.

基本情報

検査と技術

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1375

印刷版ISSN 0301-2611

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